レポート

TDB景気動向調査2025年09月(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

■近畿ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.5

-0.2

2カ月ぶりに悪化、先行きは短期の見通しが悪化

・概況

近畿経済は、万博特需も含めたインバウンド需要に支えられているものの、トランプ関税発動に伴う需要の変動に加え、他地域に比べて輸出依存度の高い中国経済の減速が影響し、弱含みの展開が続いている。先行きに関しては、政治の不安定化に対する懸念が広がっているうえ、万博特需の消失、最低賃金の引き上げなども重なり、短期的な指標が悪化している。中期的にも、内需型の『不動産』は弱含み、『小売』は伸び悩みの傾向がみられているように回復への力強さを欠く状況下、景気は当面、足踏み状態での推移が続く可能性が高い。

・景気DI

『近畿』は前月比0.2ポイント減の42.5と、2カ月ぶりに悪化した。大阪・関西万博の閉幕を控えるなか、石破首相の退陣表明による政治の不安定化が懸念された。府県別では「滋賀」など4府県が悪化。4カ月連続で改善した全国(43.4、同0.1ポイント増)とは対照的で、全国との格差は▲0.9ポイントに広がった

・規模別DI

「大企業」(前月比0.7ポイント減)が2カ月ぶりに悪化したのに対し、「中小企業」は前月と変わらず。規模間格差は、過去最大だった前月から若干縮まったものの、依然として6.9ポイントと高い水準にある。なお、「小規模企業」(同1.0ポイント増)は4カ月ぶりに40台に回復した。

・業界別DI

『不動産』が4カ月ぶりに50台に回復するなど5業界が改善したものの、4業界が悪化。『製造』『卸売』『運輸・倉庫』からは、いわゆるトランプ関税への懸念が聞かれ、「自動車関連の受注が減少」(鉄鋼・非鉄・鉱業、滋賀県)といった声もあった。『サービス』では「リース・賃貸」「情報サービス」の悪化が目立った。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比0.2ポイント減)は3カ月ぶりに悪化した一方で、「6カ月後」(同0.4ポイント増)と「1年後」(同0.1ポイント増)はそれぞれ2カ月連続で改善した。とりわけ、「3カ月後」について、規模別では全規模が悪化。業界別では内需型の『不動産』『小売』は改善したが、6業界が悪化した。

■大阪府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.1

-0.3

2カ月ぶりに悪化、万博特需剥落の懸念強まる

・概況

インバウンドを含む多くの観光客を集めた大阪・関西万博の閉幕が迫るなか、首相退陣に伴う政治の不安定化、最低賃金の引き上げといった事象が重なり、「大阪」の景況感に変化が生じる可能性が出てきている。調査結果としては、インバウンド需要の取り込みなどを意識し、先行き見通しDIなどに強めの値が表れているが、『製造』『卸売』を中心に、関税や米中関係の変化を懸念する声が広く聞かれるなど、先行き不透明感が強いのが実情だ。物価上昇に伴い消費者の生活防衛意識も高まっており、景気はやや弱含みでの推移となりそうだ。

・景気DI

「大阪」は、万博特需の恩恵を受けながらも、前月比0.3ポイント減の43.1と、2カ月ぶりに悪化した。4カ月連続で改善した全国(43.4、同0.1ポイント増)とは対照的な結果となり、格差(大阪-全国)は▲0.3ポイントと、2カ月ぶりにマイナス圏に。都道府県別順位は前月の15位から16位へと後退した。

・規模別DI

「大企業」(前月比0.5ポイント減)は4カ月ぶり、「中小企業」(同0.3ポイント減)も2カ月ぶりに悪化した。規模間格差は、過去最大となった前月から縮小したものの、依然として7.6ポイントと大きな開きがある。なお、「小規模企業」は4カ月ぶりに40台に回復した。

・業界別DI

万博終了後の解体工事の受注を見込む『建設』のほか、機械分野が好転した『製造』など5業界が改善した一方で、4業界が悪化。特に、個人消費が弱含む『小売』や、万博特需が消失する警備業などを含む『サービス』の悪化が目立った。『運輸・倉庫』にはトランプ関税に伴うメーカーの生産調整で物量が減少する影響が出た。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は前月と変わらず。他方、「6カ月後」(同1.4ポイント増)と「1年後」(同0.7ポイント増)はともに2カ月連続で改善した。規模別では「大企業」の先行き3指標が、また、業界別では『不動産』『サービス』の先行き3指標が、いずれも50を超えた。

