レポート

TDB景気動向調査2025年11月(東北ブロック:青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)

■東北ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.4

-0.1

2カ月ぶりの悪化

・概況

景気DI(39.4)は、前月から概ね横ばいで推移した。年末の繁忙期や季節変動による需要増、大手企業の設備投資などを背景に、堅調な企業もあるなか、業種間で格差が拡大。『印刷』は年賀状需要の減退による低迷、『サービス』はクマ出没による人出減少、『小売』は節約志向による選別消費の高まりなど、厳しい声も聞かれた。先行きについては、ガソリン暫定税率の廃止をはじめとする物価高対策への期待から回復基調を見込む声があるものの、景気の底上げ効果は限定的で、景気動向は足踏み状態が続く可能性が高い。

・景気DI

景気DI(39.4)は前月比0.1ポイント減少し、2カ月ぶりに悪化した。『全国』(44.1)との格差は4.7で前月比0.3ポイント拡大した。県別では、改善2県(「青森」「福島」)、悪化2県(「岩手」「山形」)、横ばい2県(「宮城」「秋田」)となった。

・規模別DI

「大企業」(43.2)が前月比0.7ポイント増加し、「中小企業」(39.0)が同0.2ポイント減少した。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は4.2となり、同0.9ポイント拡大した。

・業界別DI

改善が『不動産』『製造』『サービス』の3業界、悪化が『運輸・倉庫』『建設』『農・林・水産』「金融』などの6業界、『その他』が横ばいとなった。『その他』を除く9業界では『農・林・水産』(58.3)が最も高く、『小売』(35.0)が最も低かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は40.5(当月比1.1ポイント増)、「6カ月後」は41.9(同2.5ポイント増)、「1年後」は43.6(同4.2ポイント増)となった。前月との比較では「3カ月後」を除く2指標で改善した。

■青森県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.4

0.9

2カ月ぶりに改善

・概況

青森の景気DIは42.4となり、前月から0.9ポイント上昇し、2カ月ぶりに改善した。業界別で主要産業である『建設』が改善傾向を示したほか、観光シーズンを迎えた各地の観光へ海外からのインバウンド需要を取り込み、「飲食店」や「飲食料品卸売」が全体を押し上げた。全体としては、物価高のほか最低賃金の高まりなど、依然としてコスト上昇圧力が強まっており、今後もしばらくは一進一退の足踏み状態が続く可能性が高い。

・景気DI

景気DIは42.4となり、0.9ポイント改善した。都道府県別順位は31位と前月の34位からアップし、東北6県の中では引き続きトップとなった。観光シーズンを迎え、インバウンド需要も取り込み、「飲食店」や関連する「飲食料品卸売」が改善され、全体を牽引した。

・規模別DI

「大企業」は50.0と前月比横ばい、「中小企業」については改善したが、「小規模企業」が悪化した。「大企業」が安定傾向にある一方、ここ数カ月にわたり「小規模企業」は悪化トレンドにあり、規模間で差が生じている。

・業界別DI

業界別では、主要産業の1つである『建設』が悪化傾向にあったが、インフラの更新需要を取り込み、若干改善された。また、インバウンド需要のほか観光シーズンを迎え、各地での観光客の流入増加によって「飲食店」と関連する「飲食料品卸売」が改善した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、3カ月後が前月比悪化したが、6カ月後、1年後はともに改善した。『卸売』が改善傾向にある一方、『製造』は悪化傾向にある。

■岩手県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

37.7

-1.2

2カ月ぶりに悪化

・概況

景気DIは2カ月ぶりに悪化し、3カ月連続で40を下回った。「大企業」は判断の分かれ目となる50を12カ月連続で下回り、「中小企業」は14カ月連続で40を下回った。業界別では引き続き『卸売』や『小売』の苦境が目立つほか、『製造』や『建設』の悪化も懸念される。先行き見通しの「1年後」はブロック最低の42.3にとどまる。円安や物価高の影響に加え、増加基調にある県内倒産件数にも留意が必要であり、当面は一進一退の景気動向が続くと見込まれる。

