近年、中央銀行デジタル通貨(以下、CBDC)について、実証実験や概念実証を行う国・地域が急増しています。CBDCは、(1)デジタル化されていること、(2)円などの法定通貨建てであること、(3)中央銀行の債務として発行されることが必要であり、そのための技術開発が不可欠となっています。こうした状況のなか、日本においても2021年4月から概念実証実験が開始されたほか、海外のCBDCに関わる企業が大手だけでなく中小規模のFinTech企業にも広がりを見せています。
そこで、帝国データバンクは、CBDCに関する現状と行方について分析を行いました。
- 中央銀行デジタル通貨は86国・地域で発行・実証実験を実施
2022年1月時点では、バハマ、ナイジェリア、カンボジアの3カ国がCBDCをすでに発行しています(カンボジアは準CBDC)。また、デジタル通貨のリサーチを中心とした検討段階が61カ国・地域、システム環境の構築や周辺機能の付いた実現可能性を検証する概念実証実験が10カ国・地域、さらに民間事業者や消費者が参加して行う実証実験には12カ国・地域で行われ、合計86カ国・地域にのぼります(リテール型およびホールセール型)。
【図表1 中央銀行デジタル通貨(CBDC)】 - 日本は2021年4月に概念実証実験を開始、ブロックチェーンなど活用し民間を主体とした可能性を模索
CBDCへの取り組みは新興国や開発途上国が先行していますが、2021年にはEU(欧州連合)や日本など先進国においても実証実験が進み始めてきました。さらには、中国はデジタル人民元を2022年後半までに発行するとしています。
日本銀行における概念実証実験には銀行や証券、資金決済業、電子決済等代行業、FinTech企業などさまざまな業界団体が加わっています。また、CBDCにはセキュリティの確保や強靭な通信環境など、幅広い業界に跨っており、必要と判断すればすぐに発行できる体制を構築していくことが狙いです。特に、日本ではブロックチェーンをはじめとした民間を主体とした可能性が模索されています。
【図表2 各国の取り組み(リテールのみ)】まとめ
CBDCについて、日本銀行は「現時点でCBDCを発行する具体的な計画はない」としていますが同時に、「決済システムの安定性と効率性を確保する観点から、今後の環境変化に的確に対応できるよう準備することが重要」とも話しています。経済のデジタル化およびDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進むなかで、新たな技術を集約した決済システムの広がりは、経済の回復に向けて大きな可能性を持つ分野ともいえます。
また、東京都にあるソフト受託開発業を営む中小企業からは「金融IT分野は重要な輸出市場となる」といった意見が聞かれる一方、「IT技術者の不足が大きな問題」(ソフト受託開発、神奈川県)はCBDCの発展にとって解決すべき課題になっています。
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