レポートTDB景気動向調査2025年08月(南関東ブロック:埼玉・千葉・東京・神奈川)

■南関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.9

0.2

3カ月連続改善

・概況

『南関東』の景気DIは45.9と3カ月連続で改善し、8月に日経平均株価が過去最高を記録するなど、世界的な株高の影響から『金融』が伸びを示した。また、6カ月連続で全国トップとなり、2位の「東京」がけん引したほか、「神奈川」「千葉」は10位以内となった。一方で、業界別の先行き見通しでは「1年後」で50以上の業界はなく、トランプ関税の日米合意により緩和される見方はあるものの、「トランプ関税の影響が不透明」(製造)などのほか、先行きに対する不透明感を懸念する声が多く聞かれ、当面横ばいでの推移が見込まれる。

・景気DI

『南関東』の景気DIは45.9で、3カ月連続で改善。全国順位は6カ月連続のトップとなった。都県別では、全ての都県が改善し、「埼玉」は2カ月ぶりに前月から改善、「東京」は2カ月連続、「千葉」「神奈川」は3カ月連続で改善となった。

・規模別DI

「大企業」は49.4と前月から0.4ポイント悪化した。一方で、「中小企業」「小規模企業」ともに45.1となり、前月からそれぞれ0.4ポイント、0.8ポイント改善した。規模間格差は4.3ポイントとなり、前月から0.8ポイント縮小した。

・業界別DI

業界別では6業界で改善、1業界で横ばい、3業界で悪化した。『運輸・倉庫』(45.2)は4カ月連続で改善。『金融』は、株価高騰の効果から大幅に改善した。一方で、『農・林・水産』は3カ月連続で悪化となった。『建設』『不動産』『サービス』の3業界は50以上を維持したものの、他は横ばいもしくは悪化となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は47.3(前月46.7)、「6カ月後」は47.2(同46.5)、「1年後」は47.3(同46.8)となり、いずれも前月から改善した。業界別では、『建設』の「3カ月後」「6カ月後」と『不動産』『サービス』『農・林・水産』の「3カ月後」などで50以上となった。

■埼玉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.7

0.4

2カ月ぶりに改善

・概況

埼玉県の景気DIは前月比0.4ポイント増の42.7となり、2カ月ぶりに改善した。若干のプラスとはなったものの、企業からは苦しい現状を訴える声が多数を占める。物価高やトランプ関税といったこれまでも聞かれたマイナス要因はもとより、当月は猛暑と最低賃金の上昇をあげる企業が複数みられた。暑さによる外出控えで、一部業界では消費量が相当落ち込んでいる様子。最低賃金上昇は、個人所得環境にはプラスだが企業収益面ではダメージとなり、人件費増を販売価格に転嫁できず苦しい、といった悲鳴にも似た意見が聞かれた。

・景気DI

景気DIは42.7となり、前月比0.4ポイント増で2カ月ぶりに改善した。今年に入って改善、悪化を繰り返し、当月のDIは2カ月前の6月の数値に戻った格好。全国、『南関東』、管内都県いずれもプラスで、全て1.0ポイント未満の幅。「埼玉」の全国順位は21位となり、前月(17位)から4ランク後退した。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.1ポイント増の46.1、「中小企業」は同0.4ポイント増の42.2、「小規模企業」は同1.0ポイント増の42.7となり、全ての規模で改善した。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は3.9ポイントで前月比0.7ポイント拡大。「小規模企業」が「中小企業」を上回ったのは9カ月ぶり。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、前月比改善は5業界、横ばいが1業界、悪化が3業界。改善業界は、サンプル数の少ない『農・林・水産』を除くと『小売』が4.7ポイント増と大きい。『建設』『運輸・倉庫』は悪化したが小幅なマイナス。前月、DI50台はゼロであったが当月は3業界に。30台は2業界、40台は4業界。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.2、「6カ月後」45.7、「1年後」46.4となり、前月(43.6、45.1、45.8)と比べいずれの指標も上回った。「埼玉」では、先へ行くほど上昇の傾向が続いているが、全国や『南関東』、管内都県でみるとこのトレンドは「埼玉」のみ。「埼玉」は「3カ月後」が他都県と比べ低い。

■千葉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.1

0.9

3カ月連続で改善

・概況

「千葉」の景気DIは44.1となり、3カ月連続で改善した。企業からは、「受注は堅調で同業者と下請けの取り合いになっている」(建設)、「AI関連のシステム開発が好調」(情報サービス)などの声が聞かれた。一方で、「賃料の値上げは受け入れられているが、物件の新規購入が難しい」(不動産)、「猛暑と円安で利益率が低下」(食料品卸売)などの声もあがっている。足元の景況感は緩やかに回復しているが、物価高騰、消費の落ち込み、為替動向などの懸念材料があり、依然として先行きには不透明感が残る。

