■近畿ブロック
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
42.1 | -0.1 | 3カ月連続で悪化、『運輸・倉庫』にはトランプ関税の影響が出始める |
・概況
大阪・関西万博の開催により観光サービス業は活況を呈している。ただし、経済波及効果は局所的なものにとどまる。物価高の影響で消費者の生活防衛意識が強まるなど内需は盛り上がりに欠け、インバウンド消費にも陰りが出てきている点は気がかりだ。また、足元でも『運輸・倉庫』に影響が出始めているように、関税を含めた米国の政策転換を警戒し、先行き不透明感を訴える声が多く聞かれる。中東情勢の不安定化も新たなリスクとして浮上するなか、景況感は当面、弱含みの推移となるだろう。
・景気DI
『近畿』は前月比0.1ポイント減の42.1と、3カ月連続で悪化。2023年2月(41.8)以来の低水準となった。府県別では、直近1年の最低となった「滋賀」「大阪」「兵庫」など4府県が悪化。6カ月ぶりに改善した全国(42.7)との格差は▲0.6ポイントに広がったが、ブロック別順位は前月と同じ4位。
・規模別DI
「大企業」(前月比1.3ポイント増)が3カ月ぶりに改善。他方、「中小企業」(同0.3ポイント減)は3カ月連続で悪化し、2023年2月(41.3)以来の低水準に。この結果、規模間格差は5.6ポイントと、再び5ポイントを超える水準に広がった。なお、「小規模企業」は2024年5月以来の40割れ。
・業界別DI
トランプ関税の公表以降、警戒感からマインド低下が先行していた『製造』『卸売』が3カ月ぶりに改善。備蓄米放出で「飲食料品小売」が上向いた『小売』も2カ月ぶりに改善した。ただ、海運などに荷動き鈍化の影響が出始めた『運輸・倉庫』が悪化。戸建て住宅の受注が伸び悩む『建設』はコロナ5類移行後の最低に。
・先行き見通しDI
「6カ月後」(同0.1ポイント増)は2カ月連続で改善したものの、「3カ月後」(前月比0.2ポイント減)と「1年後」(同0.1ポイント減)はそれぞれ2カ月ぶりに悪化した。先行き3指標が揃って悪化したのは、府県別では「大阪」のみ、業界別では『金融』『運輸・倉庫』の2業界だった。
■大阪府
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
43.1 | -0.1 | 万博開催効果が下支えするも、3カ月連続で悪化 |
・概況
海運業や梱包業などから輸出貨物の荷動き鈍化を示唆する声が聞かれるほか、「中国の輸出規制により磁石が全く入荷しない」(電気機械製造)といった声があがるなど、『製造』でもトランプ関税導入によるマイナスの影響が顕在化してきている。しかしながら、大阪・関西万博の開催に伴い国内外からの旅行客は増加している。宿泊施設については、利用のみならず、新設、改装、売買も活発化。観光客の都市部流入により『小売』にも好影響が及んでいる。全体としては様子見ムードが漂うが、この先数カ月間は万博開催が景気を下支えするだろう。
・景気DI
「大阪」は前月比0.1ポイント減の43.1と、3カ月連続で悪化した。6カ月ぶりに改善した全国(42.7、同0.1ポイント増)とは対照的な結果となったが、大阪・関西万博の開催効果もあって4カ月連続で全国を上回る水準となっており、都道府県別順位は『近畿』で最も高い9位をキープした。
・規模別DI
「大企業」(前月比0.7ポイント増)が3カ月ぶりに改善。他方、「中小企業」(同0.3ポイント減)は2カ月ぶりに悪化し、直近1年の最低となった。この結果、規模間格差は5.6ポイントと、再び5ポイントを上回った。なお、「小規模企業」(同0.9ポイント減)は2024年5月以来の40割れとなった。
・業界別DI
好調なインバウンド需要を背景に、『不動産』が13カ月連続、『サービス』も28カ月連続で50を上回った。『小売』は万博開催効果もあって4カ月連続で改善、6カ月ぶりに40を上回った。他方、前月の大幅改善の反動もあって『運輸・倉庫』は大幅悪化。『建設』は2023年9月(45.8)以来の低水準に。
・先行き見通しDI
「3カ月後」(前月比0.2ポイント減)、「6カ月後」、「1年後」(同各0.3ポイント減)の3指標とも2カ月ぶりに悪化した。業界別では、『運輸・倉庫』の3指標全てが9.9ポイント以上悪化。国会で成立した“トラック新法”に対する不安の広がりが懸念される。規模別では「中小企業」の3指標が悪化した。
■京都府
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
40.7 | 0.5 | 4カ月ぶりに改善も、2カ月連続41を下回り停滞 |
・概況
