レポート深刻な影響を及ぼしている建築基準法の改正

東麻布の宮

8月の景気DIの悪化幅が、米サブプライムローン問題の表面化に端を発した株価急落、円高に見舞われるなかでも小幅にとどまったことで、前回、この場で9月の景気DIの下げ止まりを期待した。しかし、結果は前月を上回る悪化幅で、ついに2年7カ月ぶりの42ポイント割れまで落ち込んだ。


この要因は、世界経済の下振れ懸念の継続と、落ち着いていた原油価格が再び騰勢を強め、史上最高値を更新したことによるところが大きい。しかし、前月から目立ち始めた「改正建築基準法」の施行による建築工事の遅れ・手控えも見逃せない。


今回の建築基準法の改正は耐震偽装の再発防止が目的だが、これによって6月20日の施行以降、建築確認の審査が厳しくなり、確認申請の手控えや審査の長期化が頻発。その結果、7月の新設住宅着工戸数は前年同月比23.4%減、8月は同43.3%減と過去最大の落ち込み幅となった。


業種別の景気DIをみると、その影響を最も受ける『建設』は選挙終了による公共工事の再開期待で改善したが、関連産業である建材業界では「建築基準法の改正に伴う建築確認申請の制度変更により、建築業界全般に混乱がみられる」(サッシ卸売、大阪府)との声に代表されるように影響が大きく、鉄鋼関連でも同様の声が散見された。建築基準法の改正は、業界の裾野を広げながら悪影響を与えているのが実態である。


耐震偽装は許されるものではない。しかし、周知徹底が不十分なために"様子見している"企業が少なくないのも事実である。また、建築確認の審査期間が必要以上に長くなるなど、新法の運用面でも問題が指摘されている。


建築確認の遅れ・手控えのピークはすでに去り、9月以降は遅れたり手控えられた建築物件が動き出すと言われている。しかし、月単位でのギリギリの資金繰りで耐えている中小・零細企業にとっては、建築確認の遅れ・手控えはまさに死活問題。この影響で資金ショートする企業が出ないとも限らないだけに、ピークが過ぎたとしてもこの問題は簡単に片づきそうもない。

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