レポートTDB景気動向調査2025年08月(北関東ブロック:茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

■北関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.0

-0.3

3カ月ぶりに悪化

・概況

『北関東』の景気DIは41.0となり3カ月ぶりに悪化した。『建設』や『小売』など5業界で改善したものの、『金融』『サービス』『製造』の3業界が悪化し全体を押し下げた。なかでも『サービス』は前月から3.1ポイント大きく減少、情報サービスなど引き続き堅調さがうかがえる業種がある一方で、酷暑によって人の動きが鈍かったことが悪影響となった。企業からは引き続きトランプ関税や物価高、人手不足の影響を訴える声が多く、先行きの見通しは前月よりも改善したが、当面は一進一退の状況が続きそうだ。

・景気DI

『北関東』の景気DIは前月比0.3ポイント減の41.0となった。悪化は3カ月ぶり。域内5県では「栃木」「群馬」が改善したが、「茨城」「山梨」「長野」が悪化。なかでも「長野」は前月から1ポイント減と、域内5県で最大の悪化となった。全国10地域での順位は前月から1ランク後退の7位だった。

・規模別DI

「大企業」(45.6)、「中小企業」(40.5)、「小規模企業」(39.1)となった。「大企業」と「小規模企業」は前月から改善したが、「中小企業」は3カ月ぶりに悪化に転じて前月から0.4ポイント減少し、全体を押し下げた。この結果「大企業-中小企業」の格差は5.1となり、前月から1.4ポイント拡大した。

・業界別DI

業界別で、改善したのは『不動産』や『小売』など5業界、悪化は『製造』『サービス』など3業界だった。悪化業界のうち、『製造』はトランプ関税の影響を訴える声が引き続き目立ち、また『サービス』ではインバウンドの頭打ちや猛暑の影響の声が聞かれ、前月から3.1ポイントの大幅悪化となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(43.3、前月42.8)「6カ月後」(44.0、前月43.3)「1年後」(45.0、前月44.4)となり、全ての区分で前月より改善した。業界別では、『その他』を除き1年後のDIが最も高いのは『製造』と『サービス』(各47.2)。1年後が最も低いのは『小売』(39.8)だった。

■茨城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.1

-0.3

2カ月連続悪化

・概況

「茨城」の景気DIは前月比0.3ポイント減の41.1となり、2カ月連続で悪化。依然として40台前半にとどまるなど、低水準が続いている。回答企業のなかには「今後も受注は伸びる」との声もあるが少数派、大半の企業は原材料・エネルギー高に対して価格転嫁が進まず、収益悪化を懸念している。さらに、15%の関税が適用されるトランプ関税の影響はこれから出ることが予想され、米国向け輸出の減少が現実化すれば『製造』など関連する県内企業の業績下振れは避けられないだろう。「茨城」の景況感の動向には引き続き注視が必要だろう。

・景気DI

「茨城」の景気DIは41.1と前月比0.3ポイント低下し、2カ月連続の悪化。原材料やエネルギー価格の高止まりに加え、「需要増に対応できず機会損失が発生」といった企業の声にもあるように人手不足が重荷に。さらに、トランプ関税に対する警戒感の高まりを背景とする『製造』の悪化もDI全体の下押し材料となった。

・規模別DI

「大企業」は40.0と前月比1.7ポイント減、「中小企業」も41.2と同0.2ポイント減で、ともに2カ月連続悪化。一方、「小規模企業」は39.8と同1.0ポイント増となり2カ月ぶりに改善。「大企業」と「中小企業」の悪化に対して「小規模企業」の改善は、猛暑による家電や飲料など季節商品の消費拡大が追い風となった。

・業界別DI

『農・林・水産』『製造』など3業界が悪化。改善したのは『不動産』『運輸・倉庫』『小売』など4業界。『金融』『サービス』の2業界は横ばいだった。悪化幅が大きかった『農・林・水産』は、猛暑による不作への懸念が影響した。一方、改善した『不動産』『は、主に県南地区での事業用地の需要拡大がプラス要因となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.8、「6カ月後」44.9、「1年後」44.4と、3指標いずれも前月を上回った。ただし、先に大型案件を抱える一部の企業や、回答企業の希望的観測が先行きDIを押し上げた可能性が高く、「現状からの脱却がいつになるのか見通しが立たない」など、厳しい先行きを指摘する企業が多いのが実情である。

