レポートTDB景気動向調査2025年06月(南関東ブロック:埼玉・千葉・東京・神奈川)

2025/07/03
景気動向  アンケート

■南関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.5

0.2

3カ月ぶりに改善

・概況

『南関東』の景気DIは45.5で、4カ月連続で全国トップとなった。「東京」(3位)が他県を牽引し、今後もトップを維持する傾向は変わらないとみられるものの、業界別の先行き見通しでは「1年後」で50以上の業界はないほか、『製造』『小売』『その他』は40を下回るなど不安要素は散見される。なかでも小売業からは「トランプ関税ショック以降、お客さまの来店が減少している。売り上げや単価などが減少し、非常に厳しい状況である」(専門商品小売、東京)。「物価高、天候不順(例年にない暑さ)による買い控えや不要不急の外出控えなどにより、景況感は悪い」(各種商品小売、埼玉)などトランプ関税や天候を懸念する声が多く聞かれ、こうした状況は少なくとも秋頃までは続くことが予想される。

・景気DI

『南関東』の景気DIは45.5で3カ月ぶりに前月から改善。全国順位は4カ月連続のトップとなった。都県別では、「東京」が0.1ポイント悪化したものの、「埼玉」「千葉」「神奈川」はいずれも3カ月ぶりの改善となった。

・規模別DI

「大企業」は49.4で前月から0.1ポイント悪化したが、「中小企業」(44.7)と「小規模企業」(44.1)は、それぞれ同0.3ポイント、同0.2ポイント改善した。規模間格差は4.7ポイントとなり、前月から0.4ポイント縮小した。

・業界別DI

業界別では5業界で改善、5業界で悪化した。『金融』(48.5)と『運輸・倉庫』が2カ月連続で改善。他方、『小売』は3カ月連続で悪化となった。『農・林・水産』『建設』『不動産』『サービス』の4業界が50以上となった一方で、『製造』『小売』『その他』の3業界が40を下回った。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は46.9(前月46.4)、「6カ月後」は47.1(同46.8)、「1年後」は47.3(同47.1)となり、いずれも前月から改善した。業界別では、『農・林・水産』『建設』『サービス』の「3カ月後」「6カ月後」と『不動産』の「3カ月後」で50以上となった一方で、『その他』の「6カ月後」が40を下回った。

■埼玉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.7

1.5

3カ月ぶりに改善

・概況

埼玉県の景気DIは前月比1.5ポイント増の42.7となり、3カ月ぶりに改善した。ここ数カ月は鈍い動きがみられていたものの、その反動もあってか全体的にはやや回復といったところ。ただし、個別ではマイナス要素が多く、企業からは控えめな意見が多い。特に、アメリカ・トランプ関税、中東情勢をはじめとした地政学的リスクにより、「足踏み」といった表現を使い慎重な見方をする企業は少なくない。依然として、インバウンドは好調であるが、国内旅行や宿泊需要が停滞との声が複数あり、「サービス業」は久しぶりに40台に落ちた。

・景気DI

景気DIは42.7となり、前月比1.5ポイント増で3カ月ぶりの改善。1.0ポイントを超える改善は2024年12月以来6カ月ぶり。全国、『南関東』ともに小幅な改善にとどまるなか、「埼玉」の1.5ポイント増は管内で最も大きい改善。「埼玉」の全国順位は12位となって前月(22位)から大きくランクアップ。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.7ポイント増の45.0、「中小企業」は同1.4ポイント増の42.4、「小規模企業」は同2.9ポイント増の42.2となり、いずれの規模も改善した。「大企業」の改善幅が「中小企業」のそれを若干上回り、規模間格差は前月から0.3ポイント拡大して2.6ポイントとなった。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、前月比改善は5業界、横ばいが2業界、悪化が2業界となった。改善業界では、『不動産』の前月比4.3ポイント増が最大、悪化業界では、『サービス』の同1.8ポイント減が大きかった。好調を維持していた『サービス』が40台に落ち込んだのは2024年1月以来1年5カ月ぶり。

・先行き見通しDI

「3カ月後」44.8、「6カ月後」45.8、「1年後」47.1となり、前月(42.7、45.0、46.5)と比べ全ての指標が上回った。先へ行くほど上昇していく傾向に変化なし。先行きは不透明との見方が多いものの、足下の状況に比べれば先々の方がまだ良いとする、期待感が先行した結果とも取れる。

■千葉県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.5

0.2

3カ月ぶりに改善

・概況

「千葉」の景気DIは42.5となり、3カ月ぶりにわずかながら改善した。企業からは、「賃料の引き上げが進んでいる」(不動産)、「AI導入による効率化の投資意欲は旺盛で引き合いが堅調」(情報サービス)などの声が聞かれた。一方で、物価高を背景として、「ユーザーの購買意欲が減退」(機械器具卸)、「受診抑制が顕在化している」(医療)などの声も上がっている。トランプ関税や世界情勢、気候変動などの不確定要因もあり、景気の先行きには不透明感が広がっている。

