脱・属国
金融機関の保有上場株式の期末評価を引き上げるため、日銀による買入れ総額1兆円の金融機関の上場株式買い取りが2009年2月3日からスタート。金融庁も株式買取法改正法の施行(3月10日)により、銀行等保有株式取得機構による銀行保有の上場株式の買い取りを2012年3月まで延長した。
特に、銀行等保有株式取得機構は資金調達時の政府保証枠20兆円があるため期末の金融不安を後退させ市場参加者への心理的な下支えとなった。日経平均株価は同改正法が施行された3月10日に、バブル崩壊後の終値ベースの最安値7,054円98銭から上昇に転じて期末は8,000円台を維持、緊急対策としては効果があったといえる。
しかし、政府保証枠付きの買い取りは、「株価下落の損失」=「税金での補填」というリスクを内包している。
東証の2008年度末の時価総額は255兆円で2007年度末比35.4%減、2006年度末の559兆円からは54%減と、2年で実に300兆円が消えている。20兆円という撒き餌をもとに、市場に資金が戻るきっかけをつくったに過ぎない。
今回調査した「2009年度の企業の業績見通し」では、約半数近い企業が減収減益を予想していることから、企業業績の回復による株式市場の本格回復は望めそうにない。撒き餌だけでは釣果を得られるほど甘くはないのである。政府は、企業業績を回復させるための日本の方向性を明確に打ち出し、その結果、市場へ実需による資金流入を促すことが必要だ。
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