■栃木県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.0

0.6

3カ月連続の改善も、

中小企業は伸び悩む

・概況

8月の景気DIは3カ月連続で改善が見られたものの、DIは4カ月間で3.6ポイントの改善に止まり、低水準が続いている。受注が堅調という声も聞かれるが、あくまで一部の企業に過ぎず、業績好調企業と不振企業の格差が拡大している点も長引く企業マインドの低迷につながっていると見ている。企業からの声にもあったように、トランプ関税の影響はこれから本格的に中小企業の受注や利幅に反映されてくることになり、多くの製造業を抱える栃木県はその影響を受けやすいことも明らかだ。引き続き景況感の推移には注視が必要であろう。

・景気DI

8月の景気DIは42.0、3カ月連続で改善が見られたものの、改善幅は僅少に止まり、特に大半が属する「中小企業」が伸び悩むなど、課題は多い。引き続き物価高に伴うコストの圧迫や、価格転嫁の進捗が悪く、思うような業績が上げられていない。全国と比較しても1.3ポイント低く、一般消費の改善が急務である。

・規模別DI

「大企業」47.7(前月45.4)、「中小企業」40.9(同40.8)、「小規模企業」42.2(同39.5)と、大企業の改善は顕在化しつつあるが、中小企業は伸び悩み、規模間格差は6.8まで広がる結果となった。一部の企業には業績好調が見られるものの、同業種内でも企業間格差が広がっている点は否めない。

・業界別DI

主要6業界では、『小売』(前月比+5.1)、『建設』(同+4.3)などで改善が見られたものの、『運輸・倉庫』(同▲5.8)、『サービス』(同▲2.6)などで悪化が著しい。物価高が業績に反映されるケース(小売)や、公共工事の堅調(建設)なども反映されたようだが、一方で価格転嫁が進まない業界は厳しい状況。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.6(前月44.1)、「6カ月後」42.9(44.4)、「1年後」43.3(44.3)と、全てのカテゴリーで悪化した。「資材高騰は必ず消費の減退につながる」(建設)や、「トランプ関税の影響はこれから本番。景況が維持される可能性は低い」(サービス)といった懸念材料を指摘する声が多い。

■群馬県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.3

0.4

3カ月連続で改善

・概況

群馬県内企業からは「猛暑により空調関連の需要が増加」(サービス)との明るい声が聞かれる。一方、「新設住宅着工戸数が低調なため、受注量が落ちている」(製造)、「物価高により消費マインドが低下、必要以外の支出抑制がみられる」(不動産)など厳しい意見もある。物価高、人手不足、個人消費低迷を危惧する声が数多くあがっている。8月の景気DIは3カ月連続で改善したものの、改善の幅は狭く、力強さに欠ける。米国相互関税のマイナス影響など、企業業績の下振れ要素を考慮すると景況感は予断を許さない状況が続く見込みだ。

・景気DI

景気DIは前月比0.4ポイント増の39.3と3カ月連続で改善した。『全国』の改善幅(前月比0.5ポイント増)を下回り、「群馬」の47都道府県別順位は40位(前月38位)に低下した。また4カ月連続で40未満にとどまり、『北関東3県』において「茨城」「栃木」を下回った。

・規模別DI

「大企業」 は前月比1.8ポイント減の45.8で、2カ月連続の悪化、今年最低となった。一方、「中小企業」は同0.8ポイント増と3カ月連続で改善。「小規模企業」は同2.7ポイント増と2カ月ぶりに改善している。この結果、「大企業」と「中小企業」の規模間格差は6.9に縮小した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界では 『小売』など4業界が悪化、『建設』など4業界が改善した。『不動産』は横ばいだった。物価高と個人の節約志向の高まりを背景に『小売』は2カ月ぶりに悪化した。『製造』は3カ月連続で改善したものの、米国相互関税の影響もあり小幅改善にとどまった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が42.1(前月39.5)、「6カ月後」が43.5(前月41.1)、「1年後」が44.3(前月42.3)となった。「3カ月後」「6カ月後」「1年後」の3指標とも前月より改善した。先に行くほどDI は高く、現在4.0ポイントとなっている全国との格差は 「1年後」には1.2ポイントまで縮小。

