レポートTDB景気動向調査2025年04月(東海ブロック:愛知・岐阜・三重・静岡)

2025/05/07
景気動向  アンケート

■東海ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.4

-1.7

5カ月連続悪化は5年ぶり

・概況

『東海』の景気DIは5カ月連続で悪化。5年前の8カ月連続悪化となった起点は19年10月で、米中摩擦への懸念が強まっていた頃だ。「トランプショック」の影響を大きく受ける自動車業界の動向は、設備投資の施工需要や部品の流通と運送、それらに携わる人々の収入にも影響が及ぶため、先行き不透明感から来る不安心理の高まりが、景況感を押し下げている。加えて、物価高による収益性低迷や人手不足といった従来の経営課題も重くのしかかっているなか、本格的なリセッション入りの恐れも高まっている

・景気DI

トランプ関税による先行き不透明感が幅広い業界に及び、『東海』の景気DIは41.4と前月から1.7ポイント下落。悪化が5カ月連続となるのは、コロナ禍の最中だった2020年5月以来。全国よりも悪化幅は大きく、全国10地域中の『東海』の順位は、前々月の3位、前月の4位から連続でランクダウンし5位に後退。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.6ポイント、「中小企業」は同1.8ポイント、「小規模企業」は同1.6ポイントそれぞれ悪化。2カ月連続ですべての規模で悪化となった。とりわけ「中小企業」は5カ月連続で悪化となり、規模間格差は2カ月ぶりに拡大した。

・業界別DI

『その他』を除くすべての業界で前月から悪化となるのは2020年4月以来5年ぶり。トランプ関税に対する声は業界を問わず多く聞かれるなか、設備投資需要減退を懸念する『建設』が前月比3.8ポイントの大幅悪化となったほか、直接的な影響を受ける『製造』(同1.3ポイント減)は1年ぶりにDIが40を下回った。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は42.4で前月から1.2ポイント、「6カ月後」は42.2で同2.0ポイント、「1年後」は43.5で同1.2ポイントそれぞれ悪化。また、業界別で「1年後」が当月を下回るのは『金融』『建設』『不動産』『運輸・倉庫』『サービス』と、先行き不透明感は強まっている

■愛知県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

-1.6

4カ月連続の悪化

・概況

「愛知」の景気DIは4カ月連続で悪化となった。米国のトランプ政権による追加関税問題で警戒感が強まり、大半の業界でDIが悪化した。追加関税の方向性が度々変更となることもあって、主要産業である自動車への影響は見通せないが、マイナス要因であることには違いない。また、相次ぐ食品の値上げなど物価高に落ち着きはみられず、GWの旅行を控える動きも出るなど、消費者の節約志向が強くなっている。今後も米国の追加関税による世界経済の悪化が予想されるなか、景況感は低調な推移を余儀なくされそうだ。

・景気DI

米国のトランプ政権による関税問題で、先行き不透明感が強まり、「愛知」の景気DIは前月比1.6ポイント減の41.9となり、4カ月連続で悪化した。都道府県順位も前々月の9位、前月の17位から続落し22位となった。

・規模別DI

「大企業」(44.7)は3カ月連続、「中小企業」(41.3)は横ばいを挟んで4カ月連続、「小規模企業」(40.5)は2カ月ぶりに、それぞれ悪化となった。すべての規模で悪化となるのは、2カ月ぶり。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中、改善が1業界、悪化が6業界、横ばいが2業界。夏物の衣料品などの動きが堅調で、前月に大きく下げた反動もあって『小売』が3カ月ぶりに好転。しかし、トランプ関税による不安感の強さもあって、大半の業界で景況感は悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は42.7(前月43.4)で前月から0.7ポイント、「6カ月後」は42.4(同44.0)で同1.6ポイント、「1年後」は43.4(同44.2)で同0.8ポイントそれぞれ減少し、すべての指標が前月から悪化した。全国との比較でも全期間で下回っており、先行きへの懸念が強くなっている。

■岐阜県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.2

-2.8

2カ月連続で悪化、40を下回る

・概況

「岐阜」の景気DIは39.2で2カ月連続悪化し、40を下回った。業界別では前月と比較できる8業界中、7業界で悪化し、『建設』、『製造』、『卸売』、『小売』は30台に留まった。「金利上昇、物価高、実質賃金の減少、トランプ関税の悪影響」(サービス)といった声に代表されるように厳しい材料が散見される中、トランプ政権の関税政策を受けて県内で多くの企業が関係する自動車産業をはじめ、輸出に活路を見出してきた農業、畜産業、酒造業など様々な業種への影響が懸念される状況にあり、先行き不透明感は高まっている。

・景気DI

岐阜県内企業の景気DIは前月比2.8ポイント減の39.2となり、2カ月連続で悪化したほか、32カ月ぶりに30台に留まった。また全国DIは7カ月連続で下回り、全国順位は36位(前月25位、前年同月34位)に後退したほか、東海4県の順位は2カ月連続で最下位となった。

