レポートTDB景気動向調査2025年03月(近畿ブロック:滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山)

2025/04/03
景気動向  アンケート

■近畿ブロック

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.5

0.3

2カ月連続で改善ながら、好悪材料が交錯

・概況

『近畿』の景気は、地域・業界・規模による差異が出ている。「大企業」や『製造』では中国経済の減速に加え、米トランプ大統領による関税政策を受けて「対米輸出への不安感」(電気機器製造、兵庫県)の高まりがうかがえる。『建設』では新築住宅着工の低調が続いており、『小売』も消費者の買い控えの影響を受ける。「インバウンド効果が一巡」(飲食店、京都府)、「外国人観光客の予約が少ない」(旅館・ホテル、奈良県)など、好調が続くインバウンド消費にも変調の兆しが見られ、当面足踏み状態での推移が続く見通し。

・景気DI

『近畿』は前月比0.3ポイント増の43.5と、2カ月連続で改善した。全国(43.5、前月と変わらず)と同値となり、2023年5月以来1年10カ月ぶりに格差(近畿-全国)はマイナス圏を脱した。ブロック別順位は前月から1つ順位を上げて3位に。府県別では、「滋賀」が再び「大阪」を抜いてトップとなった。

・規模別DI

「大企業」(前月比1.4ポイント増)が3カ月ぶりに改善。「中小企業」(同0.1ポイント増)も2カ月連続で改善したが、改善幅は「大企業」が「中小企業」を大きく上回り、規模間格差は6.1ポイントと、3カ月ぶりに6ポイント台にまで拡大した。なお、「小規模企業」は前月と変わらず。

・業界別DI

悪化したのは『サービス』のみで、物価上昇や人手不足などを背景に店舗間競合が激しい「飲食店」の悪化が目立った。他方、金利上昇も重なって販売が伸び悩みながらも『製造』は4カ月ぶり、『建設』『不動産』は2カ月連続で改善。『運輸・倉庫』は4カ月ぶり、季節要因も重なり『小売』も3カ月ぶりに改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」、「6カ月後」(前月比各0.1ポイント増)はそれぞれ3カ月ぶり、6カ月ぶりに改善。他方、「1年後」(同0.1ポイント減)は3カ月連続で悪化した。業界別では『不動産』の3指標が改善したが、『小売』の3指標が悪化するなど、先行き見通しの分布は地域・業界・規模によってまだら模様となっている。

■滋賀県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.3

0.8

3カ月ぶりに改善も、先行きに不透明感

・概況

前月に続き「万博等の特需」(広告関連サービス)といった声が『サービス』を中心に聞かれ、「メンテナンス・警備・検査」のDIは56.0まで押し上げられるなど、4月に開幕する大阪・関西万博の恩恵が広がる。ただし、景況感が改善した業界からも、多くの中小企業が価格転嫁に苦戦を強いられている様子がうかがえ、米トランプ政権による関税強化などの先行き不透明感を示唆する声が強まっている。生活防衛意識の高まりで消費の活性を欠く状況が続くなか、賃上げがさらなる負担となる可能性もあり、閉塞感の強まりが懸念される。

・景気DI

「大阪」は前月比0.8ポイント増の44.3と、3カ月ぶりに改善した。全国(43.5、前月と変わらず)を0.8ポイント上回った。「大阪」が全国を上回るのは3カ月ぶりで、都道府県別順位は12位へと浮上(前月は14位)。『近畿』では「滋賀」に次ぐ2番目となった。

・規模別DI

「大企業」(前月比1.2ポイント増)、「中小企業」(同0.8ポイント増)とも3カ月ぶりに改善した。改善幅は「大企業」が「中小企業」を上回り、規模間格差は5.5ポイントと前月から拡大。6カ月連続で5ポイント以上と、格差の大きい状態が続いている。なお、「小規模企業」は4カ月ぶりに改善した。

・業界別DI

金利上昇を受けて『不動産』『金融』など3業界が悪化した。他方、燃料価格の上昇が続いていた『運輸・倉庫』が5カ月ぶりに改善。警備や広告などに万博特需が広がりつつある『サービス』のほか、機械分野が上向いた『製造』、季節要因がプラスに働いた『小売』はそれぞれ3カ月ぶりに改善した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」(前月比0.4ポイント増)、「6カ月後」(同0.6ポイント増)、「1年後」(同0.5ポイント増)の3指標とも3カ月ぶりに改善した。業界別では『製造』『サービス』など4業界の先行き3指標が改善したが、『建設』『不動産』『小売』『サービス』では段階的に先行き見通しが悪化する傾向がみられた。

