レポートTDB景気動向調査2025年05月(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

2025/06/04
景気動向  アンケート

■九州ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.8

0.0

5カ月ぶりに下げ止まるも、膠着状態

・概況

『九州』の景気DIは、44.8と前月比横ばいとなった。企業からは「トランプ関税絡みの不透明感で、いろいろな案件が保留になっている」(福岡県、機械・器具卸売)などの声が聞かれる。DI50台は、業界別では『農・林・水産』『その他』の2業界、県別では「沖縄」のみとなった。インバウンド需要は引き続き期待されるが、原燃料高に加え、防衛的賃上げを含む人件費負担増などがあるなか、価格転嫁も十分に進んでいないことに変化はなく、一進一退ながら緩やかに下落傾向を辿るものとみられる。

・景気DI

『九州』(44.8、前月と同数)は横ばいとなった。10業界中6業界、8県中4県で悪化。『九州』8県中10位以内は4県。先行き見通しDIは「3カ月後」で6カ月ぶり、「6カ月後」が3カ月ぶり、「1年後」は5カ月ぶりに改善。3カ月連続で全国2位。

・規模別DI

「大企業」(49.3、前月比0.3ポイント増)は2カ月連続で改善したものの、「中小企業」(44.2、同0.1ポイント減)は5カ月連続で悪化。規模間格差は5.1ポイントと前月から0.4ポイント拡大し、26カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回った。「中小企業」のうち「小規模企業」は42.8(同0.1ポイント増)と3カ月ぶりに改善。

・業界別DI

『農・林・水産』(51.0、前月比3.6ポイント増)など3業界で改善したものの、『金融』(48.1、前月比1.9ポイント減)など10業界6業界で悪化。『製造』『サービス』が3カ月連続、『不動産』『小売』が2カ月連続で悪化した。11カ月ぶりに『サービス』が50を下回り、50を上回ったのは『農・林・水産』と『その他』の2業界となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(46.0、前月比0.4ポイント増)は6カ月ぶり、「6カ月後」(46.5、同0.7ポイント増)は3カ月ぶり、「1年後」(46.7、同0.6ポイント増)は5カ月ぶりに改善した。業界別では『農・林・水産』『建設』『卸売』『運輸・倉庫』が全指標で改善、『不動産』『小売』が全指標で悪化した。

■福岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.5

-0.6

3カ月連続の悪化

・概況

「福岡」の景気DIは、インバウンド需要や都市再開発事業等が追い風となっているものの、個人消費等の伸び悩みもあって、3カ月連続で悪化した。企業からは「宿泊事業はインバウンドを中心に順調に推移している」(サービス)などのコメントがある一方、「トランプ関税絡みの不透明感で、いろいろな案件が保留になっている」(卸売)との声もあった。インバウンド関連など一部の業界では引き続き好調な推移にあるが、物価高や労務費負担増は多くの業界にマイナスの影響を与えており、今後も「福岡」の景気は低迷感が続く可能性が高い。

・景気DI

「福岡」(44.5、前月比0.6ポイント減)は、3カ月連続の悪化となった。業界別では、『建設』『卸売』で改善。『農・林・水産』『金融』で横ばい。『不動産』『製造』など5業界で悪化した。都道府県別順位は6位で前月と同位。『九州』8県での順位は前月と同じ4位となった。

・規模別DI

「大企業」48.3(前月比1.1ポイント減)は2カ月ぶりに悪化。「中小企業」43.8(同0.5ポイント減)、「小規模企業」42.4(同0.8ポイント減)は3カ月連続で悪化。規模間格差は「大企業」が「中小企業」を4.5ポイント上回った。

・業界別DI

『農・林・水産』(58.3)、『金融』(50.0)は横ばい。『建設』(50.9、同0.6ポイント増)、『卸売』(40.7、同0.3ポイント増)で改善。『不動産』(45.1、同0.5ポイント減)、『製造』(39.6、同0.8ポイント減)など5業界で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(45.7、前月比0.4ポイント増)、「6カ月後」(46.6、同0.4ポイント増)、「1年後」(47.5、同0.4ポイント増)のすべてで改善。業界別では、『不動産』『小売』『サービス』で3指標すべて悪化した。『卸売』はすべて改善した。

