大和
7月5日、日銀は生活意識アンケートを発表した。「国民の4割が物価上昇を感じている」との結果からデフレ脱却を裏付けるデータとして新聞やネットで大きく報じられた。
この日銀発表に関する報道以外でも、最近の新聞紙面では「景気回復を確認」や「物価上昇」など、政府・日銀の後押しとなる大々的な報道ばかりが目につくようになった。
景気の上向きを示している調査結果が多数あるのは事実だ。しかし、その調査結果が一部の大企業を中心としたものであることも少なくない。
物価上昇についても、大部分が原油や素材価格の高騰に起因しており、国内需要の完全な回復によるものではない。多くの中小企業で仕入れ価格の上昇分を販売価格に転嫁できない状態が恒常化しているのも、それを裏付けている。
需要増に基づいた物価上昇でない限り、景気回復やデフレ脱却という言葉は実態が伴っていないものと判断せざるを得ない。
最近の報道を見ると、景気回復の論調で過熱気味にさえ感じる。ゼロ金利解除やデフレ脱却宣言へ向け、気がはやるのは分からないでもないが、政府・日銀には景気回復途上の冷静な現状認識が求められている。
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