レポートGM破綻を笑えるか?

2009/06/03
輸送機械  コラム

大和

2009年6月1日、20世紀最大の自動車メーカーとして世界に君臨してきたGMが破綻した。時代の変化に応える努力を怠ってきた経営体質や高コスト体質など問題は多数挙げられるが、今後は政府管理のもとで、環境対応車を軸にした新生GMを目指す方針という。


これに対して日本では懐疑的な見方が多く、今回のGM破綻は米自動車業界の凋落を象徴する出来事として、再生へ向けた動きを軽視する報道が目立つ。


ハイブリッドや小型車において、日本の開発、改良が先行してきたことがその背景にあるのだろうが、もはや米自動車業界が日本にキャッチアップすることは困難であるとの見方が、日本のマスコミを発信源として政府や企業、消費者にまで広く浸透していくことに危機感を持つ。


20世紀の米国は、政治や軍事、宇宙開発だけでなく、パソコンのOSやスーパーコンピューターなどインフラ開発でも、世界をリードしてきた。その手法には賛否があるものの、米国が総力をかけたときの強引なまでのそのパワーはあなどれない。


環境問題についても、前政権までは足取りが重かったが、オバマ大統領は、グリーン・ニューディールを掲げて環境市場でも世界をけん引しようと転換を図っている。インフラであるエネルギー政策はもちろん、そのツールとなる環境対応車などでも開発を加速させ、次世代社会のキーワードとなるスマート・グリッドで世界標準を他国に先駆けて構築する可能性もある。


米国発の金融危機が現在の世界同時不況のきっかけとなったことが、これまでの米経済を否定するような報道を助長させているが、環境問題の進展を図れず、世界でリーダーシップをとる数少ないチャンスであった京都議定書を生かしきれていない日本に、他国を笑う余裕はない。


GM破綻の決断は、米国が新しい道に舵をきった覚悟の表れである。中国など新興国も、ポスト京都議定書を見据えた動きを活発化させている。


日本においても、企業の自己変革に頼るばかりではなく、国も指針の策定やインフラ開発、整備に積極的にかかわり、次代を担う環境対応型社会のモデルを世界に提示する努力が必要である。

このコンテンツの著作権は株式会社帝国データバンクに帰属します。著作権法の範囲内でご利用いただき、私的利用を超えた複製および転載を固く禁じます。