レポート

TDB景気動向調査2025年11月(北関東ブロック:茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

■北関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.1

0.2

3カ月連続で改善

・概況

『北関東』の景気DIは3カ月連続で改善した。10業界中6業界が改善し、なかでも株価が好調だった『金融』は前月から4.2ポイントの大幅改善となった。他方、個人消費が振るわない『小売』など4業界が悪化した。依然、価格高騰や個人消費の停滞による影響の声が多く聞かれ、一部地域ではクマの出没に対する影響の声もあったが、秋の行楽シーズンが観光業界などでプラスに作用した。トランプ関税への不安は一時期に比べて和らいでいる様子がうかがえるが、先行不安は払しょくできておらず、当面の景気は横ばいでの推移が見込まれる。

・景気DI

『北関東』の景気DIは42.1となり、前月から0.2ポイント増加し、3カ月連続で改善した。3カ月以上改善が続くのは、2024年10月以来(この時は4カ月連続の改善)。域内5県では「群馬」のみが悪化し、他の4県は改善した。全国10地域での順位は前月と同じ8位で、3カ月連続して8位となった。

・規模別DI

「大企業」(46.1)、「中小企業」(41.6)、「小規模企業」(40.1)となった。「大企業」が前月比1.9ポイント悪化した一方、「中小企業」「小規模企業」は改善。規模が大きいほどDIが高い傾向に変わりないが、「大企業」が悪化し「中小企業」が改善したため、規模間格差は前月比2.4ポイント縮小した。

・業界別DI

全10業界中、悪化は『小売』や『運輸・倉庫』など4業界、改善は『金融』『農・林・水産』など6業界だった。なかでも『農・林・水産』と『建設』は4カ月連続で改善した。また、株価が好調だった『金融』は前月から4.2ポイント改善して52.8となり、2カ月ぶりに判断の分れ目となる「50」以上となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(43.5、前月44.0)「6カ月後」(44.8、前月45.5)「1年後」(46.5、前月46.7)となり、全ての区分で前月より後退した。業界別でみると1年後の見通しDIが現状(11月調査)より改善するのは『不動産』など6業界で、なかでも『製造』は1年後に10ポイント以上の改善を見込む。

■茨城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.7

0.3

2カ月ぶりに改善

・概況

「茨城」の景気DIは前月比0.3ポイント増の42.7となり2カ月ぶりに改善した。ただし回復の勢いは依然として弱く、物価高や人手不足が続くなか、10月からは最低賃金も引き上げられており、「材料高や人件費の上昇で利益が出にくい」といった声は依然として多い。さらに日本と中国の関係悪化により、茨城空港と上海を結ぶ定期便が運休するなど、県内経済への影響も懸念される。倒産件数が前年を上回るのは確実とみられ、景気の先行きは不透明と言わざるを得ない。「茨城」の景況感は当面40台前半での一進一退が続くとみられる。

・景気DI

「茨城」の景気DIは前月比0.3ポイント増の42.7となり2カ月ぶりに改善。原材料価格やエネルギー価格の上昇、高止まりへの警戒感は残るものの、高市政権が打ち出した総額21兆円超の経済対策を県内企業がひとまず評価した格好となった。ガソリン・軽油の暫定税率廃止に向けた補助金拡充も押し上げ要因のひとつに。

・規模別DI

「大企業」は前月比6.5ポイント減の35.2。一方「中小企業」は同0.6ポイント増の43.1、「小規模企業」は同1.5ポイント上昇の41.7。「大企業」は、財政悪化にともなう円安進行など副作用への懸念が背景。「中小企業」「小規模企業」は、ガソリンや軽油に対する補助拡大で目先の負担軽減が見込まれたことを好感。

・業界別DI

『製造』『卸売』など4業界が改善した。一方、『農・林・水産』『サービス』など3業界は悪化、『金融』『不動産』は横ばい。改善幅が最も大きかった『製造』は円安の影響を受けつつも、半導体製造装置や医療機器の堅調な動きが全体を押し上げた。大きく悪化した『農・林・水産』は野菜価格高騰による買い控えが悪材料に。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は44.0となり、前月比1.1ポイント減。「6カ月後」も44.0で同1.9ポイント減、「1年後」は45.4と同0.4ポイント減となった。企業からは「新総理になっても先が見えない。景気は良くなるのか、賃上げをしても大丈夫なのか不安しかない」などといった、先行きを厳しくみる声が多く聞かれる。

