レポートTDB景気動向調査2025年08月(東北ブロック:青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)

■東北ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.5

0.3

4カ月連続の改善

・概況

景気DI(39.5)は4カ月連続で改善した。新米の概算金が発表され、引き続きコメ価格が高値推移の見通しとなった『農・林・水産』の好調さが目立つ一方、他業種においては足踏み状態が続いている。物価高騰による需要減退や価格転嫁難により様々な業種で停滞感がみられたほか、8月の猛暑の影響から特に『小売』で個人消費が落ち込んでいる声も聞かれた。景気DIは改善傾向が続いているものの、ブロック別最下位の状況に変わりはなく、業況改善の見通しも乏しいことから景気動向は概ね横ばいで推移すると見込まれる。

・景気DI

景気DI(39.5)は前月比0.3ポイント増加し、4カ月連続で改善した。『全国』(43.3)との格差は3.8で前月比0.2ポイント拡大した。県別では、改善3県(「岩手」「宮城」「秋田」)、悪化3県(「青森」「山形」「福島」)となった。

・規模別DI

「大企業」(42.6)が前月比0.8ポイント減少し、「中小企業」(39.2)が同0.5ポイント増加した。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は3.4となり、同1.3ポイント縮小した。

・業界別DI

改善が『農・林・水産』『金融』『小売』などの6業界、悪化が『不動産』『運輸・倉庫』『卸売』の3業界、横ばいが『建設』の1業界となった。『農・林・水産』(55.1)が最も高く、『卸売』(35.2)が最も低かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は41.9(当月比2.4ポイント増)、「6カ月後」は41.6(同2.1ポイント増)、「1年後」は42.5(同3.0ポイント増)となった。前月との比較では3指標全てで改善した。

■青森県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.2

-0.2

4カ月ぶりに悪化

・概況

「青森」の景気DIは前月から0.2ポイント減の43.2となり、4カ月ぶりの悪化となった。一次産業の比率の高い「青森」では、一部魚種の水揚げ増やブロイラーなどの出荷額が安定していることにより、『農・林・水産』のほか一部連動する『運輸・倉庫』が前月比横ばいを維持した。一方、同様に比率の高い『建設』の悪化が全体を押し下げる構図となった。全体としては、物価高に対しても価格転嫁が徐々に進む一方、人件費の上昇圧力もさらに強まっており、今後もしばらくは一進一退の足踏み状態が続く可能性が高い。

・景気DI

景気DIは43.2となり、前月から0.2ポイント悪化した。都道府県別順位は16位と前月の12位からダウンとなったが、引き続き『東北』6県の中ではトップとなった。公共投資や住宅需要の低迷による『建設』の低下が、全体の景気DIを押し下げた。

・規模別DI

「大企業」は、41.7と前月から2.7ポイント悪化した一方、「中小企業」は43.3と前月から横ばい、また「小規模企業」では50.0と前月から5.6ポイント改善した。年明けから、「大企業」は悪化トレンドにあるものの、「中小企業」と「小規模企業」では改善傾向にあり、規模別で差が生じている。

・業界別DI

業界別では、「飲食料品卸売」や「機械・器具卸売」などの『卸売』が改善したうえ、一部連動する『小売』も改善した。しかし、新築着工棟数や公共事業が減少傾向にあり、『建設』の悪化によって全体を押し下げる構図となっている。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「6カ月後」が前月比横ばいであった一方、「3カ月後」と「1年後」がいずれも前月より悪化した。公共工事の発注量が減少傾向にあるため、『建設』では「3カ月後」、「6カ月後」、「1年後」でいずれも悪化見通しにある。

■岩手県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.2

1.1

5カ月連続の改善

・概況

景気DIは5カ月連続で改善し、2024年11月調査以来で40を上回った。ただし、「大企業」は判断の分かれ目となる50を9カ月連続で下回り、「中小企業」は11カ月連続で40を下回った。業界別では引き続き『卸売』や『小売』の苦境が目立つ。先行き見通しの「1年後」はブロック最低の40.3にとどまる。物価高や人件費上昇に加えて、「トランプ関税」の影響も懸念され、当面は一進一退の景気動向が続くと見込まれる。

