レポートTDB景気動向調査2025年07月(北関東ブロック:茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

■北関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.3

1.2

2カ月連続で改善

・概況

『北関東』の景気DIは41.3となり2カ月連続で改善した。改善幅が1ポイントを超えるのは2023年3月以来。資材価格の高騰や人手不足の課題が続くものの、設備投資需要や好調なインバウンド需要が支えとなって景況感が上向いた。ただ、企業からは、トランプ関税の影響に加え、参院選の結果によって先行きの不透明感が高まっているとの声も聞こえた。また、トランプ関税に対する自動車メーカーの対応を懸念する声や、受注案件や設備投資が先送りされたとの声も聞かれ、足元の景気に力強さが欠けるなか先行きの不透明感も高まっている。

・景気DI

『北関東』の景気DIは前月比1.2ポイント増の41.3となり、2カ月連続で改善した。改善幅が1ポイントを超えるのは2023年3月以来。域内5県では「茨城」のみが悪化し、他の4県は改善。なかでも「山梨」「長野」は2ポイント以上の大幅改善となった。全国10地域での順位は前月の7位からに6位にアップした。

・規模別DI

「大企業」(44.6)、「中小企業」(40.9)、「小規模企業」(37.8)となった。前月比では、「大企業」は横ばい、「小規模企業」は悪化したが、「中小企業」が1.4ポイント増と大きく改善し、全体の景況感を押し上げた。この結果「大企業-中小企業」の規模間格差は3.7となり、前月から1.4ポイント縮小した。

・業界別DI

全10業界中、改善したのは『金融』『製造』など4業界、悪化は『卸売』『小売』など5業界だった。改善したなかでは『金融』(51.5)が3カ月連続で改善し、9か月ぶりの50台に回復した。また『サービス』(49.5)は、「旅館・サービス」や「広告関連」が牽引し、判断の分れ目となる50の目前まで回復した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(42.8、前月42.1)「6カ月後」(43.3、同43.4)「1年後」(44.4、同44.8)で、「3カ月後」のみ前月から改善し「6カ月後」「1年後」で悪化した。全体の「1年後」が現状よりも3.1ポイント改善する一方、業界別では「建設」「サービス」などの4業界で現状より悪化を見込む。

■茨城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.4

-0.3

2カ月ぶりの悪化

・概況

景気DIは前月比0.3ポイント減の41.4となり、2カ月ぶりの悪化となった。ここ数カ月の景況感は、悪化と改善を繰り返す足踏み状態が続いている。企業からはトランプ関税の問題に加え、「人手不足のため受注量を制限している」「住宅着工数が低迷し、建築需要が回復する兆しが見えない」など、厳しい声が聞かれる。米国のトランプ大統領は8月7日から発動するとした大統領令に署名し、日本には15%の関税がかかることが決まった。県内経済や物価にも影響が出る可能性があり、引き続き予断を許さない状況が続きそうだ。

・景気DI

「茨城」は前月比0.3ポイント減の41.4となり、再び悪化に転じた。米国とイランの衝突回避や、日銀の政策金利据え置きが安心材料となり、6月は2.6ポイント改善したものの続かなかった。7月に入ってからの円安進行による物価上昇懸念や、不確実性が強まるトランプ関税への警戒感が影響したとみられる。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.2ポイント減の41.7となり、横ばいを挟んで3カ月ぶりに悪化。「中小企業」も同0.2ポイント減の41.4、「小規模企業」は同2.5ポイント減の38.8となり、いずれも2カ月ぶりに悪化した。「大企業」「中小企業」「小規模企業」が揃って悪化するのは、2024年12月以来7カ月ぶり。

・業界別DI

『不動産』『運輸・倉庫』『農・林・水産』など6業界が悪化。一方、改善したのは『サービス』『小売』の2業界のみ。『金融』は横ばいだった。悪化幅が最も大きかった『不動産』は、県央・県北を中心とした建売の販売不振などが影響。一方、大きく改善した『サービス』は、宿泊施設の客単価上昇などがプラス材料となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」の43.2は前月比1.2ポイント、「6カ月後」の44.0は同0.9ポイント増となり、いずれも前月を上回った。その一方で「1年後」の43.5は同0.6ポイント下回った。企業からは、「製造業の見通しが不透明」「スバル向け受注が減少している」など、トランプ関税の先行きや影響を不安視する声が多く聞かれた。

