レポート

TDB景気動向調査2025年09月(北関東ブロック:茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

■北関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.3

0.3

2カ月ぶりに改善

・概況

『北関東』の景気DIは41.3となり2カ月ぶりに改善し、7月調査時の水準となった。2カ月連続で悪化した『製造』など4業界が悪化したが、『サービス』『不動産』など6業界が改善して全体をけん引した。引き続きインバウンド需要が下支えとなり、米国向け自動車関税が15%に引き下げられたことへの期待の声もあるが、企業からはトランプ関税や人手不足、原材料価格の高騰を訴える声が依然多く聞かれた。非正規社員の多い企業では最低賃金引き上げの影響を懸念する声もあり、当面の景気は一進一退の状況が続くものと思われる。

・景気DI

『北関東』の景気DIは前月比0.3ポイント増の41.3となった。2カ月ぶりに改善し、7月調査時と並ぶ形となった。域内5県では「栃木」「山梨」「長野」が悪化し、「茨城」「群馬」が改善。なかでも「茨城」が2ポイント以上の改善となり全体を押し上げた。全国10地域での順位は前月から1ランク後退の8位だった。

・規模別DI

「大企業」(47.6)、「中小企業」(40.6)、「小規模企業」(38.7)となった。「大企業」「中小企業」は前月から改善し、「小規模企業」のみが悪化した。特に「大企業」の改善幅が大きく、12カ月ぶりにDIが47台となった。この結果「大企業-中小企業」の規模間格差は7.0と、2020年5月以来の水準となった。

・業界別DI

全10業界中、悪化したのは『製造』や『小売』など4業界、改善は『金融』『不動産』など6業界だった。『製造』は2カ月連続の悪化で、2024年1月から連続で40割れが続いている。他方、『建設』『卸売』など4業界は2カ月連続で改善し、『金融』は2カ月ぶりに判断の分れ目となる50まで回復した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(43.7、前月43.3)「6カ月後」(44.5、前月44.0)「1年後」(45.5、前月45.0)となり、全ての区分で前月より改善した。業界別で、1年後のDIが最も高いのは『サービス』の48.5。また、現状(9月調査)より1年後のDIが改善するのは『製造』『卸売』など6業界となった。

■茨城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.3

2.2

3カ月ぶりに改善

・概況

「茨城」の景気DIは前月比2.2ポイント増の43.3となり、3カ月ぶりに改善した。物価高による個人消費の低迷や、原材料高を価格に転嫁できない企業の苦戦が続く中での回復だが、先行きは依然として不透明である。10月からは茨城県でも最低賃金が引き上げられ、人件費負担の増加が企業経営を圧迫する懸念も強まっている。足元では景況感に回復の兆しが見られるものの、収益環境には厳しさが残る。こうした状況を踏まえると、当面は一進一退の展開が続くと見込まれ、景気動向については、引き続き注意深く見守る必要があるだろう。

・景気DI

「茨城」の景気DIは43.3となり、前月比2.2ポイント上昇。6月以来、3カ月ぶりの改善となった。トランプ大統領は、自動車などへの25%の追加関税を従来の税率と合わせて15%に引き下げる内容の大統領令に署名。米政権の関税政策を巡る日米合意などにより不透明感が後退し、企業心理の好転につながったとみられる。

・規模別DI

「大企業」は前月比5.2ポイント増の45.2となり、3カ月ぶりに改善。「中小企業」も同1.9ポイント増の43.1で、3カ月ぶりの改善。「小規模企業」は同1.1ポイント増の40.9となり、2カ月連続の改善。「大企業」「中小企業」「小規模企業」が揃って改善したのは、2025年6月以来、3カ月ぶりである。

・業界別DI

『農・林・水産』『製造』など7業界が改善。『金融』『不動産』の2業界は横ばい、悪化した業界はなかった。改善幅が最も大きかった『農・林・水産』は、農作物の販売価格上昇がプラス要因。『製造』は、自動車などに対するトランプ関税の追加分25%が、従来の税率と合わせて15%に引き下げられたことが材料視された。

