レポートTDB景気動向調査2025年06月(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

2025/07/03
景気動向  アンケート

■九州ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.5

-0.3

2カ月ぶりに悪化

・概況

『九州』の景気DIは、44.5と2カ月ぶりに悪化した。企業からは「原料の異常な高騰、光熱費、輸送コストなどの値上げに価格転嫁が追いつかない状況にある。」(宮崎県、飲食料品卸売)などの声が聞かれる。DI50台は、業界別では『その他』のみ、県別では「沖縄」のみとなった。インバウンド需要は引き続き期待されるが、原燃料高に加え、防衛的賃上げを含む人件費負担増などがあるなか、価格転嫁も十分に進んでいないことに変化はなく、一進一退ながら緩やかに下落傾向を辿るものとみられる。

・景気DI

『九州』(44.5、前月比0.3ポイント減)は2カ月ぶりに悪化。10業界中4業界、8県中5県で悪化。『九州』8県中10位以内は4県。先行き見通しDIは「3カ月後」が2カ月連続で改善したもものの、「6カ月後」は前月と同数となり、「1年後」は2カ月ぶりに悪化。ブロックでは4カ月連続で全国2位。

・規模別DI

「大企業」(48.8、前月比0.5ポイント減)は3カ月ぶり、「中小企業」(44.0、同0.2ポイント減)は6カ月連続で悪化。規模間格差は4.8ポイントと前月から0.3ポイント縮小した。また、27カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回り、「小規模企業」は42.9(同0.1ポイント増)と2カ月連続で改善。

・業界別DI

『金融』(48.3、前月比0.2ポイント増)など5業界で改善したものの、『農・林・水産』(47.1、前月比3.9ポイント減)など10業界中4業界で悪化。『製造』が4カ月連続、『不動産』が3カ月連続で悪化した。DI50台は『その他』のみとなった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(46.3、前月比0.3ポイント増)は2カ月連続改善。「6カ月後」(46.5、前月同数)は横ばい、「1年後」(46.6、同0.1ポイント減)は2カ月ぶりに悪化した。業界別では『金融』『建設』『製造』『小売』が全指標で改善、『不動産』『卸売』が全指標で悪化した。

■福岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.4

-0.1

4カ月連続の悪化

・概況

「福岡」の景気DIは、インバウンド需要や都市再開発事業等が追い風となっているものの、個人消費等の伸び悩みもあって、4カ月連続で悪化した。企業からは「関西万博の開催など旅行業界にとっては追い風になっている」(運輸)などのコメントがある一方、「当社の顧客である酪農、肥育農家の環境が非常に悪い」(卸売)との声もあった。インバウンド関連など一部の業界では引き続き好調な推移にあるが、物価高や労務費負担増は多くの業界にマイナスの影響を与えており、今後も「福岡」の景気は低迷感が続く可能性が高い。

・景気DI

「福岡」(44.4、前月比0.1ポイント減)は、4カ月連続の悪化となった。業界別では、『不動産』『製造』など4業界で改善した。『建設』(50.9)で横ばい。『農・林・水産』『金融』など4業界で悪化。都道府県別順位は6位で前月と同位。『九州』8県での順位は前月と同じ4位となった。

・規模別DI

「大企業」47.7(前月比0.6ポイント減)は2カ月連続で悪化。「中小企業」は43.8で横ばい。「小規模企業」43.0(同0.6ポイント増)は4カ月ぶりに改善。規模間格差は「大企業」が「中小企業」を3.9ポイント上回った。

・業界別DI

『建設』(50.9)は横ばい。『農・林・水産』(50.0、同8.3ポイント減)、『金融』(44.4、同5.6ポイント減)など4業界で悪化。『不動産』(45.6、同0.5ポイント増)、『製造』(40.8、同1.2ポイント増)など4業界で改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(46.1、前月比0.4ポイント増)で改善。「6カ月後」(46.4、同0.2ポイント減)、「1年後」(47.1、同0.4ポイント減)で悪化。業界別では、『農・林・水産』『金融』『卸売』『運輸・倉庫』で3指標すべて悪化した。『建設』『製造』はすべて改善した。

