レポート

猛暑を企業変革の契機に~「暑さに耐える」から「暑さを生かす」へ~

情報統括部 情報統括課
主任研究員 池田直紀

連日暑い日が続いていますが、今年は気象庁が40℃以上の日を「酷暑日」と定義するなど、日本の夏は新たな段階に入っています。帝国データバンクの調査によると、猛暑日や酷暑日に業務上の支障が出た企業は5割に達し、特に建設業や農林水産業など屋外作業が多い業種で影響が大きくなっています。
猛暑のマイナス面は明らかです。作業効率の低下、熱中症リスクの増加、空調費や対策費用(飲料水や塩分補給品の支給、熱中症対策機器の導入など)の上昇など、企業の経営負担は年々重くなっています。現場では、従業員の安全を確保するために休憩時間の延長や作業時間の短縮が必要となり、生産性との両立が大きな課題となっています。

 一方で、猛暑は社会や企業に変革を促すきっかけにもなっています。まず注目したいのが、健康経営の進展です。かつては「暑さ対策は自己管理」という考え方もありましたが、現在では従業員の健康を守ることが企業の重要な責任として認識されるようになりました。水分や塩分補給品の支給、熱中症予防教育、休憩時間の確保などの取り組みが広がっています。これらは一見するとコストですが、従業員の満足度向上や離職防止、人材確保につながる可能性もあります。
また、猛暑は新たな市場やビジネスを生み出しています。冷却ベストやファン付きウェア、遮熱シート、高性能エアコンなど、暑さ対策関連の商品やサービスへの需要は拡大しています。実際に調査でも、暑熱対策商品を扱う企業からは売り上げの増加につながっているとの声が聞かれています。
さらに、働き方改革の推進という側面もあります。「暑さの中で無理に働く」のではなく、「効率的に働く」方向への転換が進んでいます。これまで当たり前とされてきた業務プロセスを見直す契機になっていると言えるでしょう。

 私たちはすでに「猛暑が当たり前」の時代に入りつつあります。その現実を受け止めたうえで、単なるコスト増やリスクとして捉えるだけでなく、健康経営、働き方改革、省エネ投資、技術革新を進める機会と捉えることが重要です。

 危機は確かに存在します。しかし、その危機への対応から新たな価値や競争力が生まれることも事実です。猛暑との共存が避けられない時代だからこそ、企業にも社会にも、「暑さに耐える」だけではなく、「暑さをきっかけに進化する」という発想が求められているのではないでしょうか。

20260817_主観客観