・先行き見通しDI

「3カ月後」46.4(前月43.8)、「6カ月後」45.1(同44.9)、「1年後」45.5(同44.4)と、いずれの指標も前月を上回った。企業からは、「トランプ関税も決着し、軌道に乗り始めれば回復の兆しが見える」「新規事業のスタートに伴い、売上の増加が見込める」といった前向きな声が複数寄せられた。

■栃木県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.3

-0.7

4カ月ぶりに悪化、

中小企業のマインド低下

・概況

3カ月連続で改善していた景気DIだが、4カ月ぶりに悪化した。ただし、総体的には大きな数値変化はなく、極めて低調の中でわずかに変化している。物価高は止まるところを知らず、原価の高騰、コストアップは特に中小企業を苦しめており、米国の関税政策の影響が今後顕在化してくることから、企業の間では様子見のスタンスが強い。株価は高いが、中小企業の経営環境は全く改善されておらず、業界間格差もさることながら、同一業界でも好調企業と不振企業の格差も広がっており、しばらくは弱含みの景気マインドが続くものと見られる。

・景気DI

9月の景気DIは41.3と4カ月ぶりの悪化となった。6月以降40台はキープしているものの、わずかな変化に止まり、栃木県の企業マインドは低迷が続いていると見てよいだろう。特に中小・小規模企業の景況感が悪く、規模間格差が拡大している。物価高騰が吸収しきれず利幅を落とし、一方では価格転嫁が進んでいない。

・規模別DI

「大企業」49.3(前月47.7)、「中小企業」39.6(同40.9)、「小規模企業」38.3(同42.2)と、大企業の回復が進む一方で中小・小規模企業のマインドは下がっている。規模間格差は9.7まで広がった。不況下においては、業績好調企業と不振企業の収益格差が広がる。同じ業種でもこの現象は顕著だ。

・業界別DI

業界別では『卸売』が前月比+3.1を示したが、『建設』▲4.2、『小売』▲2.6、『運輸・倉庫』▲1.1、『製造』▲0.9と、軒並み下落した。価格転嫁に無縁な金融や不動産、比較的スムーズな卸売などでは、DIの改善が見られるため、この要素が大きいと想定できる。また、受注弱含みの業界は低迷が続く。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.1(前月43.6)、「6カ月後」43.8(同42.9)、「1年後」43.5(同43.3)と、一進一退が続いている。「関税の影響が具体的に出る。対策によっては影響も出るのでは」や、「政局の不安定が経済政策にも影響するのではないか・・」といった声も聞かれ、不透明感は否めないところだ。

■群馬県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.8

1.5

4カ月連続で改善

・概況

群馬県内企業からは「株式市場が好調で、資産運用に関して好意的な見方が増えてきた」(サービス)、「工場等の設備投資案件を数多く受注している」(製造)との明るい声が聞かれる。一方、「新設住宅着工戸数が減少している」(建設)、「売り上げは増加したが、人件費、資材等が値上がりし、利益は伸びない」(運輸・倉庫)など厳しい意見もある。最低賃金の上昇、人手不足、物価高、価格転嫁の停滞、米国高関税政策のマイナス影響など、企業業績の下振れ要素が山積しているため、景況感は不透明感が強い状況が続くだろう。

・景気DI

景気DIは前月比1.5ポイント増の40.8と4カ月連続で改善した。『全国』の改善幅(前月比0.1ポイント増)を上回った結果、「群馬」の47都道府県別順位は35位(前月40位)に上昇した。5カ月ぶりに40超に改善したものの、『北関東3県』においては「茨城」「栃木」より低位にある。

・規模別DI

「大企業」 は前月比2.9ポイント増の48.7で、3カ月ぶりに改善した。「中小企業」は同1.2ポイント増と4カ月連続で改善。「小規模企業」は前月比横ばいだった。「大企業」の改善幅が大きかった結果、「大企業」と「中小企業」の規模間格差は8.6に拡大した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界では、 『農・林・水産』『卸売』の2業界が悪化、『小売』など6業界が改善した。『製造』は横ばいだった。『運輸・倉庫』は3カ月連続改善、『建設』は2カ月連続で改善した。8月まで3カ月連続で緩やかに改善していた『製造』が横ばいとなり、米国相互関税の影響に注目したい。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が42.4(前月42.1)、「6カ月後」が44.0(前月43.5)、「1年後」が44.4(前月44.3)となった。「3カ月後」「6カ月後」「1年後」の3指標とも前月より改善した。先に行くほどDI は高く、現在2.6ポイントとなっている全国との格差は、 「1年後」には1.4ポイントまで縮小。