■京都府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

42.1

-1.2

消費者の買い控えなどで3カ月ぶりに悪化

・概況

「京都」の景気DIは、6カ月ぶりに42台に悪化した。「働き方改革の影響で案件数が激減」(建設)、「仕入原価と人件費の高騰により減益」(飲食店)、「物価高・金利高で住宅を新築する人が激減」(卸売)などの声が聞かれ、企業業績は悪化傾向にある。インバウンドは堅調を維持するが、恩恵を受ける業界は限定的であり、総じて物価上昇を上回る賃上げがなければ消費マインドの回復は見通せない。米国の関税政策や金利上昇などコスト上昇が続くことが予想され、景況感は足踏み状態が続くだろう。

・景気DI

「京都」の景気DIは、前月比1.2ポイント減の42.1となった。『全国』(43.5)を下回り、格差は▲1.4ポイントに拡大した。『近畿』の順位は4位(前月3位)、都道府県別の順位は24位(同17位)に後退した。

・規模別DI

「大企業」(47.5、前月47.2)は3カ月ぶりに改善したが、「中小企業」(41.1、同42.6)、「小規模企業」(39.0、同41.8)は悪化した。「大企業」と「中小企業」の規模間格差(6.4ポイント)は前月比1.8ポイント拡大した。

・業界別DI

物価高、消費者の買い控えなどで『サービス』『建設』が悪化したほか、『小売』も41.1にとどまる。『製造』は8カ月ぶり、『卸売』は5カ月連続で40を下回り、『運輸・倉庫』は今年に入って50割れが続くなど、幅広い業種で悪化した。

・先行き見通しDI

「3カ月後」43.0(前月44.5)、「6カ月後」43.5(同44.8)、「1年後」44.2(同45.9)と全期間で前月を下回るが、先に行くほどDIは高い。業界別では、『製造』『卸売』は改善見通しだが、『不動産』『小売』『運輸・倉庫』は悪化見通し。規模別は「大企業」の1年後を除くすべてで改善見通し。

■大阪府

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

43.1

-0.3

2カ月ぶりの悪化

・概況

「兵庫」の景気DIは2カ月ぶりの悪化となった。「神戸空港の国際化によりインバウンドの引き込みを狙った設備投資などが好調」(サービス)、「米の高騰で乾麺が好調」(製造)などのコメントがある一方で、「物価高騰により消費意欲が減退」(卸売)や「人件費の経費増が利益を圧迫」(建設)など引き続き人手不足や人件費高騰に関する意見も目立った。また先行きについては北米市場の景気低迷や対米輸出を懸念するコメントも多かった。引き続き、個人消費や賃金の動向加え、米国の経済政策とその影響が注目される。

・景気DI

「兵庫」の景気DIは前月比0.3ポイント減の43.1で2カ月ぶりの悪化となった。前年同月比は2カ月連続の改善。全国順位は20位。『全国』は前月比横ばいの43.5、『近畿』は同0.3ポイント増の43.5で2カ月連続の改善だった。

・規模別DI

「大企業」は前月比1.1ポイント増の51.1で2カ月連続の改善となった。「中小企業」は同0.5ポイント減の42.0、うち「小規模企業」は同0.4ポイント減の41.6となった。規模間格差は9.1ポイント(前月7.5ポイント)と前月比で1.6ポイントの拡大となった。

・業界別DI

10業界中4業界で悪化。『サービス』は、前月比2.8ポイント減の43.6、『製造』は、同2.0ポイント減の40.1で、共に3カ月ぶりの悪化。他方、『建設』は48.2(同1.2ポイント増)、『卸売』も44.0(同2.5ポイント増)で共に2カ月連続の改善となった。

・先行き見通しDI

3カ月後は前月比0.4ポイント減、6カ月後は同0.2ポイント減、1年後は同0.1ポイント増と1年後を除き悪化。業界別では『不動産』『卸売』が全指標で改善、『サービス』が全指標で悪化となった。規模別では大企業が全指標で改善となった。

■兵庫県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

44.9

2

3カ月ぶりに改善、近畿ブロック1位へ

・概況

「滋賀」の景気DIは前月比2.0ポイント改善した。企業からは「日用品の値上げと給与増加とのバランスが崩壊しており、嗜好品の買い控えがある」(専門商品小売業)との声がある一方、「金額・設備投資内容は限定的ながら、設備投資意欲は高まりつつある」(建設業)、「同業他社の廃業による恩恵がある」(繊維業)との声が聞かれ、景気が改善したとはいえ一進一退を繰り返すと思われる。

・景気DI

「滋賀」の景気DIは44.9と前月比2.0ポイント改善した。業界別では改善が5業界となったほか、規模別では「大企業」、「中小企業(うち小規模含む)」全てにおいて改善した。近畿ブロック内の2府4県別順位は2カ月ぶりに1位となり、全国においては7位(前年同月は33位)となった。

