レポート

景気の良い会社は、値上げをためらわない!?

情報統括部 情報統括課
主任研究員 池田直紀

値上げのニュースを目にしない日は、ほとんどなくなりました。企業にも消費者にも、値上げはもはや珍しくありません。企業もコストが上昇すれば、以前より早い段階で価格改定に動くようになっています。

では、企業はコスト上昇分を十分に価格へ反映できているのでしょうか。帝国データバンクの調査結果[1]を見る限り、答えは「ノー」です。企業が値上げに動くまでの期間は短くなった一方で、価格転嫁率は再び4割を下回りました。値上げには動きやすくなったものの、必要な水準までは上げられない企業が多いのが実態です。

ただし、すべての企業が同じ状況ではありません。景況感[2]が「非常に良い」とする企業の価格転嫁率は57.7%と6割近くにのぼっています。一方で、景況感が「非常に悪い」企業は3割を下回る29.5%です。好調企業は不調企業の約2倍の水準で価格転嫁を実現しています。

図表 景況感別の価格転嫁率

景況感と価格転嫁率の関係をみると、明確な傾向が表れています。景況感が良い企業ほど価格転嫁率は高く、悪化するにつれて低下しています。「非常に良い」「良い」「やや良い」とする企業はいずれも全国・全産業平均を上回る一方で、「やや悪い」「悪い」「非常に悪い」とする企業は平均を下回りました。こうした傾向は、企業規模にかかわらずみられています。そして、「どちらともいえない」が平均付近に位置していることを踏まえると、価格転嫁率は、企業の景況感を映し出す鏡のようにも見えます。

値上げが珍しくない時代になったとはいえ、どの企業でも同じように価格転嫁できるわけではありません。足元では、値上げできるかどうか以上に、どのような企業がより円滑に値上げを進められるのかが、より重要になっているのかもしれません。

数年前まで、値上げは企業にとって大きな決断でした。取引先との関係悪化や顧客離れを恐れ、踏み切れない企業も少なくありません。しかし、原材料費やエネルギー価格、人件費の上昇が続き、価格改定の必要性は取引先や消費者にも広く認識されるようになっています。
そのなかで好調企業は、値上げの理由や自社の付加価値を伝え、必要な価格を受け入れてもらっている可能性があります。競合との差別化や代替の難しさ、取引先との信頼関係も、その力を支えているのでしょう。

値上げが当たり前の社会で企業に問われるのは、価格を上げられるかだけではありません。コスト上昇分を価格転嫁しても、顧客から選ばれ続けられるかです。好調企業を支えるのは、「売る力」に加えて、値上げしても選ばれる力なのかもしれません。


[1]帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)」(2026年8月28日発表)
[2]帝国データバンク「TDB景気動向調査-2026年7月調査-」(2026年8月5日発表)

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