■佐賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.9

0.9

3カ月ぶりに改善

・概況

「佐賀」の景気DIは3カ月ぶりに改善した。規模別では全規模で改善し、特に「大企業」の改善が牽引した。業種別では明暗が分かれ2カ月連続で大幅に改善または悪化がみられた。先行きとしても改善の見通しが見受けられるが、米国関税の影響が未知数であるほか、金利上昇や資材価格の高値推移、人件費上昇と人材不足など経営上の厳しさは増していると言え、今後の「佐賀」の動向が注視される。

・景気DI

「佐賀」の景気DIは、前月比0.9ポイント増の42.9と3カ月ぶりに改善した。『九州』は前月同様の44.8、『全国』は42.6と前月を0.1ポイント下回った。「佐賀」は『全国』を3カ月ぶりに上回り、都道府県別順位は前月の20位から12位に上昇した。

・規模別DI

「中小企業」は前月比0.2ポイント増の41.3、うち「小規模企業」は40.6と同0.8ポイント改善した。「大企業」は50.0で前月比4.5ポイントと大幅に改善し、2カ月連続の改善となった。3カ月ぶりに全規模で改善したが、規模間格差は8.7と前月より4.3ポイント拡大した。

・業界別DI

「製造」は3カ月連続、「小売」は2カ月連続で悪化。米関税や為替変動、一般消費の鈍化が影響した。一方で、新年度や連休で飲食店が好調であったほか、人手不足が人材サービス業の好調につながり「サービス」は大幅に改善。「卸売」も商材で明暗はあったが大幅な改善となった。

・先行き見通しDI

「3か月後」は43.8(前月42.0)、「6か月後」は45.5(同43.4)、「1年後」は45.2(同43.7)と各指標で改善した。短期的には「大企業」が堅調に推移し牽引するが、長期的には「中小企業」の改善が期待される結果となった。

■長崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.3

-0.4

2カ月ぶりに悪化

・概況

「長崎」の景気DIは前月比0.4ポイント減と2カ月ぶりに悪化した。製造業では造船を中心に好調な受注となっている一方、季節柄もあるが、公共工事の発注がまだ少なく、民間工事も採算性の問題から取りやめになるなどの影響が出ているようだ。また、小売業の景況感が回復していないように、物価高の影響もみられる。「長崎」の景況感の見通しは「トランプ関税の影響がまだ不透明」(卸売・サービス)とあるように、外的な影響を受けながら一進一退が続くと考えられる。

・景気DI

「長崎」の景気DIは前月比0.4ポイント減の40.3と2カ月ぶりに悪化した。『九州』8県中、本県も含めて4県が悪化したため、九州ブロック内順位は前月から順位を1つ下げて8位となった。都道府県別順位は前月の29位から4つ下げて33位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比4.8ポイント減の39.6、「中小企業」は前月と同ポイントの40.3、「中小企業」のうち「小規模企業」は同1.2ポイント増の39.4となった。「大企業」が低下した一方、「中小企業」は数字を維持したため、規模間格差は逆転して▲0.7となった。

・業界別DI

前月から改善した業界は『建設』『製造』『運輸・倉庫』の3業界であった。悪化した業界は『金融』『不動産』『卸売』『小売』『サービス』の5業界となった。中でも『金融』『不動産』の悪化幅が目立つ。『農・林・水産』は前月比横ばいであった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.7(前月43.3、前月比0.6ポイント減)「6カ月後」43.6(同42.6、同1.0ポイント増)「1年後」43.6(同41.2、同2.4ポイント増)となった。業界別でみると『製造』『卸売』が先へ行くほど改善の見通しとなっている。

■熊本県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

48.6

2.1

2カ月ぶりに改善

・概況

「熊本」の景気DIは前月比2.1ポイント増の48.6と2カ月ぶりに改善したが、景気判断の分かれ目となる50のラインを6カ月連続で下回った。「コロナによるマイナス影響がなくなった」(製造)、「インバウンドが好調」(サービス)と明るい話題が見られた一方で、「インフレの影響で企業の購買が低調」(卸売)と不安を示す声も依然として多い。関税措置をめぐる米中の貿易摩擦は沈静化の兆しが見られたが、不安定な国際情勢は国内景気にマイナスの影響を及ぼす可能性があり、景気動向は当面、不安定な状況が続くであろう。

・景気DI

「熊本」の景気DIは48.6で前月比2.1ポイント増と2カ月ぶりに改善した。『九州』(44.8)は前月比横ばいとなり、「全国」(42.6)に関しては同0.1ポイント減となった。なお、「熊本」の都道府県別順位は第2位(前月第5位、前年同月第2位)と前月から3ランク上がった。

