レポート

TDB景気動向調査2025年06月(北関東ブロック:茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

■北関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.1

0.8

4カ月ぶりに改善

・概況

『北関東』の景気DIは40.1となり、4カ月ぶりに改善した。トランプ関税の影響が心配される『製造』は、その影響を懸念する声が依然あるものの、一時に比べて閉塞感が緩和したとの声も聞かれ、5カ月ぶりに改善した。インバウンド需要に加え、映画の舞台になった「長野」では国内旅行の増加も下支えとなっているが、従来の物価や人手不足問題に加えて、住宅建築における省エネ基準改正による影響も聞かれ始めている。関税引き上げの猶予期限が近付くなか、その懸念が再燃する可能性もあり、景気は予断を許さない状況が続いている。

・景気DI

『北関東』の景気DIは40.1となり、前月から0.8ポイント増加し、4カ月ぶりに改善した。域内5県では「長野」のみが悪化し、「山梨」は横ばい、「茨城」「栃木」「群馬」が改善した。「茨城」「栃木」は2カ月ぶりに40台に回復した。全国10地域での順位は前月の9位からに2つ順位をあげて7位になった。

・規模別DI

「大企業」(44.6)、「中小企業」(39.5)、「小規模企業」(38.0)となり、全てで改善した。全区分が改善するのは4カ月ぶり。最も改善したのは「小規模企業」の前月比1.4ポイント増。「中小企業」の改善幅は「大企業」を0.1ポイント下回り、この結果「大企業-中小企業」の規模間格差は5.1となった。

・業界別DI

全10業界中、『不動産』『建設』、『卸売』など8業界が改善し、『運輸・倉庫』『その他』が悪化した。なかでも『製造』(35.5)は、「鉄鋼・非鉄・鉱業」や「電気機械製造」の改善を受け、5カ月ぶりに改善。また、DIが最も高かったのは『金融』の47.4、次いで『不動産』『サービス』が共に46.7で続いた。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(42.1、前月41.5)「6カ月後」(43.4、同42.7)「1年後」(44.8、同43.6)と、全てで改善した。全てで改善するのは2024年8月以来。業界別でみると「1年後」のDIが最も高いのは『金融』の48.7、「1年後」が現状を下回るのは『建設』『農・林・水産』の2業界だった。

■茨城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.7

2.6

2カ月ぶりに改善

・概況

6月の景気DIは前月比2.6ポイント増の41.7となり2カ月ぶりに改善、5月に割り込んだ「40」の節目を回復した。しかし、「建築コストが上がり、家づくりを躊躇する顧客が増えてきている」「物価高の影響なのか趣味にお金を使ってもらえない」など、企業からは厳しい状況を訴える声が依然として多い。また、「原材料価格の上昇に価格転嫁が追いつかず、収益性が悪化している」といった中小企業の価格転嫁は遅々として進んでいないようである。トランプ関税の行方も気になるところであり、引き続き楽観できない状況が続きそうだ。

・景気DI

「茨城」は前月比2.6ポイント増の41.7となり、2カ月ぶりに改善した。5月(39.1)は2023年1月以来、2年4カ月ぶりに節目となる「40」を割り込んだものの、1カ月で回復した。米国とイランの全面衝突が回避されたことや、日銀が金融政策決定会合で政策金利を据え置いたことなどが安心材料につながった。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.9ポイント増の42.9となり、横ばいを挟みながら4カ月ぶりの改善。「中小企業」は同2.7ポイント増の41.6、「小規模企業」も同2.7ポイント増の41.3となり、いずれも2カ月ぶりの改善。「大企業」「中小企業」「小規模企業」が揃って改善したのは、2024年2月以来1年4カ月ぶり。

・業界別DI

前月と比較可能な8業界中、『農・林・水産』『製造』『建設』など5業界が改善。一方、悪化したのは『小売』『サービス』の2業界。『不動産』は横ばいだった。改善幅が最も大きかった『農・林・水産』は高止まりしている米の価格が企業マインドを押し上げた。一方、悪化した『小売』は、物価高による消費意欲の後退、買い控えなどが悪材料となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.0、「6カ月後」43.1、「1年後」44.1となり、3指標すべてで前月を上回った。企業からは依然として先行きを危惧する意見が多く聞かれるものの、「取引先からの引き合いが多くなってきている」「オークション会場の成約状況が良くなってきている」など、プラスを見込む企業の声が増えつつある。