■佐賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.4

-0.5

2カ月ぶりに悪化

・概況

「佐賀」の景気DIは2カ月ぶりに悪化した。規模別では「中小企業」が改善した一方、「大企業」が前月比4.2ポイント悪化したことで、規模間格差は縮小した。業界別では顕著に差がみられ、『小売』が大幅な改善をみせたが、『建設』『卸売』『サービス』は悪化した。先行きとしても業界別で明暗が分かれたが、金利上昇や資材価格の高値推移は全業界に影響するといえよう。また、依然として人手不足に悩まされる企業は多く、経営上の厳しさは増していると言えることから、今後の「佐賀」の動向が注視される。

・景気DI

「佐賀」の景気DIは、前月比0.5ポイント減の42.4と2カ月ぶりに悪化した。『九州』は前月比0.3ポイント減の44.5、『全国』は42.7と前月を0.1ポイント上回った。「佐賀」は『全国』および『九州』より下回り、都道府県別順位は前月の12位から17位に後退した。

・規模別DI

「中小企業」は前月比0.5ポイント増の41.8、うち「小規模企業」は40.4と同0.2ポイント悪化した。「大企業」は45.8ポイントで前月比4.2ポイントダウンと大幅に悪化し、規模間格差は4.0と前月より4.7ポイント縮小した。

・業界別DI

住宅着工件数の減少などから、『建設』は前月比3.5ポイント悪化した。『卸売』は同業他社との競合や仕入価格の高止まりが影響し、前月比2.9ポイント悪化した。一方、『小売』に関しては、価格競争に落ち着きがみられ売価が正常に戻りつつあるとの声が聞かれ、前月比14.5ポイントアップと大幅に改善した。

・先行き見通しDI

「3か月後」は44.2(前月43.8)、「6か月後」は43.9(同45.5)、「1年後」は45.0(同45.2)となった。多くの業界で1年後の景気回復を望む声が上がったが、住宅着工件数や大型建設工事に関わる『製造』では、1年後の先行き見通しDIも厳しい見解となった。

■長崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.6

0.3

2カ月ぶりに改善

・概況

「長崎」の景気DIは前月比0.3ポイント増と2カ月ぶりに改善した。製造業が引き続き好調であり、長崎スタジアムシティの開業効果もあって小売業を中心とした観光業が景況感を牽引していることがうかがえた。他方で、物価高やトランプ関税の影響を懸念する声が聞かれた。また、製造業でも、「夏場の気温上昇にともなう作業者の負担増大による生産性低下」(卸売)を懸念する声も聞かれた。このように外的な影響により安定した成長が期待し難い状況であるが、「長崎」の景況感は今後も一進一退推移を辿るものと考えられる。

・景気DI

「長崎」の景気DIは前月比0.3ポイント増の40.6と2カ月ぶりに改善した。『九州』8県中、本県を含めて3県が改善し、九州ブロック内順位は前月から順位を1つ上げて7位となった。都道府県別順位は前月の33位から4つ上げて29位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.1ポイント増の41.7、「中小企業」は同0.2ポイント増の40.5、「中小企業」のうち「小規模企業」は同1.7ポイント減の37.7となった。「大企業」の方が「中小企業」よりも増加率が高かったため、規模間格差は1.9ポイント拡大して1.2となった。

・業界別DI

前月から改善した業界は『金融』『建設』『製造』『小売』『運輸・倉庫』の5業界であった。悪化した業界は『農・林・水産』『不動産』『卸売』『サービス』の4業界となった。『卸売』は3カ月連続で悪化しているが、逆に『製造』は3カ月連続で改善している。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.9(前月42.7、前月比0.2ポイント増)「6カ月後」42.9(同43.6、同0.7ポイント減)「1年後」42.8(同43.6、同0.8ポイント減)となった。業界別でみると『建設』『小売』が先へ行くほど悪化の見通しとなっている。

■熊本県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

46.5

-2.1

2カ月ぶりに悪化

・概況

「熊本」の景気DIは前月比2.1ポイント減の46.5と2カ月ぶりに悪化し、景気判断の分かれ目となる50のラインを7カ月連続で下回った。「TSMCやインバウンド効果が継続」(サービス)と明るい話題が見られた一方で、「工場関係の設備投資が延期になりつつある。住宅の着工戸数も少ない」(建設)や「燃料、車両、整備費が上昇」(運輸)と不安を示す声が依然として多い。アメリカがイランを攻撃したことで中東情勢が一段と緊迫化し、不安定な国際情勢が続いているため、景気動向は当面、一進一退の状況が続くと見られる。

・景気DI

「熊本」の景気DIは46.5で前月比2.1ポイント減と2カ月ぶりに悪化した。『九州』(44.5)も前月比0.3ポイント減となったが、「全国」(42.7)に関しては同0.1ポイント増となった。なお、「熊本」の都道府県別順位は第4位(前月第2位、前年同月第3位)と前月から2ランク上がった。

