レポート

TDB景気動向調査2025年11月(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

■九州ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.3

-0.2

4カ月ぶりに悪化

・概況

『九州』の景気DIは、45.3と4カ月ぶりに悪化した。企業からは「原油価格の高止まり、労働時間規制による売り上げ減、人材不足、人件費の高騰、車両購入価格と修理費の高騰など、運賃の値上げが依然として追いついていない」(宮崎県、運輸・倉庫)などの声が聞かれる。DI50台は、業界別で『その他』、県別では「沖縄」のみ。原燃料高、人件費負担増に対し、価格転嫁も十分ではないが、インバウンド需要に加え、TSMC第二工場着工や新政権へ期待する声もあり、当面、一進一体の推移が見込まれる。

・景気DI

『九州』(45.3、前月比0.2ポイント減)は4カ月ぶりに悪化した。10業界中6業界、8県中4県で悪化。『九州』8県中10位以内は5県。先行き見通しDIは「3カ月後」が2カ月連続、「6カ月後」が4ヶ月ぶりに悪化、「1年後」は4カ月連続で改善。ブロック別では9カ月連続で全国2位。

・規模別DI

「大企業」(48.2、前月比0.6ポイント増)は2カ月ぶりに改善。「中小企業」(44.9、同0.3ポイント減)は4カ月ぶりに悪化。32カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回り、規模間格差は前月から0.9ポイント拡大。「小規模企業」は42.1(同2.2ポイント減)と2カ月ぶりに悪化。

・業界別DI

『農・林・水産』(47.2、前月比1.8ポイント増)など3業界で改善したものの、『金融』(47.4、同2.6ポイント減)、『建設』(48.2、同0.3ポイント減)など10業界中6業界で悪化した。『その他』(50.0、前月と同数)で唯一DI50台。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(46.9、前月比0.1ポイント減)は2カ月連続、「6カ月後」(47.1、同0.4ポイント減)は4ヶ月ぶりに悪化したが、「1年後」(48.1、同0.4ポイント増)は4カ月連続改善。業界別では『建設』『サービス』が全指標改善したが、『金融』『不動産』『小売』が全指標で悪化した。

■福岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.3

-0.5

2カ月ぶりの悪化

・概況

「福岡」の景気DIは、個人消費などの伸び悩みなどもあって、インバウンド需要や都市再開発事業などが追い風となるも、2カ月ぶりに悪化した。企業からは「半年前と比べて問い合わせ、商談、成約のいずれも増加している」(不動産)などのコメントがある一方、「非住宅以外の建築需要は見込めるが、全体として需要は落ちている」(卸売)などの声があった。インバウンド効果などによって一部の業界は好調な推移を維持しているものの、人件費増、物価上昇などが多くの業界にマイナスとなっていることから、軟調な推移が続こう。

・景気DI

「福岡」(45.3、前月比0.5ポイント減)は、2カ月ぶりの悪化。業界別では、『農・林・水産』『建設』『運輸・倉庫』『サービス』の4業界で改善した。『その他』は横ばい。『金融』『不動産』など5業界で悪化。都道府県別順位は9位で前月(5位)からダウン。『九州』8県での順位は前月(4位)からダウンし5位。

・規模別DI

「大企業」47.9(前月比0.7ポイント増)は2カ月ぶりの改善。「中小企業」44.7(同0.8ポイント減)、「小規模企業」42.7(同3.5ポイント減)はいずれも2カ月ぶりの悪化。規模間格差は「大企業」が「中小企業」を3.2ポイント上回った。

・業界別DI

『その他』(50.0)は横ばい。『農・林・水産』(66.7、前月比16.7ポイント増)、『建設』(50.3、同1.3ポイント増)など4業界で改善。『金融』(55.6、同4.4ポイント減)、『不動産』(50.0、同4.3ポイント減)など5業界で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(47.0、前月比1.1ポイント減)、「6カ月後」(47.9、同1.0ポイント減)、「1年後」(49.2、同0.3ポイント減)の全てで悪化。業界別では、『金融』『不動産』『製造』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』で3指標全てが悪化。『建設』ですべて改善した。