・規模別DI

「大企業」が43.9と前月比3.6ポイント、「中小企業」が45.0と同1.7ポイント、「小規模企業」は45.4と同2.8ポイントそれぞれ改善した。また、「中小企業(うち小規模含む)」は「大企業」を5カ月連続で上回った。

・業界別DI

前月と比較可能な9業界中5業界で改善、2業界で前月比横ばい、2業界で悪化した。『運輸・倉庫』『建設』『サービス』など大きく改善した業界があった一方で、悪化した『小売』『製造』の悪化幅は小ぶりであった。

・先行き見通しDI

「3カ月後」が44.2(前月43.4)、「6カ月後」が44.1(前月44.5)、「1年後」が43.4(前月46.5)だった。「2025年問題」にも関連する人手不足のほか、人件費や物価高騰に加えアメリカによる高関税発動による影響が読み切れないことから、しばらくは不透明な状態が続くとみられる。

■奈良県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

41.9

2.9

2カ月ぶりに改善

・概況

「奈良」の景気DIは2カ月ぶりに改善し、41.9となった。「借室の問い合わせが若干増えている」(不動産)、「4月から値上がりするビールなどの駆け込み需要が旺盛であった」(卸売)などのスポット需要を含めて景気回復の声もある一方で、「受注、見積依頼共に減少している」(製造)などの厳しい声もあった。今後は、米国の関税政策などが日本経済にどのような影響を及ぼすかは不透明な側面があり、しばらくは一進一退の状況が続くとみられる。

・景気DI

「奈良」景気DIは前月より2.9ポイント改善した。都道府県別順位は前月の41位から26位となった。近畿では、「京都」 「兵庫」 「和歌山」が悪化したが、その他は改善した。なお、「近畿」は前月比0.3ポイント改善、「全国」は同横ばいとなった。

・規模別DI

「大企業」は43.8と前月比6.3ポイント、「中小企業」は41.7と同2.5ポイントそれぞれ改善したが、「小規模」は41.2と同比0.7ポイント悪化した。その結果、「大企業」の改善幅が大きく、規模間格差は2.1ポイントとなった。

・業界別DI

『建設』(38.3)は前月比6.9ポイント、『サービス』(42.3)は同3.2ポイントそれぞれ悪化した。なお、『製造』(43.1)は同6.1ポイント、『卸売』(38.3)は同3.6ポイント、『小売』(39.6)は同6.3ポイントそれぞれ改善した。

・先行き見通しDI

3カ月後は45.0(前月42.0)、6カ月後は44.1(同42.0)、1年後は44.7(同43.0)で、3指標とも前月から改善見通しとなった。それぞれ1.5ポイント以上改善しており、景気改善を見込んでいる企業が前月より増えていることを示している。

■和歌山県

今月の景気DI

前月比

今月の特徴

40.6

-1.8

2カ月ぶりに悪化

・概況

「和歌山」は2カ月ぶりにDIが悪化し、全国でも35位と景況感の低迷が鮮明となった。大企業のDIは改善したものの、中小企業が40ポイントを割り込んだほか業種別では『卸売』や『サービス』、特に『運輸・倉庫』の悪化が懸念される。4月から住宅ローンの変動金利は上がり、政府による電気・ガスの補助金が終了、食品の値上げや和歌山市内の水道料金も値上げされるなど消費環境は弱含みで推移している。企業経営においては新年度のスタートとともに新規営業開拓など「攻め」の姿勢でこの状況を改善していきたい。

・景気DI

「和歌山」は前月比1.8ポイント減の40.6と2カ月ぶりに悪化し、『全国』『近畿』(ともに43.5)との乖離が広がり、全国順位も35位と前月の27位から後退した。

・規模別DI

「大企業」は前月比2.3ポイント増の48.1だったものの、「中小企業」が同2.4ポイント減の39.6と6カ月ぶりに40を割り込み、中小企業の景況感が悪化していることは懸念される。

・業界別DI

『建設』(44.0)は年度末に向けた工事案件の集中などにより前月比3.8ポイント改善したものの、『卸売』 『サービス』が38.9と前月比悪化したほか、『運輸・倉庫』(29.2)が前月比8.3ポイント悪化と、ドライバー不足やガソリン代などの経費増を背景に30ポイントを割り込んだ。

・先行き見通しDI

3カ月後が43.9(前月45.4)、6カ月後が44.1(同44.7)、1年後が45.2(同44.9)と、3カ月後、6カ月後の先行き見通しが前月より悪化しており、地域のニュースになるような大型案件などが無く明るい見通しが立ちにくい状況となっている。

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