レポートTDB景気動向調査2025年07月(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

■近畿ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.5

-0.6

4カ月連続で悪化、コロナ5類移行前の水準に逆戻り

・概況

大阪・関西万博の開催に沸く近畿経済だが、物価高、人手不足、金利上昇といった事象に加えて、早い梅雨明けと猛暑といった天候要素も悪影響となり、好調を保ってきた飲食・宿泊サービス業にもマイナスの影響が及んでいる。繊維分野も『製造』『卸売』『小売』が全て悪化した。先行きに関しては、7月後半に実施された参院選の結果を受けて国内政局の不安定化が見込まれるうえ、トランプ関税の不確実性もあって、不透明感が一段と強まっている。景況感は当面、弱含みの推移が続くだろう。

・景気DI

『近畿』は前月比0.6ポイント減の41.5となった。水準としては、2022年9月(41.5)以来の低水準で、コロナ5類移行後の最低を更新した。府県別では4カ月連続で悪化した「大阪」のほか、「京都」が悪化。2カ月連続で改善た全国(42.8、同0.1ポイント増)との格差は▲1.3ポイントまで広がった。

・規模別DI

「大企業」(前月比0.4ポイント減)は2カ月ぶり、「中小企業」(同0.6ポイント減)は4カ月連続でそれぞれ悪化した。「中小企業」は2022年8月(40.5)以来の低水準。この結果、規模間格差は5.8ポイントまで広がり、規模による認識の差が鮮明となっている。なお、「小規模企業」も4カ月連続で悪化した。

・業界別DI

10業界中8業界が悪化。このうち『金融』『製造』『卸売』『小売』『サービス』の5業界はいずれもコロナ5類移行後の最低となるなど、後退色が鮮明となっている。とりわけ、トランプ関税の影響で設備投資が先送りされている機械分野のほか、輸出に陰りがみられる自動車分野、購買が落ち込む住宅分野の悪化が目立った。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は前月と変わらず。「6カ月後」(前月比0.9ポイント減)は3カ月ぶりに、「1年後」(同0.8ポイント減)は2カ月連続で悪化した。全体的に先行き不透明感が強まっており、府県別では全府県の「1年後」が悪化。業界別では『建設』『卸売』『小売』、規模別では「大企業」の先行き3指標が悪化した。

■大阪府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

-1.2

万博開催で観光客流入も、4カ月連続で悪化

・概況

大阪・関西万博は開催期間の折り返しを迎え、インバウンドを含む多くの観光客を集めている。しかしながら、『製造』『卸売』などからは「トランプ関税や参院選(の結果を受けた政局)など先行きが見えない状況」(建材・家具製造)という不透明感を訴える声が多く聞かれるうえ、物価上昇を受けて個人消費は弱含んでいる。先行きに関しても、『サービス』を中心に「万博特需がなくなる」(広告関連サービス)といったマイナスの影響が出てくることが予想されるなど、万博閉幕に向けてダウントレンド入りが現実味を帯びてきた。

・景気DI

「大阪」は前月比1.2ポイント減の41.9と、4カ月連続で悪化した。2カ月連続で改善した全国(42.8、同0.1ポイント増)とは相反する結果となり、格差(大阪-全国)は▲0.9ポイントと、8カ月ぶりのマイナス値に。都道府県別順位は前月の9位から20位に急落した。

・規模別DI

「大企業」は前月と変わらなかったのに対し、「中小企業」(前月比1.3ポイント減)は2カ月連続で悪化し、コロナ5類移行後の最低を更新した。この結果、規模間格差は6.9ポイントと、2024年3月(6.8ポイント)を上回って過去最大の開きとなった。なお、「小規模企業」は2カ月連続で40を下回った。

・業界別DI

『運輸・倉庫』を除く8業界が悪化。4カ月連続で悪化した『建設』のほか、『製造』『卸売』『小売』がコロナ5類移行後の最低を更新。とりわけ、着工数が落ち込む住宅分野や、設備投資先送りの影響を受ける機械分野の悪化が目立った『製造』『卸売』は、いずれも2021年6月以来の低水準となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比0.3ポイント減)、「6カ月後」(同0.9ポイント減)、「1年後」(同0.4ポイント減)の3指標とも2カ月連続で悪化した。業界別では『建設』『不動産』『サービス』、規模別では「大企業」で、「3カ月後」よりも「1年後」の値が低くなっているように先行き不透明感の強まりが見て取れる。