・規模別DI

「大企業」の景気DIは56.7と前月比3.7ポイント減だったが、「中小企業」は47.8と同2.3ポイント増となった。22カ月連続で「大企業」が「中小企業」の景気DIを上回り、規模間格差(大企業-中小企業)に関しては「大企業」が悪化して「中小企業」が改善したため、8.9ポイントに縮まった。

・業界別DI

9業界中、改善した業界は『農・林・水産』『不動産』『製造』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』の6業界と多く、悪化した業界は『建設』のみであった。『金融』と『卸売』に関しては前月比横ばいだった。アメリカのトランプ政権が発動した「相互関税」によるショックが和らぎ、多くの業界に改善が見られた。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは「3カ月後」が49.1(前月47.1)、「6カ月後」は48.7(同46.2)、「1年後」は48.6(同47.1)となった。トランプ関税発表によるショックが約1カ月で回復を示し、世界景気の後退懸念が緩和されたため、「3カ月後」「6カ月後」「1年後」全ての指標が前月から改善した。

■大分県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

46.0

-2.9

2カ月連続で悪化

・概況

5月はゴールデンウィークの人出により観光業は繁忙な状態が続いた。一方『建設』『運輸・倉庫』は材料費や運送費の原価が上昇し、企業負担への懸念がDIを押し下げた。『卸売』『小売』は米の高騰、多品目の買い控えも顕著となり悪化。6月も食品の値上げが予定されており消費者の購買意欲低下が予想される。また、トランプ米大統領が鉄網製品とアルミニウムの追加関税引き上げを公表したことで輸出企業の業績悪化を不安視する声が多く、中小・零細企業は危機感や不安を払拭できず、県内の景気動向は一進一退の状況が続くと予想される。

・景気DI

「大分」は前月比2.9ポイント減の46.0となり、2カ月連続で悪化した。全国順位は第5位(前月第2位・前年同月第7位)となり、前月に比べて低下した。また、判断の分かれ目となる「50」を5カ月連続で下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.4ポイント増の50.0となった。「中小企業」は同3.6ポイント減の45.5、「中小企業」のうち「小規模企業」は同2.6ポイント減の46.8となった。規模間格差は4.5となり、3カ月ぶりに「大企業」が「中小企業」を上回った。

・業界別DI

業界別では『製造』が前月より改善した。一方で『建設』『卸売』『小売』『運輸・倉庫』『サービス』は悪化し、特に『運輸・倉庫』は前月比6.7ポイント減の30.0となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」47.6(前月49.2)、「6カ月後」49.7(同48.9)、「1年後」47.3(同47.9)となり、「6カ月後」は前月より改善した。業界別では、『サービス』が3指標ともに「50」以上となった一方で、『建設』『卸売』『小売』は「50」を下回った。

■宮崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.0

2.3

2カ月ぶりに改善

・概況

「宮崎」の景気DIは41.0で、2カ月ぶりに改善した。前月の38.7は3年ぶりの低水準で、アメリカ関税を懸念する声が多く聞かれたものの、過剰だった警戒感がやや薄らいだようだ。もっとも企業からは「先行き不透明な時代に突入」(機械・器具卸売)、「空気感が経営に悪影響」(人材派遣・紹介)などムード悪化を指摘する声が多く、景況感の底打ちを実感するには至らない。「建築基準法改正で受注できない物件が増える」(家具類小売)と業法改正が壁になるという声もあり、引き続き先行きは不透明と言える。

・景気DI

「宮崎」の景気DIは41.0で、前月比2.3ポイント増と2カ月ぶりに改善した。『九州』は44.8で同横ばい、全国は42.6で同0.1ポイント減といずれもほぼ変動しなかったなか、改善幅が大きかった「宮崎」の全国順位は前月の39位から24位と上昇し、『九州』最下位を脱した。

・規模別DI

「大企業」は50.0で前月比8.3ポイント増、「中小企業」も39.8で同1.3ポイント増と改善した。企業間格差(大企業-中小企業)は10.2となり、同7.0ポイント拡大した。「中小企業」に含む「小規模企業」は36.9で同1.9ポイント増と改善し、前月とは逆に3指標ともに改善した。