「京都」の景気DIは2カ月連続で41を下回った。「価格高騰で住宅関連の動きが鈍い」(卸売)、「先行き不安から消費動向が悪化」(卸売)など、実質賃金のマイナスなどで消費マインドの低迷が続く。また、「半導体に対する設備投資が停滞」(製造)と、堅調に推移してきた半導体関連においても設備投資抑制の動きが出ており、中国経済の減速や米国の関税政策などが悪影響を及ぼしている。物価高や人件費高騰が企業業績を圧迫するなか、設備投資抑制などが続けば企業業績の悪化は避けられないため、景況感はしばらく停滞するだろう。
・景気DI
「京都」の景気DIは、前月比0.5ポイント増の40.7と改善したが、依然として41を下回る低水準が続く。『全国』(42.7)との格差は▲2.0ポイント(前月は▲2.4ポイント)に縮小したが、7カ月連続で『全国』を下回っている。『近畿』の順位は5位(前月5位)と変動なく、都道府県別の順位は28位(同34位)に上昇した。
・規模別DI
「大企業」(46.2、前月44.9)、「中小企業」(39.7、前月39.3)、「小規模企業」(37.4、同37.0)となり、全規模で改善した。「中小企業」が2カ月連続で40割れとなるのは、2022年9月以来33カ月ぶり。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は、前月比+0.9ポイントの6.5ポイントに拡大した。
・業界別DI
『農・林・水産』『金融』が50以上を維持したものの、『製造』は4カ月連続、『卸売』は8カ月連続の40割れとなった。資材価格高騰などで住宅需要が低迷する『建設』は2カ月連続で悪化、『不動産』は9カ月ぶりに50を下回り前月比▲11.6ポイントと大幅に悪化した。
・先行き見通しDI
「3カ月後」42.0(前月42.3)、「6カ月後」43.7(同43.2)、「1年後」45.1(同44.1)となり、「6カ月後」と「1年後」は前月を上回った。業界別では『サービス』は全3指標が改善だが、『卸売』『運輸・倉庫』は悪化。規模別では「1年後」で全3指標が改善。
■兵庫県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
41.8 | -0.1 | 4カ月連続の悪化 |
・概況
「兵庫」の景気DIは4カ月連続の悪化となった。『運輸・倉庫』が大幅悪化となっており、中東情勢の緊迫化に伴う原油価格の高騰や物流の混乱を懸念する声が多かった。一方、「液晶、半導体業界はともに好調」(製造)など一部製造業や、インバウンド・観光関連に紐づく宿泊・飲食も好調が続いている模様。また「トランプ関税問題が少しずつ悪影響を及ぼしている」(建設)など、依然として先行き不安感はぬぐい切れないとのコメントも多かった。引き続き、世界情勢の悪化に伴う物価動向や米国の経済政策とその影響が注目される。
・景気DI
「兵庫」の景気DIは前月比0.1ポイント減の41.8で4カ月連続の悪化となった。前年同月比も3カ月連続の悪化。全国順位は21位。『全国』は前月比0.1ポイント増の42.7、『近畿』は同0.1ポイント減の42.1で3カ月連続の悪化だった。
・規模別DI
「大企業」は前月比2.3ポイント増の47.0で3カ月ぶりの改善となった。「中小企業」は同0.4ポイント減の41.1、うち「小規模企業」は同1.9ポイント減の39.8と5カ月ぶりに40を割り込んだ。規模間格差は5.9ポイント(前月3.2ポイント)と前月比で2.7ポイントの拡大となった。
・業界別DI
10業界中5業界で悪化。『運輸・倉庫』は前月比5.4ポイント減の41.7で3カ月ぶりの悪化。『サービス』は、同1.5ポイント減の43.8で2カ月連続の悪化。他方、『小売』は同0.6ポイント増の34.5で4カ月ぶりの改善、『製造』は40.8(同2.0ポイント増)で2カ月ぶりの改善だった。
・先行き見通しDI
3カ月後は前月比0.5ポイント減、6カ月後は同0.3ポイント増、1年後は同0.1ポイント増と3カ月後のみ悪化。業界別では『金融』『建設』『運輸・倉庫』が全指標で悪化、『不動産』『製造』『小売』が全指標で改善。規模別では小規模企業で全指標悪化となった。
■滋賀県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
42.8 | -0.3 | 僅かながら3カ月連続で悪化 |
・概況
「滋賀」の景気DIは前月比0.3ポイント悪化した。企業からは「補助金や支援金の利用が設備投資の後押し要因となっている」(機械・器具卸売業)などの声がある一方、「自動車部品の受注状況において不安定」(鉄工・非鉄鉱業)、「気温が安定しないため、夏物の動きが鈍い」(繊維製品・服飾小売業)などの声が聞かれ、今暫くは現状と同水準の景況感で推移するとみられる。
・景気DI
「滋賀」の景気DIは42.8と前月比0.3ポイント悪化した。業界別では悪化が3業界となったほか、規模別では「中小企業(うち小規模含む)」が悪化した。近畿ブロック内の2府4県別順位は2位を維持したなか、全国においては11位(前年同月は8位)となった。
