レポートTDB景気動向調査2025年05月（北陸ブロック：新潟・富山・石川・福井）

■北陸ブロック

・概況

『北陸』の景気DIは前月比0.2ポイント増の40.4と3カ月ぶりに改善した。企業からは「閉塞感」（金融）、「公共工事が少ない」（建設）、「物価高騰で買い控えが起きている」（食品製造）、「好調な産業分野なし」（自動車部品製造）、「物価高でヒト、モノ、カネの動きが鈍い」（化学品卸）、「トランプ関税に対し各社様子見、生産抑制」（ITサービス）と、依然として厳しい声が多数を占める。反面、「二極化しているが、概ね良好」（食品小売）、「世代交代に成功した企業の業績は好調」（サービス）との声も聞かれた。

・景気DI

『北陸』の景気DIは前月比0.2ポイント増の40.4。わずかだが3カ月ぶりに改善した。ただ、北陸4県中で改善したのは「福井」（同2.0ポイント増の40.5）のみ。絶対水準としては「石川」（同0.5ポイント減の46.6）も高い。10ブロック内順位は8位で変わらず、全国との格差は2.2に縮小。

・規模別DI

「うち小規模」が前月比0.4ポイント増の38.5と2カ月ぶりに改善、「中小企業」も同0.2ポイント増の39.3と3カ月ぶりに改善した。「大企業」は45.4で変わらず。大企業と中小企業の格差は同0.2ポイント減の6.1とわずかながら縮小した。

・業界別DI

全体の伸びに貢献したのは『サービス』（前月比1.7ポイント増の49.0）や『建設』（同1.5ポイント増の45.8）。『サービス』は4カ月ぶりに改善し、『建設』は2カ月連続で改善した。反面、『小売』は同3.1ポイント減の36.1と悪化。『金融』も同3.1ポイント減の43.8と5カ月連続で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が42.0（前月41.8）、「6カ月後」が42.8（同42.5）、「1年後」が44.3（同43.4）と、3指標いずれも改善した。足元は低調だが、トランプ関税のショックも幾分緩和されつつあり、先行きの見通しには明るさが増している。全国との格差も時間の経過とともに縮小しつつある。

■新潟県

・概況

「新潟」の景気DIは、前月比0.3ポイント減の37.1と3カ月連続で悪化した。「人流は幾分、活発化している」（旅館・ホテル）、「景気は若干持ち直しから横ばいの動き」（サービス）とポジティブな声はあるものの、「予算成立から実際の発注まで遅れが発生している」（建設）、「トランプ不景気」（出版・印刷）、「住宅着工低迷」（建材卸）、「値上げに応じて数量が落ちている」（化学品卸）、「コロナ禍以上の需要の落ち込み」（商品卸）と、ネガティブな声が大多数を占めている。

・景気DI

「新潟」の景気DIは、前月比0.3ポイント減の37.1と3カ月連続で悪化した。北陸4県中では最下位が継続中で、全国では第45位（前月43位、前々月44位）。ちなみに46位は｢高知｣、47位は｢宮城｣で、「新潟」も2016年、2017年、2020年、2021年に最下位を記録している。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.4ポイント減の38.0と2カ月連続の悪化。「中小企業」も同0.1ポイント減の36.9と小幅ながら3カ月連続で悪化した。また、「うち小規模」も同0.6ポイント減の34.7と2カ月連続で悪化した。トランプ関税の影響は大企業により大きく出ているが、すでに全体に波及している。

・業界別DI

市場の動揺を反映して、『金融』が前月比10.0ポイント減の40.0。『運輸・倉庫』が同2.5ポイント減の43.3と落ち込みが大きい。『小売』も同1.1ポイント減の30.8と3カ月連続の悪化。反面、『サービス』が同1.1ポイント増の45.7と4カ月ぶりに改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は39.6（前月39.7）とわずかながら悪化したが、「6カ月後」は41.0（同40.8）、「1年後」は43.2（同42.0）と改善した。2021年以来の低水準だが、トランプ関税のショックも当初より幾分緩和されつつあり、先行きには明るい見通しも出てきている。

■富山県

・概況

「富山」の景気DIは前月比0.3ポイント減の42.6に悪化し、全国順位は前月同様の13位となった。「北陸」は福井の改善などから40.4と前月40.2から若干改善した。全国DIは富山と同様の42.6となった。「消費者の財布の紐が固い」（製造）「案件先送りが増加」（卸売）などの声が聞かれた一方、「震災復興需要、世代交代で売上好調」（サービス）などの声もあった。いずれにせよ、富山の景気DIは一進一退が続き楽観視はできず、状況を注意深く見守って行く必要があろう。

・景気DI

「富山」の景気DIは、42.6と前月比で0.3ポイント悪化した。新潟、石川も若干悪化したが、福井が改善し、「北陸」のDIは前月比0.2ポイント増の40.4となった。全国は前月と概ね同様のDI42.6となり足踏みが続いた。「富山」の都道府県別順位は前月同様の13位となった。

