レポート

【連載】海外政経情勢 第31回「タイ」 ―景気低迷に追い打ちをかける中東情勢長期化リスク

(株)伊藤忠総研

2026/04/24

■SUMMARY

近年のタイ経済は、低成長が常態化し、回復力の弱さが際立っている。実質GDP成長率はASEAN主要国の中で最も低い水準が続き、生産年齢人口の減少や少子化の進行、不安定な政治情勢といった構造的な制約が成長を抑えてきた。

需要面でも、高水準の家計債務が個人消費の重しとなり、景気は力強さを欠いた推移が続いている。外需に目を向けると、財輸出は一部で底堅さを示したものの、米国の関税政策や通貨高といった不透明要因を抱えており、主要産業である観光業も回復の遅れが目立っている。

こうしたなか、下院総選挙を経た新政権の発足により、一時は政治の安定化と経済政策への期待が高まった。しかし、足元では中東情勢の悪化に伴うエネルギー価格の上昇や供給途絶リスクが顕在化し、景気の先行きに対する懸念も強まっている。低成長、内需の脆弱性、外部環境の不確実性という複数の課題が同時進行する状況下で、タイ経済は重要な局面を迎えているといえる。

このレポートでは、近年のタイ経済が直面してきた低成長の背景を、生産年齢人口の減少や少子化といった供給制約、不安定な政治情勢、高水準の家計債務などの観点から整理する。あわせて、消費刺激策や電気自動車補助金といった政策要因が個人消費に与えた影響、財輸出や観光業の動向、米国の関税政策や通貨高といった外部要因についても検討する。

さらに、2026年の下院総選挙を受けて高まった景気持ち直しへの期待と、その後に意識されるようになった中東情勢悪化によるエネルギー価格上昇や供給途絶リスクを取り上げ、足元の経済環境を多角的に描写することで、タイ経済が置かれている状況を立体的に示す。

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