レポート

地域を動かすのは誰か―「よそ者、ばか者、若者」と、データが支える地方活性化

情報統括部 情報統括課
主席研究員 窪田剛士

地方活性化をめぐっては、しばしば「よそ者、ばか者、若者が地域を変える」と言われます。刺激の強い表現ですが、地域に新しい動きを生み出すうえで必要な役割を、うまく言い当てている面があります。よそ者は、地元では当たり前になっている資源の価値を見つけ直す人です。ばか者は、「前例がない」「うちでは無理だ」といった空気に逆らい、まず動いてみる人でしょう。若者は、目先の利害にとどまらず、その地域の十年後、二十年後を引き受ける存在です。

ただし、外から来た人や若い人がいるだけで地域が元気になるわけではありません。大切なのは、そうした新しい視点や挑戦を、地域の内側の人びとが受け止め、仕事や制度、日々の営みに変えていけるかどうかです。言い換えれば、地域を動かすのは特定の誰か一人ではなく、外からの刺激と内側の受容力、その両方が必要なのです。

成功と停滞を分けるのは、挑戦を仕組みに変える力

うまくいった地域振興の事例をみると、その本質が現れてきます。徳島県神山町や島根県海士町[1]では、外からの人材や新しい発想を受け入れつつ、それを地域の仕事や暮らしと結びつけてきました。重要なのは、よそ者や若者が来たこと自体ではありません。外からの刺激を、地域の側が自分たちの課題や可能性と結びつけ、継続する仕組みに変えたことに強みがありました。

一方で、うまくいかなかった地域振興の多くは、人材不足というより仕組み不足に原因があったように思えます。単発のイベントや話題づくり、補助金頼みの事業は、その場では盛り上がっても、地域の売り上げや雇用に結びつかなければ長続きしません。必要なのは、地域に収益が戻り、次の挑戦へ再投資できる構造です。熱意やアイデアはもちろん大切ですが、それだけでは地域の活力は持続しません。何が地域にお金を落とし、誰の仕事を増やし、どう次につながったのか。その道筋を描けるかどうかが、成功と停滞を分けカギと言えるでしょう。

 データがあるから、次の一手が見えてくる

だからこそ、これからの地方活性化には、行政では証拠に基づく政策立案(EBPM)の視点が欠かせません。感覚的に「うまくいった気がする」で終わらせず、どの施策がどの企業や産業にどれだけ波及したのかを見ていく必要があります。企業側は最適なタイミングでアプローチするEBM(イベント・ベースド・マーケティング)による取り組みが大切となります。

その点で、帝国データバンクが持つ企業データや取引データ、景況感に関する蓄積は、地域の実像を立体的に捉えるうえで大きな力を持ちます。地域の中核企業はどこか。取引の広がりはどこにあるのか。人手不足や事業承継のリスクは、どの業種に集中しているのか。顧客ニーズが顕在化する瞬間はいつなのか。そうした情報を重ねて見ることで、本当に地域を支える企業像や、有効な施策の方向性が見えやすくなります。

 地方活性化を動かすのは、たしかに、よそ者、ばか者、若者です。けれども、それを持続させるのは地域の内側の覚悟であり、誤らせないのはデータです。問われているのは、誰が来たかではなく、その挑戦を地域の力に変える仕組みを持てるかどうかなのでしょう。


[1] 内閣官房「新しい地方経済・生活環境創生本部」第4回(2025年6月13日)資料など参照。

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