・規模別DI
「大企業」が44.4と前月比2.7ポイント改善したが、「中小企業」が42.5と同0.8ポイント、「小規模企業」は41.0と同1.8ポイント悪化した。また、「大企業」が「中小企業(うち小規模含む)」を8カ月ぶりに上回った。
・業界別DI
前月と比較可能な8業界中3業界で改善、2業界で前月比横ばい、3業界で悪化した。『不動産』『卸売』『サービス』が改善した一方で、『建設』『小売』『運輸・倉庫』が悪化した。
・先行き見通しDI
「3カ月後」が45.2(前月43.6)、「6カ月後」が46.4(前月45.3)、「1年後」が45.9(前月46.5)だった。インバウンド消費の拡大による恩恵が一部でうかがえるも、アメリカ発の相互関税政策による影響度合いは未知数であり、慎重な対応が求められるであろう。
■奈良県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
38.0 | 0.4 | 前月比改善も、3カ月連続近畿内で最下位 |
・概況
「奈良」の景気DIは前月から0.4ポイント改善し38.0となった。「観光客の伸びが大きい」(不動産)との明るい声がある一方で、「物価高に伴う消費意欲の低下」(製造)、「アメリカの関税への不安」(卸売)など続く物価高、トランプ関税の影響を不安視する声が多かった。
・景気DI
「奈良」の景気DIは38.0と、前月から0.4ポイント改善したが、都道府県別は前月43位から44位に後退した。『近畿』では「滋賀」が10位から11位、「大阪」が9位と横這い、「京都」が34位から28位、「兵庫」が18位から21位、「和歌山」が19位から27位と「京都」のみが順位を上げた。
・規模別DI
「大企業」は38.1と前月比2.4ポイント改善した。「中小企業」も38.0と同0.2ポイント改善、「小規模企業」も37.0と同0.4ポイント改善した。「大企業」が大きく改善したなか、「中小企業」「小規模企業」の改善もあったが、規模間格差は0.1と「大企業」が「中小企業」を少し上回った。
・業界別DI
『卸売』は前月比6.3ポイント、『小売』は同10.3ポイント改善、『運輸・倉庫』は横ばいとなった。一方、『建設』は同0.8ポイント、『不動産』は同4.4ポイント、『製造』は同1.8ポイント、『サービス』は同3.0ポイントそれぞれ悪化した
・先行き見通しDI
「3カ月後」(39.1、前月比0.2ポイント減)となったが、「6カ月後」(40.9、同1.1ポイント増)、「1年後」(43.2、同1.2ポイント増)と中長期的な指標において改善する見通しとなった。
■和歌山県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
40.8 | -0.7 | 2カ月連続悪化 |
・概況
「和歌山」は前月比0.7ポイント減の40.8と2カ月連続で悪化した。県内の公共工事数や新設住宅着工戸数はやや減少傾向にあり、戸建ての販売動向もやや鈍い。地元大手スーパーの既存店売上はほぼ前年並みながら、来店客数は僅かに減少しており、値上げに伴う客単価の上昇分でカバーしている。県内企業の3月決算動向も「増収減益」の企業が多く、価格転嫁が進みつつある一方で仕入価格の上昇や賃上げ対応による経費が増加している。パンダが返還された後の白浜エリアの動向も含めて、夏本番を迎える今後の県内の動向を注視したい。
・景気DI
「和歌山」は前月比0.7ポイント減の40.8と2カ月連続で悪化し、『全国』(42.7)および『近畿』(42.1)との差がやや広がった。和歌山県内の多くの業界で価格転嫁が進んでいるものの、その結果、受注数量が前年より減少する企業が多くなっている。DIの悪化が継続するのか来月以降の動向が注目される。
・規模別DI
「大企業」は前月比2.5ポイント増の46.3と改善傾向を示したものの、「中小企業」が同1.1ポイント減の40.1と悪化した。和歌山県全体の景況感の向上には「中小企業」のDIの改善が必要だが、高齢化が進み、人口減少も重なって小規模企業では廃業も多く「大企業」との格差が広がっている。
・業界別DI
『製造』(42.7)『建設』(43.3)は前月比改善したものの、『サービス』(40.4)『卸売』(36.1)『運輸・倉庫』(33.3)が前月比悪化した。総じて各業界のDIは高いとは言えず、『小売』(33.3)に代表されるように各種物価の値上げにより消費動向が弱含みで推移している点が懸念される。
・先行き見通しDI
3カ月後が44.4(前月45.1)、6カ月後が45.2(同45.1)、1年後が43.1(同44.4)となった。「夏場のイベントに期待、また和歌山市のプレミアム商品券にも期待」(飲食店)という声がある一方で「トランプ関税による受注数の減少が懸念される」(製造業)など先行きの見通しは分かれている。