■佐賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.3

4.0

一進一退に変わりない

・概況

「佐賀」の景気DIは改善と悪化を行き来する状況に変わりはなく、11月は47.3と前月より4.0ポイントの大幅な改善となった。規模別DI、先行き見通しDIと各指標全てで前月より改善し、業界別でも悪化した業界はなく、大幅な改善がみられた。資材高や人手不足など経営環境の厳しさに変わりはないものの、年末の需要増に期待したいところであり、佐賀の景気の行方が注目される。

・景気DI

「佐賀」の景気DIは47.3と前月より4.0ポイントと大幅に改善した。今年4月以降、改善と悪化を繰り返す状況に変わりはないが、改善幅は最も大きく、九州地区においても最大の改善幅となった。『全国』『九州』を上回り、「佐賀」の都道府県別順位は前月の21位から5位に躍進した。

・規模別DI

「大企業」は48.6と前月比6.2ポイントの大幅増となった。「中小企業」は46.9で前月比3.3ポイント増、そのうち「小規模企業」も43.3と同2.7ポイント増となり、各規模で改善した。規模間格差は1.7に拡大した。

・業界別DI

『小売』が前月比16.6ポイント増の33.3と大幅に改善したが、依然として低調推移に変わりはない。堅調な『運輸・倉庫』が上昇したほか、『サービス』『製造』『卸売』と各業界で改善がみられ、悪化した業種がみられなかった。

・先行き見通しDI

「3か月後」は47.6(前月45.2)、「6か月後」は47.6(同46.4)、「1年後」は47.0(同45.8)と、各指標で前月より高まった。年末年始と年度末に向けた需要の高まりがプラスに働いているほか、政権交代による経済回復に期待する声が多く聞かれた。

■長崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.4

-2.7

3カ月ぶりに悪化

・概況

「長崎」の景気DIは前月比2.7ポイント減と3カ月ぶりに悪化した。「毎年のような年末の動きになっておらず、動きが鈍い」(卸売)をはじめ、各業界で景況感の悪化を指摘する声が聞かれた。中でも住宅業界では今年4月に建築基準法における「4号特例」の廃止の影響が業績に悪影響を及ぼしている声が聞かれた。ただ、来年以降にはトランプ関税の影響が落ち着き、再び投資意欲が出てくる期待も聞かれた。「長崎」の景況感は、年末年始の観光需要増加などの期待もあるが、もうしばらくは一進一退の状況が続くと見込まれる。

・景気DI

「長崎」の景気DIは前月比2.7ポイント減の41.4と3カ月ぶりに悪化した。『九州』8県中、本県を含めて4県が悪化したが、本県の悪化幅が最も大きかったため、九州ブロック内順位は前月から順位を2つ下げて7位となった。都道府県別順位は前月の11位から26も下がり37位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.1ポイント減の34.6、「中小企業」は同2.5ポイント減の42.5、「中小企業」のうち「小規模企業」は同7.8ポイント減の37.7となった。各規模とも悪化したが、中でも「小規模企業」の悪化が著しく、規模間格差は前月比0.4ポイント縮小して▲7.9となった。

・業界別DI

前月から改善した業界はなく、『農・林・水産』『金融』『建設』『不動産』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』の8業界が前月から悪化した。とりわけ『金融』『不動産』は前月から大幅に悪化した。なお、『製造』は前月と同水準であった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.2(前月44.4、前月比1.2ポイント減)「6カ月後」43.0(同44.3、同1.3ポイント減)「1年後」44.3(同45.0、同0.7ポイント減)といずれも前月を下回った。業界別でみると『卸売』は先へ行くほど改善見通しだが、『建設』は逆に悪化見通しとなった。

■熊本県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

46.5

-1.1

2カ月ぶりに悪化

・概況

「熊本」の景気DIは前月比1.1ポイント減の46.5と2カ月ぶりに悪化した。「人の交流が活発となり、観光業界全体は国内、海外問わず増加傾向にある」(不動産)など明るい話題が見られた一方で、「価格を転嫁できず、人件費や仕入原価率が急激に上昇している」(小売)と不安を示す声は多い。日中関係の停滞によりインバウンド消費需要が懸念されることに加え、人件費や原材料価格の上昇が止まらず先行きが見通せない状況であるため、景気は足踏みの状態が続くとみられる。

