レポートTDB景気動向調査2025年08月(東海ブロック:愛知・岐阜・三重・静岡)

■東海ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.2

1.6

2カ月連続で改善

・概況

『東海』の景気DIは2カ月連続での改善で、上昇幅は2023年3月以来となった。先行き不透明感をもたらしていたトランプ関税がひとまずの妥結を見たことで、幅広い業界で景況感は改善した。価格転嫁による業況改善が進んでいるとの声も一部では聞かれるが、コスト高や人手不足が懸念材料である状況に変化はない。トランプ関税の影響が具体化するのはむしろこれからであり、引き続き景況感は一進一退の展開となりそうだ。

・景気DI

トランプ関税の一応の妥結により自動車関連で前向きな声が聞かれ、『東海』の景気DIは43.2と前月から1.6ポイント上昇し2カ月連続での改善となった。全国10地域中の『東海』の順位は、前月から変わらず4位。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.8ポイント、「中小企業」は同1.6ポイント、「小規模企業」は同1.2ポイントそれぞれ改善。すべての規模で改善となるのは13カ月ぶり。「大企業」の改善が続き、規模間格差は3カ月連続で拡大した。

・業界別DI

10業界中、改善は7業界、悪化は2業界、横ばいが1業界。「関税率発表後から荷動きに若干の改善が見られる」との声がある『運輸・倉庫』は、2019年5月(49.7)以来の水準まで回復。そのほか、自動車向けに好調さが見られる『製造』なども改善。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は44.4で前月から1.6ポイント、「6カ月後」は44.5で同1.3ポイント、「1年後」は45.2で同0.9ポイントそれぞれ改善。すべての指標が改善となるのは2カ月ぶり。

■愛知県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.5

1.3

2カ月連続で改善

・概況

「愛知」の景気DIは、2カ月連続で改善。関税問題が想定ほどではなかったことで安堵感が広がり、景況感が改善。しかし、関税の影響が出てくるのはまだ先であり、企業には慎重な姿勢がうかがえる。異常な猛暑だったが、帰省や夏休みシーズンの観光は堅調で関連業界には明るさもみられる。猛暑対策用品は好調だったが食品などの物価高が続いており、小売業には勢いはみられず、節約志向も強くなっている。海外情勢の悪化に加え、国内政局にも不安定さがみえるなど好材料は乏しく、景況感は一進一退の展開を余儀なくされそうだ。

・景気DI

懸念されていたトランプ関税が一応の決着となったことで、不安感がやや和らいだこともあって、「愛知」の景気DIは43.5と.2カ月連続で改善となった。しかし、物価高の影響は大きく、先行きへの懸念は残っている。都道府県別の順位は前月から5ランクアップの13位。

・規模別DI

「大企業」(49.2)は3カ月連続、「中小企業」(42.3)は横ばいをはさんで3カ月ぶりに、それぞれ改善。一方、「小規模企業」(40.1)は2カ月ぶりに悪化。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は6.9ポイントとなり、3カ月連続で拡大した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、改善が5業界、悪化が3業界、横ばいが1業界。猛暑の影響はあったものの帰省や夏休みの観光で人の動きが活発化したこともあり、『運輸・倉庫』『サービス』が改善、物価高騰の影響を受ける『小売』が3カ月ぶりに悪化。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は44.6(前月42.9)で前月から1.7ポイント、「6カ月後」は44.4(同42.7)で同1.7ポイント、「1年後」は44.8(同44.2)で同0.6ポイントそれぞれ改善。しかし、すべての指標が全国を下回っており、慎重な見方が強い。

■岐阜県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.0

4.4

3カ月ぶり改善。5カ月ぶりに40を上回る

・概況

「岐阜」の景気DIは43.0で3カ月ぶりの改善となった。引き続きインバウンドのプラス効果や、自動車部品など足元の堅調さを窺わせる声があったほか、トランプ関税がひとまず決着したこともプラスに作用した。一方「猛暑による仕入れ単価の上昇と消費の低迷」(小売)、「物価上昇と実質賃金の減少の影響」(サービス)といったマイナスの声が聞かれた。また先行き新米価格の高騰による影響を指摘する声があったほか、トランプ関税の影響は下半期以降に表れると見る向きもあり、県内景況感が改善に向かうか持続的に注視していきたい。

・景気DI

岐阜県内企業の景気DIは前月比4.4ポイント増の43.0となり、3カ月ぶりに改善したほか、5カ月ぶりに40を上回った。東海4県では岐阜県が最も改善幅が大きかった。全国DIは11カ月連続で下回ったが、全国順位は19位(前月41位、前年同月35位)に上昇し、東海4県では6カ月ぶりに最下位を脱した。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.4ポイント減の43.3で2カ月ぶりに悪化。一方「中小企業」は同5.0ポイント増の42.9で2カ月ぶりに改善したほか。中小企業のうち「小規模」は同5.0ポイント増の40.6で3カ月ぶりに改善した。「中小企業」の改善によって規模間格差は同5.4ポイント減の0.4に縮まった。

