■近畿ブロック
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
42.2 | -0.5 | 2カ月連続で悪化、全6府県が悪化 |
・概況
大阪・関西万博の開催が、観光、人材、広告分野を中心とする『サービス』に恩恵をもたらしている。ただし、米国による関税政策の影響もあって「自動車・自動車部品メーカーの設備投資意欲が感じられない」(機械製造、奈良県)など『製造』の伸び悩みが顕著となり、中国経済の動向も含めて先行き不透明感が強まっている。好調だったインバウンド消費にも陰りが見え始めている。物価上昇も相まって家計の生活防衛意識も高まるなか、不安定な政治情勢もあって景気回復への期待感が薄らいでおり、景況感は当面、弱含みの推移となるだろう。
・景気DI
『近畿』は前月比0.5ポイント減の42.2と、2カ月連続で悪化した。大阪・関西万博が開催されているが、米トランプ政権の関税政策によるマイナスの影響が広範に及び、全国(42.6、同0.1ポイント減)より悪化幅が大きく、府県別では全6府県が悪化。ブロック別順位は『北海道』と入れ替わって4位に後退した。
・規模別DI
「大企業」(前月比1.0ポイント減)、「中小企業」(同0.4ポイント減)とも2カ月連続で悪化。ともに新型コロナが5類移行した2023年5月以降の最低となった。関税の影響が即時的に生じる「大企業」の悪化幅が「中小企業」よりも大きい状況が続き、規模間格差は4.0ポイントに縮まった。
・業界別DI
政府の補助金強化で燃料価格が下がった『運輸・倉庫』など3業界は改善したものの、7業界が悪化した。5類移行後の最低となった『サービス』では「飲食店」の悪化が目立ったほか、関税の影響が大きい『製造』は4年ぶりの低水準となった。『卸売』は4カ月ぶり、『小売』は4カ月連続で40を下回った。
・先行き見通しDI
「3カ月後」(前月比0.4ポイント増)と「6カ月後」(同0.7ポイント増)は2カ月ぶりに、「1年後」(同0.7ポイント増)も5カ月ぶりに改善した。ただ、これらの改善は、関税政策への懸念から前月に大幅悪化した反動とみられる。『小売』『サービス』などでは見通し全3指標が悪化したように、不透明感は強い。
■大阪府
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
43.2 | -0.2 | 2カ月ぶり連続で悪化、 トランプ関税が万博開催効果を打ち消す |
・概況
『サービス』からは、「人材ニーズがある」(人材派遣・紹介サービス業)など万博の恩恵が及んでいるとの声が聞かれる。一方で、インバウンド需要の変調が顕在化し始めており、食材価格高騰も重なる「飲食店」の悪化が目立つ。また、『製造』『卸売』には、鉄鋼や自動車関連、化学など局所的に米トランプ政権が打ち出した関税政策によるマイナスの影響が広がっており、米中貿易摩擦の激化による中国経済の失速への警戒感もくすぶっている。政治情勢も不安定な状況下、当面は弱含みの推移が続く見通し。
・景気DI
「大阪」は前月比0.2ポイント減の43.2と、2カ月連続で悪化した。当地では大阪・関西万博が開催されているが、物価高の影響に加え、米国による関税政策のマイナスの影響が広がった。ただ、悪化幅は全国(42.6、同0.1ポイント減)より大きかったが、都道府県別順位は9位へと浮上した(前月は10位)。
・規模別DI
関税の影響が直接的に生じ始めている「大企業」(前月比1.1ポイント減)は2カ月連続で悪化。これに対し、「中小企業」は前月と変わらなかったため、規模感格差は4.6ポイントに縮小し、8カ月ぶりに5ポイントを下回った。なお、「小規模企業」(同0.1ポイント減)は4カ月ぶりに悪化した。
・業界別DI
政府の補助金強化で燃料価格が下がった『運輸・倉庫』、万博が追い風になった『小売』など6業界が改善した。ただし、改善した『製造』でも「輸送用機械・器具製造」が急落するなど弱さを内包。関税の影響が生じる『卸売』、計画や着工の先送りが相次ぐ『建設』が悪化し、『サービス』では「飲食店」の悪化が目立った。
・先行き見通しDI
「3カ月後」(前月比0.2ポイント増)、「6カ月後」(同0.4ポイント増)、「1年後」(同0.2ポイント増)の3指標とも2カ月ぶりに改善した。ただし、この改善は前月の大幅悪化の反動によるところが大きい。『小売』『サービス』は先行き全3指標が悪化しており、家計における生活防衛意識の高まりも続く見通し。
■京都府
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
40.2 | -1.7 | 3カ月連続で悪化、32カ月ぶりに41を下回る |
・概況
