レポートTDB景気動向調査2025年08月(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

■九州ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.4

0.0

下落傾向の中、足踏み状態に

・概況

『九州』の景気DIは、44.4と前月比横ばい。企業からは「相変わらずの物価高、人件費が高く、人手不足である。田舎でも、働き手は都会並みの時給を求めてくる。いくら忙しくても、手元に残るのは今までの4分の1がやっとの状況である。これでは、景気が良いとは言えない。」(宮崎県、飲食店)などの声が聞かれる。DI50台は、業界別で『その他』、県別で「沖縄」のみ。インバウンド需要は引き続き期待されるが、原燃料高、人件費負担増に対し、価格転嫁も十分に進んでいないことから、緩やかに下落傾向を辿るものとみられる。

・景気DI

『九州』(44.4、前月と同数)は前月比横ばいとなった。10業界中5業界、8県中3県で悪化。『九州』8県中10位以内は4県。先行き見通しDIは「3カ月後」、「6カ月後」は2ヶ月ぶり、「1年後」は3カ月ぶりに改善。ブロック別では6カ月連続で全国2位。

・規模別DI

「大企業」(48.5、前月比1.5ポイント減)は2カ月ぶりに悪化。「中小企業」(43.9、同0.3ポイント増)は8カ月ぶりに改善。29カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回り、規模間格差は4.6ポイントと前月から1.8ポイント縮小。「小規模企業」は42.5(同0.6ポイント増)と2カ月ぶりに改善。

・業界別DI

『不動産』(48.8、前月比8.4ポイント増)など10業界中2業界で改善したものの、『農・林・水産』(40.8、同2.3ポイント減)など5業界で悪化。DI50台は『その他』のみ。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(46.4、前月比0.3ポイント増)、「6カ月後」(46.5、同0.2ポイント増)は2ヶ月ぶり、「1年後」(46.5、同0.2ポイント増)は3カ月ぶりに改善した。業界別では『不動産』『卸売』『サービス』が全指標で改善、『農・林・水産』『金融』『建設』が全指標で悪化した。

■福岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.6

-0.9

2カ月ぶりの悪化

・概況

「福岡」の景気DIは、インバウンド需要や都市再開発事業等が追い風となるものの、個人消費等の伸び悩みなどから、2カ月ぶりに悪化した。企業からは「外貿コンテナが輸出入ともに好調な推移。福岡地域はやや良いと感じる」(運輸・倉庫)などのコメントがある一方、「10月の最低賃金の大幅な上昇により経営が苦しくなる企業が出てくる」(サービス)との声があった。インバウンド関連など一部の業界では引き続き好調な推移にあるものの、物価高や労務費負担増は多くの業界にマイナスの影響が及んでおり、一進一退が続こう。

・景気DI

「福岡」(44.6、前月比0.9ポイント減)は、2カ月ぶりの悪化。業界別では、『不動産』『小売』の2業界で改善した。『金融』(50.0)は横ばい。『農・林・水産』『建設』など6業界で悪化。都道府県別順位は8位で前月(4位)からダウン。『九州』8県での順位も前月(2位)からダウンし4位となった。

・規模別DI

「大企業」48.7(前月比0.4ポイント減)は2カ月ぶり、「中小企業」43.9(同0.9ポイント減)、「小規模企業」42.6(同0.8ポイント減)は3カ月ぶりに悪化した。規模間格差は「大企業」が「中小企業」を4.8ポイント上回った。

・業界別DI

『金融』(50.0)は横ばい。『不動産』(50.8、前月比9.1ポイント増)、『小売』(41.7、同1.1ポイント増)の2業界で改善。『農・林・水産』(33.3、同16.7ポイント減)、『建設』(49.1、同1.5ポイント減)など6業界で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(47.1、前月比0.1ポイント減)で悪化。「6カ月後」(47.7、同0.5ポイント増)、「1年後」(47.9、同0.6ポイント増)で改善。業界別では、『農・林・水産』『金融』『建設』『製造』で3指標すべてが悪化。『不動産』『卸売』『小売』ですべて改善した。

■佐賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.0

-0.6

一進一退が続いている

・概況

「佐賀」の景気DIは改善と悪化を繰り返しており、8月の景気DIは前月から0.6ポイント悪化し42.0となった。全国の都道府県別順位では26位まで後退し、九州8県の中でも下位に転落した。資材高や人件費高騰などから各業界内で淘汰が進むとの懸念される声も聞こえ、経営環境が改善する要因は少ない。当面、厳しさが続くことが懸念され、今後の「佐賀」の景気の行方が注目される。

