レポート2025年1月の景気動向調査

国内景気は3カ月ぶりに悪化 ~ 個人消費の低迷が最大の下押し要因、燃料価格の上昇などコスト増も ~

2025/02/05
景気動向  アンケート

■調査結果のポイント

  1. 2025年1月の景気DIは前月比0.9ポイント減の43.6となり、3カ月ぶりに悪化した。国内景気は、低調な個人消費が大きく下押しし、相次ぐ値上げの悪影響が表れた2023年1月以来2年ぶりの下落幅となった。今後の景気は、企業のコスト負担の増加など下振れ材料を多く抱えつつも、横ばい傾向で推移すると見込まれる。

  2. 10業界中8業界、51業種中37業種で悪化となった。川上から川下まで幅広い業界で落ち込んだ。地域別ではコスト負担の増加や国内旅行の不振などにより、10地域中9地域が悪化した。規模別では「大企業」、「中小企業」、「小規模企業」がそろって悪化となった。

  3. [今月のトピックス]トランプ政権に対し、企業からは関税政策の悪影響を危惧する声のほか、世界経済の上向きを期待する声も寄せられた。

< 2025年1月の動向 : 悪化 >

2025年1月の景気DIは前月比0.9ポイント減の43.6となり、3カ月ぶりに悪化した。国内景気は、低調な個人消費が大きく下押しし、相次ぐ値上げの悪影響が表れた2023年1月以来2年ぶりの下落幅となった。

1月は、個人消費の低迷が最大の悪化要因となったほか、燃料・原材料価格の上昇や人手不足も幅広い業界を圧迫した。ガソリン補助金の縮小もコスト増加を招いた。年末年始の連休明けで需要が落ち着いた国内旅行も悪化した。日本銀行による政策金利の引き上げなども下押し要因となった。一方で、インバウンド需要が引き続き好調なほか、自動車部品生産の復調は好材料だった。

全国の景気DI

< 今後の見通し : 横ばい傾向で推移 >

今後は、実質賃金の継続的な上昇と個人消費拡大の好循環への動きが焦点となろう。日銀の金利引き上げにともなう借入金利の上昇や燃料価格の高騰など、企業のコスト負担の増加は下押し要因である。また、家計の節約志向の高まりも懸念材料。関税を含む米トランプ大統領の経済政策や中国経済などはリスク要因である。他方、観光産業の伸長や設備投資の拡大は好材料となろう。

今後の景気は、下振れ材料を多く抱えつつも、横ばい傾向で推移すると見込まれる。

今後の景気DI

業界別:10業界中8業界で悪化、消費低迷や燃料価格の上昇が悪材料に

  • 10業界中8業界、51業種中37業種で悪化となった。個人消費の低迷や燃料価格の上昇、原材料価格の高騰、人手不足などを背景に川上から川下まで幅広い業界で落ち込んだ。一方で、堅調なインバウンド消費などはプラス材料だった。

  • 『製造』(40.1)…前月比0.6ポイント減。2カ月連続で悪化。「建材・家具、窯業・土石製品製造」(同2.0ポイント減)は、建設工事発注の減少や原材料価格の高騰などから3カ月ぶりに悪化した。原材料価格や人件費の高騰に加え、商品価格の上昇による消費者の購買意欲低下から「繊維・繊維製品・服飾品製造」(同1.2ポイント減)は2カ月連続で下落。「鉄鋼・非鉄・鉱業」(同0.5ポイント減)も、受注減少と原材料費高騰に加え、中国の景気悪化が影響といった声も寄せられ2カ月連続で落ち込んだ。

  • 『卸売』(40.3)…同1.2ポイント減。3カ月ぶりに悪化。国内スクラップの減少や海外業者の参入増による競争激化が続くといった声のあがる「再生資源卸売」(同3.8ポイント減)は30台に下落。「紙類・文具・書籍卸売」(同1.9ポイント減)は、ペーパーレス化の進展や販売数量の落ち込みが続き2カ月連続で悪化した。他方、百貨店への販売戦略やインバウンドの増加が寄与し「繊維・繊維製品・服飾品卸売」(同0.1ポイント増)は2カ月連続で改善した。

  • 『小売』(38.6)…同0.9ポイント減。2カ月ぶりに悪化。消費者の節約志向が続く「繊維・繊維製品・服飾品小売」(同1.9ポイント減)は3カ月ぶりに悪化した。補助金縮小により販売量が落ち込むガソリンスタンドを含む「専門商品小売」(同0.8ポイント減)は、5カ月連続で30台に低迷した。加えて、「飲食料品小売」(同1.2ポイント減)や「各種商品小売」(同0.8ポイント減)は、輸送コスト増加による商品価格への転嫁や、米や葉物野菜などの価格高騰などが購入品数の減少につながり、ともに2カ月連続で悪化した。

  • 『サービス』(49.2)…同1.0ポイント減。3カ月ぶりに悪化。「飲食店」(同4.0ポイント減)は人件費や光熱費の高騰に加え、感染症流行などの悪材料が目立ち3カ月ぶりに落ち込んだ。インバウンドが好調も長期連休明けによる需要の落ち着きやコスト増が響き「旅館・ホテル」(同1.5ポイント減)は2カ月連続で下落。人手不足や警備単価の低迷などから「メンテナンス・警備・検査」(同2.0ポイント減)も同じく2カ月連続で悪化した。他方、「人材派遣・紹介」(同0.8ポイント増)は人材確保のため問合せ増に起因して50台を維持した。
業界別の景気DI、注目業種の景気DIの推移、主な業界別の景気DIランキング

