レポート

TDB景気動向調査2025年09月(南関東ブロック:埼玉・千葉・東京・神奈川)

■南関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.9

横ばい

全国トップを維持するも不透明感漂う

・概況

『南関東』の景気DIは45.9と前月と同数となり、全国10地域中ではトップを堅持した。都市部の再開発や不動産市場の活況が下支えとなり、デジタル投資や好調な金融市場も景気マインドの押し上げ要因となった。一方で、業界別の先行き見通しでは「1年後」で50以上の業界はなく、物価高や上がらない実質賃金、これから本格化するトランプ関税の影響など先行き不透明感は払拭されず、当面は横ばいでの推移が見込まれる。

・景気DI

『南関東』の景気DIは前月から横ばいの45.9。全国順位は7カ月連続でトップを維持した。都県別では、「神奈川」が4カ月連続、「東京」が3カ月連続の改善となった。一方で、「千葉」「埼玉」は悪化に転じ、わずかながらもバラツキがみられた。

・規模別DI

「大企業」は49.8と前月から0.4ポイント改善、「中小企業」は45.1で横ばいだった。「小規模企業」は44.7、同0.4ポイント悪化したことから、規模間格差は4.7ポイント、前月から0.4ポイント拡大した。

・業界別DI

業界別では6業界で改善、4業界で悪化した。『金融』は2カ月連続の改善。好調な不動産市況や再開発事業によって『建設』『不動産』は改善に転じた。一方で、4カ月連続で改善していた『運輸・倉庫』(43.6)は1.6ポイントの悪化に転じ、物価高などで『卸売』や『小売』も落ち込んだ。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は47.6(前月47.3)、「6カ月後」は47.3(同47.2)、「1年後」は47.6(同47.3)となり、いずれも前月から改善した。業界別では、『建設』『不動産』『サービス』の「3カ月後」「6カ月後」でDIが50以上となった。

■埼玉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.6

-0.1

2カ月ぶりに悪化

・概況

埼玉県の景気DIは前月比0.1ポイント減の42.6となり、2カ月ぶりに悪化した。改善、悪化を繰り返しながら引き続き小幅な変化にとどまっている。企業からは、「良い会社と悪い会社両方存在している」(卸売)との意見にあるように、同業界でも見方が割れるのが近年の特徴。そうしたなか、共通している懸念材料は、物価高や人件費などコストアップ、その価格転嫁の難しさ、猛暑をはじめとした天候不順など。加えて、中国経済の低迷や最低賃金上昇をマイナス要因とする企業は増えつつあり、設備投資や個人消費の鈍化を警戒している。

・景気DI

景気DIは42.6となり、前月比0.1ポイント減で2カ月ぶりに悪化した。3カ月連続して1.0ポイント未満の変化幅で、ほぼ横ばいの状態が続いている。全国は微増、『南関東』は横ばい、管内都県はいずれも小幅な増減。「埼玉」の全国順位は21位となり、前月(21位)と全く同ランクで変化はみられない。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.6ポイント減の45.5、「中小企業」は同横ばいの42.2、「小規模企業」は同0.7ポイント減の42.0となった。「大企業」が悪化した一方で、「中小企業」は横ばいであったことから、規模間格差は3.3ポイントとなり、前月より0.6ポイント縮小した。規模別でも変動幅は小さい。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、前月比改善は4業界、横ばいが1業界、悪化が4業界。改善業界は『不動産』が前月比2.2ポイント増と幅が大きく、悪化業界では『小売』が同3.6ポイント減と大きかった。結果、DI30台は前月よりひとつ増えて3業界、50台はひとつ減って2業界、40台は変わらず。『製造』は30台が続く。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.2、「6カ月後」45.1、「1年後」46.8となり、前月(45.2、45.7、46.4)と比べ「3カ月後」は変わらず、「6カ月後」は減少、「1年後」は増加した。先へ行くほど上昇の傾向が続いていたが、当月は「6カ月後」に一旦落ち込む見通し。『南関東』では「神奈川」を除き同様の傾向。

■千葉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.9

-0.2

4カ月ぶりに悪化

・概況

「千葉」の景気DIは43.9となり、4カ月ぶりに悪化した。企業からは、「猛暑の影響で空調機器の交換工事が多い」(建設)、「食品業界の設備投資が活発化してきた」(機械製造)などの声が聞かれた。一方で、「原材料価格の高騰が続いている」(食料品卸)「人手不足で外注比率が上がり利益率は低下」(ビルメンテナンス)などの声もあがっている。物価高騰や実質賃金の低下、消費の落ち込み懸念などから、先行き判断には慎重な姿勢がみられる。