「京都」の景気DIは32カ月ぶりに41を下回った。GWで観光需要は上向いたが、企業規模や業界によって明暗が分かれ、二極化が進んでいる。「中国市場の購買力ダウン」「設備投資意欲が製造業全体で低迷」「月を追うごとに受注数減少」(製造)、「新築需要が大幅減」「各業界で生産を抑制する動き」(卸売)などマイナス要素が多く、中小零細企業の業績悪化が懸念される。金利上昇や米国の関税政策などで国内外の設備投資意欲に陰りが見え始めており、消費マインドの低迷も続いているため、景況感はしばらく停滞するだろう。
・景気DI
「京都」の景気DIは、前月比1.7ポイント減の40.2となった。『全国』(42.6)を下回り、格差は▲2.4ポイント(前月は▲0.8ポイント)に拡大した。『近畿』では最も減少幅が大きく、『近畿』の順位は5位(前月5位)、都道府県別の順位は34位(同22位)に後退した。
・規模別DI
「大企業」(44.9、前月43.1)は改善したが、「中小企業」(39.3、同41.6)、「小規模企業」(37.0、同41.1)は悪化した。「中小企業」が40割れとなるのは、2022年9月以来32カ月ぶり。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は、前月比+4.1ポイントの5.6ポイントに拡大した。
・業界別DI
『金融』(61.1)、『不動産』(58.3)が好調な一方、『サービス』は前月比5.3ポイント減の41.9に悪化。物価高や人件費高騰などの影響を受けやすい『製造』は3カ月連続、『卸売』は7カ月連続の30台となった。『製造』が35を下回るのは2020年11月以来54カ月ぶり。
・先行き見通しDI
「3カ月後」42.3(前月42.2)、「6カ月後」43.2(同43.1)、「1年後」44.1(同43.6)と全期間で前月を上回った。業界別では、『製造』『卸売』は改善見通しだが、『不動産』は悪化見通し。規模別は「大企業」が全期間で改善見通し。
■兵庫県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
41.9 | -0.6 | 3カ月連続の悪化 |
・概況
「兵庫」の景気DIは3カ月連続の悪化となった。観光、インバウンド関連は好調といわれる半面、「消費が低調。物価高騰による生活防衛のためだと思われる」(卸売)のコメントのように、物価高による個人消費は引き続き厳しいとのコメントが多かった。「賃上げできずに人員が集まらない」(製造)など人手不足に関する意見も目立った。また先行きについてはトランプ関税の影響、中国のレアアース輸出規制を懸念するコメントも多かった。引き続き、物価や個人消費の動向に加え、米国の経済政策とその影響が注目される。
・景気DI
「兵庫」の景気DIは前月比0.6ポイント減の41.9で3カ月連続の悪化となった。前年同月比も2カ月連続の悪化。全国順位は18位。『全国』は前月比0.1ポイント減の42.6、『近畿』は同0.5ポイント減の42.2で2カ月連続の悪化だった。
・規模別DI
「大企業」は前月比1.7ポイント減の44.7で2カ月連続の悪化となった。「中小企業」は同0.5ポイント減の41.5、うち「小規模企業」は同横ばいの41.7となった。規模間格差は3.2ポイント(前月4.4ポイント)と前月比で1.2ポイントの縮小となった。
・業界別DI
10業界中4業界で悪化。『製造』は前月比2.6ポイント減の38.8で2カ月ぶりの悪化。『卸売』は、同0.9ポイント減の41.3で2カ月連続の悪化。『小売』は同1.1ポイント減の33.9で3カ月連続の悪化だった。他方、『運輸・倉庫』は47.1(同2.7ポイント増)で2カ月連続の改善となった。
・先行き見通しDI
3カ月後は前月比0.9ポイント増、6カ月後は同0.9ポイント増、1年後は同1.2ポイント増と全指標で改善。業界別では『建設』『運輸・倉庫』『サービス』などが全指標で改善。規模別でも全ての規模で全指標改善となった。
■滋賀県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
43.1 | -0.1 | 2カ月連続で悪化も 近畿ブロック内順位2位は堅持 |
・概況
「滋賀」の景気DIは前月比0.1ポイント悪化した。企業からは「週末の人出が多くにぎやかになった」(不動産)などの声がある一方、「取扱製品の荷動きが鈍いほか、運送コストが下げられる方向にあり、中小零細企業がコスト競争のあおりを受けている」(製造業)、「現役社員の引退が予定されるなど、人手不足の解消目処が立っていない」(専門サービス)などの声が聞かれ、当面は一進一退の局面が続くと推測される。
・景気DI
「滋賀」の景気DIは43.1と前月比0.1ポイント悪化した。業界別では悪化が3業界となったほか、規模別では「大企業」が悪化した。近畿ブロック内の2府4県別順位は2位を維持したなか、全国においては10位(前年同月は35位)となった。
