レポート

増やしたい、でも苦しい-中小企業の夏のボーナス事情!?

情報統括部 情報統括課
主任研究員 池田直紀

国家公務員の夏のボーナスが6月30日に支給されました。管理職を除く行政職の平均支給額は約73万8,500円で、前年より約3万1,800円、約4.5%増加しました。
多くの民間企業でもすでに支給されているようですが、帝国データバンクが中小企業の動向を調査した結果をみると、中小企業の正社員1人あたりの支給額は、約46万6,000円で、前年比約1万7,000円、約3.8%増加しています。

ただし、中小企業にとって賞与の増額は決して容易ではありません。物価高や人手不足を背景に、従業員の処遇改善は避けて通れない課題となる一方で、原材料費や光熱費、人件費の上昇が利益を圧迫している企業も多くあります。大企業のように十分な内部留保や価格転嫁力を持たない企業では、ボーナスを増やしたくても増やせない、あるいは無理をして支給しているケースもあると考えられます。
つまり、今夏のボーナス増加は景気回復や賃上げ機運の表れともいえますが、その裏側には、従業員の生活を守りたいという思いと、限られた経営資源のなかでやりくりする中小企業の苦心も見えてきました。

また、中小企業から寄せられた声をみると、夏のボーナス増額に前向きな姿勢も多くみられます。売り上げや利益の増加、大型案件の受注、新規事業の成長、生産性向上などを背景に、好調な業績を社員へ還元しようとする企業が目立ちます。さらに、基本給のベースアップや定期昇給により、支給月数は前年並みでも賞与額が増えるケースも少なくありません。
その一方で、増額の背景には切実な事情もあります。物価高が続くなか、従業員の生活を守るため、人材の流出を防ぐため、そして社員のモチベーションを維持するために、厳しい業績でもボーナスを増やさざるを得ないという声も多く寄せられていました。

十分な価格転嫁ができない、先行きが不透明で冬の賞与は見通せない、といった不安を抱えながらも、まずは夏のボーナスで従業員に報いようとする企業の姿がうかがえます。中小企業にとってボーナスは、単なる業績還元にとどまりません。人材確保、生活支援、賃上げへの対応という複数の役割を担うようになっており、経営体力とのバランスを取りながら、各社が難しい判断を迫られているといえます。

 数字の上では中小企業のボーナスも増加傾向にありますが、その内実は一様ではありません。そこからは、中小企業が従業員の生活を支え、人材を守ろうとする姿勢と、その一方で増え続けるコストや先行き不透明感に向き合う厳しい現実の両方が見えてきます。

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