レポートTDB景気動向調査2025年04月(九州ブロック:福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄)

2025/05/07
景気動向  アンケート

■九州ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.8

-0.9

4カ月連続悪化

・概況

『九州』の景気DIは、44.8と4カ月連続で悪化。企業からは「原油価格の高止まり、人件費の高騰、物価高による様々な費用負担増、人材不足。」(宮崎県、運輸・倉庫)などの声が聞かれる。DI50台は、業界別では『金融』『サービス』の2業界、県別では「沖縄」のみとなった。インバウンド需要は引き続き期待されるが、原燃料高に加え、防衛的賃上げを含む人件費負担増などがあるなか、価格転嫁も十分に進んでいないこともあり、一進一退ながら緩やかに下落傾向を辿るものとみられる。

・景気DI

『九州』(44.8、前月比0.9ポイント減)は4カ月連続で悪化。10業界中7業界、8県中6県で悪化。『九州』8県中10位以内は5県。先行き見通しDIは「3カ月後」で5カ月連続、「6カ月後」が2カ月連続、「1年後」は4カ月連続で悪化。

・規模別DI

「大企業」(49.0、前月比0.3ポイント増)、「中小企業」(44.3、同0.9ポイント減)は4カ月連続悪化。規模間格差は4.7ポイントと前月から1.2ポイント拡大し、25カ月連続で「大企業」が「中小企業」を上回った。「中小企業」のうち「小規模企業」は42.7(同1.0ポイント減)と2カ月連続で悪化。

・業界別DI

『金融』(50.0、前月比1.9ポイント増)など2業界で改善したものの、『農・林・水産』(47.4、前月比0.3ポイント減)など10業界7業界で悪化。『建設』『卸売』が4カ月連続、『農・林・水産』『製造』『サービス』が2カ月連続で悪化した。50台は10カ月連続の『サービス』と2カ月ぶりの『金融』。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(45.6、前月比1.2ポイント減)は5カ月連続、「6カ月後」(45.8、同1.2ポイント減)は2カ月連続、「1年後」(46.1、同1.0ポイント減)は4カ月連続で悪化した。業界別では『金融』が全指標で改善したものの、『製造』『卸売』『運輸・倉庫』『サービス』が全指標で悪化した。

■鹿児島県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.6

1.3

4カ月ぶりの改善

・概況

「鹿児島」の景気DIは43.6と4カ月ぶりの改善を果たした。企業からは、万博の影響による経済活動の活性化や公共案件の底堅い推移など先行きに対する明るい声が聞かれた一方で、物価高騰や高齢化及び人口減少による人件費の上昇、人手不足倒産などを不安視する声が多く聞かれた。また、円安や関税問題、海外情勢なども先行き不安として多く上がっており、多くの業界で厳しい声が大勢を占めた。先行き見通しDIは改善傾向だったものの、依然として一進一退の状況が続くものとみられる。

・景気DI

「鹿児島」の景気DIは43.6と前月比1.3ポイントの改善となった。一方で、『九州』は同0.9ポイント悪化となる44.8、『全国』も同0.8ポイント悪化となる42.7となった。そのため、「鹿児島」の都道府県別順位は前月の22位から9位に上昇した。

・規模別DI

「大企業」は前月比横ばいの47.9となった。「中小企業」は43.2と同1.3ポイントの改善となったが、「中小企業」のうち「小規模企業」は41.5と同0.4ポイントの悪化となった。それでも、「大企業」の悪化幅が大きかったことで、規模間格差(大企業-中小企業)は1.3ポイント縮小した。

・業界別DI

『製造』、『卸売』、『小売』、『運輸・倉庫』、『サービス』の5業界が改善し、横ばいは『金融』のみの1業界となった。『農・林・水産』、『建設』、『不動産』の3業界が悪化したが、5業界が改善となるのは3カ月ぶりで、依然として一進一退の状況ながら回復基調にあることが見て取れる。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は45.2と前月比1.5ポイントの改善、「6カ月後」が44.9と同1.9ポイントの改善、「1年後」は同1.6ポイント改善の45.5となるなど、全指標で改善を果たした。足下の景気DI改善に併せて、先行きに対し明るい見通しをする企業が増加傾向にあるようだ。