・景気DI

景気DIは前月比1.2ポイント減の37.7となり、2カ月ぶりに悪化し、3カ月連続でDIは40を下回った。2025年に40を上回ったのは8月の1度のみ。都道府県順位は全国45位(前月は全国43位、前年同月は全国42位)。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.6ポイント増の43.3となったが、判断の分かれ目となる50を12カ月連続で下回った。「中小企業」は同1.5ポイント減の37.1となり、14カ月連続で40を下回った。「大企業」と「中小企業」の格差(大企業-中小企業)は6.2(前月は3.1)。

・業界別DI

『サービス』が前月比3.5ポイント増となり41.2まで持ち直したが、『建設』は同6.9ポイント減と急落し37.3に悪化した。また、『卸売』は35.0、『製造』は34.8、『小売』は28.3と、総じて低水準にとどまった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が40.4、「6カ月後」が40.7、「1年後」が42.3となり、「6カ月後」と「1年後」が前月よりやや改善した。前々月はすべての項目で40を下回ったが、その後2カ月連続ですべての項目が40を超えた。

■宮城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.5

横ばい

11カ月連続で40を下回る

・概況

景気DI(38.5)は前月比横ばいで、11カ月連続で40を下回っている。都道府県別順位は43位と依然として下位で推移している。業界別では『小売』『サービス』で前月から改善がみられたものの、昨今のクマ被害による外出控えの影響もあり、勢いを欠いた。高市新政権の下、ガソリン暫定税率の廃止が決定され、こうした物価高対策には今後も注目が集まるだろう。一方、実質賃金は9カ月連続でマイナスと、物価高に追いついていないことから年末商戦での買い控えも懸念され、景気回復には時間を要すると見込まれる。

・景気DI

景気DI(38.5)は前月比横ばいとなり、11カ月連続で40を下回った。『全国』(44.1)との比較では5.6ポイント下回り、格差は前月から0.2ポイント拡大した。都道府県別順位は前年同月の44位から43位と依然として下位で推移している。

・規模別DI

「大企業」(46.5)は前月比0.7ポイント増加した一方、「中小企業」(37.6)は同0.2ポイント減にとどまった。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は8.9で同0.9ポイント拡大した。

・業界別DI

改善は『製造』『小売』『サービス』などの4業界、悪化は『運輸・倉庫』『農・林・水産』『卸売』などの5業界となった。『その他』を除く9業界では『金融』(50.0)が最も高く、『小売』(28.9)が最も低くなった。『小売』は3カ月連続で30を下回った。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は39.6(当月比1.1ポイント増)、「6カ月後」は40.7(同2.2ポイント増)、「1年後」は43.5(同5.0ポイント増)となった。前月との比較では「1年後」を除く2指標で悪化した。

■秋田県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.0

横ばい

前月比同率で一進一退

・概況

景気DIは、『東北』が前月比0.1ポイント悪化したのに対し、『全国』は同0.2ポイント改善し格差はやや拡がっている。『東北』では、「岩手」「山形」が悪化、本県と「宮城」が横ばい、「青森」「福島」がやや改善している。東北地区ではクマ被害による観光客の減少、外出自粛等により、様々な業種で影響が出ている。また、米価をはじめとした物価高騰が消費マインドを低下させている。さらに中国との外交問題もあり、先行きの景気動向は依然として不透明と言わざるを得ない。

・景気DI

「秋田」の景気DIは41.0と10月と同率であった。『東北』6県では前月の第2位から第3位に後退したものの、『東北』(39.4)を1.6ポイント上回った。『全国』(44.1)を3.1ポイント下回り、都道府県順位は前月の第35位から第40位に後退した。

・規模別DI

規模別では、「大企業」、「中小企業」ともに前月と同率で格差に変化はなかった。但し、「中小企業」の中では、小規模企業が前月比2.0ポイント改善した。

・業界別DI

業界別では、『建設』(38.5)の1業界のみが前月比で改善した。『不動産』『農・林・水産』『小売』『運輸・倉庫』『その他』の5業界が横ばい、『卸売』『製造』『サービス』の3業界が悪化した。悪化したなかでは、『製造』(40.2)の前月比1.9ポイント減が目立った。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」40.1、「6カ月後」43.1、「1年後」43.3と緩やかに回復するとの見方だが依然として低位で推移する見通しとしている。