■京都府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.0

-0.7

2カ月ぶりに悪化、3カ月連続で41を下回る

・概況

「京都」の景気DIは3カ月連続で41を下回った。「半導体・電子部品業界の生産稼働率が低い」「受注量・生産量の減少」「中国から安価品流入」(製造)など、トランプ関税の悪影響により、幅広い業界で売り上げ減少の声が聞かれる。また、「インバウンド消費に陰り」(建設)が出始めており、堅調に推移してきた観光業も勢いを欠いている。資材価格や人件費高騰が続く一方、価格競争からコストアップ分を十分転嫁できず、収益性が悪化する企業が多くみられるため、今後も景況感の停滞が続くだろう。

・景気DI

「京都」の景気DIは、前月比0.7ポイント減の40.0に悪化、41を下回る低水準が続く。『全国』(42.8)との格差は▲2.8ポイント(前月は▲2.0ポイント)に拡大し、8カ月連続で『全国』を下回った。『近畿』の順位は5位(前月5位)と変動なかったが、都道府県別の順位は33位(同28位)に後退した。

・規模別DI

「大企業」(44.9、前月46.2)、「中小企業」(39.0、同39.7)、「小規模企業」(36.8、同37.4)となり、全規模で悪化。「中小企業」が3カ月連続で40割れとなるのは2022年3月以来40カ月ぶり。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は、前月比▲0.6ポイントの5.9ポイントとなった。

・業界別DI

『不動産』が2カ月ぶりに改善したものの、10業界中6業界が悪化した。『製造』は5カ月連続、『卸売』は9カ月連続の40割れとなった。資材価格の高騰などで住宅需要が低迷する『建設』は3カ月連続の悪化で、35カ月ぶりに41を下回った。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.5(前月42.0)、「6カ月後」42.8(同43.7)、「1年後」43.3(同45.1)となり、「6カ月後」と「1年後」は前月を下回った。業界別では、『建設』『卸売』は全3指標が悪化。規模別では「大企業」は全期間で悪化見通し。

■兵庫県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

0.1

5カ月ぶりの改善

・概況

「兵庫」の景気DIはわずかながら5カ月ぶりの改善となった。2カ月連続改善の『小売』からは「酷暑が後押しになっている」との声があった。その他の声としては、過去最速で2000万人を突破した訪日外国人客数に紐づく宿泊・飲食が好調との声が多かった。他方トランプ関税の影響を懸念する声として「国内自動車メーカーの動向が見えない」(製造)など、先行き懸念に関するコメントも依然として少なくない。引き続き、米国の経済政策の動向と影響に加え、例年を上回る酷暑の影響と個人消費の動向が注目される。

・景気DI

「兵庫」の景気DIは前月比0.1ポイント増の41.9で5カ月ぶりの改善となった。前年同月比は4カ月連続の悪化。全国順位は20位。『全国』は前月比0.1ポイント増の42.8、『近畿』は同0.6ポイント減の41.5で4カ月連続の悪化だった。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.8ポイント減の45.2で2カ月ぶりの悪化。「中小企業」は同0.3ポイント増の41.4、うち「小規模企業」は同1.4ポイント増の41.2となった。規模間格差は3.8ポイント(前月5.9ポイント)と前月比で2.1ポイントの縮小となった。

・業界別DI

10業界中5業界で悪化。『運輸・倉庫』は前月比3.2ポイント減の38.5で2カ月連続の悪化。『製造』は、同2.2ポイント減の38.6で2カ月ぶりに40を割り込んだ。他方、『小売』は同4.0ポイント増の38.5で2カ月連続の改善、『サービス』は46.1(同2.3ポイント増)で3カ月ぶりの改善だった。

・先行き見通しDI

3カ月後は前月比1.0ポイント増、6カ月後は横ばい、1年後は同0.6ポイント減と3カ月後のみ改善。業界別では『金融』『不動産』『サービス』が全指標で改善となった。規模別では大企業で全指標悪化、小規模企業で全指標改善となった。

■滋賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.8

0.0

前月比横ばいながら、直近1年では最低

・概況

「滋賀」の景気DIは前月比横ばいとなった。企業からは「彦根城の世界遺産登録の可否に左右されるが、良くなることを期待したい」(専門商品小売業)などの声がある一方、「住宅の購買欲をお客さまから感じられない」(不動産)、「あまり周囲での景況感の変化は感じない」(建材・家具、窯業・土石製品製造業)などの声が聞かれ、停滞する景況感に対して警戒感がうかがえる結果となった。

・景気DI

「滋賀」の景気DIは42.8と前月比横ばいとなった。業界別では悪化が3業界、改善が4業界、横ばいが2業界となった。近畿ブロック内の2府4県別順位は1位に返り咲いたなか、全国においては14位(前年同月は17位)となった。

