レポートTDB景気動向調査2025年08月(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

■近畿ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.7

1.2

トランプ関税をめぐり安堵感、5カ月ぶりに改善

・概況

インバウンド需要が近畿経済を支えるなか、トランプ関税の影響が当面は軽微にとどまる見通しとなったことで、企業マインドは改善した。しかしながら、足元でDIが改善した『製造』では輸送用機械や繊維分野が弱含んでいるうえ、『サービス』でも大阪・関西万博が終盤に差し掛かったことで人材派遣や警備などに悪化の兆しがみられている。10月以降は、こうした万博特需の剥落、さらには最低賃金の引き上げが経営の重荷となる。米中間における関税問題の落としどころにも注目が集まる中、景況感は当面、一進一退の推移となろう。

・景気DI

『近畿』は前月比1.2ポイント増の42.7と、5カ月ぶりに改善した。トランプ関税の日本に対する適用税率の決定、中国に対する適用停止措置の延長決定により安堵感が広がった。府県別では「兵庫」を除く5府県が改善。3カ月連続で改善した全国(43.3、同0.5ポイント増)との格差は▲0.6ポイントに縮まった。

・規模別DI

「大企業」(前月比2.6ポイント増)は2カ月ぶり、「中小企業」(同0.8ポイント増)は5カ月ぶりに、それぞれ改善。規模間格差は、過去最大だった6.2ポイント(2024年12月ほか)を上回る7.6ポイントにまで拡大するなど、特に「大企業」の改善が目立った。なお、「小規模企業」は6カ月ぶりに改善した。

・業界別DI

2023年9月(47.0)以来の低水準となった『不動産』は3カ月連続で悪化したが、10業界中8業界が改善。そのうち6業界が1ポイント以上改善した。とりわけ、『運輸・倉庫』は5府県、『製造』は4府県が改善するなど、トランプ関税により受ける影響が大きい業界を中心に好転。『建設』も2カ月連続で改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」と「1年後」は3カ月ぶり、「6カ月後」は2カ月ぶりに改善した。改善幅は3指標とも前月比1.1ポイント増。府県別では「大阪」「京都」など4府県で、業界別では『建設』『卸売』など5業界で、規模別では全規模で、先行き3指標が改善した。「大企業」の「3カ月後」はコロナ禍以降で初めて50を超えた。

■大阪府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.4

1.5

トランプ関税が一応の決着で悪化に歯止め

・概況

大阪・関西万博の開催に伴いインバウンドを含む多くの観光客を集めており、業界別では『サービス』などが好調を保っている。万博が終盤に差し掛かるなか、『建設』では解体工事への期待が高まるなど先行き見通しDIは改善傾向を示したが、観光業や人材派遣業、警備業が需要の曲がり角を迎えるなど反動が生じる業種が出てくる。また、物価高や人手不足の影響もあって内需が力強さを欠くうえ、10月以降は最低賃金の引き上げも待ち構える。米中間における関税問題も完全に決着していない状況下、やや弱含みでの推移となるだろう。

・景気DI

「大阪」は前月比1.5ポイント増の43.4と、5カ月ぶりに改善した。トランプ関税の日本に対する適用税率の決定、中国に対する適用停止措置の延長決定が好感された。全国(43.3、同0.5ポイント増)を0.1ポイント上回る水準となり、都道府県別順位は前月の20位から15位へと浮上した。

・規模別DI

「大企業」(前月比2.2ポイント増)は2カ月ぶり、「中小企業」(同1.3ポイント増)も5カ月ぶりに改善した。この結果、規模間格差は7.8ポイントまで広がり、過去最大だった5.9ポイント(2019年11月ほか)を上回って調査開始以来の最大を更新した。なお、「小規模企業」は3カ月連続で40を下回った。

・業界別DI

前月の落ち込みを取り返した『小売』のほか、『卸売』が5カ月ぶり、『運輸・倉庫』が3カ月ぶりに40台に回復。『建設』は5カ月ぶりに改善した。他方、輸送用機械や産業用機械分野の落ち込みが目立つ『製造』は5カ月連続で40に届かず。『不動産』からは「物件価格の高止まりで販売が鈍化」との声が聞かれた。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比1.1ポイント増)、「6カ月後」(同0.8ポイント増)、「1年後」(同0.9ポイント増)の3指標とも3カ月ぶり改善した。規模別では「大企業」「中小企業」とも先行き3指標が改善したものの、業界別で3指標が改善したのは『製造』『卸売』『サービス』の3業界にとどまった。

