レポートTDB景気動向調査2025年04月(北関東ブロック:茨城・栃木・群馬・山梨・長野)

2025/05/07
景気動向  アンケート

■北関東ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.5

-0.2

2カ月連続の悪化

・概況

『北関東』の景気DIは40.5(前月比0.2ポイント減)となり、2カ月連続で悪化した。2025年に入ってからの4カ月で、改善したのは2月のみで、景気はやや後退傾向にある。企業からは物価高による個人消費への影響や、燃料価格や人件費の高騰を訴える声が依然として多く、トランプ関税による先行きの不透明感の高まりによって不安感が増している様子もうかがえる。このため先行き見通しDIをみても、『1年後』が43.8となって2022年10月の調査以来45を割り込むなど、先行き見通しへの厳しさが増している。

・景気DI

『北関東』の景気DIは40.5となり、前月から0.2ポイント悪化した。悪化は2カ月連続。域内5県では「山梨」が前月比3.0ポイント減と大きく悪化、そのほか「栃木」「群馬」も悪化し、改善したのは「茨城」「長野」の2県だった。全国10地域での順位は前月から一つアップして7位だった。

・規模別DI

「大企業」(45.5)、「中小企業」(39.9)、「小規模企業」(37.9)となった。「大企業」のみが改善し、「中小企業」「小規模企業」が悪化したことで、「大企業-中小企業」の規模間格は5.6ポイントとなり、前月から0.9ポイント拡大した。「中小企業」のDIが40を下回るのは2021年5月以来。

・業界別DI

全10業界中、改善したのは『運輸・倉庫』『金融』『建設』など5業界、他方改善したのは『農・林・水産』『サービス』など5業界で、改善と悪化が各5業界となった。悪化したなかでは『製造』が3カ月連続で悪化し、2024年1月からDIの50割れが続いている。他方『運輸・倉庫』は2カ月連続改善。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(41.4、前月は44.9)「6カ月後」(42.3、同43.8)「1年後」(43.が8、同45.2)となり、全てで前月から悪化。「1年後」の見通しDIが45を割り込むのは2022年10月以来。業界別では、個人消費減退が懸念される『小売』は、「1年後」のDIも30台にとどまる。

■茨城県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.1

1.1

3カ月ぶりに改善

・概況

4月の景気DIは前月比1.1ポイント増の41.1となり3カ月ぶりに改善した。久々に前月を上回ったものの「トランプショックの影響が今後どのような形・大きさで表れるのか見当がつかない」との懸念が広がっている。さらに「業務用食材の値上げや米の価格高騰、ビールなど酒類の値上げにより、取引先の飲食店の経営が厳しさを増している」といった物価高に対する不安の声も根強い。先行き不透明な状況が続くとみられ、朝令暮改のトランプ関税により県内企業が振り回される事態は避けられそうにない。今後の動向を注視する必要がある。

・景気DI

茨城の景気DIは前月比1.1ポイント増の41.1となり3カ月ぶりに改善。2023年1月の39.6以来となる「40」割れは回避された。米国政府が相互関税上乗せ部分について90日間の停止を発表、加えて中国に対する関税引き下げの可能性を示唆したことが貿易摩擦の緩和期待につながり、景況感の改善を後押しした。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.3ポイント減の41.0となった。一方、「中小企業」は同1.3ポイント増の41.1、「小規模企業」は同0.9ポイント増の40.9となり、いずれも改善した。4月に入ってから為替が円高に振れたことで、原材料やエネルギー価格の上昇が落ち着くとの期待感が広がり、企業マインドを押し上げた。

・業界別DI

『農・林・水産』『不動産』『卸売』など5業界が改善。一方、『運輸・倉庫』『建設』『小売』の3業界は悪化した。最も改善幅が大きかった『農・林・水産』は、ゴールデンウィークを控えた外食産業向け商材の需要拡大がプラス材料。一方、『運輸・倉庫』の悪化は、慢性的なドライバー不足や燃料価格の高止まりが影響した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」は41.6(前月41.6)で横ばい、「6カ月後」43.1(同41.5)、「1年後」45.0(同43.4)となり、いずれも前月を上回った。「トランプ関税の影響で先行きの判断が難しい」という声が多い一方で、「円高により輸入品の価格低下が見込める」といった仕入価格の減少に期待する意見も聞かれた。