■福岡県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

45.1

-1.3

2カ月連続の悪化

・概況

「福岡」の景気DIは、インバウンド需要や都市再開発事業等が追い風となっているものの、個人消費等の伸び悩みもあって、2カ月連続で悪化した。企業からは「宿泊事業は、インバウンドを中心に順調に推移している」(サービス)などのコメントがある一方、「博多港の輸出入コンテナ数が前年比マイナスで推移している」(運輸・倉庫)との声もあった。インバウンド関連など一部の業界では引き続き好調な推移にあるが、物価高や労務費負担増は多くの業界にマイナスの影響を与えており、今後も「福岡」の景気は一進一退となろう。

・景気DI

「福岡」(45.1、前月比1.3ポイント減)は、2カ月連続の悪化となった。業界別では、『不動産』『製造』など6業界で悪化。『金融』で横ばい。『農・林・水産』『建設』で改善した。都道府県別順位は6位で前月(5位)からダウン。『九州』8県での順位は前月と同じ4位となった。

・規模別DI

「大企業」49.4(前月比1.2ポイント増)で改善。「中小企業」44.3(同1.7ポイント減)、「小規模企業」43.2(同1.9ポイント減)は、いずれも2カ月連続で悪化。規模間格差は「大企業」が「中小企業」を5.1ポイント上回った。

・業界別DI

『農・林・水産』(58.3、前月比8.3ポイント増)、『建設』(50.3、同0.9ポイント増)で改善。『金融』(50.0)は横ばい。『不動産』(45.6、同0.7ポイント減)、『製造』(40.4、同1.9ポイント減)など6業界で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(45.3、前月比1.7ポイント減)、「6カ月後」(46.2、同1.7ポイント減)、「1年後」(47.1、同1.7ポイント減)の全てで悪化。業界別では、『製造』『卸売』『運輸・倉庫』で3指標すべて悪化した。

■佐賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.0

-1.4

2カ月連続で悪化

・概況

「佐賀」の景気DIは42.0と前月比1.4ポイント悪化し、九州全体でも下げ幅が大きい結果となった。また、悪化と改善を繰り返していた中、2カ月連続で悪化した。「物価高騰が続いている」「受注が少ない」などの声があり、業界および企業規模に関係なく厳しい状況が続いている。先行き見通しにおいても、関税の影響や人口減少などで期待感は薄く、大型建設工事が予定にないことから、「佐賀」の景気はしばらく足踏み状態が続くことが予想される。

・景気DI

「佐賀」の景気DIは42.0と前月比1.4ポイント悪化した。『九州』では宮崎、熊本に次ぐ下げ幅であり、2カ月連続で『全国』を下回った。『九州』は44.8と前月より0.9ポイント悪化し、『全国』は42.7に悪化した。「佐賀」の都道府県別順位は前月の18位から20位に後退した。

・規模別DI

「大企業」は45.5と前月比0.6ポイント改善したが、「中小企業」は41.1で同1.9ポイント、うち「小規模企業」は39.8で同0.4ポイント下回った。景気DIと同様に「中小企業」が2カ月連続悪化したことで、規模間格差は同2.5ポイント拡大し4.4となった。

・業界別DI

『卸売』では、価格転嫁を進めた企業が多く、4カ月ぶりに改善したが、『建設』『製造』は2カ月連続で悪化。大型工事や住宅着工の減少と、これに付随する受注減が響いた。また、『小売』は各種値上げによる消費鈍化により前月比9.7ポイントの大幅な悪化となった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は42.0(前月44.5)、「6カ月後」は43.4(同46.8)、「1年後」は43.7(同45.1)と各指標で前月より悪化した。依然として各種値上がりが消費動向に影響しているほか、トランプ政権による関税政策などから改善への期待感が薄まった。

■長崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.7

1.6

5カ月ぶりに改善

・概況

「長崎」の景気DIは前月比1.6ポイント増と5カ月ぶりに改善した。観光業を中心に好調さが維持されているが、「米を中心に食品価格が高騰しており、消費が低迷する」(小売)との懸念も聞かれた。他にもいわゆるトランプ関税の問題がどれだけ影響するか不透明であることを不安視する声も聞かれた。一部の製造業では好調さがうかがえるが、建設業や運輸業では人手不足で思うように売り上げが増えない状況もあり、「長崎」の景況感は今後も外部環境の影響を受けながら一進一退の推移が続くものと思われる。

