レポート【連載】海外政経情勢 第7回「タイ - 中所得国の罠に直面、試される海外企業誘致と地場企業の高度化-」

(株)伊藤忠総研

2021/07/06
海外

本連載では、日本企業の進出先として想定される世界各国の政経情勢などを取り上げる。第7回は、ASEAN で最も工業化が進んだ国の一つであるタイに注目した。

タイは、日本企業などの海外企業の進出により、自動車や電気機械の産業が進展してきたが、近年では労働力の増加や資本の蓄積による成長が限界に近づくという、いわゆる「中所得国の罠」に直面している。また、2020年は、新型コロナ感染拡大に伴うインバウンド需要の消滅により、国内経済が大きく悪化した。以下、先行きの経済見通しを解説したうえで、中所得国の罠回避に向けた足元の動きについて考察した。

■タイの概要

タイ経済は、1980年半ばに、日本企業を中心とする外資系企業が進出を加速させたことにより、自動車や電気機械などの輸出型製造業の集積が進展。その結果、ASEANの中で最も工業化が進んだ国の一つとなった。

こうした中、タイ経済は、労働力の増加や資本の蓄積による成長が限界に近づくという、いわゆる「中所得国の罠」に直面している。タイ政府は、2016年に「タイランド4.0」という長期の産業振興策を打ち出し、自動車などの既存産業の高度化と、これを土台にデジタル産業などの知識集約型産業を育成する方針。イノベーション力の喚起などの取り組みにより、産業の高度化を図っている。

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