レポートTDB景気動向調査2025年07月(東北ブロック:青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)

■東北ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.2

0.1

3カ月連続の改善

・概況

景気DI(39.2)は3カ月連続で改善したものの、改善幅は僅少にとどまった。コメの価格高騰を背景に全体をけん引してきた『農・林・水産』は、直近のピーク(3月、58.0)から減速している様子がうかがえ、猛暑による渇水から作柄への影響を懸念して先行きの見通しも厳しい。BtoC業界では、消費者の節約意識が根強く改善の動きが乏しいうえ、『建設』も住宅需要は低位にとどまり苦戦を強いられる状況が続いている。政局の不安定さもあり、先行きは慎重な見方が強まるなか、景気動向は停滞気味で推移するとみられる。

・景気DI

景気DI(39.2)は前月比0.1ポイント増加し、3カ月連続で改善した。『全国』(42.8)との格差は3.6で横ばいで推移した。県別では、改善3県(「青森」「岩手」「山形」)、悪化3県(「宮城」「秋田」「福島」)となった。

・規模別DI

「大企業」(43.4)が前月比2.7ポイント増加し、「中小企業」(38.7)が同0.2ポイント減少した。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は4.7となり、同2.9ポイント拡大した。

・業界別DI

改善が『不動産』『建設』『運輸・倉庫』などの4業界、悪化は『金融』『サービス』『卸売』などの6業界となった。『その他』を除く9業界では『農・林・水産』(50.8)が最も高く、『小売』(34.7)が最も低かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は41.6(当月比2.4ポイント増)、「6カ月後」は41.0(同1.8ポイント増)、「1年後」は42.1(同2.9ポイント増)となった。前月との比較では「6カ月後」が悪化した半面、「1年後」は改善した。

■青森県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.4

1.4

3カ月連続の改善

・概況

青森の景気DIは43.4となり、前月から1.4ポイント改善し、3カ月連続での改善となった。一次産業の比率の高い青森では、一部魚種の水揚げ増やブロイラーなどの出荷増により『農・林・水産』が改善されたほか、一部連動する『運輸・倉庫』も改善した。観光シーズンを迎え、「飲食店」などへも波及し、全体としては、物価高に対しても価格転嫁が徐々に進むことで、一時期の低位の状態から改善傾向を示している。ただし、人件費の上昇圧力が強まるなか、今後もしばらくは一進一退の足踏み状態が続く可能性が高い。

・景気DI

景気DIは43.4となり、前月から1.4ポイント改善した。都道府県別順位は12位と前月の18位からアップし、東北6県の中では引き続きトップとなった。物価高の影響を受けて、企業を取り巻く環境は厳しいながらも、『小売』や『サービス』の改善が全体の景気DIを押し上げた。

・規模別DI

「大企業」は、44.4と前月と同水準を維持した一方、「中小企業」は43.3と前月より1.5ポイント改善した。「小規模企業」では44.4と同0.9ポイント悪化したが、「中小企業」とともに年明けから景況感が回復トレンドにある。

・業界別DI

業界別では、改善傾向にあった『卸売』が若干悪化したが、青果物の集荷が進んだことで『農・林・水産』と一部連動する『運輸・倉庫』が改善した。『建設』についても、3カ月連続で前月を上回る改善を見せており、新築着工や公共事業は減少傾向ながらリフォームなど一部業種での回復が全体を押し上げる構図となっている。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」、「6カ月後」、「1年後」が3カ月連続でそろって改善した。低下傾向にあった『建設』で、米軍関連や防衛庁関連、原燃関連の需要増が見込まれ、改善傾向にある。

■岩手県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.1

0.6

4カ月連続の改善

・概況

景気DIは前月比0.6ポイント増となったが、8カ月連続で40を下回った。「大企業」は判断の分かれ目となる50を8カ月連続で下回り、「中小企業」は10カ月連続で40を下回った。業界別では引き続き『卸売』『小売』『サービス』の苦境が目立つ。先行き見通しの「6カ月後」と「1年後」はブロック最低にとどまる。物価高や人件費上昇に加えて、「トランプ関税」の影響も懸念され、当面は一進一退の景気動向が続くと見込まれる。