・規模別DI

「大企業」の景気DIは62.5と前月比5.8ポイント増だったが、「中小企業」は45.2と同2.6ポイント減となった。23カ月連続で「大企業」が「中小企業」の景気DIを上回り、規模間格差(大企業-中小企業)に関しては「大企業」が改善して「中小企業」が悪化したため、17.3ポイントに広がった。

・業界別DI

9業界中、改善した業界は『建設』『卸売』『運輸・倉庫』『サービス』の4業界にとどまり、悪化した業界は『農・林・水産』『金融』『不動産』『製造』『小売』の5業界と多かった。インバウンド消費の拡大による恩恵が一部でうかがえるが、アメリカ発の相互関税政策による影響が懸念され、悪化した業界が多かった。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは「3カ月後」が48.2(前月49.1)、「6カ月後」は49.2(同48.7)、「1年後」は47.2(同48.6)となった。慢性的な人手不足や物価高騰に加え、TSMC熊本第2工場の着工が遅れている影響から、「3カ月後」と「1年後」の指標が前月から悪化した。

■大分県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

47.9

1.9

3カ月ぶりに改善

・概況

6月はトランプ大統領の追加関税や日産自動車の生産体制見直しなどにより『製造』はDIを押し下げた。米の高騰や物価高から消費者の買い控えが顕著であった5月と比べて、経済活動は比較的安定していた。また、6月下旬にはガソリン価格の引き下げなどから、今後の原価抑制につながるとみられる。一方、トランプ大統領の発言は関税に限らずディールを求め、加えて、イスラエルのイラン攻撃によりホルムズ海峡封鎖の可能性と、それに伴う原油相場への影響は注視する必要があり、県内の景気動向は一進一退の状況が続くと予想される。

・景気DI

「大分」は前月比1.9ポイント増の47.9となり、3カ月ぶりに改善した。全国順位は第2位(前月第5位・前年同月第2位)となり、前月より上昇した。また、判断の分かれ目となる「50」を6カ月連続で下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比3.3ポイント減の46.7となった。「中小企業」は同2.6ポイント増の48.1、「中小企業」のうち「小規模企業」は同1.5ポイント増の48.3となった。規模間格差は1.4となり、2カ月ぶりに「中小企業」が「大企業」を上回った。

・業界別DI

業界別では『製造』が前月より悪化した。一方で『建設』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』は改善し、とりわけ『小売』は前月比4.0ポイント増の42.9となり、2カ月ぶりに40ポイント代となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」50.0(前月47.6)、「6カ月後」50.0(同49.7)、「1年後」47.2(同47.3)となり、「3カ月後」「6カ月後」は前月より改善した。業界別では、『サービス』が3指標ともに「50」以上となった。一方で、『小売』は3指標ともに「50」を下回った。

■宮崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.8

-2.2

2カ月ぶりに悪化、再び『九州』最下位に

・概況

「宮崎」の景気DIは38.8で、今年4月の38.7に次ぐ低水準。トランプ関税を巡る協議が伸展しないまま、相互関税の上乗せ適用停止期限を迎える懸念から『製造』を中心に景況感が悪化した。「原料の高騰が異常」(飲食料品卸売)、「節約志向で高級肉が売れない」(飲食料品・飼料製造)と、物価高に追いつかない賃上げの現状を指摘する声に加え、新築建築物に省エネ基準適合を義務化する改正建築基準法や、2024年問題の規制が足かせになっているとの指摘もあり、国内外の課題が経営者心理の重荷となっている。

・景気DI

「宮崎」の景気DIは38.8で、前月比2.2ポイント減と2カ月ぶりに悪化した。『九州』は44.5で同0.3ポイント減と悪化、全国は42.7で同0.1ポイント増と改善し、いずれも小幅な変動だったなか、悪化幅が大きかった「宮崎」の全国順位は前月の24位から39位と低下し、再び『九州』最下位となった。

・規模別DI

「大企業」は53.3で前月比3.3ポイント増となったが、「中小企業」は37.6で同2.2ポイント減と悪化した。企業間格差(大企業-中小企業)は15.7となり、同5.5ポイント拡大した。「中小企業」に含む「小規模企業」は35.3で同1.6ポイント減と悪化し、規模別で見方が分かれた。