・規模別DI

「大企業」（46.2）は前月比3.8ポイント減となった一方、「中小企業」（41.4）は前月比0.6ポイント増となり、「小規模企業」（41.7）について同4.9ポイント増と大幅に改善した。結果、「大企業」と「中小企業」の規模間格差は4.8ポイント（前月9.2ポイント）と大幅に縮まった。

・業界別DI

10業界中、前月比悪化は「不動産」「製造」「卸売」「小売」の4業界となった一方、同改善は「農・林・水産」「金融」「建設」「運輸・倉庫」「サービス」などの6業界となった。特に「農・林・水産」「金融」の改善が目立ち、景気判断の分かれ目となるDI50を上回った業界は前月無しから3に増加した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」（当月比0.7ポイント増）、「6カ月後」（同1.6ポイント増）、「1年後」（同2.9ポイント増）と、先に行くほど改善する見通しとなった。業界別では、「建設」「サービス」は先行きに対する不透明感や不安感が払拭できない結果となった。一方、「製造」「卸売」「小売」などは改善への期待感が窺えた。

■石川県

・概況

「石川」の景気DIは、前月比0.5ポイント悪化の46.6となった。3カ月連続の改善とはならず、都道府県順位は前月より1ランク落とし4位となった。引き続き復興特需やインバウンド需要が景況感を下支えしており、GWの北陸新幹線乗車率は過去最高を記録した。一方、食品価格の値上げ品目数が昨年を上回るペースとなっており、特に米の価格高騰は著しく、価格転嫁の遅れなど課題は山積している。さらにトランプ関税に起因する世界経済の情勢不安は看過できず、県内企業への影響は引き続き注視する必要があろう。

・景気DI

「石川」の5月の景気DIは、前月比0.5ポイント悪化の46.6となった。都道府県別順位を3位まで押し上げた勢いは続かず、３カ月連続の改善とはならなかった。それでも、前年同月の景気DIより1.6ポイント高く、順位も4位（前年同月6位、前月3位）と上位を維持した。

・規模別DI

「大企業」のDIは前月から2.7ポイント改善の55.0、「中小企業」は3カ月ぶりに悪化し、44.3（前月45.5）となった。また、小規模事業者は5カ月ぶりに悪化し47.2となった。中小企業のDIが後退した反面大企業が改善したことで両者の格差は10.7（前月6.8）と再び二桁を超える水準となった。

・業界別DI

8業界のうち５業界で改善ないしは横ばい、3業界で悪化した。『小売』では、前月から9.3ポイント悪化しており、米を中心に食品の価格高騰分の価格転嫁の遅れが景況感を押し下げたとみられる。改善が続いていた『建設』では、引き続き復興工事特需を背景に分水嶺の50を超える結果となったものの、前月より悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が2カ月連続で改善した一方、「6カ月後」「1年後」は2カ月連続で悪化した。近年景況感を押し上げている復興特需は、今年10月末の公費解体終了の目処を見据え、『建設』で「6カ月後」「1年後」が分水嶺の50を下回っている。また、トランプ関税による世界経済の不安感は引き続き注意が必要であろう。

■福井県

・概況

県のまとめによると、県内主要10観光地のGW期間の来訪者数は、蘇洞門（そとも）など嶺南地域を中心に5カ所が増加した一方、東尋坊など5カ所で減少し、全体では前年を若干下回った。比較的好天に恵まれたものの連休の分散化が要因とみられる。こうしたことも物価高に悩む『小売』等の景況感悪化の一因といえよう。反面、景気を牽引してきた『建設』が大きく改善したことは明るい材料であり、企業からは「北陸新幹線の開業効果で好況が続く」（放送サービス）との声も聞かれ、景況感は緩やかに回復するとみる。

・景気DI

「福井」の景気DI（40.5）は前月比2.0ポイント増と2カ月ぶりに改善。GW期間中の観光客数が前年をやや下回るなどで『小売』『運輸・倉庫』の景況感が悪化したものの、『建設』が大幅に改善し全体の景況感を押し上げた。北陸4県で福井のみが改善し、県別順位は32位（前月40位）。

・規模別DI

「大企業」46.9（前月比4.8ポイント増）、「中小企業」39.3（同1.7ポイント増）、「小規模企業」38.4（同0.2ポイント増）。全指標の改善は2024年7月以来、「大企業」の大幅改善は3月以来で全体の景況感を押し上げた。

・業界別DI

前月と比較可能な8業界中2業界が悪化、2業界が横ばい、4業界が改善。全業界中、大幅な改善は『建設』（前月比6.5ポイント増）と『サービス』（同5.0ポイント増）。『サービス』は「放送」「情報サービス」が牽引し、DI55.0と全業界で最高値を示した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」41.4、「6カ月後」42.2、「1年後」42.4と、月日の経過とともに改善するとみている。大型公共工事の減少に伴う『建設』や、物価高が続く『小売』などが悪化するとみているが、『製造』は全業界で大幅に改善するとみている。