■栃木県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.4

0.5

2カ月連続改善、9カ月ぶりの43台

・概況

DI43台は前記したようにまだまだ「不況」状態と言える。改善と悪化が激しく入り交じり、安定した景況感が見られない点は大きな懸念材料で、改善の拠り所になる材料に乏しい点は否めない。一般消費も改善せず、設備投資も底這い状態、公共事業で何とかカバーしようと思っても、円安基調やトランプ関税など思うような価格設定や原価圧縮には至っていないのが実情だ。県内は製造業も多く、この影響が直撃すれば、更なる倒産や廃業の増加に繋がることも否めない。引き続き「厳しい経済環境は続く」ものと認識する必要があるだろう。

・景気DI

11月の景気DIは43.4、2カ月連続で改善し9カ月ぶりに43台に乗った。栃木県の景気マインドは統計的に見て、概ね45が平均値となっており、43を割り込むと不況感が鮮明になり、47を上回ると好景気の様相となる。弱含みは否めないが、企業からも明るい声が見られ、楽観はできないが上向きは事実のようだ。

・規模別DI

「大企業」51.5(前月50.8)、「中小企業」41.7(同41.4)、「小規模企業」40.7(同39.7)と全ての規模で改善した。大企業の業績好調が牽引し、一部の中小企業が上向いている印象だ。ただし、規模間格差は9.8と大きく、儲かる商流にある企業と、価格転嫁も進まない企業の格差はまだまだ大きい。

・業界別DI

業界別では『建設』『サービス』などで改善したものの、『小売』『卸売』では悪化が見られた。特に公共工事に携わる建設会社や、BtoBに関わる業種では活況も見受けられるが、引き続きBtoCに関わる企業では、一般消費の不安定がネックとなり厳しいようだ。円安や米国の関税政策など今後の影響も懸念される。

・先行き見通しDI

「3カ月後」44.3(前月45.1)、「6カ月後」43.9(同44.4)、「1年後」44.7(同45.0)と全てのカテゴリーで悪化した。「物価を上回る賃金上昇は不可能だ。つまり消費は回復しない」(小売)、「トランプ関税の影響は来年明らかになる。戦々恐々というのが事実」(製造)などの声が寄せられた。

■群馬県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.8

-1.4

2カ月連続で悪化、全国42位に後退

・概況

群馬県内企業からは「得意先の設備投資があり、関連する受注を確保できている」(製造)、「前年同月比で客足が増加した」(サービス)との明るい声が聞かれる一方、「自動車部品減産の影響から売上は低迷」(製造)、「物価高と実質賃金の低迷で、消費が鈍化している」(小売)と厳しい声もある。高市政権の思いきった経済政策に期待があるものの、物価高、円安進行、利上げ局面、賃上げ圧力、これから訪れる米国関税の影響などを考慮すれば、景況感を注意深くモニタリングしていく必要がある。

・景気DI

景気DIは前月比1.4ポイント減の38.8と2カ月連続で悪化した。一方、『全国』は前月比0.2ポイント増と改善した結果、「群馬」の47都道府県別順位は42位(前月41位)に後退した。DIは3カ月ぶりに30台へ落ち込み、『北関東3県』においては「茨城」「栃木」より低位にある。

・規模別DI

「大企業」 は前月比8.3ポイント減の39.3と2カ月連続で悪化した。「中小企業」は同0.7ポイント減で2カ月連続の悪化。「小規模企業」は同3.5ポイント減と4カ月ぶりに悪化した。「大企業」の悪化幅が「中小企業」よりも大きく、「大企業」と「中小企業」の規模間格差は0.5に縮小した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界では、 『建設』『小売』など5業界が悪化、『卸売』『不動産』など3業界が改善した。『金融』は横ばいだった。『製造』は6カ月ぶりに悪化。『建設』は悪化業界のなかで最大の下落幅、4カ月ぶりの悪化となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が41.3(前月41.9)、「6カ月後」が43.9(前月44.8)、「1年後」が46.3(前月46.3)となった。「3カ月後」と「6カ月後」の2指標が前月より悪化、「1年後」は横ばいだった。先に行くほどDI は高く、現在5.3ポイントの全国との格差は、 「1年後」には0.5ポイントまで縮小している。