・景気DI

「長崎」の景気DIは前月比1.6ポイント増の40.7となり、5カ月ぶりに改善した。『九州』8県中6県が悪化したため、九州ブロック内順位は前月から順位を1つ上げて7位となった。都道府県別順位は前月の39位から順位を10上げて29位となった。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.7ポイント増の44.4、「中小企業」は同1.5ポイント増の40.3、「中小企業」のうち「小規模企業」は同1.8ポイント増の38.2となった。「大企業」の増加幅が「中小企業」の増加幅を上回ったため、規模間格差は同1.2ポイント拡大して4.1となった。

・業界別DI

前月から改善した業界は『農・林・水産』『金融』『不動産』『製造』『運輸・倉庫』『サービス』の6業界であった。悪化した業界は『建設』『卸売』『小売』の3業界となった。中でも『農・林水・産』『金融』が前月比10ポイント以上も改善したのが目立った。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.3(前月41.7、前月比1.6ポイント増)「6カ月後」42.6(同40.8、同1.8ポイント増)「1年後」41.2(同41.7、同0.5ポイント減)と先へ行くほど悪化の見通しとなった。業界別でみると『卸売』が先へ行くほど改善の見通しとなっている。

■熊本県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

46.5

-2.4

2カ月ぶりに悪化

・概況

「熊本」の景気DIは前月比2.4ポイント減の46.5と2カ月ぶりに悪化し、景気判断の分かれ目となる50のラインを5カ月連続で下回った。「半導体産業の集積による効果が大きい」(サービス)と明るい話題が見られた一方で、「米国関税の影響が懸念」(卸売)と先行きに対する不安を示す声が依然として多い。トランプ政権による関税をめぐり米中の貿易摩擦が激化し、世界的な景気後退リスクへの懸念が強まった。不安定な海外情勢が国内景気にマイナスの影響を及ぼす可能性があり、景気動向は当面一進一退の推移となろう。

・景気DI

「熊本」の景気DIは46.5で前月比2.4ポイント減と2カ月ぶりに悪化した。『九州』(44.8)も同0.9ポイント減となり、「全国」(42.7)も同0.8ポイント減となった。なお、「熊本」の都道府県別順位は第5位(前月第3位、前年同月第2位)と前月から2ランク下がった。

・規模別DI

「大企業」の景気DIは60.4と前月比横ばいだったが、「中小企業」は45.5と同2.6ポイント減となった。21カ月連続で「大企業」が「中小企業」の景気DIを上回り、規模間格差(大企業-中小企業)は「中小企業」が悪化したため、14.9ポイントに広がった。

・業界別DI

9業界中、改善した業界は『小売』のみにとどまり、悪化した業界は『農・林・水産』『建設』『不動産』『製造』『卸売』『運輸・倉庫』『サービス』の7業界だった。『金融』は前月比横ばいだった。アメリカの関税措置による影響を受けて、景気の先行き不透明感が高まり、その影響が多くの業界に波及した。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは「3カ月後」が47.1(前月50.3)、「6カ月後」は46.2(同48.6)、「1年後」は47.1(同47.4)となった。世界経済の減速に対する懸念が高まったほか、物価高騰や人手不足などの問題により、「3カ月後」「6カ月後」「1年後」全ての指標が前月から悪化した。

■大分県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

48.9

-0.6

2カ月ぶりに悪化

・概況

4月は春休みの効果やイベントの開催、月末はゴールデンウィークを見越して消費動向が活発となった。これにより、観光業を中心とした『サービス』のDIは好調を維持した。『建設』も建設需要が好調でDIは高水準を維持し、連動して物の動きが活性化した『卸売』は改善した。一方で、トランプ米大統領の関税引き上げ公表により、国内における鉄鋼、自動車等の生産量減少が予想され、貿易摩擦の影響を懸念する声が多い。このような先行き不透明感から危機感を覚える中小・零細企業は多く、県内の景気動向はやや減退すると予想される。

・景気DI

「大分」は前月比0.6ポイント減の48.9となり、2カ月ぶりに悪化した。全国順位は第2位(前月第2位・前年同月第5位)となり、前月と同順位であった。また、判断の分かれ目となる「50」を4カ月連続で下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比横ばいの47.6となった。「中小企業」は同0.6ポイント減の49.1、「中小企業」のうち「小規模企業」は同2.0ポイント減の49.4となった。規模間格差は1.5となり、2カ月連続で「中小企業」が「大企業」を上回った。

