なんとか王子
8月のTDB景気動向調査によると、金融機関の融資姿勢DIは6カ月連続で低下し、10業界中6業界で判断の分かれ目となる50を下回っている。また、同時に行った融資姿勢および資金調達に関する企業の意識調査によると、2008年入り後、金融機関による貸し渋りや貸し剥がしが「あった(ある)」と回答した企業が、全体で7.8%、最も高かった不動産業では25.7%に達した。なかでも、不動産売買業では半数近くの企業が貸し渋り・貸し剥がしにあっているという実態が浮かびあがった。
金融機関にとって、業績が厳しく将来性が展望できない融資先に対し、審査基準の厳格化や貸出金利の引き上げ、債権の回収などを行うことは自然であり、合理的な行動といえる。ところが、本来なら融資してしかるべき企業に対しても、同様な行動を取ってしまう傾向がある。これが貸し渋り・貸し剥がしの最大の問題点である。
日本の金融機関、特にメガバンクは1990年代終わりから2000年代初頭にかけて、苛烈な貸し渋り・貸し剥がしを行った。その後、政府による公的資金の注入で金融市場は落ち着きを取り戻し、景気回復も相まって2004年~05年頃には猛烈な貸し込みが行われた。そして現在は、デフォルトの発生やサブプライム問題による損失で、金融機関の間に行きすぎた貸し込みを抑える空気が醸成されている状態と捉えることができるだろう。
しかし、これらはいずれも金融機関側の都合である。このような融資姿勢の乱高下が長期間、しかも一斉に生じていることは、金融機関が依然としてバブル期のような量的拡大を中心に据えていることの証左ではないだろうか。金融機関には、企業が求める情報の提供や販路開拓への協力など、継続的な資金需要を創造していくことが必要である。そして、金融機関と地場企業とが一体となって地域経済を活性化することが求められている。
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