・業界別DI

前月と比較できる8業界中、5業界で改善。『製造』は前月比5.2ポイント増、『卸売』は同4.4ポイント増、『小売』は同5.1ポイント増、『運輸・倉庫』は同8.3ポイント増、『サービス』は同8.4ポイント増となり、いずれの改善幅も大きかった。また50台を超えた業界は前月の2業界から4業界となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.6(前月40.4)、「6カ月後」42.9(同41.0)、「1年後」43.9(同41.6)となり、全ての指標で改善した。前月にトランプ関税の方向性が明確となり、不透明感が和らいだことによる安堵感や、円高による燃料費値下がりなどへの期待感が表れる形となった。

■三重県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.8

2.8

3カ月連続で改善

・概況

「三重」県内企業の景況感は3カ月連続で改善。大企業、中小企業ともに改善が進み、DIで43超は4カ月ぶり。関税交渉の進展に伴う日経平均株価の上昇や備蓄米対応を背景に米価格の低下、8月のお盆を中心とする長期連休によって観光をはじめ人流が活発化し、消費拡大の効果がみられた。しかし一方で、自動車業界では追加関税の引下げ時期が見えず、当地でも新たな開発の減少や荷動きの低下が聞かれた。加えて人手不足の問題や物価高が続く状況下で不安要素も散見されることから、県の景況感は今しばらく一進一退を辿るものとみる。

・景気DI

三重県内企業の景気DIは前月比2.8ポイント増の43.8となり、3カ月連続の改善。全国DIを4カ月ぶりに上回った。また、都道府県別順位は12位となり、前月の27位から15ランク上昇、東海4県の中でも4カ月ぶりに1位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.9ポイント増の48.7と3カ月連続で改善。「中小企業」は同2.8ポイント増の43.1、このうち「小規模企業」も同3.2ポイント増の43.1とそれぞれ2カ月ぶりに改善した。結果として「大企業」が「中小企業」を5カ月連続で上回り、規模間格差は5.6ポイントとなった。

・業界別DI

前月と比較可能な8業界では、DIが50で最も高い『不動産』は4カ月連続で横ばい。このほか、7業界すべてが改善した。『建設』は4カ月ぶりの改善、『運輸・倉庫』は昨年9月以来11カ月ぶりにDI40台に回復。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.2(前月43.4)、「6カ月後」47.0(同45.0)、「1年後」47.4(同45.3)とそれぞれの期間で前月よりも改善。一方、業界別で『建設』は1年後が40未満に後退、『運輸・倉庫』はそれぞれの期間で横ばいにとどまり不透明感が窺える。

■静岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.5

0.5

4カ月連続で改善

・概況

「静岡」の景気DIは42.5と4カ月連続で改善した。企業からは、「今年の夏が猛暑なため、増産となった」(製造)との明るい声もあったが、一方で「自動車業界などは先行き不透明で、必要不可欠な安全対策の設備を除き、その他の設備投資は控えているため」(卸売)、「物価高の影響による外食控えと猛暑の影響が相まって客足が遠退いている」(サービス)など厳しい声も多くあがった。景気DIは緩やかに改善してはいるものの、トランプ関税や物価高、天候不順を懸念する企業も多く、先行き見通しは依然として不透明感が残る。

・景気DI

「静岡」は前月比0.5ポイント増の42.5となり、4カ月連続で改善した。全国(43.3)との比較では0.8ポイント下回り、全国順位では第22位となり、前月の第19位より低下した。なお、東海4県のなかでは、前月比の改善幅が小さかったため、2023年1月以来の最下位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比横ばいの46.7となり、良否判断の分かれ目となる50を6カ月連続で下回った。「中小企業」では同0.6ポイント増の41.8となった。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は前月より0.6ポイント縮まり、4.9ポイント差となった。

・業界別DI

主要6業界では『運輸・倉庫』が前月比5.8ポイント増の50.0となり、8カ月ぶりにトップ。一方で、『卸売』は同1.0ポイント増の38.3となったが、4カ月連続で最下位となった。なお、改善した業界は『運輸・倉庫』『サービス』『小売』『卸売』の4業界、悪化した業界は『建設』『製造』の2業界となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は44.0(前月43.7)、「6カ月後」は44.6(同44.5)、「1年後」は45.7(同45.2)となり、2カ月ぶりに3指標ともに前月を上回った。なお、規模別では「大企業」は何れも前月を下回ったが、「中小企業」と「小規模企業」では何れも前月を上回った。

■山梨県、長野県は、北関東エリアに含んで集計しています。

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