レポート

TDB景気動向調査2025年09月(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

■九州ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.6

0.2

9ヶ月ぶりに改善

・概況

『九州』の景気DIは、44.6と9ヶ月ぶりに改善した。企業からは「福岡都市圏での建設業においては、マンションデベロッパーやインバウンドに対応する小規模ホテル建設の引き合いが依然として多い。受注残も相応に抱えている状況である。一方で、新築の戸建て住宅は苦戦している模様。」(福岡県、建設)などの声が聞かれる。DI50台は、業界別で『その他』、県別で「沖縄」のみ。引き続きインバウンド需要はあるが、原燃料高、人件費負担増に対し、価格転嫁も十分ではなく、緩やかな下落傾向ながら一進一体の推移が見込まれる。

・景気DI

『九州』(44.6、前月比0.2ポイント増)は9ヶ月ぶりに改善した。10業界中5業界、8県中4県で改善。『九州』8県中10位以内は4県。先行き見通しDIは「3カ月後」、「6カ月後」、「1年後」で2カ月連続で改善。ブロック別では7カ月連続で全国2位。

・規模別DI

「大企業」(49.5、前月比1.0ポイント増)は2カ月ぶりに改善。「中小企業」(43.9、前月と同数)は横ばい。30カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回り、規模間格差は5.6ポイントと前月から1.0ポイント拡大。「小規模企業」は42.1(同0.4ポイント減)と2カ月ぶりに悪化。

・業界別DI

『不動産』(44.3、前月比4.5ポイント減)『農・林・水産』(39.5、同1.3ポイント減)など10業界中5業界で悪化したものの、『運輸・倉庫』(45.8、同2.5ポイント増)など5業界で改善。DI50台は『その他』のみ。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(47.1、前月比0.7ポイント増)、「6カ月後」(46.8、同0.3ポイント増)、「1年後」(47.0、同0.5ポイント増)はいずれも2カ月連続で改善した。業界別では『不動産』『卸売』『その他』が全指標で悪化、『農・林・水産』『金融』『建設』『製造』『運輸・倉庫』が全指標で改善した。

■福岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.4

-0.2

2カ月連続の悪化

・概況

「福岡」の景気DIは、インバウンド需要や都市再開発事業等が追い風となるものの、個人消費等の伸び悩みなどから、2カ月連続で悪化した。企業からは「関西万博やジャングリア沖縄の開業等は業界にとっては追い風になった」(運輸・倉庫)などのコメントがある一方、「先が見通せない状況。過度な円安が解消されることに期待したい」(卸売)などの声があった。インバウンド効果などによって一部の業界は好調な推移を維持しているが、物価の上昇などが多くの業界にマイナスとなっており、今後も一進一退の状況が続こう。

・景気DI

「福岡」(44.4、前月比0.2ポイント減)は、2カ月連続の悪化。業界別では、『建設』『運輸・倉庫』『サービス』の3業界で改善した。『農・林・水産』(33.3)など3業界で横ばい。『不動産』『製造』など4業界で悪化。都道府県別順位は9位で前月(8位)からダウン。『九州』8県での順位は前月と同じ4位。

・規模別DI

「大企業」49.7(前月比1.0ポイント増)は2カ月ぶりの改善。「中小企業」43.4(同0.5ポイント減)、「小規模企業」41.5(同1.1ポイント減)は2カ月連続で悪化した。規模間格差は「大企業」が「中小企業」を6.3ポイント上回った。

・業界別DI

『農・林・水産』(33.3)『金融』(50.0)『その他』(50.0)は横ばい。『建設』(50.0、前月比0.9ポイント増)、『運輸・倉庫』(50.0、同6.9ポイント増)など3業界で改善。『不動産』(46.1、同4.7ポイント減)、『製造』(39.0、同0.5ポイント減)など4業界で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(47.0、前月比0.1ポイント減)、「6カ月後」(47.6、同0.1ポイント減)で悪化。「1年後」(48.1、同0.2ポイント増)で改善。業界別では、『農・林・水産』『金融』『建設』『製造』『運輸・倉庫』で3指標すべてが改善。『不動産』『卸売』『小売』ですべて悪化した。

■佐賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.9

1.9

悪化と改善を繰り返す

・概況

「佐賀」の景気DIは43.9と前月より1.9ポイント改善した。前年末の改善傾向に反し、2025年は改善と悪化を繰り返している。各業界で景気回復を望む声は多いものの、原材料高に対する値上げへの不安は大きく、改善を見通せないことから足踏み状態が続いている。各業界業種で浮沈がみられ、「佐賀」の景気には停滞感が漂っており、その行く末が注目される。

・景気DI

「佐賀」の景気DIは、2025年に入り改善と悪化を繰り返しており、42~43ポイント台を行き来しているが、43.9と前月より1.9ポイント改善した。「佐賀」の都道府県別順位は前月の26位から11位に浮上した。『全国』は4カ月連続で改善し43.4、『九州』は2カ月連続改善で44.6となった。