■京都府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.1

-0.2

2カ月ぶりの悪化、規模間格差が9.9に拡大

・概況

「京都」の景気DIは2カ月ぶりに悪化した。たび重なる物価高や残暑などの影響で、多くの企業から「消費マインド停滞」の声が聞かれる。価格転嫁の遅れや人件費高騰などで企業の収益性は悪化傾向にあり、特に『製造』『卸売』の低迷が続く。「インバウンドで観光地や商業地の地価は上昇しているが、住宅地は動きが悪い」(不動産)など、同業種でもエリアや企業規模で二極化がみられ、景況感はまだら模様となっている。今後はトランプ関税や最低賃金の引き上げなどの影響から、景況感はさらに停滞する可能性がある。

・景気DI

「京都」の景気DIは、前月比0.2ポイント減の42.1に悪化した。『近畿』の順位は3位(前月4位)、都道府県別の順位は23位(同25位)となり、いずれも上昇したが、『全国』(43.4)との格差は▲1.3ポイント(前月は▲1.0ポイント)に拡大、10カ月連続で『全国』を下回った。

・規模別DI

「大企業」(50.5、前月48.4)、「中小企業」(40.6、同41.3)、「小規模企業」(39.1、同38.8)となり、「大企業」は18カ月ぶりに50を上回った。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は前月比+2.8ポイントの9.9に拡大、2020年7月以来の格差となった。

・業界別DI

10業界中4業界が改善、4業界が悪化した。『不動産』『運輸・倉庫』など4業界が50以上となる一方、『製造』は7カ月連続、『卸売』は11カ月連続で40を下回った。価格転嫁の遅れなどで『製造』『卸売』の停滞感は強く、業界間格差が拡大している。

・先行き見通しDI

「3カ月後」44.5(前月44.5)、「6カ月後」44.6(同45.1)、「1年後」44.7(同46.1)となり、「6カ月後」「1年後」は前月を下回った。『建設』『不動産』は全指標で改善、『製造』『卸売』『小売』『サービス』は全指標で悪化見通し。「中小企業」「小規模企業」が全期間で悪化見通し。

■兵庫県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.0

0.3

2カ月ぶりの改善

・概況

「兵庫」の景気DIは2カ月ぶりの改善となったが、前年同月を下回る水準での一進一退が続いている。『小売』は大幅の改善となったが「観光関連だけは良い」(小売)のようにセグメントによって異なるとのコメントも見受けられた。一方「前回の選挙で給付金を出すと言っていたがいつになったら出てくるのか分からない」(サービス)など、物価高と低迷する個人消費への政府の対応を期待する声も多かった。引き続き、日本の経済政策動向と秋冬物商戦への個人消費動向が注目される。

・景気DI

「兵庫」の景気DIは前月比0.3ポイント増の42.0で2カ月ぶりの改善となった。前年同月比は6カ月連続の悪化。全国順位は24位。『全国』は前月比0.1ポイント増の43.4で4カ月連続の改善、『近畿』は同0.2ポイント減の42.5で2カ月ぶりの悪化となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.1ポイント減の46.3で2カ月ぶりの悪化。「中小企業」は同0.5ポイント増の41.4、うち「小規模企業」は同1.4ポイント増の40.1となった。規模間格差は4.9ポイント(前月7.5ポイント)と前月比で2.6ポイントの縮小となった。

・業界別DI

10業界中5業界で改善。『小売』は前月比5.4ポイント増の39.3で2カ月ぶりの改善となったが14カ月連続の30台。『運輸・倉庫』は、同2.3ポイント増の45.2で2カ月連続の改善だった。他方、『製造』は同2.1ポイント減の39.3で2カ月ぶりの悪化だった。

・先行き見通しDI

3カ月後は前月比横ばい、6カ月後は同0.2ポイント減、1年後は同横ばいと6カ月後のみ悪化。業界別では『金融』『小売』『サービス』で全指標改善、『農・林・水産』『建設』で全指標悪化となった。規模別では小規模企業で全指標悪化となった。

■滋賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.8

-1.7

2024年6月以降で、最も低い水準まで悪化

・概況

「滋賀」の景気DIは前月比1.7ポイント悪化した。企業からは「市外からの人流がやや増加しつつある」(専門商品小売業)といった声がある一方、「機械メーカーの主要市場である欧米の金利高、物価高の影響で生産量縮小が1年半以上続いている」(輸送用機械器具製造業)、「戸建て新築物件数が激減状態にあり、土地と建築費が高額なため販売不振が続いている」(建築業)などの声が聞かれ、当面は景気動向について注視していく必要があろう。

・景気DI

「滋賀」の景気DIは41.8と前月比1.7ポイント悪化した。業界別では悪化が5業界、改善が3業界、横ばいが1業界となった。近畿ブロック内の2府4県別順位は5位まで後退したほか、全国においては27位(前年同月は16位)となった。