・規模別DI

「大企業」が44.0と前月比0.4ポイント悪化したが、「中小企業」が42.6と同0.1ポイント、「小規模企業」は41.9と同0.9ポイント改善した。また、「大企業」は2カ月連続で「中小企業(うち小規模含む)」を上回った。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中4業界で改善、2業界で前月比横ばい、3業界で悪化した。滋賀県の主力産業である『建設』『製造』が改善した一方で、『金融』『不動産』『サービス』が悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が44.5(前月45.2)、「6カ月後」が44.8(前月46.4)、「1年後」が43.5(前月45.9)だった。2025年7月24日に日米で相互関税15%が合意された点を好意的に見る向きがある一方で、今後も不安定な状況が続くと不安視する傾向も見受けられる。

■奈良県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.3

0.3

前月比改善も、4カ月連続近畿内で最下位

・概況

「奈良」の景気DIは前月から0.3ポイント改善し、38.3となった。「ボーナス支給を見据え来客が増えた」(サービス)との明るい声がある一方で、「注文、見積もり共に減少傾向である」(製造)、「原材料のコストアップと為替の影響が続いている」(小売)など、物価高の影響が続いており、価格転嫁が進んでいない声が多く聞かれた。

・景気DI

「奈良」の景気DIは38.3と前月から0.3ポイント改善し、都道府県別では44位から42位に前進した。『近畿』では「滋賀」が11位から14位、「京都」が28位から33位、「大阪」が9位から20位、「和歌山」が27位から28位へ後退し、「兵庫」が21位から20位と「兵庫」と「奈良」のみが順位を上げた。

・規模別DI

「大企業」は40.5と前月比2.4ポイント改善した。「中小企業」も38.1と同0.1ポイント改善したが「小規模企業」は35.2と同1.8ポイント悪化した。「大企業」が大きく改善したなか、「中小企業」は横ばい、「小規模企業」の悪化は大きく、規模間格差は2.4と「大企業」が「中小企業」を上回った。

・業界別DI

『建設』は前月比3.6ポイント、『不動産』は同4.4ポイント、『運輸・倉庫』は同25.0ポイント、『サービス』は同5.4ポイント改善した。一方、『製造』は同2.3ポイント、『卸売』は同3.9ポイント、『小売』は同4.8ポイントそれぞれ悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(40.0、前月比0.9ポイント増)となったが、「6カ月後」(39.8、同1.1ポイント減)、「1年後」(41.3、同1.9ポイント減)と中長期的な指標において悪化する見通しとなった。

■和歌山県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.9

0.1

3カ月ぶりに改善も小幅にとどまる

・概況

「和歌山」は前月比0.1ポイント増の40.9とほぼ前月と横ばいだった。和歌山県内では保守分裂による参議院議員選挙もあり、政治色が強い月ではあったが、足元の景況感は持ち直しに力強さを欠く状況が続いている。極端に大崩れしている業界はないものの、全体が好景気という業界もない。食品を含めて各種の値上がりが続き、住宅など高価格帯の販売動向が鈍りつつあるほか、トランプ関税の影響も今後懸念され、県内企業への影響も含めて今後の動向が注目される。

・景気DI

「和歌山」は前月比0.1ポイント増の40.9と、3ヵ月連続の悪化は免れたものの小幅にとどまり、『全国』(42.8)および『近畿』(41.5)には届かなかった。多くの業界で価格転嫁を進めているものの、仕入価格も高く、水道・光熱費や人件費の上昇などのコスト高が重なり、増収でも減益の会社が多い。

・規模別DI

「大企業」が前月比1.3ポイント増の47.6、「中小企業」が同0.2ポイント増の40.3と「大企業」「中小企業」ともに改善した。ただし、「中小企業」は40ポイント前後の水準に留まっており、大企業との格差が縮まらない。

・業界別DI

『建設』(45.2)、『製造』(42.8)、『卸売』(39.3)、は前月比改善したものの、『小売』(33.3)は前月と変わらず、『サービス』(38.0)、『運輸・倉庫』(27.8)は前月比で悪化した。全般的にDIの水準が低く、業界全体が好調という業界は見当たらない。

・先行き見通しDI

3カ月後が42.4(前月44.4)、6カ月後が41.8(同45.2)、1年後が42.6(同43.1)となった。足元では「好調ではないが、途切れずに受注がある」(製造業)という声がある一方で、「トランプ関税による受注減が予想される」(輸送機械製造業)など慎重な見通しの声が多い。

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