レポート

TDB景気動向調査2025年09月(東北ブロック:青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)

■東北ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.2

-0.3

5カ月ぶりの悪化

・概況

景気DI(39.2)は5カ月ぶりに悪化した。9カ月連続で30台にとどまり、弱含みの横ばい基調で推移している。物価高騰の勢いが衰えず、あおりを受ける事業者が多いなか、先行き見通しも改善の動きには乏しい。「コメの価格高騰による恩恵を受ける半面、2026年度以降は大きく値段が下がることが心配」(農・林・水産、宮城県)と好況からの反転を危惧する声も聞かれた。消費動向の改善に向けては賃金の上昇がカギを握るなか、度重なるコストアップに価格転嫁が難航している状況にあり、当面の間は膠着状態が続くと見込まれる。

・景気DI

景気DI(39.2)は前月比0.3ポイント減少し、5カ月ぶりに悪化した。『全国』(43.4)との格差は4.2で前月比0.4ポイント拡大した。県別では、改善4県(「青森」「宮城」「秋田」「福島」)、悪化2県(「岩手」「山形」)となった。

・規模別DI

「大企業」(42.7)が前月比0.1ポイント増加し、「中小企業」(38.9)が同0.3ポイント減少した。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は3.8となり、同0.4ポイント拡大した。

・業界別DI

改善が『卸売』『運輸・倉庫』などの3業界、悪化が『農・林・水産』『建設』『金融』などの5業界、横ばいが『製造』『サービス』の2業界となった。『農・林・水産』(51.7)が最も高く、『小売』(34.9)が最も低かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は40.9(当月比1.7ポイント増)、「6カ月後」は41.1(同1.9ポイント増)、「1年後」は42.1(同2.9ポイント増)となった。前月との比較では3指標全てで悪化した。

■青森県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.9

0.7

2カ月ぶりに改善

・概況

青森県の景気DIは43.9となり、前月から0.7ポイント改善し、2カ月ぶりに改善した。業界別で高い比率を占める『建設』が改善した。また、一次産業となる水産業の水揚げ増加に加え、ブロイラーなどの出荷額の安定やインバウンド需要の取り込みによる「飲食料品卸売」の好調などが全体を下支えする構図となっている。全体としては、物価高に対して価格転嫁が徐々に進む一方、最低賃金の上昇など人件費の上昇圧力がさらに強まっており、今後もしばらくは一進一退の足踏み状態が続く可能性が高い。

・景気DI

景気DIは43.9となり、前月から0.7ポイント改善した。都道府県別順位は11位と前月の16位からアップし、引き続き東北6県の中ではトップとなった。収穫期の到来や、不振が続いていた水揚げの回復によって改善した「飲食料品卸売」などが全体の景気DIを押し上げた。

・規模別DI

「大企業」は50.0と前月から大幅に改善し、「中小企業」も前月から小幅改善したが、「小規模企業」では悪化した。年明けから、悪化トレンドにあった「大企業」が改善した一方、「中小企業」と「小規模企業」では一進一退が続いており、規模別で差が生じている。

・業界別DI

業種別では、「飲食料品卸売」と一部連動する「飲食料品小売」が改善したが、「家電・情報機器小売」と「自動車・同部品小売」がそれぞれ悪化するなど、『小売』全体では悪化し、業種間に差が生じている。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」と「6カ月後」がいずれも前月比改善し、また「1年後」については横ばいとなった。『卸売』と『サービス』が全体を下支えする構図となっている。

■岩手県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

37.6

-2.6

6カ月ぶりの悪化

・概況

景気DIは6カ月ぶりに悪化し、再び40を下回った。「大企業」は判断の分かれ目となる50を10カ月連続で下回り、「中小企業」は12カ月連続で40を下回った。業界別では引き続き『卸売』や『小売』の苦境が目立つ。先行き見通しの「1年後」はブロック最低の39.5にとどまる。物価高や人件費上昇に加えて、「トランプ関税」の影響も懸念され、当面は一進一退の景気動向が続くと見込まれる。