・景気DI

景気DIは前月比1.1ポイント増の40.2となり、5カ月連続で改善した。DIが40を上回ったのは2024年11月調査以来。都道府県順位は全国35位(前月は全国37位、前年同月は全国45位)。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.3ポイント増の46.7となり、判断の分かれ目となる50を9カ月連続で下回った。「中小企業」は同0.9ポイント増の39.5となり、11カ月連続で40を下回った。「大企業」と「中小企業」の格差(大企業-中小企業)は7.2(前月は5.8)。

・業界別DI

『建設』は前月比2.8ポイント増となり、連続して40を上回った。『製造』は同1.6ポイント増とやや持ち直し、引き続き40を上回った。一方で、『卸売』は同6.1ポイント減の25.8と大幅に悪化、『小売』も34.4と低水準にとどまった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が43.0、「6カ月後」が40.8、「1年後」が40.3と、いずれも前月よりやや改善し40を上回った。前月の調査で40を下回る項目があったのは 『東北』の中で「岩手」および「宮城」のみだったが、今回の調査では『東北』全県の各項目で40を上回った。

■宮城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

37.6

0.7

2カ月ぶりの改善

・概況

景気DI(37.6)は2カ月ぶりに改善したものの、都道府県別順位は3カ月ぶりに最下位に落ち込み低位での推移が続いている。夏季休暇により『小売』や『サービス』などBtoC向けの業界では改善しているが、企業からは売り上げが昨年を下回っているといった声が複数聞かれており、物価高による個人消費低迷の影響は否めない。2025年10月以降、全都道府県で最低賃金が1000円を超える見通しとなったが、中小企業では賃上げが収益性をさらに圧迫する可能性もあり、景気動向は一進一退で推移すると見込まれる。

・景気DI

景気DI(37.6)は前月比0.7ポイント増と2カ月ぶりに改善したものの、8カ月連続で40台を下回った。『全国』(43.3)との比較では5.7ポイント下回り、格差は0.2ポイント縮小した。都道府県別順位は2025年5月以来3カ月ぶりに最下位となった。

・規模別DI

「大企業」(40.5)は前月比2.5ポイント減少した一方、「中小企業」(37.4)は同1.2ポイント増加した。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は3.1で同3.7ポイント縮小した。

・業界別DI

改善は『小売』『サービス』『卸売』『製造』などの5業界、悪化は『金融』『運輸・倉庫』『不動産』などの4業界、横ばいは『農・林・水産』の1業界となった。『運輸・倉庫』(47.6)が最も高く、『小売』(30.2)が最も低かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は41.5(当月比3.9ポイント増)、「6カ月後」は41.5(同3.9ポイント増)、「1年後」は42.5(同4.9ポイント増)となった。また、前月との比較でも3指標全てで改善した。

■秋田県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.4

1.7

4カ月ぶりに改善

・概況

景気DIは、『東北』が前月比0.3ポイント、『全国』が同0.5ポイント増と僅かに改善した。『東北』では、「青森」「山形」「福島」がやや悪化したが、「宮城」「岩手」および本県が改善した。秋田県内は農・林・水産、建設などの底堅い業界がある一方で、物価高にともなう個人消費の低迷により打撃を受けている業界も少なくない。また、本県沖で進めてきた洋上風力発電所の建設計画から三菱商事が撤退を表明したことで本県経済界の落胆の声も大きく、先行きの景況感は不透明要素が高まっていると言わざるを得ない。

・景気DI

「秋田」の景気DIは40.4と7月を1.7ポイント上回り、4カ月ぶりに改善した。『東北』6県では前月の第5位から第2位にアップしたほか、『東北』を0.9ポイント上回った。また、『全国』(43.3)を2.9ポイント下回ったものの、都道府県順位は前月の第40位から第33位に持ち直した。

・規模別DI

規模別では、「大企業」が前月比4.2ポイント増の50.0、「中小企業」が同1.4ポイント増の39.5といずれも改善した。これにより、「大企業」と「中小企業」の格差はやや拡がった。