■山梨県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.6

-1.5

2カ月連続悪化

・概況

「山梨」の景気DIは2カ月連続で悪化した。企業からは、「暑さが収まらず、引き続きエアコン関連の受注がある。インバウンド消費は若干減ったが、まだとても多い」(小売)の声が聞かれた。一方、「人手不足でこなせない。応援を呼ぶと高くつく」(建設)、「金やプラチナが高騰して、販売が全く振るわなくなった」(製造)などマイナスの声も多い。先行きについては、インバウンド消費は堅調であるが、物価高・人手不足・トランプ関税の影響を懸念する声は多く、景況感の悪化傾向は続くとみられる。

・景気DI

「山梨」の景気DIは前月比1.5ポイント減の42.6となり、2カ月連続で悪化。全国は同0.1ポイント増の43.4だった。「山梨」は全国を0.8ポイント下回り、都道府県別順位は前月の9位から21位に下がった。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.9ポイント増の48.6、「中小企業」は同1.8ポイント減の41.9、「小規模企業」は同2.0ポイント減の40.7となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は、「大企業」が大きく改善したため、前月より3.7ポイント拡大して6.7ポイント差となった。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、1業界が改善、6業界が悪化、2業界が横ばいとなった。『製造』『卸売』の2業界が2カ月連続で悪化している。判断の分かれ目となる50を上回っているのは、『建設』『サービス』の2業界。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.2(前月45.8)、「6カ月後」45.0(同46.0)、「1年後」46.5(同47.7)となった。3指標とも前月を下回っている。3指標とも50を上回っているのは、インバウンド消費拡大の影響を受けている『サービス』の1業界のみである。

■長野県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.1

-0.3

2カ月連続で悪化

・概況

「長野」の景気DIは、2018年10月から50を下回る「悪い」状況が続いている。「ソフト開発は仕事量が増えているが、人材不足で受注を逃している」(広告関連)などの声があがる一方で、「受注の回復が見られず、人余り現象が起きている」(輸送用機械・器具製造)という意見もあり、人手不足感の業種間格差は大きい。また、「価格転嫁への理解度は取引先により明確に分かれ、理解が乏しい先からは失注や業者切り替えも発生している」(出版・印刷)など、コスト上昇の転嫁の困難さを訴え、先行き不安を抱える企業は依然多い。

・景気DI

「長野」の景気DIは40.1と、前月比0.3ポイント減少し2カ月連続で悪化した。前年同月と比べると1.1ポイント悪化した。また、同0.1ポイント改善した「全国」を3.3ポイント下回り、格差は0.4ポイント拡大した。都道府県別順位は37位と前年同月から3ランク上昇したが、前月からは4ランク低下した。

・規模別DI

規模に比例しDIは高い。前月比で「大企業」が0.5ポイント、「小規模企業」が0.8ポイントともに改善の一方、「中小企業」は0.3ポイント悪化。規模間格差は「大企業」と「中小企業」は0.8ポイント拡大。一方「大企業」と「小規模企業」は0.3ポイント、「中小企業」と「小規模企業」は各1.1ポイント縮小。

・業界別DI

『サービス』は前月比2.8ポイント改善し、3カ月ぶりにプラスとなった一方で、『運輸・倉庫』は同2.0ポイント、『製造』は同0.4ポイント、『建設』は同0.1ポイントそれぞれ2カ月連続で悪化。『卸売』は3カ月ぶりに同1.9ポイント、『小売』は2カ月ぶりに同1.4ポイントそれぞれ悪化した。

・先行き見通しDI

「長野」、規模別の「中小企業」「小規模企業」、業界別の『製造』『卸売』『サービス』は長期になるほど改善予想。「大企業」は一進一退のうえ改善、『運輸・倉庫』は改善の後現状程度、『小売』は改善のうえ横ばい、『建設』は改善の後悪化を見込む。「長野」としては、33カ月連続で長期になるほど改善を予想している。

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