レポートTDB景気動向調査2025年04月(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

2025/05/07
景気動向  アンケート

■近畿ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.7

-0.8

3カ月ぶりに悪化、

トランプ関税への不安広がる

・概況

大阪・関西万博が開幕し、観光需要の広がりに期待が膨らむ一方で、“トランプ関税ショック”とも言うべき結果となっており、「鉄鋼・非鉄・鉱業」(33.1)は2021年1月(30.8)以来、「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(33.3)も2023年8月(32.8)以来の低水準に。企業からも「アメリカの関税の問題で先行き不透明」(輸送用機械・器具製造、和歌山県)といった声があがる。加えて、為替が円高方向に振れ、インバウンド消費にも陰りが見え始めるなど、外需頼みの景気が揺らいでおり、当面弱含みの推移となりそうだ。

・景気DI

『近畿』は前月比0.8ポイント減の42.7と、3カ月ぶりに悪化した。大阪・関西万博が開幕した一方で、米トランプ政権の関税政策によるマイナスの影響が広範に及んだ結果、全国(42.7)と同値となり、ブロック別順位も前月と変わらずの3位だった。府県別では「滋賀」を抜いて「大阪」がトップに立った。

・規模別DI

「大企業」(前月比2.1ポイント減)が2カ月ぶりに悪化し、2023年4月(46.2)以来の低水準に。「中小企業」(同0.6ポイント減)も3カ月ぶりに悪化した。両者を比較すると、米国の関税政策の影響を即時的に受ける「大企業」の悪化幅が「中小企業」よりも大きく、規模間格差は4.6ポイントに縮まった。

・業界別DI

『サービス』が2カ月ぶりに改善。『小売』も依然として40を下回ったものの、2カ月連続で改善した。他方、8業界が悪化。米国による関税政策の影響が大きい『製造』が2021年5月(38.0)以来の低水準に。輸出入が減少する可能性のある『運輸・倉庫』、企業の設備投資停滞を見込む『建設』なども悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比1.3ポイント減)と「6カ月後」(同1.6ポイント減)は2カ月ぶりに、「1年後」(同1.4ポイント減)は4カ月連続で悪化した。業界別では3指標が改善した『小売』以外の悪化が目立ち、府県別では「滋賀」の「1年後」以外は全て悪化、規模別では全規模が3指標とも悪化と、暗雲が広がる。

■滋賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.2

-1.7

2カ月ぶりに悪化、改善は2業界にとどまる

・概況

「滋賀」の景気DIは前月比1.7ポイント悪化した。企業からは「2025大阪・関西万博が開催されたことで、滋賀県までインバウンドの波がくることが期待される」(専門商品小売)などの声がある一方、「消費財の高騰と関税の先行き不安から、住宅を検討する人が減っている」(不動産)、「高齢化や現役世代の引退、採用不調が重なり人手不足が解消されない」(専門サービス)などの声が聞かれ、しばらくは難しい舵取りを強いられる企業が多いとみられる。

・景気DI

「滋賀」の景気DIは43.2と前月比1.7ポイント悪化した。業界別では悪化が6業界となったほか、規模別では「大企業」、「中小企業(うち小規模含む)」全てにおいて悪化した。近畿ブロック内の2府4県別順位は2位となり、全国においては12位(前年同月は18位)となった。

・規模別DI

「大企業」が42.3と前月比1.6ポイント、「中小企業」が43.3と同1.7ポイント、「小規模企業」は42.7と同2.7ポイントそれぞれ悪化した。また、「中小企業(うち小規模含む)」は「大企業」を6カ月連続で上回った。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中2業界で改善、1業界で前月比横ばい、6業界で悪化した。『卸売』『小売』など改善した業界があった一方で、『農・林・水産』『不動産』『運輸・倉庫』など10ポイント以上悪化した業界があった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が44.1(前月44.2)、「6カ月後」が44.0(前月44.1)、「1年後」が44.9(前月43.4)だった。トランプ米大統領による関税引き上げ政策に伴う世界経済の減速が懸念される一方で、好調なインバウンド需要を見込む企業があるなど、全般的には先行きが見通せない状況にある。

■京都府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

-0.2

2カ月連続で悪化、10カ月ぶりの41台

・概況

「京都」の景気DIは10カ月ぶりに41台に悪化した。春の観光需要が追い風となる業界もあったが、「中国の景気減速で受注減」(製造)、「住宅投資意欲が冷えている」「電子部品関連(特に自動車関連分野)の稼働が低調」(卸売)といったマイナスの声が多くを占める。物価高や人手不足に伴う人件費高騰が続くなか、今後は利上げや米国の関税政策の影響も加わるため、中小零細企業を中心に業績の更なる悪化が懸念される。設備投資抑制や消費マインドの低迷が加速する可能性が高く、景況感はしばらく停滞が続くだろう。