■京都府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.3

2.3

5カ月ぶりに42を上回るも、業種別・規模別格差は広がる

・概況

「京都」の景気DIは5カ月ぶりに42を上回った。米国との関税交渉が決着したことなどで一時的に改善したが、業種別・規模別格差は大きい。「設備投資の話がない」「中国企業の安価攻勢」(製造)など関税政策の影響を懸念する声のほか、「新築住宅着工数が減少」「天候の影響で観光客減少」(卸売)といった声も聞かれ、実質賃金低下や猛暑の影響などが消費意欲を減退させている。価格転嫁の遅れから収益性改善が遅れる企業が散見されるなか、今後は関税政策の影響が拡大する可能性があり、景況感はしばらく停滞することが予想される。

・景気DI

「京都」の景気DIは、前月比2.3ポイント増の42.3に改善、5カ月ぶりに42を上回った。『全国』(43.3)との格差は▲1.0ポイント(前月は▲2.8ポイント)に縮小したが、9カ月連続で『全国』を下回った。『近畿』の順位は4位(前月5位)、都道府県別の順位は25位(同33位)となり、いずれも上昇した。

・規模別DI

「大企業」(48.4、前月44.9)、「中小企業」(41.3、同39.0)、「小規模企業」(38.8、同36.8)となり、全規模で改善した。「大企業」は8カ月ぶりに48を、「中小企業」は4カ月ぶりに41を上回った。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は、前月比+1.2ポイントの7.1ポイントに拡大、8カ月ぶりに7.0を上回った。

・業界別DI

10業界中4業界が改善した。資材価格の高騰などで住宅需要が低迷する『建設』は4カ月ぶりに改善したほか、『運輸・倉庫』は8カ月ぶりに50台を回復した。一方、『製造』は6カ月連続、『卸売』は10カ月連続で40割れが続くなど低迷が続いており、業種ごとに濃淡がみられる。

・先行き見通しDI

「3カ月後」44.5(前月42.5)、「6カ月後」45.1(同42.8)、「1年後」46.1(同43.3)となり、全指標で前月を上回った。業界別では、『不動産』は全期間で悪化見通しだが、『建設』『製造』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』は全3指標で改善。規模別では全規模、全期間で改善見通し。

■兵庫県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.7

-0.2

2カ月ぶりの悪化

・概況

「兵庫」の景気DIは2カ月ぶりの悪化となった。「猛暑による投資意欲の上昇」、「米の買取価格上昇で農機具の受注が増えた」(製造)との個別に受注が増えているコメントもあれば引き続きトランプ関税の影響を懸念する声も少なくない。また「貿易摩擦、天候異常、人件費・燃料の高騰など、購買力の低迷が続いている」(サービス)など、物価高の影響を懸念する声も多かった。引き続き、米国および日本の経済政策動向と酷暑続くなかの秋物商戦など個人消費動向が注目される。

・景気DI

「兵庫」の景気DIは前月比0.2ポイント減の41.7で2カ月ぶりの悪化となった。前年同月比は5カ月連続の悪化。全国順位は31位。『全国』は前月比0.5ポイント増の43.3、『近畿』は同1.2ポイント増の42.7で5カ月ぶりの改善となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.2ポイント増の48.4で2カ月ぶりの改善。「中小企業」は同0.5ポイント減の40.9、うち「小規模企業」は同2.5ポイント減の38.7となった。規模間格差は7.5ポイント(前月3.8ポイント)と前月比で3.7ポイントの拡大となった。

・業界別DI

10業界中5業界で悪化。『小売』は前月比4.6ポイント減の33.9で3カ月ぶりの悪化。『サービス』は、同2.9ポイント減の43.2だった。他方、『運輸・倉庫』は同4.4ポイント増の42.9で3カ月ぶりの改善、『製造』は41.4(同2.8ポイント増)で2カ月ぶりの改善だった。

・先行き見通しDI

3カ月後は前月比0.3ポイント減、6カ月後は同0.5ポイント増、1年後は同0.2ポイント増と3カ月後のみ悪化。業界別では『金融』『不動産』で全指標悪化、『農・林・水産』『運輸・倉庫』で全指標改善となった。規模別では大企業で全指標改善となった。

■滋賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.5

0.7

5カ月ぶりに改善

・概況

「滋賀」の景気DIは前月比0.7ポイント改善した。企業からは「欧米の政策金利高の継続が悪い影響を及ぼす」(輸送用機械・器具製造業)などの声がある一方、「国スポ・障スポ開催のためのインフラ整備が進んだ」(専門サービス業)、「彦根城の世界遺産登録の兆しが見え始めた」(専門商品小売業)などの声が聞かれたが、2025年8月に彦根城が世界遺産登録に対する国内推薦候補から外れたほか、その他の明るい話題が少ないことから今後の景気回復にはやや不安が残る。

・景気DI

「滋賀」の景気DIは43.5と前月比0.7ポイント改善した。業界別では悪化が3業界、改善が4業界、横ばいが2業界となった。近畿ブロック内の2府4県別順位は1位を維持したなか、全国においては13位(前年同月は9位)となった。