・景気DI

「千葉」の景気DIは42.5となり前月比0.2ポイント増加、3カ月ぶりに改善した。全国は前月から0.1ポイント増の42.7となり、「千葉」は全国を0.2ポイント下回ったが、全国順位は前月(16位)から15位へと上昇した。

・規模別DI

「大企業」は46.8で前月比0.1ポイント減少、2カ月ぶりに悪化した。「中小企業」は同0.3ポイント増の41.9となった。これにより、「大企業」と「中小企業」との規模間格差は4.9ポイント(前月5.3ポイント)へと0.4ポイント縮小した。

・業界別DI

『その他』を除く9業界のうち、『建設』『不動産』『小売』『サービス』の4業界は前月比改善、『農・林・水産』は横ばい、『金融』『製造』『卸売』『運輸・倉庫』の4業界は悪化した。『不動産』は2カ月連続で改善、『卸売』は2カ月連続で悪化したほかは、一進一退となっている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は44.4(前月43.8)、「6カ月後」は43.8(同43.8)、「1年後」は43.6(同44.3)となり、3指標とも足元の42.5を上回っているものの、先へ行くほど低くなっており、不透明感が増している。『建設』『小売』『サービス』の3業界が同様の傾向。

■東京都

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.0

-0.1

2カ月ぶりに悪化

・概況

「東京」の景気DIは47.0で、2カ月ぶりに悪化した。企業からは「インバウンド需要が減退傾向にある」(その他製造)、「物価高騰による消費の低迷」(飲食料品卸売)、「トランプ関税の影響で国内、海外市場を含め様子見の状態である」(機械・器具卸売)などの声が聞かれた。地政学的リスクなど世界経済の情勢不安に加え、7月以降のトランプ関税の行く末も不透明な部分が大きいことを勘案すれば、先行きを見通すことは難しく、当面は横ばいで推移するとみられる。

・景気DI

「東京」の景気DIは47.0(前月47.1)で、2カ月ぶりに悪化したものの、全国(42.7)を4.3ポイント上回った。都道府県別順位は3位となり、前月(3位)と同ランク、『南関東』の1都3県で唯一、前月比で悪化した。

・規模別DI

「大企業」(50.1)は前月比0.6ポイント悪化、「中小企業」(46.0)は同0.1ポイント悪化、「小規模企業」(46.2)は同0.8ポイント悪化となった。規模間格差は4.1ポイントとなり、前月より0.5ポイント縮小した。

・業界別DI

全10業界中、3業界が改善し、5業界が悪化した。『金融』(48.7)は前月比で4.0ポイント増となり、2カ月連続で改善した。一方で、『農・林・水産』(46.7)は同6.1ポイント減、『小売』(40.9)は同4.8ポイント減と大幅に悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(47.8、前月47.9)、「6カ月後」(47.9、同47.9)、「1年後」(47.8、同48.0)となり、3指標ともにほぼ横ばい推移となった。

■神奈川県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.2

1.1

3カ月ぶりの前月比改善

・概況

「神奈川」のDIは3カ月ぶりの前月比改善となった。しかし、「資機材の高止まり、人件費の高騰、人材不足、個人消費の低迷」(建設)など、足下の厳しさを口にする企業は依然として多い。加えて、「自動車業界向け需要が弱い」(製造)、「関税問題により開発投資様子見」(サービス)など、自動車業界やトランプ関税の動向に対する懸念が、特に2025年上半期の景況感の悪化に表れた。「世界情勢の不確実性が高く、先行き不透明」(卸売)など、年後半も不安定な経営環境が続きそうだ。

・景気DI

「神奈川」の景気DIは44.2と前月(43.1)から1.1ポイント増加し、3カ月ぶりの前月比改善となった。全国順位は7位で、前月の10位から上昇した。2025年上半期の景気DIの平均は44.5と前年同期(46.3)を下回り、6月は持ち直したものの44前後の低水準が続いている。

・規模別DI

「大企業」は49.7(前月比2.7ポイント増)、「中小企業」は43.6(同1.0ポイント増)とともに3カ月ぶりに改善、「小規模企業」は41.7(同1.4ポイント増)と4カ月ぶりの改善となった。「大企業」と「中小企業」の格差は6.1ポイントで、乖離幅は2025年に入って最大となった。

・業界別DI

9業界中、6業界で前月比改善となった。『金融』が唯一50.0を上回り、『卸売』は2カ月連続の改善で、それぞれこの1年で最高値となった。一方で、『製造』は5カ月ぶり、『小売』は3カ月ぶりに改善したが、40.0を下回る低水準が続いている。また、『運輸・倉庫』は3カ月連続の悪化で、今年の最低値となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は46.6(前月44.9)、「6カ月後」は46.9(同45.1)、「1年後」は47.3(同45.7)で、それぞれ前月比改善となった。『金融』『建設』を除く7業界で3指標とも50.0を下回ったが、『農・林・水産』『金融』『製造』を除く6業界で3指標すべてが前月より改善した。

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