規模別: 全規模がそろって悪化、「小規模企業」ほど大きく落ち込み

  • 「大企業」「中小企業」「小規模企業」が3カ月ぶりにそろって悪化した。低調な個人消費や燃料価格の高騰など、規模の小さい企業ほど大きく落ち込んだ。「大企業」と「中小企業」の規模間格差は5.3と、2カ月連続で拡大した。

  • 「大企業」(48.1)…前月比0.6ポイント減。3カ月ぶりに悪化。「娯楽サービス」がインフルエンザの流行や家計の節約志向もあり大きく落ち込むなど、『サービス』が全体を下押しした。また自動車製造の厳しさは関連業種へ波及した。

  • 「中小企業」(42.8)…同0.9ポイント減。3カ月ぶりに悪化。『運輸・倉庫』は、ガソリン補助金の縮小などコスト負担の増加により3カ月ぶりに悪化した。受注量の伸び悩みや部品価格の上昇で『製造』『卸売』はともに40を下回った。

  • 「小規模企業」(41.5)…同1.1ポイント減。2カ月連続で悪化。燃料価格の上昇で運送事業者の収益悪化が表れた。資材価格の高止まりや人件費の上昇を受けた『建設』は、2カ月連続で下落した。
規模別の景気DI

地域別:10地域中9地域が悪化、燃料価格の上昇や観光産業の不振響く

  • 『北海道』『東北』『南関東』など9地域が悪化、『四国』が横ばいだった。北日本で降雪による冬のレジャー需要は表れたが、節約志向が高まるなか、燃料価格の上昇によるコスト負担の増加や観光産業の不振が下押し要因となった。

  • 『北海道』(41.8)…前月比1.8ポイント減。4カ月連続で悪化。10地域中で最大の悪化幅だった。「道東」エリアでは2.3ポイント下落した。燃料価格の上昇を受けた『運輸・倉庫』や来客数の減少に直面した『小売』が大きく悪化した。

  • 『東北』(38.9)…同1.2ポイント減。2カ月連続で悪化し、5カ月ぶりに30台へと落ち込んだ。域内6県中5県が悪化した。観光地を含め「週末でもタクシーの空車が目立つ」などの声も聞かれた『運輸・倉庫』が大幅な悪化となった。

  • 『南関東』(46.0)…同0.8ポイント減。2カ月ぶりに悪化。域内1都3県のうち「埼玉」「千葉」「東京」が下落した。家計が節約志向を強めるなか価格転嫁の遅れが収益を圧迫する『小売』は、3カ月連続で悪化した。

    地域別の景気DI

    【今月のトピックス】
    注目の「トランプ2.0」、大統領就任による影響

  • 景気DIは、第1次トランプ政権時に過去最高(51.1)を更新。『建設』や『製造』が好調。政権後半は米中貿易摩擦などの影響があった
  • 第2次トランプ政権に対し、企業からは関税政策の悪影響を危惧する声もある一方で、世界経済の上向きを期待する声も寄せられた

    「第1次トランプ政権時」と「バイデン政権時」における景気DI、業界別景気DIランキング

    第2次トランプ政権に関する企業からのコメント、2025年の注目キーワード

    【調査先企業の属性】

1.調査対象2万6,765社、有効回答企業1万1,014社、回答率41.2%

2.調査事項

  • 景況感(現在)および先行きに対する見通し
  • 経営状況(売り上げ、生産・出荷量、仕入れ単価・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働時間、雇用過不足、設備投資意欲)および金融機関の融資姿勢について

3.調査時期・方法

2025年1月20日~1月31日(インターネット調査)

【景気動向指数(景気DI)について】

■TDB景気動向調査の目的および調査項目

全国企業の景気判断を総合した指標。国内景気の実態把握を目的として、2002年5月から調査を開始。景気判断や企業収益、設備投資意欲、雇用環境など企業活動全般に関する項目について全国2万7千社以上を対象に実施している月次統計調査(ビジネス・サーベイ)である。

■調査先企業の選定

全国全業種、全規模を対象とし、調査協力の承諾が得られた企業を調査先としている。

■DI算出方法
DI(ディフュージョン・インデックス〈Diffusion Index〉)は、企業による7段階の判断に、それぞれ以下の点数を与え、これらを各選択区分の回答数に乗じて算出している。

景気DIは、50を境にそれより上であれば「良い」、下であれば「悪い」を意味し、50が判断の分かれ目となる(小数点第2位を四捨五入)。また、企業規模の大小に基づくウェイト付けは行っておらず、「1社1票」で算出している。

■企業規模区分

企業の多様性が増すなか、資本金や従業員数だけでは計りきれない実態の把握を目的に中小企業基本法に準拠し、全国売上高ランキングデータを加え下記の通り区分している。

■景気予測DI

景気予測DIは、ARIMAモデルと構造方程式モデルの結果をForecast Combinationの手法で算出。破線は予測値の幅(予測区間)を示している


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当調査は全国で2万7千社を超える企業にご協力いただいている、月次の景況調査では国内最大の統計調査です。
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