・景気DI

景気DIは前月比0.6ポイント増の39.1となり、4カ月連続で改善したが、DIが40を下回ったのは8カ月連続。都道府県順位は全国37位(前月は全国41位、前年同月は全国40位)。

・規模別DI

「大企業」は前月比6.9ポイント増の44.4となり、判断の分かれ目となる50を8カ月連続で下回った。「中小企業」は同0.1ポイント増の38.6となり、10カ月連続で40を下回った。「大企業」と「中小企業」の格差(大企業-中小企業)は5.8(前月は▲1.0)。

・業界別DI

『建設』は前月比0.7ポイント増となり、連続して40を上回った。『製造』は同2.1ポイント減となったが、辛うじて40を上回った。一方で、『卸売』は31.9、『小売』は32.4、『サービス』は39.9と、いずれも40に届かず低水準にとどまった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が40.3、「6カ月後」が39.1、「1年後」が39.1と、いずれも前月よりやや悪化した。『東北』の中で「6カ月後」と「1年後」が40を下回るのは「岩手」のみで、「岩手」の厳しい先行き見通しが改めて示されたかたちとなった。

■宮城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

36.9

-0.4

3カ月ぶりの悪化

・概況

景気DI(36.9)は3カ月ぶりに悪化し、都道府県別順位は2カ月連続の46位と低位で推移している。『不動産』や『運輸・倉庫』が前月から8ポイント以上改善している一方、『農・林・水産』は11ポイント以上悪化するなど業界別で好不調の格差が拡大している。また、トランプ関税の影響を懸念する声も聞かれ、先行きへの不安感は払拭できない。夏季休暇のなか、宿泊料金の高騰や、物価高を背景に個人消費の伸び悩みが予想されるため、景気動向は低調で推移すると思われる。

・景気DI

景気DI(36.9)は前月比0.4ポイント減と3カ月ぶりに悪化し、7カ月連続で40台を下回った。『全国』(42.8)との比較では5.9ポイント下回り、格差は0.5ポイント拡大した。都道府県別順位は2カ月連続で46位と低位にとどまっている。

・規模別DI

「大企業」(43.0)は前月比4.8ポイント増加した一方、「中小企業」(36.2)は同1.0ポイント減少した。その結果、「大企業」と「中小企業」の格差は6.8で同5.8ポイント拡大した。

・業界別DI

改善は『不動産』『運輸・倉庫』『建設』などの4業界、悪化は『農・林・水産』『製造』『サービス』などの5業界、横ばいは『金融』の1業界となった。『運輸・倉庫』(52.8)が最も高く、『小売』『その他』(ともに27.8)が最も低かった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は39.4(当月比2.5ポイント増)、「6カ月後」は40.1(同3.2ポイント増)、「1年後」は40.2(同3.3ポイント増)となった。また、前月との比較でも3指標全てで改善した。

■秋田県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.7

-1.0

3カ月連続で悪化

・概況

景気DIは、『東北』、『全国』ともに前月比0.1ポイント増と僅かに改善した。『東北』では、「青森」、「岩手」、「山形」がやや改善したが、本県、「宮城」、「福島」が悪化、中でも本県の悪化が▲1.0と目立った。物価高の影響もあり依然として個人消費が低迷しているほか、設備投資意欲の減退などを理由に先行きに対し後ろ向きの声が多かった。また、日米関税交渉が締結したものの、これからが正念場との見方もある。さらに夏期の記録的な高温で農作物の被害も懸念されており、先行きの景況感は不透明と言わざるを得ない。

・景気DI

「秋田」の景気DIは38.7と6月を1.0ポイント下回り、3カ月連続で悪化した。『東北』6県では前月の第3位から第5位にダウンしたほか、『東北』を0.5ポイント下回った。また、『全国』(42.8)を4.1ポイント下回り、前月の第34位から第40位にダウンした。

・規模別DI

規模別では、「大企業」(45.8)、「中小企業」(38.1)いずれも前月比0.9ポイントダウンした。これにより、「大企業」と「中小企業」の格差に変化はなかった。

・業界別DI

業界別では、『製造』『卸売』『サービス』の3業界が改善したものの、『不動産』『その他』が横ばい、『農・林・水産』『建設』『小売』『運輸・倉庫』の4業界が前月比で悪化した。悪化したなかでは、『運輸・倉庫』(33.3)の前月比8.4ポイント減が目立った。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」41.2、「6カ月後」40.2、「1年後」42.1と現状よりは改善しながらも低調に推移するという見方が多く、物価高の影響で引き続き消費が伸び悩み、景況は低位で推移するとの声が多かった。