・規模別DI

「大企業」(43.0)は前月比4.2ポイント減で4カ月ぶりに悪化、「中小企業」(38.7)は同2.4ポイント減で2カ月連続悪化し、11カ月ぶりに40を下回った。中小企業のうち「小規模」(35.3)は同3.8ポイント減となった。全ての指標で悪化し、規模間格差(4.3)は同1.8ポイント減となった。

・業界別DI

前月と比較できる8業界中、7業界で悪化。『金融』(50.0)は前月比8.3ポイント減、『建設』(34.1)は同6.2ポイント減、『運輸・倉庫』(40.0)は同6.7ポイント減で悪化が目立った。また『卸売』(39.6)は同2.4ポイント減、『小売』(38.6)は同2.7ポイント減で、30台に悪化した。

・先行き見通しDI

「3か月後」(39.1)は前月比4.3ポイント減、「6カ月後」(40.0)は同3.5ポイント減、「1年後」(40.8)は同3.6ポイント減となり、全ての指標で悪化するなど先行きに対する警戒感はより高まっている。また、いずれの指標も全国を下回ったほか、東海4県では最も低い水準となった。

■三重県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.7

-0.2

2カ月ぶりに悪化

・概況

「三重」県内企業のDIは2カ月ぶりに悪化。部分的に値上げ効果や式年遷宮に関連した好転があったが、物価高騰に伴う収益環境の悪化や米トランプ政権による関税問題が景況感全体を押し下げた。県内企業からは「物価不安定、トランプ関税の不透明さ、コメ価格高騰で飲食業の停滞」(飲食料品製造)、「貿易摩擦の影響が今後でてくると思う」(化学品製造)など先行きを懸念する声が多い。県内には輸出製品の製造や物流などを支える企業が多く、今後の日米貿易交渉の行方に注目が集まるが、いずれにせよ県経済は不透明な情勢が続くとみる。

・景気DI

三重県内企業の景気DIは前月比0.2ポイント減の43.7となり、2カ月ぶりに悪化。ただし、前年同月ならびに全国DIを1.0ポイント上回った。全国的なDI悪化の中で小幅な落ち込みにとどめたことから、都道府県別順位は8位と前月から5ランク上昇し、東海4県の中では2カ月連続でトップとなった。

・規模別DI

「大企業」は前月比4.0ポイント増の46.2と2カ月連続の改善。「中小企業」は同0.7ポイント減の43.4と2カ月ぶりの悪化、このうち「小規模企業」は同1.6ポイント増の46.0と2カ月連続の改善。これらの結果、規模間格差は「大企業」が「中小企業」を2.8ポイント上回り、逆転現象が8カ月ぶりに解消。

・業界別DI

前月と比較可能な8業界では、DIが最も高い『サービス』をはじめ『建設』、『運輸・倉庫』の3業界が改善。一方、下げ幅が最も大きい、『不動産』ほか『農・林・水産』、『製造』、『卸売』、『小売』の5業界が悪化。

・先行き見通しDI

「3カ月後」45.2(前月45.8)「6カ月後」44.8(同44.7)、「1年後」44.8(同44.4)と短期的には改善を見込むが、中長期的には足踏み状態にある。業界別では『建設』と『運輸・倉庫』の1年後は40未満にとどまる。

■静岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.5

-2.3

4カ月連続で悪化

・概況

「静岡」の景気DIは40.5と4カ月連続で悪化し、厳しい状況に陥っている。企業からは、「インバウンドによりお土産需要が拡大したため」(製造)との明るい声もあったが、一方で「トランプ大統領の関税政策による不安定化で、企業が設備投資に対して対応を保留している」(建設)など厳しい声も多くあがった。「静岡」では物価高の状況に加え、米国の関税政策による影響を勘案する企業が増えたことから、当面は余談を許さない状況が続くものとみられる。

・景気DI

「静岡」は前月比2.3ポイント減の40.5となり、4カ月連続で悪化した。全国(42.7)との比較では2.2ポイント下回り、全国順位では第33位となり、前月の第21位より低下した。なお、東海4県のなかでは、「三重」の43.7、「愛知」の41.9に次いで3番目に高くなった。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.7ポイント減の46.5となり、良否判断の分かれ目となる50を2カ月連続で下回った。「中小企業」では同2.3ポイント減の39.5となった。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は前月より0.4ポイント縮まり、7.0ポイント差となった。

・業界別DI

主要6業界では『建設』が前月比3.9ポイント減ながらも45.6となり、4カ月連続でトップ。一方で、『小売』は同6.9ポイント減の34.8にとどまり、2カ月ぶりに最下位。なお、改善した業界はなく、悪化した業界は『小売』『建設』『運輸・倉庫』『卸売』『サービス』『製造』の順で悪化幅が大きくなった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は42.3(前月43.4)、「6カ月後」は42.2(同44.7)、「1年後」は44.3(同45.9)にとどまり、3カ月連続で3指標ともに前月を下回った。なお、規模別では「大企業」「中小企業」が3指標ともに前月を下回ったが、「小規模企業」では3指標ともに前月を上回った。

■山梨県、長野県は、北関東エリアに含んで集計しています。

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