レポート

TDB景気動向調査2025年11月(南関東ブロック:埼玉・千葉・東京・神奈川)

■南関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

46.9

0.5

全国トップを維持、『建設』などが牽引役

・概況

『南関東』の景気DIは前月から0.5ポイント増の46.9となり、全国順位は9カ月連続でトップを維持。3カ月ぶりに全都県で改善がみられ、「東京」「神奈川」では、全国を大きく上回る。「工事量が潤沢にある」といった声が寄せられた『建設』が3カ月連続の改善となり、地域経済を牽引する。高市政権における積極財政の方針を受けて、効果波及の早い首都圏の景気浮上が期待される一方で、製造業を中心にトランプ関税の影響に加え、高市トレードと言われる円安基調を背景とした輸入コスト増など、収益悪化の懸念は残る。

・景気DI

『南関東』の景気DIは前月から0.5ポイント増の46.9となり、全国順位は9カ月連続でトップを維持した。都県別では、「神奈川」が6カ月連続、「東京」が5カ月連続の改善となったほか、「千葉」が3カ月ぶりに改善し、全都県で景況感が改善した。特に「東京」「神奈川」が全国を大きく上回り、地域を牽引している。

・規模別DI

「大企業」は50.9と、3月以来8カ月ぶりに50を超えた。「中小企業」は46.0と6カ月連続の改善、「小規模企業」は45.4と横ばいとなり、規模間格差は4.9ポイントと、前月から1.1ポイント拡大した。

・業界別DI

業界別では7業界で改善、3業界で悪化。『農・林・水産』が前月比6.1ポイント、『小売』が1.7ポイントと大きく改善した。『建設』『サービス』は3カ月連続の改善で、いずれも今年最高の景況感となった。前月に今年初めて50を超えていた『金融』は3.0ポイント悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は47.9(前月47.7)、「6カ月後」は48.1(同横ばい)、「1年後」は48.7(同横ばい)となり、短期的には上振れの見通しとなった。また、業界別では、『農・林・水産』『建設』『サービス』で「3カ月後」「6カ月後」「1年後」全てにおいて50を上回った。

■埼玉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.0

横ばい

先行き見通しDI「1年後」は今年最高

・概況

埼玉県の景気DIは前月比横ばいの44.0となった。相変わらず大きな変動のない推移が続いている。企業からの声は、同業界のなかでも、好調や不振、どちらとも言えないなど、見方が分かれている。そうしたなか共通しているのが、仕入れ価格の上昇をはじめとした物価高への指摘。かなり深刻な受け止め方もあり、収まる兆しがみえない。また、中国との関係悪化を懸念する声も多く、先々への警戒心が高まっている。その一方で、当月は「希望」「期待」といった表現が特に目を引き、不透明感漂うなかでも好機を待ち望む企業は少なくない

・景気DI

景気DIは44.0となり、前月(44.0)と同じで横ばい。全国、『南関東』はともに微増。管内都県では、「千葉」が横ばいで、「東京」は微増、「神奈川」はやや増加。今年の「埼玉」は大きな増減は少なく、ほぼ横ばいの推移が続く。「埼玉」の全国順位は14位で前月(12位)から2ランクダウン。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.3ポイント増の46.4、「中小企業」は同0.1ポイント減の43.6、「小規模企業」は同0.2ポイント増の43.4となった。「大企業」が改善、「中小企業」は悪化して、規模間格差は前月より0.4ポイント拡大して2.8ポイント。「中小企業」と「小規模企業」の差は縮小している。

・業界別DI

前月と比較可能な8業界中、前月比改善は3業界、悪化が5業界。『金融』は前月比4.2ポイント増と大きく改善。悪化は比較的小幅が多いなか、『不動産』の同2.3ポイント減がやや大きい。『農・林・水産』を除くと、前月同様50台は『サービス』のみ。『製造』は2カ月連続で40台となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」46.0、「6カ月後」46.4、「1年後」48.6となり、前月(45.6、46.3、47.8)と比べ3指標ともに上回った。前月同様、先へ行くほど上昇していく傾向。全国や『南関東』、管内都県いずれも同様の見通し。先行きへの期待感の声が大きく、「埼玉」の「1年後」は今年の最高値。

■千葉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.5

横ばい

先行き見通しは改善

・概況

「千葉」の景気DIは43.5となり、前月比横ばいとなった。企業からは、「年末、年度末に向けて民需、公共工事とも活発化してきた」(建設)、「人手不足から派遣需要は堅調」(人材派遣)などの声が聞かれた。一方で、「円安が進み、原材料の高騰が続いている」(食料品卸)などの声もあがり、足元の景況感は企業によってばらつきがみられた。円安が進む為替動向、輸入物価の上昇を懸念する声もあるが、積極財政による経済対策に寄せる期待は大きいようだ。

・景気DI

「千葉」の景気DIは、前月比横ばいの43.5となり、『南関東』の1都3県では2カ月連続で最低水準となった。全国は前月から0.2ポイント増の44.1となり、「千葉」は全国を0.6ポイント下回ったが、全国順位は18位で前月(18位)と変わらなかった