・景気DI

「千葉」の景気DIは44.1となり前月比0.9ポイント増加、3カ月連続で改善した。全国は前月から0.5ポイント増の43.3となり、「千葉」は全国を0.8ポイント上回ったことから、全国順位は前月(13位)から9位へと上昇した。

・規模別DI

「大企業」は46.3で前月比1.8ポイント減少、2カ月ぶりに悪化し、一進一退となっている。「中小企業」は同1.4ポイント増の43.8となり、3カ月連続で改善した。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は2.5ポイント(前月5.7ポイント)へと3.2ポイント縮小した。

・業界別DI

『その他』を除く9業界のうち、『建設』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』の5業界は前月比改善、『農・林・水産』『金融』『不動産』『製造』の4業界は悪化した。『サービス』は3カ月連続で改善し2カ月連続で50を超えたが、『小売』は12カ月連続で40を割り込んでいる。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.4(前月45.1)、「6カ月後」は44.2(同44.2)、「1年後」は44.6(同44.6)となり、「3カ月後」は改善したものの、「6か月後」「1年後」は横ばいで、先行きの不透明感は拭いきれない。

■東京都

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.2

0.1

2カ月連続で改善

・概況

「東京」の景気DIは47.2となり、2カ月連続で改善した。企業からは「地方のクライアントで活況に転じたような手ごたえを感じている」(金融)、「不動産価格、賃料ともに上昇傾向」(不動産)など明るい声が聞かれた。しかし、先行き見通しDIはいずれも厳しい見通しで、「人手不足、仕入れ価格の高騰など不安要素が多い」(不動産)「お客さまの来店人数が確実に減って、そのうえ客単価も下がっている」(サービス)など、物価高や消費減退などを憂う声も多く、東京の景気は先行き不透明で一進一退の景況感が続くものとみられる。

・景気DI

「東京」の景気DIは47.2(前月47.1)で、2カ月連続で改善した。全国(43.3)を3.9ポイント上回った。都道府県別順位は2位となり、前年同月(4位)より上昇。『南関東』(45.9)を大きく上回り、1都3県でトップとなっている。

・規模別DI

「大企業」(50.2)は前月比0.5ポイント悪化、「中小企業」(46.3)は同0.3ポイント、「小規模企業」(47.1)は同0.9ポイント改善した。規模間格差は3.9ポイントとなり、前月より0.8ポイント縮小した。

・業界別DI

全10業界中、7業界が改善し3業界が悪化した。『金融』(48.1)は前月比で2.0ポイント増となり、2カ月ぶりに改善した。『不動産』(55.2)『製造』(41.9)『小売』(44.0)はいずれも同0.9ポイント改善。『建設』(51.7)、『サービス』(50.5)は同1.0ポイント悪化している。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(48.2、前月47.7)、「6カ月後」(48.1、同47.2)、「1年後」(48.1、同47.2)となり、3指標ともに改善した。業界別では、『不動産』『サービス』などで悪化を見込んでおり、8業界で50を下回る厳しい見通しとなっている。

■神奈川県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.8

0.1

3カ月連続の前月比改善

・概況

「神奈川」のDIは3カ月連続の前月比改善となった。「昨年同時期よりも売り上げが多い」(機械製造)、「季節がら飲料関係が増加」(運輸・倉庫)といった声が聞かれる一方で、「商品が動く気配がない」(専門商品小売)、「製造原価が下がらない」(その他サービス)など、足下の厳しさを示す声が多数あがった。トランプ関税および自動車業界に対する懸念も払しょくされておらず、「関税の影響などによる主力顧客の生産減少がある」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)など、先行きへの警戒感が高い状態が続いている。

・景気DI

「神奈川」の景気DIは44.8と前月(44.7)から0.1ポイント増加し、小幅ながらも3カ月連続の前月比改善となった。全国順位は6位で、前月の7位から上昇した。3カ月連続の改善は2022年以降で初だが、引き続き低水準にとどまっており、予断を許さない状況が続いている。

・規模別DI

「大企業」は48.5(前月比0.2ポイント増)、「小規模企業」は42.5(同0.1ポイント増)とそれぞれ改善、「中小企業」は44.3(同横ばい)となった。「小規模企業」は3カ月連続の改善となったが、「大企業」と「中小企業」の格差は4.2ポイントで、乖離幅は2カ月ぶりに拡大した。

・業界別DI

9業界中、5業界で前月比改善となった。『建設』が2カ月連続で50.0を上回り、『製造』とともに3カ月連続の改善となった。ただし、『製造』は40.0を若干上回る低水準で推移している。また、『小売』は3カ月ぶりの悪化で、今年に入って40.0を下回る低水準が続いている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は46.6(前月46.6)で前月比横ばいとなり、「6カ月後」は46.6(同46.7)、「1年後」は46.9(同47.3)でそれぞれ前月から悪化した。『金融』『建設』は3指標ともに50.0以上となったが、他7業界はいずれも50.0を下回り、なかでも「小売」はすべてで40.0を下回った。

「南関東ブロック(2025年08月)」の詳細(埼玉・千葉・東京・神奈川)