・業界別DI

『製造』は39.4で前月比3.0ポイント増、『非製造』も41.3で同2.2ポイント増と改善した。『製造』は「飲食料品・飼料製造」が8.3→41.3、『非製造』は「農・林・水産」が33.3→61.1と大幅に改善したほか、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」「運輸・倉庫」などが改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は41.2で前月比0.2ポイント増と改善したが、「6カ月後」は40.3で同0.9ポイント減、「1年後」は41.9で同0.2ポイント減と悪化した。足元が改善した『製造』や「小規模企業」でも3指標ともに悪化しており、先行きは不透明と言える。

■鹿児島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.0

-2.6

2年ぶりの低水準

・概況

「鹿児島」の景気DIは41.0と2カ月ぶりの悪化となった。企業からは、建設業を中心に公共工事や民間工事の大型案件がみえているといった声が聞かれた一方で、関税や物価高などに起因する消費マインドの悪化や、原料及び人手不足を嘆く声も多く聞かれるなど、先行きを不安視する企業が増加した。前述の通り、先行きに対し明るい見方をする企業もないわけではないが、特定の業界に集中しており、県内全体の景気動向は依然として一進一退の状況が続くものとみられる。

・景気DI

『鹿児島』の景気DIは41.0と前月比2.6ポイント悪化となった。一方で、『九州』は横ばいとなる44.8、『全国』は0.1ポイント悪化となる42.6と、「鹿児島」の悪化幅が大きかったことで、都道府県別順位は前月の9位から24位に後退した。なお、同県の景気DIが42ポイントを下回るのは23年1月以来、29カ月ぶり。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.1ポイント改善となる50.0となった。しかしながら、「中小企業」は40.3と同2.9ポイントの悪化、「中小企業」のうち「小規模企業」も39.6と同1.9ポイントの悪化となった。「大企業」の改善が進んだ一方、「中小企業」が悪化したことで、規模間格差(大企業-中小企業)は5.0ポイント拡大した。

・業界別DI

改善は『建設』、『卸売』の2業界に留まり、横ばいは『農・林・水産』、『金融』、『不動産』の3業界となった。『製造』、『小売』、『運輸・倉庫』、『サービス』の4業界が悪化するなど、前月は5業界が改善となったところから一転した。業界別に差はあるものの、依然として一進一退の状況が続いている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は43.4と前月比1.8ポイントの悪化、「6カ月後」は43.1と同1.8ポイントの悪化、「1年後」も同1.1ポイント悪化の44.4となるなど、全指標で悪化となった。前月は全指標で改善していたが、先行きに対し厳しい目を向ける企業が増加傾向にあるようだ。

■沖縄県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

56.4

2.7

2カ月ぶりに改善

・概況

「沖縄」の景気DIは、2カ月振りに改善し、全国順位は26カ月連続1位となった。沖縄県の入域観光客数の増加が続き、観光産業を中心に恩恵が得られていることや、公共事業、民間投資ともに大型案件の発注が続いていることが背景としてあると思われる。しかし、今年に入り改善と悪化を繰り返すなど景況感は安定しておらず、これまで同様、物価、人手不足、天候、トランプ関税を含めた海外情勢などの動向次第で、今後景況感がマイナスに動く可能性は否めず、引き続き動向は注視していく必要がある。

・景気DI

「沖縄」の景気DIは前月比2.7ポイント増の56.4となり、業種別では7業界中、6業界が改善、1業界が悪化となった。また、都道府県別順位は26カ月連続で全国1位となり、『全国』(42.6)、『九州』(44.8)を上回っている。

・規模別DI

「大企業」(61.1、前月比6.9ポイント増)は3カ月振り改善、「中小企業」(56.2、前月比2.5ポイント増)は2カ月振りの改善、「中小企業」のうち「小規模企業」(56.7、前月比0.7ポイント増)は3カ月連続の改善となった。

・業界別DI

前月と比較可能な7業界中、『製造』(5.6ポイント減)の1業界が悪化となった。しかし、『建設』(1.6ポイント増)、『不動産』(1.7ポイント増)、『卸売』(5.0ポイント増)、『小売』(6.4ポイント増)、『運輸・倉庫』(11.1ポイント増)、『サービス』(2.8ポイント増)の6業界が改善した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」が56.4(前月53.5)、「6カ月後」は55.9(前月53.5)、「1年後」は53.6(前月52.2)となり、3指標とも前月より改善した。

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