■栃木県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.4

0.5

2カ月連続の改善も、懸念材料多く

・概況

7月の景気DIは2カ月連続の改善が見られたものの、改善幅は僅少に止まり、未だ不況感が漂う状態が続いている。県別順位は23位とまずまずの位置にはあるが、業界別の『小売』、『製造』や、規模別の「中小企業」など非常に懸念される数値も散見され、決して楽観はできない。トランプ関税が話題の中心とはなっているが、県内経済の最大の課題は『価格転嫁』と『一般消費の低迷』であろう。7月の倒産件数は20件と高水準を示すなど、小規模事業者の経営環境は過去最悪の状態とも言える。抜本的な中小企業支援策が必要と感じる。

・景気DI

7月の景気DIは41.4、2カ月連続で改善が見られた。しかし、DIは40をわずかに上回った状態。引き続き企業のコスト高は経営を圧迫しており、トランプ関税の具体的な影響も懸念される中、特に中小企業の動向には注視が必要であろう。一般消費の回復が望まれるところだ。

・規模別DI

「大企業」45.4(前月43.6)、「中小企業」40.8(同40.3)、「小規模企業」39.5(同38.8)と全てのカテゴリーでわずかに上昇している。特に「大企業」は、関税交渉の合意を対応策に着手できることで好印象と見ている。ただし、規模間格差は拡大しており、「中小企業」との立場の違いが鮮明となった。

・業界別DI

主要6業界では、『サービス』(49.1)、『建設』(45.1)などのBtoB業態で概ね正常値の範囲にあるものの、『小売』(30.8)、『製造』(37.9)などの、特にBtoCに関わる企業では、一般消費低迷の影響を大きく受けている印象だ。コストの動向や、価格転嫁の進展などがキーワードとなる。

・先行き見通しDI

総体的には改善傾向にある。「公共工事は国土強靱化に関わる予算配分で好調が続く。しばらくは安定」(建設)などの意見はあるものの、「輸出産業の業績後退や為替相場の不安定など、販路や原材料価格などに懸念が出てくる」(製造)といった、先行きの景況感にマイナスに働く要因が多いとする業界や企業も少なくない。

■群馬県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.9

0.7

2カ月連続で改善

・概況

群馬県内企業からは「需要回復の兆しがあり、景況感は下げ止まりを経て上向く気配を感じる」(卸売)との明るい声が聞かれる。一方で、「自動車や半導体関連の受注が春以降、減少が続いている」(製造)、「見積もりの引き合いが少なくなった」(サービス)など厳しい意見もある。7月の景気DIは2カ月連続で改善したが、改善幅は小さく力強さに欠ける。実質賃金低迷により個人の生活防衛が拡大、住宅着工戸数の低迷による影響や政治の不安定化なども考慮すると、浮揚要素に乏しく景気は弱含みで推移する公算が大きい。

・景気DI

景気DIは前月比0.7ポイント増の38.9と2カ月連続で改善した。『全国』の改善幅(前月比0.1ポイント増)を上回り、「群馬」の47都道府県別順位は38位(前月42位)に上昇した。他方、3カ月連続で40未満にとどまり、『北関東3県』において「茨城」「栃木」を下回った。

・規模別DI

「大企業」 は前月比1.1ポイント減の47.6となり、2カ月ぶりに悪化。一方、「中小企業」は同0.9ポイント増と2カ月連続で改善した。「小規模企業」は同0.2ポイント減と2カ月ぶりに悪化している。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は9.5に縮小した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界では 『建設』『不動産』『卸売』が悪化、『小売』など5業界が改善した。『金融』は横ばいだった。住宅着工戸数の落ち込みなどを背景に『建設』は3カ月連続で悪化した。『製造』は2カ月連続で改善したものの、トランプ関税負担の影響もあり小幅改善にとどまった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が39.5(前月39.8)、「6カ月後」が41.1(前月40.6)、「1年後」が42.3(前月43.1)となった。「3カ月後」「1年後」が前月より悪化、「6カ月後」は改善した。先に行くほどDI は高く、現在3.9ポイントとなっている全国との格差は 「1年後」には2.6ポイントまで縮小。