・規模別DI

「大企業」が41.0と前月比3.9ポイント、「中小企業」が41.9と同1.4ポイント、「小規模企業」は43.9と同0.4ポイントそれぞれ悪化した。また、「大企業」は4カ月ぶりに「中小企業(うち小規模含む)」を下回った。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中3業界で改善、1業界で前月比横ばい、5業界で悪化した。『不動産』『卸売』『サービス』が改善した一方で、大きく落ち込んだ『建設』『小売』を中心に悪化した業界が多かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が43.6(前月45.7)、「6カ月後」が43.4(前月46.2)、「1年後」が43.6(前月45.9)だった。滋賀県で開催されている国スポ・障スポによる経済効果が見込まれるものの、世界経済の不安定さに加え物価高騰による消費マインドの停滞が先行き不安の要因とみられる。

■奈良県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.5

-0.1

4ヶ月ぶりに悪化

・概況

「奈良」の景気DIは前月から0.1ポイント悪化し38.5となり、4ヶ月ぶりに悪化となった。「夏の暑さにより秋の予約が鈍行」(サービス)、「万博閉会後、景気が落ち着く」(卸売)、「民間のリフォームなど需要が低調」(建設)などのマイナス材料の声があった。全体的に先行きが読めないという考えが見受けられ、今後もトランプ関税による影響や物価高による価格高騰など影響を受ける一面もあり、不安定な景気が続きとみられる。

・景気DI

「奈良」の景気DIは38.5と前月から0.1ポイント悪化し、都道府県別では前月同様43位となった。『近畿』では「兵庫」「和歌山」が前月より改善したが、そのほかの地域は悪化する結果となった。『近畿』は前月より0.2ポイント悪化し42.5、『全国』は0.1ポイント改善し43.4となっている。

・規模別DI

「大企業」は39.6と前月比4.2ポイント悪化した。「中小企業」は38.4と同0.5ポイント改善し「小規模企業」は40.1と同3.0ポイント改善する結果となった。唯一「大企業」の悪化に伴い。規模間格差は4.7ポイント縮まり1.2となり、格差が減っている。

・業界別DI

『不動産』は3.3ポイント、『製造』は同0.4ポイント改善した。一方、『卸売』は同1.8、『サービス』は同1.2ポイント、『小売』は同0.7ポイント、『建設』は同0.2ポイントそれぞれ悪化し、業種によって景況感の差が現れている。

・先行き見通しDI

「3ヶ月後」40.6(前月比1.9ポイント減)、「6ヶ月後」40.6(同1.9ポイント減)、「1年後」42.4(同0.3ポイント減)とすべての期間において悪化見通しとなった。

■和歌山県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.1

0.6

3カ月連続持ち直しも、不透明感は続く

・概況

「和歌山」は前月比0.6ポイント増の43.1と3カ月連続で改善した。しかし食品などの物価高が継続する中、消費者の節約志向は高まっており、「物が売れない、動かない」(製造業)との声も聞かれ、先行き不透明感が高まりつつある。県内企業の全体感としては大崩れもしていない一方で、好景気という声も少ない。大都市圏の企業との商流を持つ企業と県内での商流に留まる企業との景況感に差が生じており、県内企業の景況感は今後一進一退が続くものと予想される。

・景気DI

「和歌山」は、前月比で0.6ポイント増の43.1と、3カ月連続で改善した。『全国』(43.4)には届かなかったものの、『近畿』(42.7)を上回り、少しずつ持ち直しの動きが出つつある。

・規模別DI

「大企業」が前月比0.2ポイント増の51.9、「中小企業」が同0.8ポイント増の42.0と「大企業」「中小企業」ともに改善したが、「中小企業」のDIはやや低調な感は否めない。県外に取引先を有している大企業の受注動向は比較的堅調ながら、県内の下請け業務に終始している中小企業との格差は広がっている。

・業界別DI

『建設』(47.1)、『運輸・倉庫』(38.9)、『卸売』(39.4)は前月比で悪化したが、『小売』(43.3)、『サービス』(42.6)、『製造』(41.7)は前月比で改善した。「自動車業界向け金型の動きが鈍い(機械製造業)」「客単価は上昇したが、来店客数は減少している(飲食店)」などの声もある。

・先行き見通しDI

3カ月後が45.6(前月45.6)、6カ月後が44.4(同43.3)、1年後が44.0(同42.5)となった。3カ月後については前月と同水準だったが、6カ月後および1年後についてはやや改善の兆しが見えつつある。

「近畿ブロック(2025年09月)」の詳細(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)