・景気DI

「佐賀」の景気DIは、前月比0.6ポイント悪化の42.0となった。『九州』では「福岡」「長崎」の3県が悪化しており、「佐賀」は改善と悪化を繰り返している。『全国』は43.3と3カ月連続で改善となり、『九州』は7月の景気DIと同値であった。「佐賀」の都道府県別順位は前月の15位から26位に後退した。

・規模別DI

「大企業」は45.8と前月より2.5ポイント悪化し、6月の景気DIと同値となった、「中小企業」は40.8と前月から0.5ポイント悪化し、うち「小規模企業」は41.1と0.9ポイント改善した。規模間格差は5.0と前月から2.0ポイント縮小した。

・業界別DI

『建設』は住宅着工は減少しているが、各種工事で単価上昇があり、前月比4.2ポイント改善。『製造』も同様で、同2.0ポイントアップと堅調に推移。ただ、『卸売』『小売』『サービス』は荷動き悪く、いずれも悪化した。特に、『卸売』は前月比8.8ポイント悪化の27.3と大きく影響を受けている。

・先行き見通しDI

「3か月後」は43.3(前月43.5)、「6か月後」は43.3(同44.4)、「1年後」は44.6(同45.1)と全ての指標で前月より悪化した。業界および規模感に関わらず景気回復を望む声は大きいが、原材料価格の高止まりなどを主因とする厳しさが続く懸念が反映された。

■長崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.2

-2.0

3カ月ぶりに悪化

・概況

「長崎」の景気DIは前月比2.0ポイント減と3カ月ぶりに悪化した。「造船業、観光業関係は相変わらず好調」(運輸業)というように、造船業や観光業関連業界は好景況感となっている。また県央などの人口増加地域でも好景況を見出せた。ただし値上げの影響による買い控えや盆休暇などにより荷動きが鈍くなっている点を懸念する声もあった。トランプ関税の影響も不確定要素となり、「長崎」の景況感は今後も一進一退を繰り返しながらの推移が見込まれる。

・景気DI

「長崎」の景気DIは前月比2.0ポイント減の39.2と3カ月ぶりに悪化した。『九州』8県中、本県を含めて3県が悪化し、本県の悪化幅が大きかったため、九州ブロック内順位は前月から順位を2つ下げて8位となった。都道府県別順位は前月の26位から15下がり41位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.3ポイント減の39.4、「中小企業」は同2.0ポイント減の39.2、「中小企業」のうち「小規模企業」は同0.4ポイント増の39.1となった。「大企業」の方が「中小企業」よりも悪化幅が大きかったため、規模間格差は0.3ポイント縮小して0.2となった。

・業界別DI

前月から改善した業界は『不動産』の1業界のみであった。残りの『農・林・水産』『金融』『建設』『製造』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』の8業界は悪化した。悪化した業界の中でも『農・林・水産』『小売』『運輸・倉庫』の3業界が前月から10ポイント以上悪化したことが目立っている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.2(前月44.3、前月比2.1ポイント減)「6カ月後」43.8(同43.5、同0.3ポイント増)「1年後」43.8(同44.4、同0.6ポイント減)となった。業界別でみると『製造業』『サービス業』が先へ行くほど改善の見通しだが、『不動産』は先へ行くほど悪化の見通しとなった。

■熊本県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

46.8

2.1

3カ月ぶりに改善

・概況

「熊本」の景気DIは前月比2.1ポイント増の46.8と3カ月ぶりに改善した。「大型イベントの開催が複数予定され、経済押し上げ効果に期待」(サービス)と明るい話題が見られた一方で、「土地価格や建築コストの上昇が影響し住宅が売れない」(建設)と不安を示す声が増えている。米トランプ関税による混乱が続いているものの、落ち着きを取り戻しつつあり、景気DIの改善に繋がったと見られる。しかし、熊本県を襲った記録的大雨では県内企業も多く被災し、復旧までの影響が懸念されるため、しばらくは不透明な情勢が続くだろう。