・景気DI

「熊本」の景気DIは46.5で前月比1.1ポイント減と2カ月ぶりに悪化した。また、『九州』(45.3)も前月比0.2ポイント減となったが、「全国」(44.1)は同0.2ポイント増となった。なお、「熊本」の都道府県別順位は第7位(前月第2位、前年同月第2位)と前月から5ランク下がった。

・規模別DI

「大企業」の景気DIは55.0と前月から1.1ポイント減となり、「中小企業」は45.7と同1.0ポイント減となった。28カ月連続で「大企業」が「中小企業」の景気DIを上回り、規模間格差(大企業-中小企業)に関しては「大企業」および「中小企業」のいずれも悪化し差は9.3ポイントと大きな変動はなかった。

・業界別DI

9業界中、改善した業界は『不動産』『運輸・倉庫』『サービス』の3業界となった。一方で悪化した業界は『農・林・水産』『建設』『製造』『卸売』『小売』の5業界となり、『金融』は横ばいだった。ハウスメーカーの業況不振や不動産市況の悪化、人手不足が原因となり景気が悪化する業界が増えた。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは「3カ月後」が48.3(前月48.0)、「6カ月後」は47.9(同47.8)、「1年後」は47.4(同48.3)となった。「3カ月後」と「6カ月後」はやや改善したが、高値となっている原材料や人件費の転嫁などに課題があり「1年後」は悪化した。

■大分県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.4

0.8

2カ月ぶりに改善

・概況

秋のイベントが各地で開催されたことを背景に『サービス』は引き続き堅調となった。政府発言により中国の観光客の激減が懸念される。一方、節約志向から自動車など高額商品や新築着工戸数に伸びはみられず、公共工事の発注量減少などから『建設』も引き続き悪化した。今後は、高市政権によるガソリン暫定税率の廃止など積極財政による景気の押し上げが期待されるものの、米国のトランプ関税の影響から外需の変動が不透明なほか、日銀による金利上昇を不安視する中小企業は多く存在し、県内の景気動向は一進一退の状況が続くと予想される。

・景気DI

「大分」は前月比0.8ポイント増の47.4となり、2カ月ぶりに改善した。全国順位は第3位(前月第4位・前年同月第3位)となり、前月と比べて上昇した。判断の分かれ目となる「50」は11カ月連続で下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比7.0ポイント増の52.8となった。「中小企業」は同0.1ポイント増の46.8、「中小企業」のうち「小規模企業」は同0.8ポイント減の45.0となった。規模間格差は6.0となり、2カ月ぶりに「大企業」が「中小企業」を上回った。

・業界別DI

業界別では『小売』『サービス』が前月より改善した。とりわけ、『小売』は前月と比べ9.5ポイント改善し45.2となった。一方、『建設』は前月比1.6ポイント減の44.0、『運輸・倉庫』も同7.2ポイント減の36.1と2カ月ぶりに悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」49.2(前月49.2)、「6カ月後」49.7(同49.2)、「1年後」51.6(同48.4)となり、『6カ月後』と『1年後』は前月から改善し、「1年後」は「50」を上回った。業界別では、『製造』『小売』『サービス』が3指標ともに「50」以上となった。

■宮崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.2

0.8

2カ月ぶりに改善、

合わせて半年ぶりに40%台に回復

・概況

「宮崎」の景気DIは40.2で、前月比0.8ポイント増と2カ月ぶりに改善した。一方で、高市早苗首相の台湾有事を巡る発言を受け、中国政府が日本への渡航自粛を促すなど日中間の緊張が日に日に高まっている。宮崎県における影響について、「現時点では影響は出ていないと」冷静な受け止めが目立つが、「長期化すれば影響は避けられない」と懸念の声も漏れる。

・景気DI

「宮崎」の景気DIは40.2で、前月比0.8ポイント増と2カ月ぶりに改善した。『九州』(45.3)と比較して5.1ポイント減、全国(44.1)と比較しても3.9ポイント減となった。全国順位に関しては、前月の41位と変動なかった。

・規模別DI

「大企業」は52.4で前月比0.9ポイント減となる一方で、「中小企業」は38.8で同0.5ポイント増となった。規模間格差(大企業-中小企業)は13.6となり、同1.4ポイント縮小した。「中小企業」に含む「小規模企業」は37.2で同3.3ポイント増と改善した。