・規模別DI

「大企業」は2カ月連続で悪化し、42.4と前月より3.4ポイントダウンした。「中小企業」は44.2と前月より3.4ポイント改善、うち「小規模企業」も同4.3ポイント改善の45.4となった。規模間格差は前月より6.8ポイント縮小の▲1.8となり、9カ月ぶりに反転した。

・業界別DI

『製造』は改善傾向にあったが4カ月ぶりに悪化した。『建設』は公共工事の発注に地域差はみられるが、受注単価が高まっており4.2ポイント改善。『卸売』『小売』は低水準に変わりはなかったが、2~3カ月ぶりに改善したことが、全体を押し上げた。

・先行き見通しDI

「3か月後」は45.6(前月43.3)、「6か月後」は46.2(同43.3)、「1年後」は45.3(同44.6)と全指標で改善した。原材料価格の上昇や消費鈍化は懸念されるが、年末年始および年度末にかけての一般消費など需要増に期待感が高まった。

■長崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.0

1.8

2カ月ぶりに改善

・概況

「長崎」の景気DIは前月比1.8ポイント増と2カ月ぶりに改善した。造船業を中心とした製造業は好景況感を維持しているが、「案件が非常に少ない」(建設業)という声と「公共事業が順調に落札できている」(建設業)と同じ業界でも明暗が分かれている様子もうかがえた。また、値上げの影響による買い控えやトランプ関税の影響で大手企業からの発注が減少しているとの指摘もあった。「長崎」の景況感にはまだ力強い回復基調がみられないため、今後も外部環境に影響を受けながら予断を許さない状況が続くことが見込まれる。

・景気DI

「長崎」の景気DIは前月比1.8ポイント増の41.0と2カ月ぶりに改善した。『九州』8県中、本県を含めて4県が改善し、九州ブロック内順位は前月から順位を1つ上げて7位となった。都道府県別順位は前月の41位から7つ上がり34位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比横ばいの39.4、「中小企業」は同2.1ポイント増の41.3、「中小企業」のうち「小規模企業」は同横ばいの39.1となった。「大企業」が横ばいだった一方、「中小企業」が改善したことで、規模間格差は逆転して▲1.9となった。

・業界別DI

前月から改善した業界は『農・林・水産』『金融』『製造』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』の7業界と前月の1業界から大幅に増加した。前月に改善した『不動産』は前月から大幅に悪化した。なお、『建設』は前月と同水準であった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.2(前月42.2、前月比3.0ポイント増)「6カ月後」44.7(同43.8、同0.9ポイント増)「1年後」46.0(同43.8、同2.2ポイント増)といずれも前月を上回った。業界別でみると『製造』『卸売』が先へ行くほど改善見通しだが、『運輸・倉庫』は逆に悪化見通しとなった。

■熊本県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.8

-1.0

2カ月ぶりに悪化

・概況

「熊本」の景気DIは前月比1.0ポイント減の45.8と2カ月ぶりに悪化した。「TSMC進出およびインバウンド効果を感じる」(サービス)と明るい話題が見られた一方で、「物価高や住宅着工戸数の伸び悩みが懸念」(卸売)、「不動産売買の案件が減少」(サービス)と不安を示す声が増えている。2025年度の熊本県の最低賃金が全国最大となる82円引き上げが決定し、大企業と比較して経営体力に乏しい中小零細企業の人件費上昇などが景気に悪影響を及ぼす可能性があり、しばらくは不透明な情勢が続くだろう。

・景気DI

「熊本」の景気DIは45.8で前月比1.0ポイント減と2カ月ぶりに悪化した。一方で、『九州』(44.6)は前月比0.2ポイント増となり、「全国」(43.4)も同0.1ポイント増となった。なお、「熊本」の都道府県別順位は第5位(前月第3位、前年同月第5位)と前月から2ランク下がった。

・規模別DI

「大企業」の景気DIは56.7と前月から1.7ポイント増となったが、「中小企業」は44.8と同1.3ポイント減となった。26カ月連続で「大企業」が「中小企業」の景気DIを上回り、規模間格差(大企業-中小企業)に関しては「大企業」が改善して「中小企業」が悪化したため、11.9ポイントに差が広がった。

・業界別DI

9業界中、改善した業界は『農・林・水産』『建設』『小売』の3業界となった。一方で悪化した業界は『金融』『不動産』『製造』『卸売』『サービス』の5業界となり、『運輸・倉庫』は横ばいだった。半導体関連の受注が弱含みとなるなど世界経済の不確実性が高まり、悪化した業界が多かった。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは「3カ月後」が47.7(前月48.5)、「6カ月後」は47.7(同47.2)、「1年後」は47.4(同46.4)となった。日米交渉の合意を受け、米トランプ関税への不安が若干和らいだが、最低賃金の上昇にともなう人件費負担への懸念が高まり、「3カ月後」の指標が前月から悪化した。