・業界別DI

業界別では、『卸売』の1業界が悪化したものの、『不動産』の1業界が横ばい、『製造』『サービス』『農・林・水産』『建設』『小売』『運輸・倉庫』『その他』の7業界が前月比で改善した。改善したなかでは、『運輸・倉庫』(50.0)の前月比16.7ポイント増が目立った。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」41.3、「6カ月後」40.7、「1年後」42.0と現状よりは改善しながらも低調に推移するという見方に変化はなかった。物価高の影響で今後も消費が伸び悩み、これが景気動向に影響を与えるとの声が多かった。

■山形県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.8

-1.1

4カ月ぶりに悪化

・概況

企業からは、「アメリカの関税が明確になり、株価上昇も伴い業者の発注も上昇傾向」(建設、小規模企業)と一部前向きな声がある一方、「山形新幹線E8系が故障した影響で、観光やお盆期間の帰省が減少」(小売、大企業)、「猛暑の影響で来店客が極端に減少。米価も安定せず、生活防衛の影響が強い」(小売、小規模企業)、「資材高騰で需要減。働き手不足による受注減」(建設、小規模企業)など、天候や物価高を背景とした厳しい状況を指摘する声が増加しており、今後が注目される。

・景気DI

「山形」の景気DIは前月から1.1ポイント悪化して38.8となり、4カ月ぶりに悪化した。『全国』は同0.5ポイント改善の43.3で、改善は3カ月連続。『東北』は同0.3ポイント改善の39.5で、改善は4カ月連続。なお、「山形」は前年同月も38.8であった。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.3ポイント悪化の39.3で2カ月ぶりに悪化、「中小企業」は同1.1ポイント悪化の38.8で4カ月ぶりに悪化した。うち「小規模企業」は同0.2ポイント改善の40.0となり、規模別においては小規模企業のみ改善を示した。

・業界別DI

業界別では『金融』を除く比較可能な8業界において、前月比悪化したのは『建設』『製造』『小売』『サービス』の4業界。『農・林・水産』『不動産』『卸売』『運輸・倉庫』の4業界は前月比改善した。各業界が改善と悪化を繰り返す一進一退のなか『サービス』は2カ月連続で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は前月比1.3ポイント悪化の41.4、「6カ月後」は同0.4ポイント改善し42.6、「1年後」は同0.3ポイント改善の44.8を示した。「3カ月後」以外は今後の景気改善への期待を示した。

■福島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.5

-0.2

6カ月連続で30台にとどまる

・概況

4業界が悪化して「福島」の景気DI(39.5)は前月比0.2ポイント悪化し、6カ月連続で30台にとどまった。企業からは「米価の上昇」との声がある一方、「仕事量が少ない」(建設)、「半導体関連の案件が軟調」(製造)、「猛暑による個人消費の減退」(小売)、「猛暑の影響で客足が伸びない」(サービス)などの声が届いた。トランプ関税の影響や物価高による節約志向定着への懸念に加え、猛暑も重なり厳しいコメントが多数を占めている。引き続き今後の景気動向は弱含みで推移する可能性が高い。

・景気DI

「福島」の景気DIは、39.5と7月を0.2ポイント下回って、2カ月連続で悪化したほか、6カ月連続で30台にとどまった。『全国』の景気DIは、前月(42.8)を0.5ポイント上回り、43.3であった。「福島」の都道府県別順位は、前月の第35位から第39位となった。

・規模別DI

「大企業」(41.1)は前月比5.1ポイント低下、「中小企業」(39.3)は同0.3ポイント上昇、「小規模企業」(35.9)は同0.8ポイント低下した。格差(大企業-中小企業)は1.8となり、4カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回った。

・業界別DI

『農・林・水産』『製造』『金融』『建設』は改善したが、『運輸・倉庫』『不動産』『卸売』『サービス』の4業界が悪化した。『建設』は4カ月連続で40台を維持したものの、『小売』は12カ月連続、『製造』においては19カ月連続で30台にとどまった。

・先行き見通しDI

「1年後」の先行き見通しDIは6業界が当月からの改善を見込んでいる。特に『運輸・倉庫』は当月(30.6)から11.1ポイント、『金融』も同(38.9)から11.1ポイントの改善を見込んでいる。一方、業界比率の突出している『建設』の「1年後」は、同(44.0)から6.0ポイントの悪化を見込んでいる。

「東北ブロック(2025年08月)」の詳細(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)