・業界別DI

『製造』は38.9で前月比3.7ポイント増、『非製造』は40.4で同0.4ポイント増で『製造』、『非製造』ともに改善した。『製造』は「機械製造」が改善する一方、悪化した業種はなかった。『非製造』は「家電・情報機器小売」、「飲食料品小売」など改善する一方で「運輸・倉庫」、「専門サービス」が悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」見通しに関しては、44.1で前月比4.5ポイント増、「6カ月後」は43.4で同0.6ポイント増、「1年後」は45.8で同2.1ポイント増となり、いずれも前月比では改善が見られた。また『九州』と『全国』と比較しても宮崎の先行き見通しDIはそれぞれを下回った。

■鹿児島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.7

-0.4

2カ月ぶり悪化

・概況

「鹿児島」の景気DIは42.7と2カ月ぶりの悪化となり、8カ月連続で悪化と改善が続いている。企業からは依然として「物価高」や「人員不足」、「消費減退」などのキーワードが多く聞かれたほか、「一極集中」や「原料調達難」などのネガティブワードも増加した。景況感において「どちらとも言えない」とする意見が多く、プラス要因の声は限定的なものに留まるなど、厳しい見方をする企業が多いことから、今しばらくは同様の推移が続くものと推察される。

・景気DI

「鹿児島」の景気DIは42.7と前月比0.4ポイント悪化した。「九州」は同0.2ポイント悪化の45.3、「全国」は同0.2ポイント改善の44.1となった。全国的には改善傾向にある中で、「鹿児島」の都道府県別順位は前月の24位から27位に後退、8カ月連続で悪化と改善を繰り返している。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.3ポイント改善となる53.3であったほか、「中小企業」のうち「小規模企業」も42.5と同1.1ポイント改善した。ただし、「中小企業」全体では同0.4ポイント悪化となる42.0となるなど、規模間隔差(大企業-中小企業)は3.7ポイント拡大し11.3となった。

・業界別DI

改善は『農・林・水産』『建設』『サービス』の3業界、横ばいは『金融』『不動産』『運輸・倉庫』の3業界、『製造』『卸売』『小売』の3業界が悪化した。3カ月以上改善が続いている業界は『農・林・水産』のみと、悪化と改善を繰り返す業界が過半を占めており、依然として一進一退の状況にある。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は42.9と前月比1.0ポイントの悪化、「6カ月後」も44.1と同0.6ポイントの悪化となった一方で、「1年後」は45.5と同0.6ポイントの改善となった。近時は短期的な悪化と中長期での改善を期待する声が多く聞かれるケースが増加しており、当月も同様の結果となった。

■沖縄県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

55.0

1.7

3カ月ぶりに改善

・概況

「沖縄」の景気DIは、3カ月ぶりに改善した。これは、入域観光客数の増加と公共工事の発注が続くなか、値上げにより売上高、利益が改善し始めたとの声が反映したと考えられる。しかし、同じ業界内でも二極化が進んでいる印象で、価格転嫁が行いにくく苦戦している業者もいると聞かれる。また、新内閣の経済政策への期待感が高まり、1年後景気DIが5カ月ぶりに改善したが、トランプ関税に加え、中国との外交問題の影響を懸念する声もあり、景況感の動向は注視していく必要がある。

・景気DI

「沖縄」の景気DIは前月比1.7ポイント(以下、P)増の55.0となった。業種別では7業界中、5業界が改善した。また、都道府県別順位は32カ月連続で全国1位となり、『全国』(44.1)、『九州』(45.3)を上回っている。

・規模別DI

「大企業」(66.7、前月比横ばい)、「中小企業」(54.6、前月比2.1P増)で3カ月ぶりの改善、「中小企業」のうち「小規模企業」(50.8、前月比0.1P増)は2カ月連続の改善となった。

・業界別DI

前月と比較可能な7業界中、『金融』(横ばい)、『建設』(0.6P減)となったが、『不動産』(6.9P増)、『製造』(4.2P増)、『卸売』(3.0P増)、『小売』(6.3P増)、『サービス』(0.9P増)の5業界が改善した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」が55.8(前月54.8)、「6カ月後」は51.9(前月51.8)でともに2カ月連続改善となり、「1年後」は51.9(前月48.8)で5カ月ぶりの改善となった。

「九州ブロック(2025年11月)」の詳細(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)