■山形県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

37.5

-0.8

2カ月ぶりに悪化

・概況

「設備投資が見えてきた」(建設、小規模企業)、「電力会社の設備投資が増加している」(サービス、中小企業)など、一部業界において設備投資の回復が期待される声がある。一方、厳しいコメントは依然として多く、「住宅の新築着工数が落ち込んでいる」(不動産、小規模企業)、「印刷需要のがた減り。年賀状は出す人がほとんどいないのではないか」(出版・印刷、中小企業)、「某大手自動車メーカーからの受注減少がはっきりしてきた」(製造、中小企業)など、広範囲な業界において厳しい現状を反映した声が聞かれ、全体的な景気浮揚感は乏しい状況にある。

・景気DI

「山形」の景気DIは37.5となり2カ月ぶりに前月比0.8ポイント悪化した。『全国』は44.1と同0.2ポイント上昇し、6カ月連続で改善した。一方『東北』は同0.1ポイント悪化の39.4となった。「山形」のDIは県別ランキングでは46位に位置し、低調な水準が続いている。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.2ポイント低下の37.9を示し2カ月連続の悪化、「中小企業」も同0.9ポイント悪化して37.5となった。「小規模企業」のみ同0.4ポイント改善して37.6となり、2カ月連続の改善を示した。

・業界別DI

業界別では『不動産』『製造』の2業界のみ前月比改善を示した一方で、『農・林・水産』『金融』『建設』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』は前月比悪化した。『製造』が4カ月ぶりに前月比改善した一方、『運輸・倉庫』は3カ月連続して前月比悪化が続いた。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は前月比1.1ポイント悪化の39.3となり4カ月連続して悪化した。「6カ月後」は同0.9ポイント改善し42.0、「1年後」は同0.3ポイント改善の44.1を示し、いずれも3カ月ぶりに前月比改善したが、目先の見通しについては厳しい見通しが続いている。

■福島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.3

0.9

3カ月連続で改善

・概況

5業界が改善して「福島」の景気DI(41.3)は前月比0.9ポイント上昇、3カ月連続で改善した。しかし、企業からは「公共工事が減少」(建設)、「受注に波が生じてきている」(製造)、「物価高騰がさらに進み消費が伸びない」(卸売)、「ネット販売やメーカー直販と競合」(小売)、「暫定税率廃止に期待する一方、人件費増を懸念」(運輸・倉庫)、「熊出没のニュースが影響」(サービス)などの声が届いた。物価高による節約志向定着への懸念など、厳しいコメントが多数を占め、当面の景気動向も引き続き弱含みで推移する可能性が高い。

・景気DI

「福島」の景気DIは、41.3と10月を0.9ポイント上回って、3カ月連続で改善した。『全国』の景気DIは、前月(43.9)を0.2ポイント上回り、44.1となった。「福島」の都道府県別順位は、前月の第40位から第38位となった。

・規模別DI

「大企業」(39.3)は前月比0.4ポイント低下、「中小企業」(41.5)は同1.0ポイント上昇、「小規模企業」(38.4)は同0.5ポイント低下した。格差(大企業-中小企業)は▲2.2となり、3カ月連続で「中小企業」が「大企業」を上回った。

・業界別DI

『農・林・水産』『建設』『運輸・倉庫』は悪化したが、『製造』『不動産』『卸売』『サービス』『小売』の5業界が改善した。『建設』は7カ月連続で40台を維持したものの、『小売』は15カ月連続で30台にとどまった。一方、『製造』においては21カ月連続で30台にとどまっていたが、40台に改善した。

・先行き見通しDI

「1年後」の先行き見通しDIは5業界が当月からの改善を見込んでいる。特に『運輸・倉庫』は当月(38.1)から7.1ポイント、『製造』も同(41.7)から6.9ポイントの改善を見込んでいる。一方、業界比率の突出している『建設』の「1年後」が、同(41.7)から2.1ポイント悪化の39.6を見込んでおり、やや懸念される。

「東北ブロック(2025年11月)」の詳細(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)