■山梨県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.5

2.5

2カ月ぶりに改善

・概況

「山梨」の景気DIは2カ月ぶりに改善した。企業からは、「インバウンドを中心に観光業が回復している」(小売)、「県関連機関からの受注が順調」(サービス)、「半導体製造装置産業のフォーキャストから判断してやや悪い」などの声が聞かれた。先行きについては、インバウンド消費は堅調で観光関連は引き続き潤っているが、トランプ関税の影響が出るのはこれからと予想され、先行きを懸念する声は多く、景況感は一進一退が続くとみられる。

・景気DI

「山梨」の景気DIは前月比2.5ポイント増の44.5となり、2カ月ぶりに改善。全国は同0.1ポイント増の42.8だった。「山梨」は全国を1.7ポイント上回り、都道府県別順位は前月の18位から9位に上がったが、前年同月の8位を下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比0.4ポイント増の47.8、「中小企業」は同2.7ポイント増の44.0、「小規模企業」は同2.0ポイント増の40.3となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は、「中小企業」の改善幅が大きかったため、前月より2.3ポイント縮小して3.8ポイント差となった。

・業界別DI

前月と比較可能な10業界中、4業界が改善、2業界が悪化、4業界が横ばいとなった。『サービス』は観光関連が堅調で54.8となり、判断の分かれ目となる50を5カ月連続で上回っている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.7(前月43.3)、「6カ月後」45.6(同44.6)、「1年後」46.6(同45.4)となった。3指標とも前月を上回り、1年後が最も高くなっている。『農・林・水産』『金融』『不動産』『サービス』『その他』の5業界が、3指標とも50以上となっている。

■長野県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.4

2.4

2カ月ぶりに改善

・概況

「長野」の景気DIは2カ月ぶりに改善し、7カ月ぶりに40台に上昇し、都道府県順位を23位まで高めた。企業からは、「インバウンドなどによる観光業界の景気の上昇」(広告関連)といった前向きのコメントが、旅館・ホテルや小売業から寄せられた。一方で、「仕事のある会社、仕事のない会社で大きく違っている」(機械製造)など格差の大きさや、「閉塞感があり悲観的な空気が強い。特にトランプ関税の動向が見えにくいため模様眺めの感が強い」(パルプ・紙・紙加工品製造)など先行きが見えない不安を訴える声も多い。

・景気DI

「長野」の景気DIは41.4と、前月比2.4ポイント低下し2カ月ぶりに改善した。また、同0.1ポイント改善した「全国」を1.4ポイント下回ったが、格差は2.3ポイント縮まった。都道府県別順位は23位と前年同月から19ランク、前月からは13ランクともに上昇し、27カ月ぶりに上位30位以内に入った。

・規模別DI

規模に比例しDIは高い。前月比で「大企業」が0.9ポイント悪化した一方、「中小企業」は2.8ポイント、「小規模企業」は0.2ポイント、ともに改善した。規模間格差は「大企業」と「中小企業」は3.7ポイント、「大企業」と「小規模企業」は1.1ポイントともに縮小。「中小企業」と「小規模企業」は2.6ポイント拡大。

・業界別DI

前月まで2カ月連続で改善していた『小売』は、反動もあり前月比4.1ポイント悪化した。一方で、前月悪化していた『運輸・倉庫』は同10.2ポイント、『製造』は同4.8ポイント、『建設』は同1.0ポイント、『卸売』は同0.9ポイントそれぞれ改善し、一進一退の状況がうかがえた。『サービス』は横ばいとなった。

・先行き見通しDI

「長野」全体、規模別の「中小企業」、業界別の『製造』は長期になるほど改善する予想。「大企業」、「小規模企業」、『卸売』、「小売」、『運輸・倉庫』は一進一退、『建設』は長期的な悪化傾向、『サービス』は一時的な悪化を見込む。「長野」全体としては、31カ月連続で長期になるほど改善を予想している。

「北関東ブロック(2025年07月)」の詳細(茨城・栃木・群馬・山梨・長野)