■栃木県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.8

-1.5

3カ月連続の悪化、不況感鮮明

・概況

4月の景気DIは40.8と3カ月連続で悪化し、非常に厳しい環境となっている。DI30台は不況感が強まるが、その瀬戸際といった様相だ。トランプショックの行く末が見通せない中、輸出企業を中心に業況の下振れも予想され、その影響が多くの業界に波及する予測も成り立つ。設備投資や一般消費にも反映されるとなると、幾分円安に転じてきた為替相場も全く意味を成さなくなってくる。倒産や休廃業の高止まりは、多くの企業経営者のマインドを毀損することになり、更なる悪化スパイラルが想像できる。当面注視が必要だ。

・景気DI

4月の景気DIは40.8と前月比1.5ポイントの下落となった。これで3カ月連続の悪化となり、数値的には“不況”がイメージできる内容だ。トランプショックの衝撃もさることながら、重くのし掛かる物価高、コスト高が企業マインドを悪化させている点は否めない。県別順位28位と低調が続いていると言える。

・規模別DI

「大企業」46.5(前月46.0)、「中小企業」39.7(同41.5)、「小規模企業」38.8(同42.9)と、大企業は概ね現状維持となったものの、県内の大多数を占める中小企業の悪化はダメージが大きい。価格転嫁がうまく機能していない様子や、一般消費の停滞など、業況を取り巻く環境が改善していない。

・業界別DI

主要業界では、今まで牽引役であった『サービス』(前月比▲4.0)や『建設』(同▲3.9)も悪化が見られ、一方で元気のない『小売』、『製造』は若干改善したものの30台と、多くの業界で景況感が弱含みの様相を呈している。各業界で倒産、休廃業も目立つ中、経営者のマインドが毀損していると想像できよう。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.2(前月44.2)、「6カ月後」42.6(同45.4)、「1年後」41.8(同46.1)と、全てのカテゴリーで悪化した。「米国の関税政策が尾を引き、多くの業界に影響が出る」(建設)や、「燃料、人件費が高すぎる。収入が頭打ちなので、利益がない」(製造)と、社会問題化している様子だ。

■群馬県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.7

-0.3

大企業と中小企業の格差が拡大

・概況

群馬県内企業からは「観光客の入り込みが安定して好調に推移している」(サービス)との明るい声が聞かれる。一方、「物価高騰の影響に加えて関税問題もあり、先行きが見通せない」(卸売)、「トランプ関税の影響で得意先業界の設備投資に急ブレーキがかかりはじめた」(製造) など厳しい意見は多い。大企業と中小企業の格差拡大も続いた結果、4月の景気DIは3カ月ぶりに悪化した。トランプ政権誕生から100日が経過。高関税政策などが世界経済の不確実性を高めており、景気の下振れリスクは払拭できない。

・景気DI

景気DIは前月比0.3ポイント減の40.7と3カ月ぶりに悪化した。『全国』の悪化幅(前月比▲0.8)は「群馬」よりも大きかったため、「群馬」の47都道府県別順位は29位(前月31位)に上昇した。『北関東3県』においては「茨城」「栃木」を下回った。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.6ポイント増の51.3となり、2カ月連続で改善した。一方で、「中小企業」は同0.5ポイント減、「小規模企業」も同0.5ポイント減とそれぞれ2カ月連続で悪化した。「大企業」と「中小企業」「小規模企業」で明暗が分かれ、規模間格差は11.4ポイントと大きく拡大した。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界では、『運輸・倉庫』『卸売』など5業界が悪化、『小売』など4業界が改善した。トランプ政権の高関税政策の余波などを受けた『製造』『卸売』は2カ月ぶりに悪化。『サービス』は前月比減となったが業界別で唯一50以上をキープした。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が40.4(前月42.6)、「6カ月後」が40.3(前月43.2)、「1年後」が42.5(前月43.6)となった。「3カ月後」「6カ月後」「1年後」の3指標すべてが前月より悪化。景況感の先行きを不安視する結果となった。