・景気DI

「熊本」の景気DIは46.8で前月比2.1ポイント増と3カ月ぶりに改善した。『九州』(44.4)は前月比横ばいとなり、「全国」(43.3)に関しては同0.5ポイント増となった。なお、「熊本」の都道府県別順位は第3位(前月第7位、前年同月第2位)と前月から4ランク上がった。

・規模別DI

「大企業」の景気DIは55.0と前月から7.5ポイント減となったが、「中小企業」は46.1と同2.8ポイント増となった。25カ月連続で「大企業」が「中小企業」の景気DIを上回ったが、規模間格差(大企業-中小企業)に関しては「大企業」が悪化して「中小企業」が改善したため、8.9ポイントに差が縮まった。

・業界別DI

9業界中、改善した業界は『農・林・水産』『建設』『不動産』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』の7業界と多かった。一方で悪化した業界は『製造』1業界のみで、『金融』は横ばいだった。米国の関税措置問題や国内における不安定な政局に対する不安が和らぎ、改善した業界が多かった。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは「3カ月後」が48.5(前月47.1)、「6カ月後」は47.2(同47.3)、「1年後」は46.4(同47.1)となった。インバウンドにより観光需要は堅調だが、TSMC熊本第2工場の着工遅れにより特需に陰りが見られ、「6カ月後」と「1年後」の指標が前月から悪化した。

■大分県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.2

0.0

8カ月連続で50を下回る

・概況

8月は夏休み効果やインバウンドの回復、人気アーティストのライブ開催などイベントもあって、観光需要は好調に推移し、付随する『卸売』『運輸・倉庫』は改善した。一方、『サービス』は物価高騰による収益確保への苦戦が続き低下した。米国による日本への関税が発動され、輸出への影響や設備投資の様子見が増えており、『製造』『建設』は低下した。今後はトランプ関税によるメーカーへの悪影響が懸念されるほか、食材を中心とする相次ぐ値上げにより個人消費の減退も予想され、県内の景気動向はやや低下すると推察される。

・景気DI

「大分」は45.2となり、前月比横ばいの推移となった。全国順位は第5位(前月第5位・前年同月第3位)となり、前月と同位であった。また、判断の分かれ目となる「50」を8カ月連続で下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比4.2ポイント減の45.8となった。「中小企業」は同0.4ポイント増の45.1、「中小企業」のうち「小規模企業」は同0.2ポイント増の45.7となった。規模間格差は0.7となり、2カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回った。

・業界別DI

業界別では『卸売』『運輸・倉庫』が前月より改善した。一方で『建設』『製造』『サービス』は悪化し、特に『サービス』は前月比4.8ポイント減の49.0となった。『サービス』が「50」を下回るのは2年ぶり。

・先行き見通しDI

「3カ月後」47.1(前月46.3)、「6カ月後」47.6(同48.4)、「1年後」47.8(同46.3)となり、「6カ月後」の見通しは前月から悪化した。業界別では、『サービス』が3指標ともに「50」以上となった一方で、『建設』『製造』『小売』『運輸・倉庫』は3指標ともに「50」を下回った。

■宮崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.8

1.7

3カ月ぶりに改善

・概況

「宮崎」の景気DIは39.8で3カ月ぶりに改善した。7月は約4年ぶりの低水準となったが、8月は曜日の並びに恵まれた盆休みの消費回復や猛暑を背景に、「季節商品で何とか持ち直した」(家電・情報機器小売)ようだ。しかし「8月の伸びが一過性なのか判断がつかない」(飲食料品小売)ように、底打ちしたと予断できない。「働き手が都会並の時給を求め、手元に残るのは今までの1/4」(飲食店)、「輸出企業は関税で動きが鈍く、今は我慢する時期」(人材派遣・紹介)と経営環境は厳しく、引き続き先行きは不透明と言える。

・景気DI

「宮崎」の景気DIは39.8で、前月比1.7ポイント増と3カ月ぶりに改善した。『九州』は44.4で同横ばい、全国は43.3で同0.5ポイント増と改善し、いずれも小幅な変動だったなか、改善幅が大きかった「宮崎」の全国順位は前月の43位から36位と上昇し、2カ月続いた『九州』最下位を脱した。

・規模別DI

「大企業」は56.7で前月比12.3ポイント増、「中小企業」は38.5で同1.1ポイント増といずれも改善した。規模間格差(大企業-中小企業)は18.2となり、同11.2ポイント拡大した。「中小企業」のうち「小規模企業」は33.9で同2.0ポイント減と悪化し、規模別で見方が分かれた。

