レポート

お盆商戦は平時と何が違う?家族が動くと、売れるものも変わる

情報統括部 情報統括課
主席研究員 窪田剛士

普段の買い物では、一人ひとりが自分の都合に合わせて行動します。ところがお盆になると、動きの単位は家族へと変わります。買い物をする場所や時間、商品を選ぶ理由まで一変します。お盆商戦は、単に客数が増える時期ではありません。いつもの市場が数日間だけ、別の姿に組み替わる時期なのです。

今年のお盆(旧盆:8月13日~16日)は、休暇の取り方によって人の動きが大きく分かれそうです。10日と12日に休暇を取れば、8日から9連休。一方で、暦どおりなら飛び石型の休みとなります。高速道路各社の予測では、下りは8日と13日、上りは14日と15日に集中する見込みです。

人の移動が特定の日に偏れば、手土産、家族の食卓、帰宅後の買い足しといった需要の山もずれてきます。商戦期間を一括りにせず、日ごとの動きを先読みしなければなりません。見るべきは期間全体の客数より、いつ、どこで、誰と、何のために買うのかという変化です。

「人数」よりも「過ごし方」を見る

今年の夏休みで注目したいのは、旅行者の数だけでなく、出かける目的や支出の中身です。JTBの見通し[1]によると、国内旅行者数は前年比4.4%減の6,900万人となる一方、一人当たりの予定費用は3.2%増の4万8,500円。旅行目的では「家族と過ごす」が33.0%で最も多く、「食事、地域の味覚を楽しむ」も27.3%に達しました。もっとも、予定費用の増加には宿泊費や交通費の上昇も含まれ、財布のひもが全面的に緩んだわけではありません。企業に必要なのは、単なる値上げではなく、「この機会なら選びたい」と思わせる理由です。

つまり今年は、安さだけを訴えるより、家族で過ごす人の「せっかくの機会」に応えることが大切です。平時なら価格や利便性が決め手になる商品も、お盆には、家族で分けやすい、贈る相手にも喜ばれる、地域らしさが感じられるといった価値がものを言います。単品より詰め合わせ、日常品より限定品、一人向けより家族向けに手が伸びやすいでしょう。

猛暑も購買行動を左右します。気象庁の温暖期予報では、2026年夏の平均気温は全国的に高い見込みです。日中の外出を避ける動きが強まれば、需要は朝夕や屋内施設へ移るでしょう。店舗では、涼しい時間帯の販促や受け取り予約、短時間で買える売り場づくりが有効です。外食や観光でも、長時間の屋外体験より、涼しい場所で家族が一緒に楽しめるサービスに商機が広がります。とりわけ、子どもや高齢者がいる家族にとって、暑さは行先を決める重要な要素です。猛暑対策は快適さの提供にとどまりません。家族で安心して訪れられる場所として選ばれるための条件になるのです。

短い特需を、長い関係へ

ただし、お盆需要は短期間で過ぎ去ります。帰省客や旅行者を一度きりの顧客で終わらせない工夫が欠かせません。遠方から訪れた人にはオンライン購入の案内やSNSで地域情報を届け、地元客にはお盆後に使えるクーポンを渡す。相手に合わせて、次につながる接点を残したいところです。

お盆商戦で売れる会社は、増える客数だけを追っているわけではありません。誰と来店し、誰に渡し、どのような時間を過ごすために買うのかまで見ています。家族が一緒に動けば、買う量も、選ぶ基準も、購入の目的も変わります。その変化を先回りできるかどうか。そこが、短いお盆商戦の成果を分けるのです。


[1] JTB「2026年夏休み(7月15日~8月31日)の旅行動向」(2026年7月2日)

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