■山梨県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.8

-3.0

3カ月ぶりに悪化

・概況

「山梨」の景気DIは3カ月ぶりに悪化した。企業からは、「レジャー関連はインバウンド需要が過去最高を更新する状況」(リース・賃貸)の声が聞かれた。一方、「半導体関連の動きが極端に悪い。トランプ政権により、世界中にリセッションの荒波が訪れようとしている。」(精密機械製造)などのマイナスの声もある。先行きについては、物価高・人手不足に加え、トランプ関税の影響を懸念する声が多く聞かれることから、景況感の悪化傾向は続くとみられる。

・景気DI

「山梨」の景気DIは前月比3.0ポイント減の41.8となり、3カ月ぶりに悪化した。全国は同0.8ポイント減の42.7だった。「山梨」は全国を0.9ポイント下回り、全国都道府県別順位は前月の8位から24位に後退した。

・規模別DI

「大企業」は前月比6.6ポイント減の44.8、「中小企業」は同2.7ポイント減の41.3、「小規模企業」は同3.6ポイント減の37.5となった。「大企業」と「中小企業」との規模間格差は、「大企業」が大きく悪化したため、前月より3.9ポイント縮小して3.5ポイント差となった。

・業界別DI

前月と比較可能な10業界中、6業界が悪化、4業界が横ばいとなり、改善した業界はなかった。『製造』は、半導体関連が低調で2カ月連続で悪化し、判断の分かれ目となる50を大きく下回る36.6となっている。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.2(前月45.4)、「6カ月後」42.6(同46.5)、「1年後」44.0(同47.8)となった。先に行くほどDIは高くなっているが、3指標とも前月を下回っている。「農・林・水産』『金融』『不動産』『その他』の4業界が、3指標とも50以上となっている。

■長野県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

39.1

0.6

2カ月ぶりに改善

・概況

「長野」の景気DIは、40内外の低水準で改善と悪化を繰り返している。このため、都道府県別順位も、30番台後半から40番台前半と低迷が続く。企業からは「インバウンドをはじめとする追い風が続き、観光業は好景気感が漂う」(広告関連)と前向きな意見もある一方、「昨年初めより、中国の不動産不況、車業界の生産調整など不況が続いている。また今回のトランプ相互関税の不安定さで、見通しが悪い」(輸送用機械・器具製造)とする声も多い。「物価高による消費者の買い控えが起きている」(専門商品小売)との危惧も増えている。

・景気DI

「長野」の景気DIは39.1と、前月比0.6ポイント上昇し、2カ月ぶりに改善した。ただし、4カ月連続で40を割り込み低位にとどまっている。同0.8ポイント低下した「全国」を3.6ポイント下回ったが、格差は1.4ポイント縮まったため、都道府県別順位は37位と同6ランクアップした。

・規模別DI

前月比で「大企業」は3.3ポイント、「中小企業」は0.3ポイント、「小規模企業」は0.1ポイントと規模の大きさに比例しそれぞれ改善。規模間格差は「大企業」と「中小企業」が同3.0ポイント、「大企業」と「小規模企業」は同3.2ポイント、「中小企業」と「小規模企業」は同0.2ポイントそれぞれ拡大した。

・業界別DI

好調なインバウンド需要が続く『サービス』は前月比7.3ポイント改善。『建設』、『卸売』も同0.5ポイントそれぞれ改善した。一方、人手不足により需要を吸収しきれない『運輸・倉庫』は同7.8ポイント、『小売』は同3.2ポイント、中国市場低迷の影響が大きい『製造』は同0.4ポイントそれぞれ悪化した。

・先行き見通しDI

「長野」全体、規模別の「中小企業」と「小規模企業」、業界別の『製造』と『卸売』は、前月に続き長期になるほど改善する予想。「大企業」、『運輸・倉庫』は一進一退、『小売』は1年後の改善、『建設』、『サービス』は1年後の悪化を見込む。「長野」全体としては、28カ月連続で長期になるほど改善を予想している。

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