レポート言葉だけで終わらない税制の抜本的改正を

2008/08/05
政策・法制度  コラム

なんとか王子

税制論議が活発である。国会が休会中ということもあり、さまざまな意見が飛び交い、百花繚乱の様をなしているようだ。税は多くの国民や企業の行動を変える力を持っており、税制次第で日本経済の行く末が大きく左右される。


TDB景気動向調査で行った消費税および税制に対する企業の意識調査によると、近い将来、消費税率を引き上げることに「賛成」とする企業が3割にものぼった。ただし、徹底した歳出削減とムダの排除が前提条件なのは言うまでもない。


税金には「公平・中立・簡素」という租税三原則があるが、小泉政権時代の経済財政諮問会議では「公正・活力・簡素」を掲げた。そして、安倍前政権、現在の福田政権では租税三原則を中心として、「成長」を目標に据えている。


税金に関しては、かつて「クロヨン」や「トーゴーサンピン」という言葉が流行った。税務署による課税所得の捕捉率に関する業種間格差を表す言葉である。現在でもその実態は変わらないという。いまでは消費税の益税問題もある。


これでは租税三原則の「公平」は成り立たない。公平=平等ではないが、同じ所得を得ているならば、同じだけ税金を払うべきだと思うのは、自然な感情であろう。これが税制、ひいては政策に対する不信へとつながっている。


また、税金には納税者番号制の問題も残っている。過去にはプライバシー保護の観点から立ち消えになったこともあるが、まじめに納税している国民にとっては問題にならない理由なのではないだろうか。海外をみると、イタリアには納税者番号があり、米国やカナダは社会保障番号、スウェーデンやデンマーク、韓国、シンガポールでは住民登録番号を納税者番号として使用している。納税者番号はほとんどの国で実質的に導入されているのである。日本でも導入に向けて真剣に議論すべきであろう。

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