レポート

【連載】海外政経情勢 第30回「ベトナム」 ―足元は堅調も、米関税の影響と成長モデル転換が今後の焦点

(株)伊藤忠総研

2026/02/25

■SUMMARY

ベトナム経済は近年、外部環境の変動にさらされながらも、底堅い成長を続けてきた。とりわけ2025年は、米国による高率な相互関税の発表という逆風に直面し、一時は景気の急減速が懸念された年である。

米国向け輸出への依存度が高いベトナムにとって、46%という高い関税率は成長の足かせになり得るものであり、国際機関も成長率の大幅な下振れを予測していた。しかし実際には、関税引き下げに向けた交渉の進展や、国内外における複数の成長要因が重なり、想定を上回る高成長が実現した。

一方で、この想定外の成長は持続可能なのかという点については、慎重な検討が必要である。公共投資の拡大や半導体関連輸出の好調といった明確な追い風がある一方、米国の関税政策を巡る不透明感は依然として残り、外需減速リスクは払拭されていない。

さらに、2026年以降は新たな指導部のもとで経済政策が運営されることになり、政治体制の変化が経済運営にどのような影響を及ぼすのかも注目点となっている。こうした短期的な景気動向と中長期的な成長戦略が交錯するなかで、ベトナム経済の実像を多角的に捉えることが求められている。

このレポートでは、2025年にベトナム経済が想定外の高成長を遂げた背景について、米国の関税政策を巡る動きとその影響を整理したうえで、公共投資の拡大や半導体需要に支えられた輸出動向など、成長を支えた具体的要因を詳しく確認する。

また、2026年以降の景気見通しについて、内需と外需それぞれの動向を分析し、米国の関税措置が今後の成長ペースに与え得る影響を検討する。加えて、共産党大会を経て発足した新たな指導体制のもとで掲げられた経済目標や政策方針を整理し、中所得国の罠への危機感を背景とした成長モデル転換の方向性を概観する。

あわせて、こうした構造変化のなかで、日本企業の対ベトナム進出動向にどのような変化が生じているのかについても取り上げ、現地市場との関わり方の変遷を紹介する。

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