■大分県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.8

2.6

3カ月ぶりに改善

・概況

秋の観光シーズンに入り、様々なイベントが開催されたほか、観光需要が好調に推移して『サービス』は改善した。主要国の金融政策や通商政策の影響を受けつつも、経済は緩やかな回復基調となり、特に個人消費の持ち直しや企業の設備投資意欲の底堅さから『建設』『製造』も改善。一方、『運輸・倉庫』は材料費や運送費などのコストが上昇し、企業負担への懸念がDIを押し下げた。今後も米国の高関税政策など外需の悪化が景気の重荷となり、中小・零細企業は危機感や不安を払拭できず、県内の景気動向は一進一退の状況が続くと予想される。

・景気DI

「大分」は前月比2.6ポイント増の47.8となり、3カ月ぶりに改善した。全国順位は第2位(前月第5位・前年同月第2位)となり、前月と比べて上昇した。一方、判断の分かれ目となる「50」を9カ月連続で下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.1ポイント増の47.9となった。「中小企業」は同2.7ポイント増の47.8、「中小企業」のうち「小規模企業」は同2.7ポイント増の48.4となった。規模間格差は0.1となり、3カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回った。

・業界別DI

業界別では『建設』『製造』『サービス』が前月より改善した。『サービス』は前月比5.4ポイント増の54.4となり2カ月ぶりに「50」を上回った。一方で『卸売』『小売』『運輸・倉庫』は悪化し、特に『運輸・倉庫』は同3.9ポイント減の43.3となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」51.3(前月47.1)、「6カ月後」50.0(同47.6)、「1年後」48.9(同47.8)となり、3指標とも前月から改善した。ただし、「1年後」は「50」を下回った。業界別では、『製造』『サービス』が3指標ともに「50」を上回り、『卸売』『小売』は3指標ともに「50」を下回った。

■鹿児島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.0

-0.9

2カ月ぶり悪化

・概況

「鹿児島」の景気DIは42.0と2カ月ぶりの悪化となった。企業からは、「民間工事の動きが徐々に出てきた」といった声は上がった一方、マイナス面では「異常気象」や「物価高」、「人口減少」、「消費減退」といったキーワードが多く上がった。「鹿児島」では、先行きに対し厳しい見方をする企業の声が多い状況に変わりは無く、今暫くは一進一退の状況が続くものと推察される。

・景気DI

「鹿児島」の景気DIは42.0と前月比0.9ポイント悪化した。『九州』は0.2ポイントの改善となる44.6、『全国』は0.1ポイントの改善となる43.4だった。全国的に小幅ながら改善が見られるなか、「鹿児島」は悪化し、都道府県別順位は前月の20位から24位に後退した。近時は悪化と改善を繰り返しており、一進一退の状況が続いている。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.3ポイント改善となる53.3となった一方、「中小企業」は同1.4ポイント悪化の40.7、「中小企業」のうち「小規模企業」も41.2と同2.2ポイント悪化した。「大企業」の改善に対し「中小企業」の悪化がみられたことで、規模間格差(大企業-中小企業)は4.7ポイント拡大した。

・業界別DI

改善は『金融』、『建設』、『製造』、『小売』の4業界、『農・林・水産』、『不動産』、『卸売』、『運輸・倉庫』、『サービス』の5業界が悪化となった。前月は7業界が改善となったが、今月に入り悪化業界が増えるなど、改善と悪化を繰り返す業界が多く、依然として一進一退の状況にあると言えよう。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.7と前月比0.6ポイントの改善、「6カ月後」は444と同0.2ポイントの悪化、「1年後」も同0.2ポイント悪化の44.4となるなど、中長期での悪化が目立つ形となった。景気DI同様に先行きに対しても、一進一退の状況が続いている。

■沖縄県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

54.3

-2.0

2カ月ぶりに悪化

・概況

「沖縄」の景気DIは、2カ月振りに悪化した。「公共工事や各種製造など全体的には仕事は多く売上は良いが、物価や人件費高騰により減益となっている」、「住宅新築工事が減っている」などの企業からの声がある。また、コスト上昇に加え、一部の業種や企業によっては減収を懸念していることで、先行き見通しに不安が残り、引き続き動向は注視していく必要がある。

・景気DI

「沖縄」の景気DIは前月比2.0ポイント(以下、P)減の54.3となった。業種別では7業界中、2業界が悪化した。また、都道府県別順位は30カ月連続で全国1位となり、『全国』(43.4)、『九州』(44.6)を上回っている。

・規模別DI

「大企業」(72.2、前月比5.5P増)で2カ月振りの改善、「中小企業」(53.4、前月比2.7P減)、「中小企業」のうち「小規模企業」(49.4、前月比5.3P減)は、ともに2月振りの悪化となった。

・業界別DI

前月と比較可能な7業界中、『建設』(3.2P増)、『製造』(2.1P増)、『小売』(2.1P増)の3業界が改善、『不動産』、『運輸・倉庫』の2業界が横ばい、『卸売』(12.5P減)、『サービス』(3.0P減)の2業界が悪化した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」が54.5(前月56.0)、「6カ月後」は51.3(前月52.7)、「1年後」は49.2(前月50.3)でいずれも前月より悪化した。

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