■山梨県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.0

1.7

4カ月ぶりに改善

・概況

「山梨」の景気DIは4カ月ぶりに改善した。企業からは「秋の行楽シーズンを迎えインバウンド、国内、共に堅調に推移し前年を上回る状況である」(サービス)などの声が聞かれた。一方、「半導体関連の立ち上がりが遅い。アメリカのAI動向に影が差している」(製造)、「さらなる材料高が進んで、消費が冷え込んでいる。クリスマス商戦とは言い難い状況」(卸売)などマイナスの声も多い。先行きについては、トランプ関税や中国政府の訪日自粛要請による観光業への影響が懸念され、景況感は一進一退を辿るとみられる。

・景気DI

「山梨」の景気DIは前月比1.7ポイント増の44.0となり、4カ月ぶりに改善。全国は同0.2ポイント増の44.1だった。「山梨」は全国を0.1ポイント下回り、都道府県別順位は前月の27位から14位に上がった。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.5ポイント増の50.0、「中小企業」は同1.7ポイント増の43.3、「小規模企業」は同1.2ポイント増の38.5となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は、「中小企業」の改善幅が大きく、前月より0.2ポイント縮小して6.7ポイント差となった。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、3業界が改善、3業界が悪化、3業界が横ばいとなった。『建設』は年度末に向けて工事量が増えた影響で、4.3ポイントの大幅改善となった。判断の分かれ目となる50以上だったのは、『農・林・水産』『金融』『建設』『サービス』の4業界。

・先行き見通しDI

「3カ月後」44.5(前月45.4)、「6カ月後」46.1(同46.8)、「1年後」47.2(同48.1)となった。3指標とも前月を下回っているが、先に行くほどDIは高くなっている。3指標とも50以上となっているのは、『農・林・水産』『金融』『建設』の3業界。

■長野県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.3

0.4

2カ月連続で改善

2023年8月以来の高水準

・概況

「長野」の景気DIは、2018年10月から50を下回る状況が続いているものの、2023年8月の42.8以来の最高水準となった。このような中、改善傾向を示すように、「工事発注案件が多く、受注を手控えている状況」(建設)、「先月に引き続き、受注、引き合いも多く、案件情報も多い」(情報サービス)など前向きなコメントが増えてきている。一方で、「中国の動き」(卸売)や「米国の関税、欧州、中国経済の低迷などにより生産台数が減少」(機械製造)など海外情勢をもとに先行きを不安視する声も聞かれる。

・景気DI

「長野」の景気DIは42.3と、前月比0.4ポイント上昇し2カ月連続で改善した。前年同月も0.6ポイント上回り、2023年8月以来の高水準になった。「全国」を1.8ポイント下回ったが、格差は0.2ポイント縮まった。都道府県別順位は33位と、前月より3ランク低下したが、前年同月からは4ランク上昇した。

・規模別DI

前月比で「大企業」は1.8ポイント低下したが、「中小企業」は0.6ポイント、「小規模企業」は3.0ポイントそれぞれ改善した。規模間格差は「大企業」と「中小企業」は2.4ポイント、「大企業」と「小規模企業」は4.8ポイントそれぞれ縮小。「小規模企業」が「中小企業」を20か月ぶりに上回った。

・業界別DI

『運輸・倉庫』は前月比2.6ポイント増、『建設』は同1.6ポイント増、『製造』は同0.3ポイント増と、それぞれ2カ月連続で改善。『サービス』は同1.1ポイント増と2カ月ぶりに改善した。一方、『卸売』は3カ月連続、『小売』は2カ月ぶりにそれぞれ悪化した。主要6業界中で、悪化したのは前月同数の2業界であった。

・先行き見通しDI

「長野」、業界別の『製造』『卸売』『小売』、規模別の「中小企業」「小規模企業」は長期になるほど改善を予想。「大企業」は低迷の後に改善、『建設』は悪化を予想している。『運輸・倉庫』『サービス』はそれぞれ一進一退を見込む。「長野」としては、35カ月連続で長期になるほど改善を予想する状況が続く。

「北関東ブロック(2025年11月)」の詳細(茨城・栃木・群馬・山梨・長野)