・規模別DI

「大企業」は46.9で前月比2.9ポイント増加し、4カ月ぶりに改善した。一方で、「中小企業」は同0.4ポイント減の43.0となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は3.9ポイント(前月0.6ポイント)へと3.3ポイント拡大した。

・業界別DI

『その他』を除く9業界のうち、『農・林・水産』『建設』『小売』『運輸・倉庫』の4業界は前月比改善したが、『金融』『不動産』『製造』『卸売』『サービス』の5業界は悪化した。『小売』は食品や衣料製品を主体に前月比6.3ポイント増加したが、依然として40を割り込んでいる。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は46.0(前月45.1)、「6カ月後」は46.3(同45.5)、「1年後」は47.5(同46.5)となり、3指標とも前月比改善し、先へ行くほど高くなっている。ただし、「大企業」の「6カ月後」「1年後」は、いずれも足元の景況感を下回っており、慎重姿勢がうかがわれる。

■東京都

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

48.0

0.4

5カ月連続改善も、

日中関係悪化で先行き不透明

・概況

「東京」の景気DIは48.0で、5カ月連続で改善した。企業からは、従前からの物価高騰や人手不足感はありつつも、「来年度の工事案件が見えてきた」(建設)といった声のほか、高市政権への期待感も引き続き高い。一方で、「円安の進行、中国との関係悪化などマイナス要素が多い」(金融)といった先行きの不透明感は払しょくされず、一進一退の景況感が続くとみられる。

・景気DI

「東京」の景気DIは48.0(前月47.6)で、5カ月連続で改善し、今年の最高値を更新した。都道府県別順位は2位で前月(2位)と横ばい、『南関東』の1都3県で突出した数値となっている。

・規模別DI

「大企業」は51.6(前月比1.2ポイント増)と3カ月連続、「中小企業」は47.0(同0.3ポイント増)と4カ月連続で改善した。規模間格差は4.6ポイントに拡大し、4カ月ぶりに4.0ポイントを上回った。なお、「小規模企業」は46.7(同0.4ポイント減)で2カ月ぶりに悪化した。

・業界別DI

全10業界中6業界が改善、3業界が悪化、1業界が横ばいだった。不動産価格の上昇が続く『不動産』(56.5)がけん引したほか、底堅い需要が続く『建設』が3カ月連続で改善、『小売』も2カ月連続で改善し、押し上げる要因となった。前月に直近10年で最高値を記録した『金融』(50.0)は、当月は3.3ポイント悪化。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は(48.5、前月48.7)、「6カ月後」は(48.7、同49.0)、「1年後」は(48.8、同49.2)と、いずれも4カ月ぶりに悪化した。業界別では、『金融』『不動産』『卸売』で3指標がいずれも悪化し、特に「小規模企業」からの先行きに関する不安の声があがった。

■神奈川県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.0

1.4

6カ月連続の前月比改善

・概況

「神奈川」のDIは6カ月連続の前月比改善となった。「11月以降、受注および引き合いの件数が増加」(機械製造)などの声が聞かれる一方で、「車関係だけでなく全般に受注が落ちている」(鉄鋼・非鉄・鉱業)、「設備関係はすべてが値上がりし停滞気味」(その他の卸)のように、足下の厳しさを示す声も多数寄せられている。関税の影響や自動車業界の動向、今後の経済対策への期待と不安、中国との関係性の悪化を懸念する声も聞かれる。県内のDIは今年最高値となったが、当面は難しい舵取りが続きそうだ。

・景気DI

「神奈川」の景気DIは47.0と前月(45.6)から1.4ポイント増加し、6カ月連続の前月比改善となった。47.0以上となったのは2024年3月(47.3)以来20カ月ぶりで、改善幅も今年最大となった。全国順位は6位となった。

・規模別DI

「大企業」は52.3(前月比3.5ポイント増)、「中小企業」は46.4(同1.2ポイント増)、「小規模企業」は44.2(同1.1ポイント増)とそれぞれ改善した。「中小企業」「小規模企業」はそれぞれ今年の最高値となった。「大企業」と「中小企業」の格差は5.9ポイントとなった。

・業界別DI

9業界中、7業界で前月比改善となった。『建設』が5カ月連続、『サービス』が2カ月連続で50.0を上回り、『製造』『運輸・倉庫』とともにそれぞれ今年最高値となった。一方で、『小売』は3カ月連続で改善したものの依然として低水準にとどまっており、『金融』は3カ月連続、『卸売』は2カ月ぶりの悪化となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は48.1(前月47.3)、「6カ月後」は48.4(同47.7)、「1年後」は49.1(同48.5)でそれぞれ前月から改善した。『金融』『建設』は3指標ともに50.0以上となり、先行きの不透明感は残るものの、幾分軽減されつつある。

「南関東ブロック(2025年11月)」の詳細(埼玉・千葉・東京・神奈川)