・業界別DI

前月と比較可能な7業界のうち『卸売』『運輸・倉庫』は改善し、特に『卸売』は前月比4.1ポイント増の45.8と大幅改善となった。一方で、『建設』『製造』『小売』『サービス』は悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」49.2(前月50.8)、「6カ月後」48.9(同51.1)、「1年後」47.9(同49.7)となり、3指標とも前月から悪化し、判断の分かれ目となる「50」を下回った。業界別では『建設』『サービス』は3指標で「50」を上回った一方で、『卸売』『小売』は「50」を下回った。

■宮崎県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.7

-3.2

3カ月ぶりに悪化、九州最下位へ

・概況

「宮崎」の景気DIは38.7で、3カ月ぶりに悪化した。38.7はコロナ禍の影響が残る2022年4月以来3年ぶり。企業からは「アメリカ関税の影響が見えない」「株安円高物価高が重なって先行きが混沌」など厳しいコメントが並び、景況感を冷やした。各社周辺でも「4月は一段と物価高が進み、集客が悪化した上、人件費も高くなってきた」(飲食店)とコスト高に苦戦する現状が先行き見通しの悪化につながった。トランプ関税が地方経済に与える影響度合いは未知数としても各社の懸念材料には十分で、今後の政府対応が注目される。

・景気DI

「宮崎」の景気DIは38.7で、前月比3.2ポイント減と3カ月ぶりに悪化した。『九州』は44.8で同0.9ポイント減、全国は42.7で同0.8ポイント減といずれも悪化したなか、悪化幅が大きかった「宮崎」の全国順位は前月の26位から39位と低下し、『九州』最下位となった。

・規模別DI

「大企業」は41.7で前月比11.1ポイント減、「中小企業」も38.5で同2.4ポイント減と悪化した。企業間格差(大企業-中小企業)は3.2となり、同8.7ポイント縮小した。「中小企業」に含む「小規模企業」は35.0で同4.1ポイント減と悪化し、3指標ともに悪化した。

・業界別DI

『製造』は36.4で前月比2.5ポイント減、『非製造』も39.1で同3.4ポイント減と悪化した。『製造』は「飲食料品・飼料製造」が33.3→8.3と悪化、『非製造』は「医薬品・日用雑貨品小売」が66.7→16.7と大幅に悪化、「農・林・水産」「飲食店」なども悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は41.0で前月比1.1ポイント減、「6カ月後」は41.2で同2.1ポイント減、「1年後」は42.1で同2.9ポイント減と悪化した。「小規模企業」の「3カ月後」「6カ月後」および「大企業」の「1年後」を除く規模別・業界別(『製造』・『非製造』)の全指標で悪化しており、この規模で悪化したのは2022年12月以来、2年4カ月ぶり。

■沖縄県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

53.7

-0.6

2カ月ぶりに悪化

・概況

「沖縄」の景気DIは、2カ月ぶりに悪化となった。それでも、全国順位は25カ月連続1位となり、公共、民間投資が活発で景況感は良いと言える。しかし、現状については、「値上げが続き、消費者の買い控えで出荷量が減少している」、「人件費や燃料費など諸経費の上昇が続き厳しい」といった声がある。また、先行きについては、これまでと同様、「さらなるコスト上昇が懸念材料」、「トランプ関税の影響について気がかり」との声があり、景況感が安定しないことが予想されることから、引き続き動向は注視していく必要がある。

・景気DI

「沖縄」の景気DIは前月比0.6ポイント減の53.7となった。業界別では7業界中、3業界が改善、3業界が悪化、1業界が横ばいとなった。ただ、都道府県別順位は25カ月連続で全国1位となり、『全国』(42.7)、『九州』(44.8)を上回っている。

・規模別DI

「中小企業」のうち「小規模企業」(56.0、前月比1.5ポイント増)は2カ月連続の改善となった。しかし、「大企業」(54.2、同6.9ポイント減)は2カ月連続悪化、「中小企業」(53.7、同0.3ポイント減)は2カ月ぶりの悪化となった。

・業界別DI

前月と比較可能な7業界中、『建設』(0.7ポイント増)、『製造』(7.5ポイント増)、『サービス』(1.3ポイント増)の3業界が改善となった。しかし、『不動産』(5.6ポイント減)、『卸売』(1.7ポイント減)、『小売』(10.0ポイント減)の3業界が悪化、『金融』の1業界が横ばいだった。

・先行き見通しDI

先行き見通しDIは、「3カ月後」が53.5(前月55.1)、「6カ月後」は53.5(同56.2)、「1年後」は52.2(同52.7)となり、3指標とも前月より悪化した。

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