■栃木県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.9

2.5

5カ月ぶりの改善も、40台に辛うじて回復

・概況

6月の景気DIは5カ月ぶりに改善が見られたが、40をわずかに上回っただけで、実質的には踊り場的と捉える声も少なくない。企業からは、「需要は少なくないが、人手不足により、工事がこなせない状態が続いている」(建設)や、「米騒動なども影響し、購買意欲が慎重になっている。割高なものは無理して買わない風潮は強まっている」(小売)など、消費の弱含みや社会問題化している人手不足などの課題を懸念する声は多い。構造的な側面もあり、早急な改善は望めず、夏の参議院選挙への関心度合いにも注目が集まる。

・景気DI

6月の景気DIは40.9、5カ月ぶりに改善を示したものの、40台に辛うじて回復した状態で、景況感は全体的に弱含みだ。米国の関税政策が暗礁に乗り上げているなか、物価高、コストアップなどが引き続き企業マインドを押し下げている。一般消費の減退感は鮮明で、生産調整による流通不振なども現実化しつつある。

・規模別DI

「大企業」43.6(前月41.7)、「中小企業」40.3(同37.8)、「小規模企業」38.8(同36.0)と、全てのカテゴリーで改善が見られたが、40を跨いだレベルの数値変化であり、不況感はまだまだ解消されていない。例えば自動車部品ではティア3で生産調整の様相が窺えるなど、厳しい中小企業も見られた。

・業界別DI

主要6業界では、『サービス』(51.0)、『運輸・倉庫』(50.0)などで改善、『製造』(35.4)は停滞しており、業界間格差も大きい。特に価格転嫁や、利幅の確保に向けた動きなどで差が出ていると見られる。また、同一業界においても、格差が鮮明になりつつある。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.4(前月42.1)、「6カ月後」43.2(同42.8)、「1年後」44.3(同41.1)と、わずかながら改善傾向にある。トランプ関税の先行きを憂う声や、地政学的なリスク、物価高など、懸念材料は山積している。特にイスラエルの紛争状態から石油関連の供給を大きな課題とする声が多い。

■群馬県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.2

0.3

4カ月ぶりに改善

・概況

県内企業からは「AI普及を背景にシステム投資の機運が高まっている」(サービス)との明るい声が聞かれる。一方で、「売上規模は拡大したが、コスト負担が上昇し利益は十分には増加せず」(運輸)、「自動車関連メーカーの設備投資の先送りが一部で見え始めた」(製造)など厳しい意見もある。6月の景気DIは4カ月ぶりに改善したが、中小企業を中心として力強さに欠けている。トランプ政権による「相互関税」動向など世界経済の不確実性、県内建設業界の談合による影響も考えられ、景況感は予断を許さない状況が続くものと予測する。

・景気DI

景気DIは前月比0.3ポイント増の38.2と横ばいの月を挟んで4カ月ぶりに改善した。しかしながら改善幅は小さく、2カ月連続で40未満にとどまった。この結果、「群馬」の47都道府県別順位は42位(前月39位)に低下、『北関東3県』においては「茨城」「栃木」を下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.3ポイント増の48.7となり、2カ月ぶりに改善。「中小企業」は同0.2ポイント増、「小規模企業」も同1.0ポイント増とそれぞれ4カ月ぶりに改善した。ただし、改善幅は「大企業」と比較して小さく、格差は11.5に拡大した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界では、『小売』『サービス』など4業界が悪化、『卸売』など4業界が改善した。『金融』は横ばいだった。賃金の伸びが物価上昇に追いつかず消費者の節約志向がみられる『小売』は2カ月連続で悪化した。『製造』は3カ月ぶりに改善したものの、トランプ関税の影響もあり小幅改善にとどまった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が39.8(前月39.5)、「6カ月後」が40.6(前月40.0)、「1年後」が43.1(前月42.7)となった。「3カ月後」「6カ月後」「1年後」の3指標すべてが前月より改善、先に行くほどDIは高く、現在4.5ポイントある全国との格差は「1年後」に2.3ポイントまで縮小。