・景気DI

「京都」の景気DIは、前月比0.2ポイント減の41.9となった。『全国』(42.7)を下回ったが、格差は▲0.8ポイント(前月は▲1.4ポイント)に縮小した。『近畿』の順位は3位(前月3位)、都道府県別の順位は22位(同24位)となった。

・規模別DI

「中小企業」(41.6、前月41.1)、「小規模企業」(41.1、同39.0)は改善したが、「大企業」(43.1、前月47.5)は▲4.4ポイントの大幅悪化となった。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は、前月比▲4.9ポイントの1.5ポイントに縮小した。

・業界別DI

『不動産』『小売』『サービス』などインバウンドの恩恵を受ける業界が改善したが、物価高や人手不足、人件費高騰などの影響が大きい『製造』『卸売』『運輸・倉庫』が悪化した。『製造』が35台に悪化するのはコロナ禍で経済が低迷した2021年1月以来51カ月ぶり。『運輸・倉庫』は16カ月ぶりの40割れとなった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」42.2(前月43.0)、「6カ月後」43.1(同43.5)、「1年後」43.6(同44.2)と全期間で前月を下回った。業界別では、『製造』『卸売』は改善見通しだが、『不動産』『サービス』は悪化見通し。規模別は「大企業」の6カ月以降と「中小企業」の全期間で改善見通し。

■大阪府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.4

-0.9

万博開幕も、

トランプ関税で2カ月ぶりに悪化

・概況

「インバウンド効果と万博特需が相まって受注が伸びている」(リース・賃貸)といった声が聞かれるなど万博開催効果が見受けられる。しかし、「トランプ関税により企業の投資意欲が削がれ、その影響が出ている」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売)といった声のように、米トランプ政権が打ち出した関税政策への不安が広がっており、米中関係悪化に伴う中国経済の失速への警戒感も強まっている。物価上昇による生活防衛意識の高まりも続くなか、不確実性の高まりが先行き見通しの悪化にもつながっており、当面は弱含みの推移が続く見通し。

・景気DI

「大阪」は前月比0.9ポイント減の43.4と、2カ月ぶりに悪化した。大阪・関西万博が開幕したものの、米国の関税政策への不安が広がった。ただし、全国(42.7、同0.8ポイント減)を0.7ポイント上回っており、都道府県別順位は10位へと浮上(前月は12位)。『近畿』では「滋賀」を抜いてトップとなった。

・規模別DI

「大企業」(前月比0.8ポイント減)は2カ月ぶり、「中小企業」(同1.0ポイント減)も3カ月ぶりに、それぞれ悪化した。悪化幅は、米中貿易摩擦への懸念を強める「中小企業」が「大企業」を上回り、規模間格差は5.7ポイントまで広がった。なお、「小規模企業」(同0.3ポイント増)は2カ月連続で改善した。

・業界別DI

改善した『不動産』『小売』では、万博開催が宿泊利用や飲食料品購買につながっている様子がうかがえる。他方、悪化した7業界のうち4業界が40を割り込むなど、米トランプ政権の関税政策への不安が広がっており、特に輸出入に関わりのある『製造』『卸売』『運輸・倉庫』の悪化幅が大きくなった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比1.1ポイント減)、「6カ月後」(同1.6ポイント減)、「1年後」(同1.4ポイント減)の3指標とも2カ月ぶりに悪化した。規模別では全規模の先行き3指標が悪化。業界別では『金融』『建設』『製造』『卸売』『小売』の5業界の先行き3指標が悪化し、特に『製造』『卸売』の悪化が目立った。

■兵庫県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.5

-0.6

2カ月連続の悪化

・概況

「兵庫」の景気DIは2カ月連続の悪化となった。「万博と同時に地元でも国際博が始まり観光業が賑やかになっている」(小売)などの万博に関するコメントがある一方で、「物価高騰による消費者の買い控えが始まっている」(卸売)や「建築工事は忙しいが技術者が不足している」(建設)など、物価高騰による個人消費の動向や人手不足に関する意見も目立った。また先行きについてはトランプ関税の影響、特に米中貿易摩擦を懸念するコメントも多かった。引き続き、物価や個人消費の動向に加え、米国の経済政策とその影響が注目される。

・景気DI

「兵庫」の景気DIは前月比0.6ポイント減の42.5で2カ月連続の悪化となった。前年同月比は3カ月ぶりの悪化。全国順位は15位。『全国』は前月比0.8ポイント減の42.7、『近畿』は同0.8ポイント減の42.7で3カ月ぶりの悪化だった。