■山形県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.9

0.9

3カ月連続改善

・概況

企業からは、「米価高騰で農家の購買意欲が高い」(製造、小規模企業)、「昨年発生した災害の特需」(サービス、中小企業)、「企業の設備投資時期で好調」(サービス、小規模企業)など、好調な声が聞かれる一方、「食品業界だが、5月、6月は全社前年割れ」(製造、大企業)、「物価上昇により民間工事が減少。公共工事も発注見通し件数が少ない」(建設、小規模企業)、「山形新幹線の故障トラブルの影響」(小売、大企業)など、「山形」の景気DIは改善するも、まだ全国に遅れをとるなかで厳しい声も聞かれ、今後が注目される。

・景気DI

「山形」の景気DIは、前月比0.9ポイント改善して39.9となった。改善は3カ月連続。『東北』も同0.1ポイント改善の39.2となり、3カ月連続で改善。『全国』は同0.1ポイント改善の42.8と2カ月連続で改善。県別ランキングでは、「山形」のDIは47都道府県中34位で、前月の36位から上昇した。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.3ポイント改善の39.6、「中小企業」は同1.0ポイント改善の39.9、そのうち「小規模企業」は同1.1ポイント改善の39.8となり、すべての規模において前月比改善した。なかでも、「中小企業」「小規模企業」は3カ月連続で改善を示した。

・業界別DI

業界別では、『金融』を除く比較可能な8業界において、前月比で悪化した業界は『農・林・水産』『卸売』『運輸・倉庫』『サービス』の4業界であった。改善は『建設』『製造』『小売』の3業界であった。『不動産』は前月比横ばいだった。『農・林・水産』は2カ月連続で悪化、『サービス』が4カ月ぶりに悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は前月比横ばいの42.7、「6カ月後」は同0.7ポイント改善の42.2、「1年後」は同1.7ポイント改善の44.5を示した。「3カ月後」以外は、今後の景気改善への期待を示したかたちとなった。

■福島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.7

-0.2

5カ月連続で30台にとどまる

・概況

4業界が悪化して「福島」の景気DI(39.7)は前月比0.2ポイント悪化し、5カ月連続で30台にとどまった。企業からは「公共工事が激減」「案件が不足」(各建設)、「夏季に入り注文数が減少」(製造)、「物価高騰で顧客の購買意欲が低下」(小売)、「物価高と猛暑で観光に影響あり」(サービス)などの声が届いた。トランプ関税の影響や物価高による節約志向の定着への懸念など厳しいコメントが多数を占めており、今後の景気動向は弱含みで推移する可能性が高い。

・景気DI

「福島」の景気DIは、39.7と6月を0.2ポイント下回って、2カ月ぶりに悪化したほか、5カ月連続で30台にとどまった。『全国』の景気DIは、前月(42.7)を0.1ポイント上回り、42.8であった。「福島」の都道府県別順位は、前月の第32位から第35位となった。

・規模別DI

「大企業」(46.2)は前月比5.1ポイント上昇、「中小企業」(39.0)は同0.8ポイント低下、「小規模企業」(36.7)は同3.7ポイント低下した。格差(大企業-中小企業)は7.2となり、3カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回った。

・業界別DI

『不動産』『運輸・倉庫』『卸売』『建設』は改善したが、『農・林・水産』『サービス』『小売』『製造』の4業界が悪化した。『建設』は3カ月連続で40台を維持したものの、『小売』は11カ月連続、『製造』においては18カ月連続で30台にとどまった。

・先行き見通しDI

「1年後」の先行き見通しDIは6業界が当月からの改善を見込んでいる。特に『製造』は当月(35.4)から10.6ポイント、『小売』は同(32.3)から10.4ポイントの改善を見込んでいる。一方、業界比率の突出している『建設』の「1年後」は、同(42.6)から2.5ポイントの悪化を見込んでいる。

「東北ブロック(2025年07月)」の詳細(青森・岩手・宮城・秋田・山形・福島)