・規模別DI
「大企業」が41.7と前月比0.6ポイント悪化したが、「中小企業」が43.3と同横ばいとなり、「小規模企業」は42.8と同0.1ポイント改善した。また、「中小企業(うち小規模含む)」は「大企業」を7カ月連続で上回った。
・業界別DI
前月と比較可能な8業界中4業界で改善、1業界で前月比横ばい、3業界で悪化した。『不動産』のように10ポイント以上改善した業界があった一方で、『建設』『製造』『卸売』が悪化した。
・先行き見通しDI
「3カ月後」が43.6(前月44.1)、「6カ月後」が45.3(前月44.0)、「1年後」が46.5(前月44.9)だった。アメリカ発の関税引き上げ施策を発端とした世界経済の先行き不安により景気見通しを据え置く業界が多いなか、決算見通しの発表を控える企業が散見するなど、不透明な状況が続くとみられる。
■奈良県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
37.6 | -0.5 | 前月比悪化、近畿内で最下位に |
・概況
「奈良」の景気DIは前月から0.5ポイント悪化し37.6となった。「県外に出稼ぎに出る業者が多い」(建設)、「仕入高・消費者のマインド低下」(小売)や「商品価格の見直し・中国経済の悪化」(卸売)など価格高騰により消費者マインドが低迷している影響など、景気悪化に伴う声が多かった。
・景気DI
「奈良」の景気DIは前月から0.5ポイント悪化し37.6、都道府県別では前月の41位から43位に後退した。『近畿』では「京都」が前月22位から34位、「兵庫」が15位から18位、「和歌山」が15位から19位に後退したが、「滋賀」、「大阪」は前月より順位を上げた。
・規模別DI
「大企業」は35.7ポイントと前月比6.0ポイント悪化した。「中小企業」は37.8と同0.2ポイント改善、「小規模企業」は36.6と同1.8ポイント改善した。「大企業」が大きく悪化したなか、「中小企業」「小規模企業」の改善により規模間格差は▲2.1と3カ月ぶりに「中小企業」が「大企業」を上回った。
・業界別DI
『建設』(38.9)は前月比3.5ポイント、『製造』(38.1)は同0.2ポイント改善、『不動産』(43.3)、『運輸・倉庫』(33.3)は前月比横ばいとなった。一方で、『卸売』は同1.3ポイント、『小売』は同5.5ポイント、『サービス』は同1.2ポイントそれぞれ悪化した。
・先行き見通しDI
「3カ月後」(39.3、前月比0.7ポイント増)、「6カ月後」(39.8、同0.2ポイント増)は2カ月ぶりに改善と、短期的な指標において改善する見通しとなったが、依然として40を切る水準が続いている。「1年後」(42.0)は前月と変わらなかった。
■和歌山県
今月の景気DI | 前月比 | 今月の特徴 |
41.5 | -1.0 | 2ヵ月ぶりに悪化 |
・概況
「和歌山」は前月比1.0ポイント減の41.5と2カ月ぶりに悪化した。県内の『大企業』は東京や大阪の大手企業と取引をしていることが多く、総じて受注量が減少した。白浜エリアではアドベンチャーワールドのパンダ返還前の日帰り客が増加しているものの、恩恵は特定のエリアに限定されている。小売業界は価格転嫁で辛うじて前年売上を維持している企業が多い。和歌山の景気DIは一進一退を繰り返す傾向が強いことから来月の動向が注視される。
・景気DI
「和歌山」は前月比1.0ポイント減の41.5と2カ月ぶりに悪化し、『全国』(42.6)および『近畿』(42.2)を下回った。前月の和歌山の景気DIは改善傾向を示したことから2カ月連続改善となるか期待されたものの、一進一退を繰り返す従来の傾向から脱却しきれていない状況が続いている。
・規模別DI
「大企業」が前月比4.3ポイント減の43.8、「中小企業」が同0.6ポイント減の41.2と「大企業」「中小企業」ともに減少した。とりわけ「大企業」の減少幅が大きく、2025年1月を最後にDIは50を割ったままの状態が続いており、和歌山の景況感を押し下げる要因の一つとなっている。
・業界別DI
『サービス』(48.3)、『建設』(42.9)は前月比改善したものの、『運輸・倉庫』(38.9)は前月と変わらず、『製造』(38.9)、『卸売』(38.1)が前月比悪化した。『製造』ではトランプ関税の動向が不透明で県外の大手企業からの受注量が減少傾向にあり、DIを押し下げた。
・先行き見通しDI
3カ月後が45.1(前月43.1)、6カ月後が45.1(同42.7)、1年後が44.4(同42.5)と3指標とも5カ月ぶりに改善。ただし、この改善は前月の大幅悪化の反動によるところが大きい。「物価上昇、トランプ関税により不安材料のほうが大きい」(飲食店)など景気の先行きに対する慎重姿勢は根強い。