■調査結果のポイント
- 7月の景気DIは前月比1.1ポイント増の42.4となり4カ月ぶりに改善した。熊本地震や燃費不正問題、イギリスのEU離脱問題など、前月までのマイナスショックの影響が和らぎ、悪化傾向が一服した。今後の景気は、拡張的な経済政策がプラス材料となる一方、海外経済に懸念材料も多く、一進一退を続けながら横ばい状態で推移すると見込まれる。
- 『農・林・水産』『不動産』を除く8業界が改善した。熊本地震や燃費不正問題、EU離脱ショックの影響が徐々に落ち着きつつあるなか、参院選の与党勝利を受け経済対策への期待も高まり、『建設』『製造』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』など6業界で改善幅が1ポイント超と大きく持ち直した。
- 全10地域が改善した。『九州』は熊本地震からの復旧・復興にともなう土木事業関連が景況感を押し上げた。また、『東海』では、工場爆発で停止していた自動車生産が再開され、製造業が改善する要因となった。
< 2016年7月の動向 : 悪化傾向に一服 >
2016年7月の景気DIは前月比1.1ポイント増の42.4となり4カ月ぶりに改善した。
7月は、熊本地震や大手自動車メーカーの燃費データ不正問題、イギリスのEU離脱ショックの影響が徐々に落ち着きつつあり、景況感の回復につながった。公共工事が増加したほか、ガソリンや軽油価格の低下でコスト負担が一部で和らいだことが、景況感を改善させる要因となった。マイナス金利政策は住宅関連業種で好影響を及ぼしている一方、金融機関で設備投資への慎重姿勢が強まるなど、導入の効果は業種間でバラツキがみられる。消費関連では『小売』が3カ月ぶりに改善したが、消費者の節約志向が高まるなか、インバウンド消費における高額品から低額品への移行が懸念される。他方、熊本地震で落ち込んだ景況感から底を脱する兆しを見せていた『九州』は2カ月連続で改善した。
国内景気は、前月までのマイナスショックの影響が徐々に和らぎ、悪化傾向が一服した。
< 今後の見通し : 一進一退を続けながら横ばい状態で推移 >
7月末に決定された日本銀行による追加金融緩和策とともに、財政の前倒し支出や事業規模28兆円の経済対策など、財政政策と金融政策の両輪による効果が期待される。また、個人消費は低所得者向けの現金給付や最低賃金の引き上げなど、所得面での底上げが図られる見通しである。しかし、最低賃金の引き上げは企業負担の増加で設備投資などに後ろ向きの影響を与える可能性もあり、消費の回復には業績改善にともなう賃金上昇が不可欠といえよう。海外では、米国の雇用状況が好調だった一方、中国など新興国や資源国経済の景気減速は懸念材料である。
今後の景気は、拡張的な経済政策がプラス材料となる一方、海外経済に懸念材料も多く、一進一退を続けながら横ばい状態で推移すると見込まれる。
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