・業界別DI

『製造』は38.3で前月比3.1ポイント増、『非製造』は40.0で同1.5ポイント増といずれも改善した。『製造』は「飲食料品・飼料製造」が改善、『非製造』は「不動産」「紙類・文具・書籍卸売」「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」などが悪化した一方、「農・林・水産」「飲食料品小売」や『サービス』が幅広く改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は40.7で前月比2.4ポイント増、「6カ月後」は41.7で同2.9ポイント増、「1年後」は43.3で同0.5ポイント増といずれも改善した。3指標とも改善したのは24年8月以来1年ぶり。特に『製造』は「3カ月後」が同6.5ポイント増、「6カ月後」が同6.1ポイント増と全体を牽引した。

■鹿児島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.9

2.5

2カ月ぶり改善

・概況

「鹿児島」の景気DIは42.9と2カ月ぶりの改善となった。企業からは、「公共工事の発注量は概ね堅調である」といった声が上がった一方、「政治の不安定さ」や「人材不足」、「物価高による消費減退」などの声は依然として多く上がった。景気DIは改善したものの、期待の超えに対し不安の声が多い状況に変わりはなく、今暫くは一進一退の状況が続くものと推察される。

・景気DI

「鹿児島」の景気DIは42.9と前月比2.5ポイント改善した。『九州』は横ばいとなる44.4、『全国』は0.5ポイントの改善となる43.3だったことで、「鹿児島」の改善幅は全国平均を上回り、都道府県別順位は前月の32位から20位に上昇した。近時は悪化と改善を繰り返しており、一進一退の状況が続いている。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.7ポイント改善となる50.0となったほか、「中小企業」は同2.6ポイント改善の42.1、「中小企業」のうち「小規模企業」も43.4と同3.1ポイント改善した。各規模共に改善が見られたものの、「大企業」の改善幅を上回る形で「中小企業」の改善が進み、規模間格差(大企業-中小企業)は0.9ポイント縮小した。

・業界別DI

改善は『農・林・水産』、『建設』、『不動産』、『製造』、『卸売』、『運輸・倉庫』、『サービス』の7業界、『金融』、『小売』の2業界が悪化となった。鹿児島県で7業界が改善となるのは12カ月ぶりとなる。しかし、前月は悪化した業界が多かったことの反動ともみられ、依然として一進一退の状況にあると言えよう。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.1と前月比2.5ポイントの改善、「6カ月後」は44.6と同1.5ポイントの改善、「1年後」も同1.5ポイント改善の44.6となるなど、全指標で改善が進んだ。前月は全指標で悪化していたが、景気DIの改善と連動する形で先行きに対し、やや明るい見方をする企業が増加した形となった。

■沖縄県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

56.3

1.1

3カ月ぶりに改善

・概況

「沖縄」の景気DIは、3カ月ぶりに改善した。前月まで2カ月連続で悪化していたが、夏休みに入り観光産業が繁忙期を迎え、『卸売』、『小売』、『サービス業』といった業種の景況感上昇が全体を押し上げた。しかし、物価や人件費は今後さらに上昇すると想定している企業が多く、先行き景気DIが悪化していることから、引き続き動向は注視していく必要がある。

・景気DI

「沖縄」の景気DIは前月比1.1ポイント(以下、P)増の56.3となった。業種別では7業界中、4業界が改善した。また、都道府県別順位は29カ月連続で全国1位となり、『全国』(43.3)、『九州』(44.4)を上回っている。

・規模別DI

「大企業」(66.7、前月比3.3P減)で2カ月ぶりの悪化、「中小企業」(56.1、前月比2.1P増)は3カ月ぶりの改善、「中小企業」のうち「小規模企業」(54.7、前月比2.2P増)は2月振りの改善となった。

・業界別DI

前月と比較可能な7業界中、 『建設』(6.0P減)、『不動産』(3.3P減)、『製造』(2.1P減)の3業界が悪化、『卸売』(8.3P増)、『小売』(12.5P増)、『運輸・倉庫』(8.3P増)、『サービス』(0.7P増)の4業界が改善した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」が56.0(前月55.7)で前月より改善、「6カ月後」は52.7(前月55.0)、「1年後」は50.3(前月51.7)でいずれも前月より悪化した。

「九州ブロック(2025年08月)」の詳細(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)