・景気DI

「千葉」の景気DIは43.9となり前月比0.2ポイント低下、4カ月ぶりに悪化した。全国は前月から0.1ポイント増の43.4となり、「千葉」は全国を0.5ポイント上回ったが、全国順位は前月(9位)から11位へと後退した。

・規模別DI

「大企業」は44.6で前月比1.7ポイント減少、2カ月連続で悪化した。「中小企業」は同横ばいの43.8となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は0.8ポイント(前月2.8ポイント)へと1.7ポイント縮小した。

・業界別DI

『その他』を除く9業界のうち、『農・林・水産』『建設』『不動産』『製造』『小売』の5業界は前月比改善、『金融』『卸売』『運輸・倉庫』『サービス』の4業界は悪化した。『建設』は4カ月連続で改善した一方で、『サービス』は4カ月ぶりに悪化し50を割り込んだ。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.7(前月45.4)、「6カ月後」は44.4(同44.2)、「1年後」は44.7(同44.6)となり、3指標とも前月比改善したものの改善幅はわずかで、6月以降は4カ月連続で「1年後」が「3カ月後」を下回っている。また、『小売』『サービス』は先へ行くほど低下している。

■東京都

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.3

0.1

3カ月連続で改善するも依然として

不透明感漂う

・概況

「東京」の景気DIは47.3で、3カ月連続で改善した。企業からは「引き合い案件が多く景気自体は良いが、人手不足や仕入れ機器、外注費の上昇もあり、楽観できる状況ではない」(建設)、「値上げが浸透しない上に仕入れ原価の高騰が厳しい」(運輸・倉庫)などの声が聞かれた。従前からの物価高に加え、これから本格化するトランプ関税の影響など、先行きの不透明感は払しょくされず、一進一退の景況感が続くとみられる。

・景気DI

「東京」の景気DIは47.3(前月47.2)で、3カ月連続で改善し、全国(43.4)を3.9ポイント上回った。都道府県別順位は3位となり、前月(2位)から1ランク後退したものの、『南関東』の1都3県で突出した数値となっている。

・規模別DI

「大企業」(50.3)と「中小企業」(46.4)はともに前月比0.1ポイント改善した一方で、「小規模企業」(46.5)は前月比0.6ポイント悪化した。規模間格差は3.9ポイントとなり、前月と横ばいだった。

・業界別DI

全10業界中、6業界が改善、4業界が悪化した。『建設』(52.5)『サービス』(51.3)はいずれも前月比で0.8ポイント増となり、2カ月ぶりに改善、『不動産』(55.9)は2カ月連続で改善した。一方で、『運輸・倉庫』(44.4)は同2.6ポイント減と2カ月連続で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(48.7、前月48.2)、「6カ月後」(48.4、同48.1)、「1年後」(48.5、同48.1)となり、すべての指標で改善した。『南関東』の1都3県の中で、いずれも最高値となっている。

■神奈川県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.9

0.1

4カ月連続の前月比改善

・概況

「神奈川」のDIは4カ月連続の前月比改善となった。「請負単価の上昇」(建設)、「防衛関連需要が良い」(鉄鋼・非鉄・鉱業)といった声の一方で、「価格転嫁できていない」(建設)、「インフレ環境で話が進まなくなりつつある」(その他の卸売)など、これまでの課題への対応に苦慮している声が多く聞かれた。また、取引先の受注減や減産、猛暑の影響や企業間格差を指摘する声も散見され、「先行き景気の好材料は見当たらない」(専門商品小売)のように、景気回復を実感できない企業は多い。

・景気DI

「神奈川」の景気DIは44.9と前月(44.8)から0.1ポイント増加し、小幅ながらも4カ月連続の前月比改善となった。全国順位は6位で、前月から横ばい。引き続き低水準にとどまっており、予断を許さない状況は変わらないが、年末に向け持ち直し傾向が続くのか注目される。

・規模別DI

「大企業」は52.8(前月比4.3ポイント増)、「小規模企業」は42.6(同0.1ポイント増)とそれぞれ改善したのに対し、「中小企業」は44.0(同0.3ポイント減)となった。「大企業」はこの1年の最高値となり、「大企業」と「中小企業」の格差は8.8ポイントで、乖離幅はこの1年で最大となった。

・業界別DI

9業界中、4業界で前月比改善となった。『建設』が3カ月連続で50.0を上回り、『運輸・倉庫』は2カ月連続の改善となった。一方で、『製造』は4カ月ぶり、『卸売』は3カ月連続の悪化となり、『小売』は2カ月ぶりに改善したものの依然として低水準にとどまっている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は46.3(前月46.6)、「6カ月後」は46.4(同46.6)、「1年後」は46.8(同46.9)でそれぞれ前月から悪化した。「1年後」は『金融』を除く8業界で50.0を下回り、足元の改善傾向に反し、先行きへの警戒感・不透明感は高まる結果となった。

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