レポート

円安は止まるのか、日米協調介入の効果と限界

情報統括部 情報統括課
主席研究員 窪田剛士

7月31日、日本と米国は円買いの協調介入に踏み切りました。日米の協調介入は2011年以来15年ぶりで、円買い介入に限れば1998年以来28年ぶりです。基軸通貨ドルを発行する米国が加わった意味は大きいでしょう。日本単独の介入に比べ、日米が円の過度な変動や無秩序な動きを容認しないとの警戒が市場に広がることで、投機的な円売りをためらわせる効果も高まります。

実際、協調介入後、円は大きく上昇しました。ただし、これで円安が終わったとみるのは早計でしょう。為替介入は、通貨売買で相場に働きかける政策であり、円安を生み出す構造そのものを変えるものではありません。日米金利差やエネルギー輸入にともなう恒常的な円売り需要が残れば、円安圧力が再び強まる可能性があります。円安基調を反転させるには、介入だけでなく、金融政策や経済の基礎条件の変化が欠かせません。

では、介入に意味はないのかというと、そうではありません。今回、投入額以上に重要なのは、日米当局が発したメッセージです。両国は追加の協調介入も辞さない姿勢を示しました。特定の為替水準を約束するものではありませんが、急激で一方向の円売りには日米が共同で対抗するという警告自体が、投機的な動きを抑える政策効果を持ちます。

日米はかねて為替をめぐる意思疎通を続けてきました。日本政府は今回の介入を、2025年9月の日米財務大臣共同声明に基づくものと説明しています。円相場の急変を受けて即席で決めたというより、積み重ねてきた協調の枠組みを実行に移したとみる方が自然でしょう。

中小企業にとって大切なのは、「介入で円高になる」と決め打ちしないことです。輸入企業には仕入れ負担の軽減が期待できる一方、輸出企業では採算悪化の可能性があります。想定為替レートを一つに固定せず、円高・横ばい・円安の各ケースで、仕入れ原価や利益の変化を点検しておく必要があります。為替変動が仕入れ・販売価格に波及するまでの時間差や、価格改定の余地、為替予約の活用も検討すべきでしょう。為替を「当てにいく経営」ではなく、「外れても耐えられる経営」が、これまで以上に重要になっています。

20260806_主観客観