レポート

消費税減税の期待と現実

情報統括部 情報統括課
主任研究員 石井ヤニサ

高市首相が掲げる食料品の消費税率1%への引き下げ案が議論されています。賃金が物価上昇に追い付かないなか、家計負担の軽減はもちろん、消費喚起による企業へのプラス効果への期待も高まっています。

しかし、帝国データバンクの調査によると、消費税減税に対する企業の見方は必ずしも前向きというわけではありません。2026年2月に実施した「消費税減税による企業の影響アンケート」では、消費税の減税が実施された場合、自社にとって「特に影響はない」と回答した企業が48.2%と半数近くを占めています。対象となる商品・サービスを扱っていない、あるいは個人向け事業を展開していないことなどから、影響は限定的とみる企業が多いようです。

また、「マイナスの影響の方が大きい」とする企業は9.3%でした。財源確保への懸念に加え、飲食店からは需要減を不安視する声も聞かれました。さらに、特に「食料品のみ」「2年間のみ」といった条件付きの減税については、事務作業の煩雑化や一部業種での不利益を懸念する意見も少なくありません。

一方で、消費意欲の喚起への期待などから、「プラスの影響の方が大きい」と回答した企業は25.7%でした。「特に影響はない」を大きく下回り、4社に1社にとどまっています。

ただし、消費税率が下がっても減税分まで価格が下がるとは限らず、消費喚起の効果は限定的になるとの見方もあります。

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。背景には主に二つの要因があります。

一つ目は、減税を機に、それまで十分に価格へ反映できていなかった原材料費や資材費、人件費などの上昇分を販売価格へ転嫁する企業が増える可能性があるためです。

もう一つは、農産物などでは免税事業者である生産者も多いことです。こうした生産者は消費税を納める義務がないため、税率引き下げに合わせて税込価格を引き下げると、その分だけ手取り収入が減少します。そのため、税込価格を据え置き、消費者が支払う価格が減税前とほとんど変わらないケースも考えられます。

また、家計が減税分を貯蓄に回せば消費は思うように伸びない点や、時限的な減税では開始前の買い控えや終了後の反動減が発生する可能性も指摘されています。

高市首相の悲願である「消費税減税」。その効果や影響については慎重な見方も少なくありません。スピード感のある対応は求められるものの、消費税減税に限らず、給付付き税額控除の前倒しや社会保険料負担の軽減なども含めて多角的に検討し、国民生活と企業活動の双方にとって実効性の高い制度設計が求められます。

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