・業界別DI

『製造』は27.8で前月比11.6ポイント減と大幅に悪化、『非製造』は41.3で同横ばいだった。『製造』は「飲食料品・飼料製造」「鉄鋼・非鉄・鉱業」「電気製品製造」などが悪化、『非製造』は「化学品卸売」「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」などが悪化、「建設」「広告関連」「専門サービス」などが改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は40.9で前月比0.3ポイント減と悪化、「6カ月後」は41.1で同0.8ポイント増、「1年後」は43.8で同1.9ポイント増と改善した。「大企業」は3指標とも改善したが、『製造』や「中小企業」は「3カ月後」の悪化が目立った。

■鹿児島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.6

1.6

2カ月ぶり改善

・概況

「鹿児島」の景気DIは42.6と2カ月ぶりの改善となった。企業からは、「公共工事の発注量が増加傾向にある」(建設)や「インバウンド消費の増加」(小売)といった声が聞かれた一方で、依然として「中東情勢の不安定さ」(卸売)や「慢性的な人手不足」(製造)などを不安視する企業も多かった。前述の通り「鹿児島」では改善が進んだが、景況感に対し厳しい見方をする企業が減少した形であり、今しばらくは一進一退の状況が続くものとみられる。

・景気DI

『鹿児島』の景気DIは42.6と前月比1.6ポイント改善した。「鹿児島」では前月は2年ぶりの低水準であったが、改善が進んだ。『九州』は0.3ポイント悪化となる44.5、『全国』は42.7と0.1ポイントの改善に留まったことで、「鹿児島」の都道府県別順位は前月の24位から13位に上昇した。

・規模別DI

「大企業」は前月比4.2ポイント悪化となる45.8となった。一方で、「中小企業」は42.2と同1.9ポイントの改善、「中小企業」のうち「小規模企業」も42.3と同2.7ポイントの改善を果たした。「大企業」の悪化が進んだ一方、「中小企業」が改善したことで、規模間格差(大企業-中小企業)は6.1ポイント縮小した。

・業界別DI

『農・林・水産』、『製造』、『小売』、『運輸・倉庫』、『サービス』の5業種が改善、横ばいは『金融』の1業界、『建設』、『不動産』、『卸売』の3業界が悪化となった。特に近時は低調な推移であった『小売』、『運輸・倉庫』が7ポイント以上の改善となるなど業界別に差はあるものの、一進一退の状況が続いている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.2と前月比1.8ポイントの改善、「6カ月後」は45.0と同1.9ポイントの改善、「1年後」も同1.5ポイント改善の45.9となるなど、全指標で改善となった。前月は全指標で悪化していたが、景気DIの改善と連動する形で先行きに対し明るい見方をする企業が増加した形となった。

■沖縄県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

55.9

-0.5

2カ月振りに悪化

・概況

「沖縄」の景気DIは、2カ月振りの悪化となった。全国順位は27カ月連続1位となったものの、今年に入り改善と悪化を繰り返しており、右肩上がりに景気が良くなっているとは言い難い状況である。また、観光客増加や大型設備投資の継続により景況感は全体的に良好と言えるものの、物価高と人手不足が業績に影響している企業の声も多い。さらに、世界情勢やトランプ関税が景気に与える影響を懸念する声も一定数あり、引き続き動向は注視していく必要がある。

・景気DI

「沖縄」の景気DIは前月比0.5ポイント減の55.9となった。業種別では7業界中、4業界が悪化となり、改善は1業界のみだった。ただ、都道府県別順位は27カ月連続で全国1位となり、『全国』(42.7)、『九州』(44.5)を上回っている。

・規模別DI

「大企業」(58.3、前月比2.8ポイント減)、「中小企業」(55.8、前月比0.4ポイント減)はともに2カ月振りの悪化、「中小企業」のうち「小規模企業」(56.7、前月比0.7ポイント増)は横ばいとなった。

・業界別DI

前月と比較可能な7業界中、『小売』(6.0ポイント増)の1業界は改善、『製造』、『運輸・倉庫』の2業界が横ばいとなった。しかし、『建設』(2.9ポイント減)、『不動産』(3.3ポイント減)、『卸売』(5.0ポイント減)、『サービス』(0.2ポイント減)の4業界が悪化した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」が55.6(前月56.4)、「6カ月後」は54.8(前月55.9)といずれも前月より悪化、「1年後」は54.0(前月53.6)で前月より改善した。

「九州ブロック(2025年06月)」の詳細(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)