・景気DI

景気DIは前月比2.6ポイント減の37.6となり、6カ月ぶりに悪化した。前月は2024年11月調査以来でDIが40を上回ったが、再び40を下回った。都道府県順位は全国45位(前月は全国35位、前年同月は全国39位)。

・規模別DI

「大企業」は前月比5.0ポイント減の41.7となり、判断の分かれ目となる50を10カ月連続で下回った。「中小企業」は同2.2ポイント減の37.3となり、12カ月連続で40を下回った。「大企業」と「中小企業」の格差(大企業-中小企業)は4.4(前月は7.2)。

・業界別DI

『卸売』は前月比4.2ポイント増と持ち直したが依然30.0と低水準にとどまった。『小売』は30.7、『サービス』は35.6、『建設』は40.2、『製造』は41.3と、いずれも前月より悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が38.8、「6カ月後」が39.4、「1年後」が39.5と、いずれも40を上回った前月より悪化した。すべての項目で40を下回ったのは、『東北』の中で「岩手」のみであり、『東北』や『全国』を下回った。

■宮城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

37.7

0.1

2カ月連続の改善

・概況

景気DI(37.7)は2カ月連続で改善したものの、9カ月連続で40台を下回ったことから、都道府県別順位は44位と下位で推移している。業界別では『建設』が2024年12月以降、10カ月連続で30台の推移となっており、資材高による建築需要の停滞や計画見直しからの回復に時間を要している。宮城県では10月から最低賃金が引き上げられるため、パート・アルバイトを多く雇用する『小売』『サービス』をはじめ、多くの企業にとって収益を圧迫する要因になりかねず、景気動向は低位で推移すると見込まれる。

・景気DI

景気DI(37.7)は前月比0.1ポイント増と2カ月連続で改善したものの、9カ月連続で40台を下回った。『全国』(43.4)との比較では5.7ポイント下回り、格差は前月から横ばいとなった。都道府県別順位は前年同月46位から44位と上昇しているものの、依然として下位で推移している。

・規模別DI

「大企業」(42.7)は前月比2.2ポイント増加した一方、「中小企業」(37.3)は同0.1ポイント減少した。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は5.4で同2.3ポイント拡大した。

・業界別DI

改善は『不動産』『製造』『卸売』などの5業界、悪化は『運輸・倉庫』『小売』の2業界、横ばいは『農・林・水産』『金融』『建設』の3業界となった。『不動産』(48.5)が最も高く、『小売』(27.8)が最も低かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は40.0(当月比2.3ポイント増)、「6カ月後」は39.8(同2.1ポイント増)、「1年後」は41.5(同3.8ポイント増)となった。前月との比較では3指標全てで悪化した。

■秋田県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

1.5

2カ月連続で改善

・概況

景気DIは、『東北』が前月比0.3ポイント悪化したものの、『全国』が同0.1ポイント増と僅かに改善した。『東北』では、「岩手」「山形」が悪化したが、本県と「青森」「福島」「宮城」がやや改善した。秋田県内は米の価格高騰が要因となり、農・林・水産業の景況は底堅い。しかし、依然として物価高にともなう個人消費の低迷の影響を受けている企業も多いほか、原材料の値上げ分を価格転嫁できない企業も多く、企業間格差が拡がってきていると懸念される。

・景気DI

「秋田」の景気DIは41.9と8月を1.5ポイント上回り、2カ月連続で改善した。『東北』6県では前月の第2位のままであったものの『東北』を2.7ポイント上回った。また、『全国』(43.4)を1.5ポイント下回ったものの、都道府県順位は前月の第33位から第26位に持ち直した。

・規模別DI

規模別では、「大企業」が前月比3.7ポイント減の46.3となったが、「中小企業」が同2.0ポイント増の41.5と改善した。これにより、「大企業」と「中小企業」の格差はやや縮まった。

・業界別DI

業界別では、『運輸・倉庫』『建設』『不動産』の3業界が悪化したものの、『その他』の1業界が横ばい、『卸売』『製造』『サービス』『小売』『農・林・水産』の5業界が前月比で改善した。改善したなかでは、『農・林・水産』(58.3)の前月比8.3ポイント増が目立った。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」41.6、「6カ月後」41.3、「1年後」40.8と今後は緩やかに悪化するという見方であった。原材料の高騰が今後も続くと予想されるほか、最低賃金のアップが自社の収益に与える影響を懸念する経営者も多く、先行きの景況は不透明と言わざるを得ない。