・規模別DI

「大企業」が44.9と前月比0.9ポイント、「中小企業」が43.3と同0.7ポイント、「小規模企業」は44.3と同2.4ポイント改善した。また、「大企業」は3カ月連続で「中小企業(うち小規模含む)」を上回った。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中4業界で改善、2業界で前月比横ばい、3業界で悪化した。『建設』『運輸・倉庫』が大きく改善した一方で、『不動産』『卸売』『サービス』が悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が45.7(前月44.5)、「6カ月後」が46.2(前月44.8)、「1年後」が45.9(前月43.5)だった。10月に滋賀県で開催される国スポ・障スポによる経済効果が期待される一方で、関西万博の終了に加え世界経済の動向が読みにくい点を不安要素と捉える向きがある。

■奈良県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.6

0.3

3カ月連続改善

・概況

「奈良」の景気DIは前月から0.3ポイント改善し38.6となり、3カ月連続で小幅ながらも改善となった。

「消費が落ちており、会社休日が多く稼働日数が少ない」(サービス)、「国内アウトドア需要の消費低迷、為替による仕入れ価格高騰、物価高など」(小売)などのマイナス材料の声がある一方で、「為替が円安基調で対外的な価格感が割安なため外国人観光客が多い」(サービス)、などの明るい声も聞こえる。業種別、地域別によって景況感の二極化が進んでおり、今後もトランプ関税などの影響が不透明であり、一進一退の状況が続くと判断される。

・景気DI

「奈良」の景気DIは38.6と前月から0.3ポイント改善したが、都道府県別では42位から43位に順位を落とした。『近畿』では「兵庫」が前月より悪化したが、そのほかの地域はすべて改善となった。『近畿』は前月より1.2ポイント改善し42.7、『全国』は0.5ポイント改善し43.3となっている。

・規模別DI

「大企業」は43.8と前月比3.3ポイント改善した。「中小企業」は37.9と同0.2ポイント悪化したが「小規模企業」は37.1と同1.9ポイント改善した。「大企業」が大きく改善したなか、「小規模企業」は改善したが、「中小企業」はやや悪化したことで、規模間格差は5.9に拡大している。

・業界別DI

『不動産』は前月比3.3ポイント、『卸売』は同2.4ポイントそれぞれ悪化した。一方、『製造』は同2.4ポイント、『建設』は同0.9ポイント、『小売』は同6.3ポイントそれぞれ改善しており、業種によって景況感の差がでてきている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.7(前月比2.7ポイント増)、「6カ月後」41.7(同1.9ポイント増)、「1年後」42.7(同1.4ポイント増)とすべての期間において中長期的な指標が改善見通しとなった。

■和歌山県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.5

1.6

2カ月連続で改善

・概況

「和歌山」は前月比1.6ポイント増の42.5と2カ月連続で改善した。熊野古道エリアへの外国人観光客数は増加傾向にあるものの、アドベンチャーワールドのパンダ返還の影響や極端な猛暑、大阪・関西万博へ観光客が集中した影響からか白浜エリアの宿泊客数はやや減少したもよう。県内の公共工事の累計金額はほぼ前年並みながら、工事件数はやや減少しており、中小業者への影響が懸念される。DIは改善の兆しが見られるものの、実体経済としては「どちらともいえない」という声も多く、持ち直しの動きが続くか確認していきたい。

・景気DI

「和歌山」は、『全国』(43.3)および『近畿』(42.7)には届かなかったものの、前月比で1.6ポイント増の42.5と、2カ月連続で改善した。全般的に改善の兆しが見られ、持ち直しの動きが出つつあるものの、企業の受注動向や一般消費者の消費動向は鈍化傾向にあるようだ。

・規模別DI

「大企業」が前月比4.1ポイント増の51.7、「中小企業」が同0.9ポイント増の41.2と「大企業」「中小企業」ともに改善し、「大企業」は2025年1月以来の50ポイント台を回復した。

・業界別DI

『製造』(39.1)は前月比で悪化し、『小売』(33.3)は前月と変わらなかったものの、『建設』(47.9)、『運輸・倉庫』(45.8)、『サービス』(42.1)、『卸売』(41.7)は前月比で改善した。『製造』と『小売』が、いずれも40ポイントを割っている点には留意が必要であろう。

・先行き見通しDI

3カ月後が45.6(前月42.4)、6カ月後が43.3(同41.8)、1年後が42.5(同42.6)となった。当面は期待を込めた認識がある一方で、複数の業種で「良くなる要素がない」(機械製造業・旅館ホテル業・飲食料品小売業)と同様の回答が見られるなど、先行きの不透明感が高まっている。

「近畿ブロック(2025年08月)」の詳細(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)