■山梨県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.1

-0.4

4カ月ぶりに悪化

・概況

「山梨」の景気DIは4カ月ぶりに悪化した。企業からは、「6月以降、インバウンド需要の前年割れが続いているが、国内需要が増加して全体では前年を上回っている」(サービス)、「インバウンドや近県からの観光客が大きく落ち込む要素がない」(小売)、「素材が高騰しすぎてしまい、需要がほぼ吹き飛んだ」(製造)などの声が聞かれた。先行きについては、インバウンド消費に支えられているが、製造業を中心にトランプ関税の影響を懸念する声は多く、景況感は不透明感が増している。

・景気DI

「山梨」の景気DIは前月比0.4ポイント減の44.1となり、4カ月ぶりに悪化。全国は同0.5ポイント増の43.3だった。「山梨」は全国を0.8ポイント上回り、都道府県別順位は前月と同じ9位で、前年同月の13位を上回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.1ポイント減 の46.7、「中小企業」は同0.3ポイント減の43.7、「小規模企業」は同2.4ポイント増の42.7となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は、「大企業」の悪化幅が大きかったため、前月より0.8ポイント縮小して3.0ポイント差となった。

・業界別DI

前月と比較可能な10業界中、2業界が改善、4業界が悪化、4業界が横ばいとなった。『サービス』は前月より2.9ポイント悪化したが、判断の分かれ目となる50を6カ月連続で上回っている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.8(前月45.7)、「6カ月後」46.0(同45.6)、「1年後」47.7(同46.6)となった。3指標とも前月を上回り、先に行くほど改善している。『農・林・水産』『金融』『不動産』『サービス』『その他』の5業界が、3指標とも50以上となっている。

■長野県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.4

-1.0

2カ月ぶりに悪化、

40前後で一進一退が続く

・概況

「長野」の景気DIは、2018年10月から50を下回る低水準で推移している。長期低迷による疲弊感などから、企業のコメントに前向き感は失われてきている。「トランプ関税と仕入れ単価の値上げにより、国内景気の先行き警戒不安がある。そのため、先行投資については二の次になっている」(機械・器具卸売)、「最低賃金の大幅な上昇などに伴い人件費コストがさらに上昇。大規模商業施設のオープンによりパートタイマーやアルバイトの確保がより困難になる」(運輸・倉庫)など、先行きの不安を訴える声が大半を占めている。

・景気DI

「長野」の景気DIは40.4と、前月比1.0ポイント減少し2カ月ぶりに悪化した。40前後で一進一退を繰り返している。また、同0.5ポイント改善した「全国」を2.9ポイント下回り、格差は1.5ポイント拡大した。都道府県別順位は33位と前年同月から5ランク上昇したが、前月からは10ランク低下した。

・規模別DI

規模に比例しDIは高い。前月比で「大企業」が3.9ポイント改善の一方、「中小企業」は1.6ポイント、「小規模企業」は0.5ポイント、それぞれ悪化した。規模間格差は「大企業」と「中小企業」は5.5ポイント、「大企業」と「小規模企業」は4.4ポイントともに拡大。「中小企業」と「小規模企業」は1.1ポイント縮小。

・業界別DI

『卸売』は前月比2.3ポイントと2カ月連続、『小売』は同1.3ポイントと2カ月ぶりに、それぞれ改善した。一方で、『建設』は同2.0ポイント、『製造』は同1.5ポイント、『運輸・倉庫』は同1.1ポイント、『サービス』は同5.3ポイント、それぞれ悪化に転じて、一進一退の状況がうかがえた。

・先行き見通しDI

「長野」、規模別の「中小企業」「小規模企業」、業界別の『製造』『卸売』『サービス』は長期になるほど改善する見通し。「大企業」と『運輸・倉庫』は一進一退のうえ現状程度、『小売』は改善。『建設』は長期になるほど悪化を見込む。「長野」としては、32カ月連続で長期になるほど改善を予想している。

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