■山形県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

36.7

-2.1

2カ月連続悪化

・概況

「受注が順調に推移している」(建設、大企業)、「米価の高騰で農家の方の販売意欲が高く、非常に好況」(製造、小規模企業)など、一部改善に向けた声が聞かれる。一方で、「夏物衣料の在庫がたくさん余っている。晩夏商戦も買い控えで売り上げが取れない状況」(小売、小規模企業)、「賃金が上がらず、買い控えがみられる」(小売、中小企業)など厳しいコメントが依然として多く聞かれる。10月から物価の改定による値上げが行われているが、物価高による買い控えが企業経営にさらなる影響を及ぼす可能性にも注目が必要とされる。

・景気DI

「山形」の景気DIは前月比2.1ポイント低下し36.7となり2カ月連続で悪化した。『全国』は同0.1ポイント上昇し43.4と4カ月連続で改善した。『東北』は同0.3ポイント悪化の39.2となり、全国が緩やかに改善するなか「山形」『東北』のDIは前月比低下した。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.8ポイント改善し41.1を示した一方、「中小企業」は同2.6ポイント悪化の36.2と2カ月連続で悪化した。うち「小規模企業」は同4.9ポイント悪化の35.1となり、特に小規模企業が大幅な悪化を示した。

・業界別DI

業界別では『金融』を除く比較可能な8業界において、全てが前月比悪化した。なかでも『サービス』は3カ月連続で前月比悪化し、『建設』『製造』『小売』の3業界については2カ月連続で悪化した。各業界において厳しい環境を反映したようだ。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は前月比0.5ポイント悪化の40.9、「6カ月後」は同0.9ポイント悪化の41.7、「1年後」は同0.2ポイント悪化の44.6を示した。いずれの指標も今後の見通しの厳しさを示した。

■福島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.1

0.6

7カ月ぶりに40台に回復

・概況

4業界が改善して「福島」の景気DI(40.1)は前月比0.6ポイント上昇し、3カ月ぶりに改善したほか7カ月ぶりに40台に回復した。企業からは「トラックの稼働率が高い状態を維持」(運輸・倉庫)との声がある一方、「県北地方の仕事量が少ない」(建設)、「商談案件が少ない」(製造)、「猛暑のため消費量が減少」(小売)などの声が届いた。トランプ関税の行方や物価高による節約志向定着への懸念に加え、猛暑も重なり厳しいコメントが多数を占めているため、引き続き今後の景気動向は一進一退で推移する可能性が高い。

・景気DI

「福島」の景気DIは、40.1と8月を0.6ポイント上回って、3カ月ぶりに改善したほか、7カ月ぶりに40台に回復した。『全国』の景気DIは、前月(43.3)を0.1ポイント上回り、43.4であった。「福島」の都道府県別順位は、前月の第39位から第37位に上昇した。

・規模別DI

「大企業」(40.0)は前月比1.1ポイント低下、「中小企業」(40.2)は同0.9ポイント上昇、「小規模企業」(36.2)は同0.3ポイント上昇した。格差(大企業-中小企業)は▲0.2となり、5カ月ぶりに「中小企業」が「大企業」を上回った。

・業界別DI

『不動産』『建設』『製造』は悪化したが、『運輸・倉庫』『小売』『卸売』『サービス』の4業界が改善した。『建設』は5カ月連続で40台を維持したものの、『小売』は13カ月連続、『製造』においては20カ月連続で30台にとどまった。

・先行き見通しDI

「1年後」の先行き見通しDIは4業界が当月からの改善を見込んでいる。特に『製造』は当月(36.2)から9.8ポイント、『運輸・倉庫』も同(40.5)から9.5ポイントの改善を見込んでいる。一方、業界比率の突出している『建設』の「1年後」は、同(41.0)から1.4ポイント悪化の39.6を見込んでおり、やや懸念される。

「東北ブロック(2025年09月)」の詳細(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)