■山梨県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.0

0.0

都道府県別順位は僅かに下落

・概況

「山梨」の景気DIは前月比横ばいだった。企業からは、「インバウンド需要は、7月の災害予言等の影響からか、5月中旬以降訪日客が減少しており、一時的に前年を下回る状況となってる」(リース・賃貸)、「AI用装置の投資が減っている。一般半導体関連装置の受注がほぼない」(機械製造)などの声が聞かれた。先行きについては、インバウンド消費で観光関連は堅調であるが、トランプ関税に加え、イラン・イスラエル紛争による原油価格の高騰を懸念する声が多く聞かれることから、不透明感は増している。

・景気DI

「山梨」の景気DIは前月比横ばいの42.0となり、全国は同0.1ポイント増の42.7だった。「山梨」は全国を0.7ポイント下回り、都道府県別順位は前月の17位から18位に下がった。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.0ポイント増の47.4、「中小企業」は同0.1ポイント減の41.3、「小規模企業」は同横ばいの38.3となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は、「大企業」が改善したため、前月より1.1ポイント拡大して6.1ポイント差となった。

・業界別DI

前月と比較可能な10業界中、5業界が改善、4業界が悪化、1業界が横ばいとなった。『小売』は、物価高により消費意欲が弱まり前月比6.1ポイント減の38.9となり、判断の分かれ目となる50を大きく下回っている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.3(前月43.0)、「6カ月後」44.6(同43.9)、「1年後」45.4(同44.2)となった。3指標とも前月を上回り、先に行くほどDIは高くなっている。『不動産』『サービス』の2業界が、3指標とも50以上となっている。

■長野県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.0

-0.5

3カ月ぶりに悪化し、6カ月連続の30台

・概況

「長野」の景気DIは3カ月ぶりに悪化した。6カ月連続で30台の低水準となっている。こうした長引く低迷の影響もあり、企業からは、「購買品の高騰による収益低下、顧客への価格見直しも進展なし、トランプ関税の今後の影響も心配」(輸送用機械・器具製造)、「前年同期に比して予約の状況が遅い。トランプ関税などの不安定な状況から心理的に個人消費が抑えられているような気がする」(旅館・ホテル)など、業種を問わず先行きに対する不安を訴える声が多く、前向きなコメントは乏しくなってきている。

・景気DI

「長野」の景気DIは39.0と、前月比0.5ポイント低下し3カ月ぶりに悪化した。また、同0.1ポイント改善した「全国」を3.7ポイント下回り、格差は0.6ポイント拡大した。都道府県別順位は36位と前年同月から4ランク上昇したが、前月からは1ランクダウンし、26カ月連続で30位以下の低調な推移が続く。

・規模別DI

規模に比例してDIが高い状況は続いたが、前月比で「大企業」と「中小企業」がともに0.6ポイント悪化した一方、「小規模企業」は0.8ポイント改善した。規模間格差は「大企業」と「中小企業」は横ばい、「中小企業」と「小規模企業」、「大企業」と「小規模企業」はともに1.4ポイント縮小した。

・業界別DI

5月に前月比4.4ポイント悪化した『サービス』が、6月は同2.8ポイント改善し一進一退が続いた。『小売』は同0.9ポイント増と、2カ月連続で改善。一方『運輸・倉庫』の同7.7ポイントを筆頭に、『卸売』(同1.2ポイント)、『建設』(同1.0ポイント)、『製造』(同0.4ポイント)がそれぞれ悪化。

・先行き見通しDI

「長野」全体、規模別の「中小企業」と「小規模企業」、業界別の『製造』、『卸売』、『小売』は長期になるほど改善する予想。『運輸・倉庫』は一進一退、『サービス』は一時的な悪化、『建設』は1年後に向けての悪化を見込む。「長野」全体としては、30カ月連続で長期になるほど改善を予想している。

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