・規模別DI

「大企業」は前月比4.7ポイント減の46.4で3カ月ぶりの悪化となった。「中小企業」は同横ばいの42.0、うち「小規模企業」は同0.1ポイント増の41.7となった。規模間格差は4.4(前月9.1)と前月比で4.7ポイントの縮小となった。

・業界別DI

10業界中6業界で悪化。『建設』は前月比6.2ポイント減の42.0で3カ月ぶりの悪化、『卸売』は、同1.8ポイント減の42.2で3カ月ぶりの悪化。『小売』は同1.3ポイント減の35.0で2カ月連続の悪化だった。他方、『サービス』は46.3(同2.7ポイント増)で3カ月ぶりの改善となった。

・先行き見通しDI

3カ月後は前月比1.5ポイント減、6カ月後は同2.0ポイント減、1年後は同2.1ポイント減と全指標で悪化。業界別では『建設』『卸売』『小売』『サービス』などが全指標で悪化。規模別でも全ての規模で全指標悪化となり、総じて先行き見通しの悪化傾向が顕著となった。

■奈良県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

38.1

-3.8

前月比悪化、近畿では最下位に

・概況

「奈良」の景気DIは前月から大きく悪化し38.1となった。「万博効果が消費に繋がっている」(卸売)と大阪・関西万博の消費効果を感じる業種が一部である一方で、「資材の値上げと作業員不足」(建設)や、「アメリカ大統領の交替によって状況が悪くなった」(製造)など、資材価格の上昇や人手不足の影響、米大統領の交代時から懸念されている関税の影響など景気悪化の声が多かった。

・景気DI

「奈良」の景気DIは前月から3.8ポイント悪化し38.1となった。都道府県別では前月の26位から悪化し41位となった。『近畿』では「滋賀」が前月の全国7位から悪化し12位となったが、「京都」、「大阪」、「兵庫」、「和歌山」は前月から改善した。なお、『近畿』は前月比0.8ポイント悪化、全国でも同0.8ポイント悪化した。

・規模別DI

「大企業」は41.7と前月比2.1ポイント悪化、「中小企業」は37.6と同4.1ポイント悪化、「小規模企業」は34.8と同6.4ポイント悪化した。「大企業」「中小企業」「小規模企業」のいずれも悪化しており、「大企業」と「中小企業」の規模間格差は4.1と前月比2.0ポイント拡大している。

・業界別DI

『卸売』(38.3)、『運輸・倉庫』(33.3)は前月比横ばいとなったが、『建設』(35.4)は前月比2.9ポイント、『不動産』(43.3)は同10.0ポイント、『製造』(37.9)は同5.2ポイント、『小売』(33.3)は同6.3ポイント、『サービス』(41.7)は同0.6ポイント悪化した。

・先行き見通しDI

3カ月後は38.6(前月45.0)、6カ月後は39.6(同44.1)、1年後は42.0(同44.7)で、すべての指標で悪化見通しとなった。特に3カ月後は前月比6.4ポイント悪化しており、景気悪化を見込んでいる企業が多いことを示している。

■和歌山県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.5

1.9

2カ月ぶりに改善

・概況

 「和歌山」は2カ月ぶりにDIが改善した。『建設』では公共工事の発注量は横ばいで、民間の戸建て需要は高価格帯の注文住宅とローコストの建売住宅に需要が二極化、建設資材や人件費の高騰により受注後の採算が悪化するケースが散見される。『飲食』や『小売』では客単価は上昇する一方で来店客数が減少するなど外食控えや節約傾向が表れている。先行きについては、『製造』を中心に米国の関税政策の行方に不安感が高まっており、当面は慎重な姿勢と弱含みの景況感が続きそうだ。

・景気DI

「和歌山」の景気DIは前月比1.9ポイント増の42.5と2カ月ぶりに改善したものの、『全国』『近畿』(ともに42.7)の水準にはあと一歩届いておらず、実体経済は一進一退が続いている。

・規模別DI

「大企業」は前月比横ばいの48.1だったが、「中小企業」が同2.2ポイント増の41.8と前月に比べて改善した。

・業界別DI

『建設』(42.2)は前月比1.8ポイント悪化したものの、『小売』は横ばい、『卸売』(43.1) 『サービス』(42.5) 『製造』(41.3)『運輸・倉庫』(38.9)は改善した。ただ『運輸・倉庫』は改善しているものの、依然として40を下回るDIであり、先行きも不透明感が強い。

・先行き見通しDI

3カ月後が43.1(前月43.9)、6カ月後が42.7(同44.1)、1年後が42.5(同45.2)といずれの見通しも前月に比べて悪化しており、物価上昇や米国による相互関税の不透明感などにより慎重な見方が強まっている。

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