大和
2006年7~9月期のGDP(速報)は、名目・実質ともに前期比0.5%成長となった。これを受けて政府・日銀は景気回復の持続を強調。再利上げの時期についても日銀・福井総裁は「いかなる時期も排除しない」と年内も含めてタイミングを探っている状況にあることを示唆した。
しかし、一部の大企業が牽引してきた企業業績は、下半期の伸び悩みが鮮明となっているほか、2006年7~9月期の機械受注が前期比11.1%減と悪化。輸出向けの受注は2四半期連続の悪化とその下振れ傾向が顕著となっており、もはや設備投資への楽観的な見方はできない。
さらに、個人消費はいまだ百貨店、スーパー、コンビニの3指標が改善に至らないなかで、GDPの約6割を占める個人消費がマイナスであったことが判明。政府も、2006年11月の月例経済報告で「消費に弱さがみられる」と個人消費に対する判断を引き下げざるを得ない状況となった。
現状、景気後退を決定づけるような材料はないものの、2006年末、これまで回復の持続要因として挙げられてきた企業業績や設備投資、個人消費にはプラス効果の剥落を示す内容が目立ってきたのは事実だ。
もしも、これに税制改正や金融政策、社会保障関連の失策が重なれば、景気後退の引き金となる。
先月のTDB景気動向調査では、「いざなぎ超え」の実感を得られない要因として「企業業績が改善していない」との回答が最も多かったことからも、景気底上げが不十分な状態であることに間違いはない。
しかし、企業の平均賃金が依然として伸び悩んでいることについて、福井総裁は「中高年の退職と若年雇用者の拡大」をその理由として指摘しはじめ、「好調な企業業績がいずれ家計に波及する」との発言を執拗に繰り返している。
年末商戦は過去3年でもっとも厳しい、との声が聞かれはじめている。政府・日銀が景気を下押しするような判断を下すことだけは許されない。
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